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人と自然がつくる品格
旅と品物を通じて
富山の「土徳」を伝える

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「富山には土徳(どとく)という言葉があるんです」

そう話すのは、株式会社水と匠の代表・林口さん。

土徳とは、「厳しいけれど豊かな環境のなかで、恵みに感謝しながら、土地の人が自然と一緒につくりあげてきた品格」のことだといいます。

言われてみるとたしかに、田んぼや段々畑や伝統的建造物が並ぶ街並みなど、昔から続いてきた人と自然との関わりから生まれる風景には、ある種の品格があるかもしれません。

「土徳的な価値観は、今の世界に必要なものだと思っていて。だから富山のためという以上に、世界の人のために伝えたいって感覚なんです」


水と匠は、観光を通じて富山の誇りある地域づくりを目指す団体です。

今回募集するのは、ツアーや研修など旅行商品の企画造成担当者と、工芸品や物産品の企画販売担当者。

好奇心が旺盛で、感動を人と共有したい。そんな人に向いた仕事だと思います。

富山県高岡市。

新高岡駅からみずみずしい田んぼの間を走ること約10分。

指定された住所を目指すと、北陸コカ・コーラボトリングのビルに到着した。

「水と匠の母体は、北陸コカ・コーラの稲垣会長が代表理事を務める公益団体なんです。いまそこから、私が代表になる株式会社を立ち上げているところで」

迎えてくれたのは、文化・地域振興プロデューサーの林口さん。

一般社団法人 富山県西部観光社 水と匠は、80社を超える富山県西部の企業が会員に名を連ねる公益団体。

観光に関連したデータ分析やマーケティング、プロモーション、コンサルティングを通じて、地域に経済的・文化的な循環を生みだす事業を展開している。

そのなかで、旅行企画、地域商社、不動産開発といった収益性の高い事業の実行部門として、この7月に株式会社水と匠が立ち上がることになった。

「行政が母体にある団体と違って、私たちは資金調達から自分たちでやっていく必要があります。収益部門をしっかりとまわすことで、公益的な事業にも還元していけたら」

林口さんは、国立天文台とクリエイターのコラボレーションプロジェクト『ARMA MUSIC BOX』や伝統工芸と最先端技術を繋ぐ『工芸ハッカソン』の企画運営など、各方面でプロデューサーとして活躍している人。

水と匠の代表になるまでには、どういう経緯があったんだろう。

「昔から音楽やアートが好きで。出身は高岡なんですが、若いころは田舎には耐えられない、早く東京に出たいと思っていました」

大学進学とともに上京。ロンドン留学中に現代アートに出会い、東京デザインセンターやP3 art and environmentで働いたのち独立。高木正勝のプロデューサーとしてCDやDVDの制作、コンサートの企画など、ながらく音楽や現代アートの場で仕事をしてきた。

転機になったのは、東日本大震災。

いつか生まれ育った里山で畑をやりたいと思っていた、その「いつか」の先延ばしをやめよう。そう思い、幼いころに遊んだ里山を久しぶりに訪れたところ、すっかり荒れて変わっていた姿に愕然とした。

「あんなに美しかったものがなくなってしまうんだって、すごくショックでした」

もうひとつ地元で体感したのが、高岡銅器や高岡漆器といった伝統産業の衰退。

社会全体の流れに対して自分ができることは微々たるものだけど、いてもたってもいられず、何かしたいと強く思った。

「それから高岡に軸足を置きつつ、東京との2拠点生活を始めました。次第に地域や地場産業と関連した仕事が増えてきて、地域の経済人の方たちから一般社団法人のプロデューサーにならないかとお声かけいただいて」

震災が起きる前から、都会での暮らしに少しずつ違和感を感じていたという林口さん。富山の暮らしには「救われる」感覚があるという。

「心動かされる、美しいものがたくさんあるんですね。立山連峰の山並み、伝統産業の職人さんたちがつくるもの… 一番感動したのは、砺波平野の散居村の風景です」

「戻ってきて数年は、音楽もアートもダンスも自然の美しさには敵わない、自分がいままでやってきたことはなんだったんだろう?と悩んだりしました。でも、田んぼは人工のものなのに美しい。なぜだろう?と思っていたら、富山にある大福寺の太田住職が、大地のグランドルールにのっとっているからだと教えてくださって」

大地のグランドルール。

「水の流れにそって人が田をつくり、家を建てる。人と自然が一緒になってつくりあげたものは美しいのだと気づきました。それは食べ物やお祭りもそうで、感動することが心の栄養になる。その感動を生み出しているのが『土徳』なんだと思います」

「富山をアピールしたいっていうのはあるけど、水と匠はそれ以上に、この時代に土徳的な価値観を発信することに意義を見出されている。僕はそこに共感して参画しています」

そう話すのは社外取締役の飯塚さん。

飯塚さんは、大学院で都市計画を研究し、卒業後は政府系金融機関でM&Aのアドバイザーや不動産ファイナンスを担当したのち起業。

現在は自身の立ち上げた会社で地域開発に取り組みながら、水と匠では不動産開発といった事業企画や資金調達を中心に、経営全般に関わっている。

「東京のような場所も重要だけれど、一方で資本主義や大都市のほころびも出てきている時代ですよね。そこで別の可能性としての地方のあり方や、地方と都市がどう関係を結ぶかにずっと関心があって」

飯塚さんが感じる富山の魅力とは、どういうところだろう。

「無理がないところですね。都市は資本主義の象徴で、エゴをベースに必要以上に大きくつくっていかないと成り立たない。でもこっちでは人のつながりや規模に無理がなくて、農業や漁業や醸造業、お寺や匠の技といった、数百~数千年つながれてきたもので社会が構成されています」

「続いてきた意味が感じられる『ほんもの』が、普通の暮らしのなかにあるんですよね」

今回募集するのは、そんな富山の魅力を伝える、旅行企画と物販をそれぞれに担当する人。

いわゆる観光地ではないので、魅力を伝える相手像は明確に絞り込んでいるという。

「富山県西部は、浄土真宗の精神文化が深く根づき、加賀前田の文化が華開いた奥深い土地です。そこに魅力を感じてもらえる人という意味で、広義のクリエイター、中高年の大人の方、そういった文化が好きな海外の方を想定しています」と林口さん。

そのため旅行企画は団体向けのツアーではなく、富山湾の白えび漁や定置網漁、獅子舞やこきりこの見学、お寺での座禅や精進料理体験など、数時間~半日のコースを多数用意し、相手に合わせて組み立てるオーダーメイドが中心。

企業や学生向けの研修旅行にもすでに積極的に取り組んでいて、特に好評なのは企業内デザイナー向けの伝統工芸の工房巡りや、柳宗悦や棟方志功が滞在した民藝ゆかりの土地巡りだそう。

地域商社としての仕事は、商品の仕入れから販売、在庫管理、PR、卸先とのやりとり、作家さんや業者さんと一緒につくるオリジナル商品の企画など、物販に関する業務全般。

水と匠のオンラインストアをのぞくと、伝統産業の工芸品から個人作家の作品、魚介類の加工品、和菓子、お米といった農産物まで、富山の空気感をまとった品物が並んでいる。

旅の企画も物販も、工房やお寺や農家や漁港など、打ち合わせにいくことがそのまま特別な体験になりそうで、想像するとワクワクする。

さらに水と匠では、2022年中の開業を目指して、「古民家を改築したオーベルジュ」と、「お寺の宿舎を改装した暮らしを学ぶ道場」を建設中。

どちらにもショップが入り、宿泊者向けのツアー・体験を造成していくという。

ショップには宿の食事で使われる器が並び、オンラインストアでも購入できたり。宿泊とセットになった夜や早朝のツアー、座禅体験を企画したり。

宿泊業は今回募集する職種にも大きく関わる事業であり、今の水と匠は、今後の広がりを描きながら基盤をつくっていく、とてもおもしろい時期だと思う。

向いているのは、どういう人だろう?

「事業内容に共感してもらえることは大前提として、さまざまな仕事に柔軟に対応できる人ですね」

というのも、水と匠は組織としてはまだ黎明期。すでに動いているプロジェクトは、内容に応じて業務委託のチームを編成しながら進めていて、正社員の募集は今回が初めてになる。

「まだまだ小さな組織なので、ひとつの業務に専念はできないと思います。細かく教えられない場合もあるので、察して動いていただけるとありがたいなと」

「ツアーも物販も宿も、独立した存在ではなくすべてがつながっています。『土徳』を伝えることを核に、各々が相乗的に働いて全体をつくる、チームとしての意識を持っていただけたら」

そうしたなかで、あると望ましいのが語学力だという。

「今もインバウンド専門の旅行会社と提携していて、ツアーのお客さまには中国や欧米の方もおられます。物販も、ロンドンや中国のお店との取引があって。今後は中国、ヨーロッパ、アメリカとの越境ECも展開していきたいと思っています」

「人に喜んでもらえるのが自分の幸せと思える方、おいしいものやきれいなものが好きな方だったら、すごく楽しいと思いますよ」

そう話すのは、北陸コカ・コーラの社員でありながら、水と匠の事務局を務める殿村さん。

営業で20数年、広報で10数年働き、広報時代の活躍から会長直々に一般社団法人の事務局に抜擢された。

今では仕事の9割が水と匠で、総務系全般をこなしながら、催事のスタッフや、人のつながりや経験を活かしたツアー企画をすることも。

「アートとか仏教のことは全然知りませんでしたが、林口さんと出会ったことで感動の幅が広がって、すごく楽しいんです。おしゃれな企画にも絡めるし、白えび漁や夜の蒸留場ツアーとかも開発できて…ほんとうに楽しい仕事と思いますわ」

ユーモラスで、話すたびに場を笑いに包む殿村さん。話し足りないことがないか尋ねると、

「あのう…事務所が北陸コカ・コーラの敷地内にあるので、ペットボトルの市場価格150円のものが、極秘福利厚生価格です。あと、社員食堂も使えます」

と教えてくれた。

「会員さんにはいろいろな会社があって、紐解けばなんやかんやとつながっていますので、富山での仕事、生活に関すること、すべてにおいて苦労しないかと」

すべてとは、なんとも心強いお話。

たしかに一般社団法人の会員には、バスタクシーなどの交通事業、ホテルや酒蔵や水産漁業など観光に関連する会社のほか、北陸銀行、北日本新聞、KNB放送、不動産の光陽興産、スーパーマーケットを展開するアルビスといった、富山での生活に身近な企業が名を連ねている。

深く精神風土や文化を知り、富山の暮らしを支える人たちとつながり、さまざまな人にその魅力を伝えながら、得たものを地域に還元していく。

この仕事は、このうえなく富山を満喫できるもののひとつだと思う。

心が動いた感動を、誰かに伝えたい。人が喜んでくれると、自分もうれしい。

衝動を原動力に、人の笑顔を糧に、どこまでも豊かに深く、広がっていく仕事だと思います。

(2021/6/2 取材 籔谷智恵)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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