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何かをつくりたいと思ったとき。すでに完成イメージがしっかりあるなら、その道の専門家に相談すればいい。
一方で、つくりたいもののイメージがまだぼんやりしているときは、どこに相談していいかわからないことがある。
そんなとき、まずは気軽に声をかけてもらえる会社でありたい。そんな目標を持ってものづくりに向き合っているのが、東大阪にあるピーアンドエーという会社です。
もともと印刷や紙加工をベースに、生花店で使う資材の企画生産からスタートした会社ですが、ときには雑貨の卸をしたり、紙製品でもまったく異なるジャンルのものをつくったり。
ピーアンドエーが何の会社か、ひと言で言い表すのはちょっと難しい。ひとつの枠にはまりきらず、柔軟に挑戦できる余白を大切にしている会社です。
ものづくりの好きな人たちが集まって、新しい商品やサービスのアイデアを話しながら形にしていく。今回はここで一緒に働く営業担当と、営業事務、さらにオンラインショップの担当者を募集します。
特別な経験やスキルのある人よりも、お客さんから「まず相談してみよう」と思われるような関わり方ができる人を探しています。
大阪市と隣接する、東大阪の街。
なんとなく町工場が多いという漠然としたイメージだけを持って、JR長瀬駅で電車を降りる。新大阪からは30分ほどだった。
いわゆる工業団地のような感じではなく、住宅街のなかに工場が点在するような街並み。長屋が多いのも、この辺りの特徴なのかなあ。
駅から10分ほど行くと、大きな煙突が見えてきた。印刷の会社で煙突?と思ったら、これは目の前にある銭湯のものらしい。
その脇の門を入ると、玄関の前には、「ピーアンドエー」と「ハギハラ」という看板がふたつ。
ものづくりの現場らしく、通路にはコンテナ類が積み上げてある。内線で受付を済ませ、スリッパに履き替え3階へ。
まず話を聞かせてもらったのは、代表の萩原さん。
ピーアンドエーはもともと萩原さんのお父さんが立ち上げた会社で、萩原さん自身も新卒から一緒に仕事をしてきた。
入り口には、ふたつの看板がありましたね。「ピーアンドエー」と「ハギハラ」という会社は、どういう関係にあるのでしょうか。
「ピーアンドエーはもともとハギハラから派生してできた会社なんです。今も、この建物の1階と2階はハギハラの印刷加工の設備があって、3階をピーアンドエーの事務所として使っています。ごく稀ですが、2社のスタッフが連携して仕事をすることもあります」
ハギハラは今年で創業52年。
最初は紙箱をつくる工程のうち、型抜きだけを分業で担っていて、そこから組み立てやパッケージ印刷など事業の幅を広げてきた。
製造に特化したハギハラから、企画などソフトの面の役割を強化し、30年ほど前に分社化したのが今のピーアンドエー。
立ち上げ当初から手がけているのが、生花店で使うラッピングペーパーや箱などの資材、いわゆる「花材」と呼ばれるジャンルだ。
「もともとは花材を扱う問屋さんが別にあって、我々はそのカタログ制作を請け負っていたんですが、途中でその仕事がなくなってしまって。じゃあ、自分たちでつくろうかということで、花材の製造販売をはじめたんです」
最初につくったのは、贈り物として花を輸送する際に使うダンボール箱。
その後、外箱だけでなく、花を飾るためのうつわとしての箱もつくるようになった。
もともとは陶器やガラスなどが一般的だった花のうつわ。一方で紙製の箱には、コストを抑えてカラフルにプリントを施せるという長所もある。耐水性をカバーしながら、その魅力を伝え、ニーズを広げてきた。
要望があれば、OEMでオリジナルの箱や包装紙をつくることもある。さらに、花屋さんが店頭で扱うハーバリウムなどの雑貨の仕入と卸も手がけるようになった。
「実はこういうのもあるんですよ」と、萩原さんが見せてくれたのは、動物のシルエットをプリントしたカード。
カードは特殊なインクで印刷されていて、お湯などで温めると黒い部分が透明になり、動物の絵柄が見えてくるという仕掛け。お風呂で子どもと一緒に遊べる玩具だそうだ。
花材とはぜんぜん違うジャンルですね。
「そうなんです。以前、取引先から販促グッズとして、オリジナルトランプの制作を依頼されたことがあって。それを展示会に出したところ、玩具メーカーの方から、おもしろいから商品化したら?っていうアドバイスをもらって。そこからいろんなカードゲームのシリーズをつくったんです」
「たとえば『大阪弁トランプ』のようなシリーズは、お土産物屋さんでも好評で、結構ロングセラーなんですよ。葉っぱの形の付箋とか、紙ものなら社内で試作しやすいっていう環境もあって、ジョークグッズみたいな部門もあるんです」
かなり幅が広いですね。話を聞くほど、ピーアンドエーという会社がよくわからなくなってきました(笑)。何の会社、って言えばいいのか。
「それは、展示会でもよく言われます(笑)。だけど私は、それが大切なことだと思っていて」
「こうやって普段からいろんなことをやっていると、お客さんから『ピーアンドエーならやってくれるんじゃないかと思って』っていう漠然とした相談をもらうことがあって。そういうポジションであり続けたいんです」
こうしていろんな引き出しを増やすことができたのは、ハギハラという印刷会社がそばにあり、製造に協力してくれる会社が身近に多い東大阪のフィールドならではかもしれない。
今後もいろんなものづくりに挑戦していくなかで、ルーツである紙や印刷という素材は変わらないのでしょうか。
「いや、私はいつもスタッフに『紙にとらわれないでほしい』って言っていて。思いついたアイデアを実現するために最適な素材が紙じゃないなら、ほかのジャンルに挑戦してもいいと思います」
まずは「こんなものがあったら」というアイデアを気軽に共有できるように。月に一度、社内ではブレストの会がある。企画会議というよりは、雑談や気になるニュースの話題から、ニーズの糸口を探っていくような場だという。
「最近も、子育て中のスタッフの『毎日、食事を考えるのが大変』っていう声から、子どもと遊びながらメニューを決められるカードゲームが生まれて。スタッフの個性がそのまま製品につながることもあります」
「昔は本当に、思いついたらすぐつくる!みたいな感じだったんですけど、それだとやっぱり在庫になってしまうものもあって、今はもう少し、アイデアから企画に進める段階で、ターゲットや価格帯、市場のニーズなどを分析しながら進めるようになってきましたね」
それでもやっぱり、浮かんだアイデアを口にすることは恐れず続けてほしいと萩原さんは言う。
そんな思いを、現場で働くスタッフはどんなふうに受け止めているんだろう。
営業事務を担当する山地さんにも話を聞かせてもらった。
普段は商品の受発注対応や、商品写真の撮影、最近は新たに立ち上げたオンラインショップの運営も担っている。
さらにハーバリウムなどの仕入れ商品の選定のために、メーカーの展示会に行くこともあるという。
「自分がかわいいなと思って選んだものが売れると、やっぱりうれしいですね。社内ではアイデアを歓迎してもらえる空気がありますし、自分の意見が形になっていくのは、やりがいに感じます」
最近も、お客さんとのコミュニケーションを円滑にするために、LINEを使ってやりとりができるよう、山地さんの提案で運用が始まったところ。
「今までは、ファックスやメールで注文をもらっていたんですが、LINEならスマホで簡単に写真も送れる。お花屋さんのように立ち仕事が多い現場でも、気づいたときに手軽に注文ができたら便利かなあと思って」
小さな気づきを周りに共有し、サービスや商品として形にしていく。
書類に添えるメモや、伝え方、自分から提案すれば、担当する職域が広がり忙しくもなるけれど、その分、人から必要とされるよろこびも感じられる。
「今社内には、聞き上手な人が多いから、これから入る人が逆に自分発信で意見を出せる人なら、バランスよく企画を進めていけるのかもしれませんね」
最後に、営業担当の新免(しんめん)さんにも話を聞かせてもらった。
普段はお客さんと接する機会も多いという新免さん。実は、前職でも同じ花材を扱う仕事をしていたという。
ニッチな業界内でのスライドだったんですね。
「そうですね。ステップアップしてみたいという気持ちもあって転職を考えたんですが、やっぱり今まで出会った人とのつながりも大切にしたくて。ここは前職に比べると商品の幅も広いし、提案やチャンレンジに対する自由度は高まったように思いますね」
花屋さん向けのものだけでも、扱う商材はかなりの数。
営業担当として入る人の仕事は、まず、その情報をインプットするところからはじまる。
シーズンギフトの需要も多い花の業界。母の日など繁忙期の前には、役割の垣根を越えて、社内みんなで出荷作業に当たることもあるという。
「お客さんが困っているときに力になれるっていうのが、私にとっては営業の醍醐味で。たとえば急な発注で商材がない、っていうときも、なんとか間に合わせたい。助かったよってお礼を言われる充実感が、次につながっている気がしますね」
営業として急な要望に応えるためには、日ごろから製造セクションや他の仕入先との関係性を築いておくことが欠かせない。
ピーアンドエーの社内も、スタッフ8名という小さなチームだからこそ、お互いに思いやりを持って接することが必要なんだと思う。
「本当に、経験より人間性が大事ですね。これはほかのスタッフもよく話していることなんです。自分の意見を押し通すんじゃなくて、まずは聞いてみようって思えるような柔軟な考えを持った人が仲間に入ってくれるといいですね」
まずは、あの人に話してみよう。
そうやって、人から気軽に相談してもらえるということは、目立ちにくいけれど、ひとつの大きな長所だと思う。
ピーアンドエーは、柔らかい意識で変化を続けながら、ものづくりに取り組めるチームだと思います。
(2021/5/18 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。