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“自分ごと”の火をおこす
続いていくまちづくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

古民家を活用した宿づくりや、地方の魅力に触れるイベントなど。全国各地で、さまざまな事業を立ち上げる人たちがいます。

「まちおこし」という言葉と一緒に語られることも多いけれど、“まちのために”という想いだけでは、きっと続きません。関わる地域の人たちが、いかに地域の課題を“自分ごと”にできるかが、続けていくためには大事なんじゃないか。

今回紹介するのは、各地で持続可能なまちづくり事業を仕掛けている人たちです。

株式会社NOTEは、全国各地で古民家活用を軸としたまちづくり事業を行なっている会社です。

募集するのは、地域との関係性づくりから不動産の契約、古民家改修にその後の運営サポートまで。地域に伴走してまちづくりに携わる、プロジェクトマネージャーとプロジェクトアシスタントです。

ひとつの集落から始まった事業も、今年で12年目。会社としても大きな変化を迎えているなか、新しい一歩を踏み出す仲間を探しています。


NOTEの本社がある丹波篠山へは、大阪駅から電車で1時間ほど。篠山は古来城下町として栄えた歴史があり、今も趣のある街並みが残っている。

NOTEの本社は、街中に佇む春日神社のすぐ近くにある。昨年、和菓子屋さんだった古民家をリノベーションしてつくられた。

代表の藤原さんとお会いするのは、今回で3度目。なかに入り少し待っていると、「ご無沙汰してます!」と迎えてくれた。

「去年の夏に来ていただいてから、会社の状況もいろいろと変わってきていて。今は新しいNOTEをつくっていこうというタイミングなんです」

NOTEが取り組んでいるのは、古民家などの地域資源を活かしたまちづくり。

“なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる”という理念を掲げ、全国各地に眠っている古民家を、宿や飲食施設として再生している。

たとえば、丹波篠山市内にある一棟貸しの宿「集落丸山」は、NOTEの原点といえる場所。たった12戸の小さな集落ながら、歴史ある古民家や美しい里山の風景が残されている。

当初は12戸のうち7戸が空き家で、地域をどう維持していくのか、地元の人たちも危機感を持っていた。

そこでNOTEは住民と話し合いを重ね、空き家となっていた古民家3戸を改修。2009年に、集落の暮らしを体験できる古民家の宿として「集落丸山」をオープンした。

一泊数万円の単価ながら、今も予約の絶えない人気の宿になっているそう。村人によるオペレーション体制をとることで、地域の雇用も生み出している。

集落丸山から始まったNOTEの事業は「NIPPONIA」というブランド名で全国に展開。今では全国26カ所で、古民家を活用した宿や飲食店が稼働している。

「とくにここ数年、各地で準備を進めてきたプロジェクトが次々オープンしました。一方、事業を広げてきたなかで、ある意味ひずみというか、無理が出てきたところもあったなと思っていて。実は、複数のプロジェクトマネージャーが退社することになったんです」

なんと。それは、どんな背景で?

「これまでは、現場の担当者の裁量をかなり大きくして、それぞれが個人の判断で動いていくような組織だったんです。もちろん信頼しているからこそ成立していたんですが、メンバー間で細かいところの認識がずれていた、ということも度々あって」

たとえば、これまではどの工務店にいくらで工事を発注する、ということも現場のメンバーが判断して決定していたそう。スピーディーに事業が進められることを優先していた。

「ただこれって、ある意味現場の負担も大きくて。必要以上に責任を負わせていたかもしれないし、会社としてはこうしてほしかった、っていうことがあっても、後からお互いに気づく、ということも正直ありました」

「昨年末くらいから話し合って、独立したメンバーは彼らで新たに会社を立ち上げて、NOTEはNOTEで事業を進めていく、ということに決まったんです」

今は再スタートの気持ちで、新しいNOTEをつくっているところだという。

「複数のメンバーがいなくなってしまったのは残念ですが、僕自身はあまりネガティブに考えていなくて。地域にとってはまちづくりの選択肢が増えるし、もともとメンバーには独立性を持って働いてほしいと思っていたので。想定していたより早かったな、という感じではあるんですけどね」

「個人事業主の集まりみたいな形が強みだった一方で、社内のコミュニケーションがもっと必要だし、チームとして動くことでさらに良くなることもあるんじゃないかと、今は思っていて。今後はよりチームとしての意識を持てるような組織にしようと、仕組みを整えているところです」

今までのプロジェクトマネージャーはというと、入社してすぐ担当地域に住み、単独で事業を進める形をとっていた。

今後は、最初の2〜3年は篠山の本社勤務にして、ほかのメンバーと直接コミュニケーションをとりながら仕事の流れを学べるように。

また、案件ごとに経理や設計など他部門のメンバーともチームを組んで、進捗や課題を今まで以上に共有しながら進める形に変えていく。

これまで個人の力に頼っていた部分はチームで支え合い、組織としてより持続性のある形を模索していきたい、と藤原さん。

「地域の人が『NOTEさんと一緒に事業をつくりたい』って言ってくれるのは、篠山から始まった取り組みが、10年以上経った今もちゃんと続いて広がっていることが大きな理由なんです」

「NOTEに期待してもらっている、中途半端に終わらない、持続性のあるまちづくりに一層邁進する。そのために、組織づくりの視点でも一緒に試行錯誤しながら取り組める人が来てくれたらうれしいですね」


今回募集するプロジェクトマネージャーは、前職での経験は問わないそう。まずは篠山でノウハウや仕事の流れを学びながら、経験を積んでいくことになる。

「経験を積んだあとは、思い入れのある土地に移り住んで、そこのまちづくりに力を注いでもらえたらと思っていて。石﨑くんは、そのロールモデルのような感じでがんばってくれているんですよ」

そう紹介してくれたのが、プロジェクトマネージャーの石﨑さん。昨年の5月にNOTEへ入社した方。

「地元が石川県で、前職では地方銀行で働いていました。地方創生に関わる部署にいたときにNOTEのことを知って、集落丸山にも視察へ行って。そのときに衝撃を受けたんですよね」

限界集落と呼ばれるような場所でも、そこにある資源を活かすことで、外から人が来てくれる場所になる。なおかつ、地域の人が活躍することで活気が生まれていることが、当時の石﨑さんにとっては驚きだった。

「北陸は、鎌倉や平安時代から栄えてきた文化がそのまま残っている土地です。戦争での被害も少ないので、街並みがそのまま残っているところも多い。そんな資源があるにもかかわらず、活かしきれていないことに歯がゆさを感じていて」

「銀行に勤めたまま何かはじめることもできたかもしれないですが、やっぱり地域に入り込んで仕事をするには、直接NOTEで経験を積むのが一番なんじゃないかと。それで、ここで働くことにしたんです」

夫婦で篠山に引っ越し、お子さんも生まれた。今は実践を通して学びながら、全国各地で進行中のプロジェクトマネジメントを担当している。

「仕事の多くは、自治体や地域住民からの依頼でスタートします。やっぱり直接地域を見て話を聞くことが大切なので、必要に応じて出張もしながら、各地のプロジェクトを担当していますね」

「空き家になっている古民家を活用したい」「まちづくり事業を始めたいのでアイデアがほしい」など、依頼の内容はさまざま。

地域の人は気づいていないけれど、外の人から見ると魅力がある。そんなものを発掘して、磨き上げていく。

そのときに重要なのが、地域の人を主体として事業を進めていくこと。

「僕たちは、古民家の改修や資金調達のノウハウはありますが、あくまでサポートする立場なんです。まちづくりの主役は地域の人なので、誰が主体になって、自分ごととして事業を進めていくのか。その意識をうまく育てないと、事業はうまくいかない」

「リスクと責任を負って、それでもやろうという人を僕たちが支えていく。そうすることで、地方で続いていくビジネスにはなるんだと思います」

地域の中心メンバーが決まったら、その人たちとまちづくり会社を立ち上げ、事業計画を作成。同時に活用物件を決めつつ、ファンドの投資や銀行からの借り入れ、また行政の補助金も活用して資金調達を行う。

その後は工務店とやりとりして工事を進めたり、宿やレストランを運営するテナントをマッチングしたり。

オープン後も修繕や新しい企画の相談を受けるなど、継続的に地域と関わっていくことになるため、仕事はかなり幅広い。

「たとえば、今担当している愛媛県の大洲市では、古民家を活用したお店をつくろうとしていて。入ってもらうテナントさんと相談して設計を進めているんですが、その調整ひとつとっても大変で」

大変、というと?

「その建物には、外へつながる通路がいくつかあるんです。テナント側としては出入り口を絞りたいから、この通路を塞ぎたい。けれど、僕らとしては地域の人が気軽に入れるように、通路をそのままにしておきたくて」

「地域の人と、宿やお店を運営する事業者の間に入りながら、僕たちの考えも理解してもらう。その調整は気を遣うところかもしれないですね」

事業の始まりから伴走しているからこそ、どんな思いから始まり、どんな施設を目指しているのかが分かるし、経験やノウハウにもとづいてなにが必要なのか、アドバイスもできる。

一歩引いた視点で全体を整えていくことが必要なんだろうな。

石﨑さんは、いろんな人とコミュニケーションするなかで、大切にしていることはありますか?

「そうですね…僕は銀行員だったので、飛び込んで話をするのは好きだったんです。けど、苦手意識のある人でも大丈夫だと思っていて。大切なのは、人に関心を持って、その地域を知ろうとすることだと思うんですよね」

関心を持って、知ろうとすること。

「僕は地域に行くと、まずお酒から入るんですよ。地域の文化を反映している日本酒を学ぶことから始めたり、伝統工芸について勉強したり。そういうことに無関心じゃない、っていうのかな」

「事業の組み立て方とかは、あとから学んでいけるので。偏見を持たず、地域の文化や歴史、そして人に関心を持つ。そうすると、地域の人も話してくれる。根本に地方が好きっていう気持ちがあれば大丈夫だと思います」

これが正解、というコミュニケーション方法は、多分ないと思う。

やり方よりも、関心を持って知りたいと思えるかどうか。その姿勢が、地域で仕事をする上では大切なのかもしれない。

「この前広島に行ったときなんか、地域のおじさんに歴史の話を聞いたら、一日中まちを案内してくれて。塩づくりはこうやってたとか、改修予定の建物は昔こう使われてたとか」

「建物が活用されて、人が来てくれる。そしてまちの歴史を感じてもらえるのはうれしいって、そう言ってくれたんですよね。そんなふうに、地域の人の熱意や思いを引き出すことにやりがいを感じる人が来てくれたらいいなと思います」


前線に立ち、さあどんなことをしようかと、手と頭を動かす。そうやって“自分ごと”として地域の課題に取り組む火をつけていく。

その熱は、おのずと地域を元気にしていくのだと思います。

(2021/6/15 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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