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自然にも自分にも
嘘をつかない暮らし

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

そよ風が心地いいと感じたり、自分で育てた野菜を美味しいと思ったり。

自然なものに触れるとどこかほっとするのは、人も自然の一部だからなのかもしれません。

人にも自然にも、正直に生きていくために。自然素材を使った家づくりに取り組んでいるのが、アトリエデフです。

かまど・薪ストーブ・畑など。手間暇かけて暮らしを楽しむための家づくりのほか、暮らし体験イベントやフリーペーパーの制作などにも取り組んでいます。

今回は、設計と現場監督を募集します。未経験でも大丈夫。自然とともに、暮らすように働いている人たちに話を聞いてきました。

 

新宿駅から特急あずさに乗って、2時間半で富士見駅へ。

山や畑が広がる景色を横目に15分ほど車を走らせると、アトリエデフの八ヶ岳営業所が見えてきた。

林のなかに木造の建物が並んでいて、木でつくられたブランコやかまどもある。

時刻はまもなく正午。

敷地内にあるモデルハウスをたずねると、スタッフのみなさんが大きなテーブルに料理を並べているところだった。

「うちは、毎日のお昼をみんなでつくっているんですよ。かまどで炊いたご飯と、うちの畑で採れた野菜を使っているんです」

そう声をかけてくれたのは、代表の大井さん。

「せっかくなので、一緒にどうですか」と、挨拶もほどほどに食卓にお邪魔させてもらう。

野菜たっぷりの副菜に、とろろご飯と味噌汁。

「かまどの火加減、失敗しました…」「たしかに、ちょっとかたいね〜(笑)」

和やかに進んでいく会話が心地いい。

みんなでご飯を食べるの、いいですね。

「仕事の話なんて一切出てこなくてね(笑)。たわいのない話が大事なんですよ。ここでコミュニケーションをとることで、みんなが一つになる」

「朝来て掃除して、ラジオ体操やって、みんなでお茶飲みながら15分くらい話して。それから少し仕事して、お昼つくって食べて、昼寝して働いて、残業なし。うちの会社は、そういう働き方をしているんです」

忙しいときも、余白を大切にしている大井さん。もともとは建設会社のサラリーマンとして、今とは真逆の生活を送っていたそう。

「とにかくお金を稼いで、ステータスで争うことばかりしていました。でも、そんな自分にだんだん疲れてしまった。そんなとき、子どもたちがシックハウス症候群やアトピーになってしまって」

原因となっていたのは、住宅の建材に使われている接着剤や塗料の化学物質。小さな子どもたちを中心に、身体に異変をもたらす可能性があるとして、社会問題になりはじめていたときだった。

そこで大井さんは、「安心安全な家をつくりたい」という想いから、1997年にアトリエデフを設立。

無垢の国産材、土に藁や砂を混ぜて練り上げた土壁、蜜蝋のワックスなど、自然素材をつかった家づくりをしている。

「こういう家に住んでいると、暮らしや物事に対する考え方が変わってくるんですよ。本当に大事なものに気づいていく。それは、家の持つ力だなって思いますね」

家の持つ力。

「家のなかに自然がありますから。意識せずとも、自然に触れる機会が増えるんです。匂いとか、柔らかさ、温かみ。なんか心が落ち着くな、っていう感覚とかね」

「お金や地位、名誉を追いかけていると、自分が本当は右に行きたいと思っていても、左に進むしかない、みたいなことも多くなる気がしていて。それはストレスじゃないですか。自然のなかで自分の足で立っていれば、自分が行きたい方向に進めると思うんです」

家づくりに自然素材を取り入れるだけでなく、自然のなかで丁寧な暮らしを実践しているアトリエデフ。

無農薬で育てた野菜。かまどでご飯を炊き、冬には薪ストーブを使う。味噌づくりやそば打ちなど、お客さんも一緒に体験できるイベントも開催しているそう。

最近はビーチクリーンや竹林整備や植林など、より一層自然環境に目を向けた活動に力を入れているんだとか。

「自然のなかに入っていくと、自然がどれほど疲れているか分かるんです。会社を経営する上で、売上をあげるのはもちろん大事ですよ。でも、それだけじゃなくて。この地球の環境を、なんとか未来につなぐことを考えなきゃって思うんです」

「家を建てたオーナーさんが、環境保全活動に取り組みはじめたりと、いい流れも生まれてきていて。私たちのいろんな活動が、自然に触れる窓口になればいいなと思っています」

 

デフの活動の柱であり、想いを伝えていく手段でもある家づくり。今回募集する設計と現場監督は、その要になる存在だ。

設計について教えてくれたのは、入社7年目の高橋さん。

「新卒で入社しました。最初の1年間は『畑一緒にやるぞ』って、社長によく連れ出されていましたね。仕事も、畑や森の整備、草刈りの時間が多くて。身体を動かせて気持ちいいなとは思いつつ、なんでこれをやっているんだろう?って、疑問に思うこともあって(笑)」

「お客さんと打ち合わせするようになってからは、自分が普段体験しているからこそ伝えられることがたくさんあるなと。薪ストーブの使い方とか、無農薬の畑のこと。自然に近い暮らしに興味を持っている人が多いので、そういった質問をよく受けるんです」

設計の役割は、お客さんの希望を図面におこしていくこと。

どんな家で、どんな暮らしがしたいのか。まずはお客さんに“家づくりノート”を書いてもらい、それをもとに話を聞いていく。

「雑誌の切り抜きを貼ってくる人もいれば、『気持ちがいい家』って、一言だけ書いて持ってくる人もいて。具体的な希望をうまく言葉にできていない人がいたら、普段の暮らしぶりを聞きながら、少しずつ希望を引き出していきます」

「たとえばこのお家は、旦那さんの希望はたくさんあったんですけど、奥さんはあんまりで。いろいろ聞いてみたら、家事が趣味なんですって話してくれて。おうちへ伺ったときも昼食を用意してくださって、料理が好きな人なんだなって思ったんです」

そこで、窓の向かい側に広々としたキッチンスペースを配置して、料理中も景色が楽しめるように設計。薪ストーブは調理でも使えるものを導入したそう。

未経験から設計の仕事を始めた高橋さん。

はじめのうちは、大変だったことなどありましたか?

「未経験でも丁寧に教えてもらえるので、図面はある程度描けるようになるんですけど、それを現場でどうつくっていくのかがなかなかイメージできなくて」

たとえば、自然素材だとなにができてなにはできないのか、とか。現場に行って、現場監督や職人さんによく教えてもらってました。設計と現場の距離が近いのはありがたいですね。特にデフだと、工事を進めながら細かい部分を詰めていくんですよ」

外壁や屋根の色、照明の数やサッシの大きさ、仕上げの仕様など。現場監督とともに、月に一度のペースでお客さんと打ち合わせをしながら決めていく。

そのほうが、形になっていく家を見ながら細部をイメージして決めることができるし、家づくりの過程を見るいい機会にもなる。

デフの家づくりを通じて、暮らしを見直すお客さんは多いそう。自然食品に興味を持つようになった人や、畑や田んぼをはじめる人もいるのだとか。

その変化は、どうして生まれているんだろう。

「なんでしょうね…。ものがどこから来て、どうつくられていくのか知れるっていうのは大きいかも。お客さんと、大黒柱となる木材を伐採しにいくこともあるんですよ。木を伐って、運んで、組み立てる。その工程を目の当たりにすると、ものの選び方について考える機会になるんじゃないかな」

「私も、値段がちょっと高くても環境にいいほうを選ぼうとか、ものを選ぶ基準が少しずつ変わりました。あとは、自然素材に囲まれているぶん、化学物質の匂いにすごく敏感になったなって思います」

 

「みんな匂いに敏感ですよね。事務所に来た瞬間、ワックスつけてる?って聞かれたことあります」と話すのは、現場監督の石井さん。

前職では、ハウスメーカーの営業をしていたそう。

「本当は接着剤が使われている合板を、無垢材ですよってお客さんに説明することもあって。ずっともやもやしていたし、自分がどんどん駄目な方向に行ってしまう感じがしたんです」

「ここで働き始めて、本当に化学物質を使わずに建築をしているんだって、びっくりしました。今どきの住宅って、床材のつなぎ目とか、いろんなところで接着剤を使うのが一般的なんですけど、それも一切使ってないんです」

接着剤を使わずに建てられるのは、現場で大工さんが木目や節を一つひとつ見極めて接合しているから。

使える素材が限られるということは、工事する上での制約にもなる。

「大工さんたちと毎回なんとか方法を考えています。自分も相手もだまさなくていいのがすごく楽ですね」

入社して2年目の石井さん。最初の10ヶ月は、先輩のサポートをしながら家が建つまでの一連の流れを学んだ。

「なにもわからない状態だったので、覚えることが多くて大変でした。材料を現場に運ぶのも現場監督の仕事なんですけど、『カラマツの床板持ってきて』って言われて、これで本当にあってるのかなって不安になりながら持っていったり(笑)。間違えて何往復もしたこともありました」

「今は一人で現場を担当しているので、別の大変さを感じています。発注や施工図の作成とか、自分の業務が漏れていたらみんなが作業できなくなっちゃうので。計画をちゃんと立てることがものすごく大事ですね」

設計者が書いた図面をもとに、材料を発注したり工程表を作成したり。大工さんとコミュニケーションをとりつつ、工事全体の進行管理をする。

「大工さんは、話好きな人が多いですね。現場に行くと『今日は忙しいのか?』って、よく聞かれます。喋り出すと大工さんの手が止まっちゃうので、最近は休憩時間にあわせて行くようにしていて(笑)」

お客さんと大工さんの両側から、家を建てる過程に寄り添う。家づくりの最初から最後まで見守る役割だからこそ、完成したときの思い入れも深くなるんだろうな。

「最近、自分が担当したお家で、初めて引渡しをしたんです。最後、一緒にワックスを塗りながら話して、その後もメールや写真を送ってくれて。喜んでくれているのが伝わってきて、うれしかったですね」

「木の匂いしかしない家って、普通はほとんどないんですよ。これからも、もっとたくさんの人に、本当の木の家について知ってもらいたいなって思います」

 

畑を耕し、森や海のゴミを拾い、仲間と一緒に食卓を囲む。

自分たちの信じる暮らしを、頭で考えるだけでなく、実践しているからこその説得力があるように感じました。だからお客さんも、この人たちに家づくりを頼みたいと思うのだろうし、自分でもなにか始めたくなる。

自然に触れながら暮らすように働くなかで、大切なことを見つける目も育っていくのかもしれません。

(2021/7/12 取材 鈴木花菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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