求人 NEW

白神山地の麓で
まいたけ産業を
未来につなぐ

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「一番好きな食べものは?」

なかなか迷う質問です。あれも好きだし、これも捨てがたい。

もしそこで「きのこ!とくに舞茸かなあ」なんて思い浮かぶ人がいたら、今回紹介する仕事はとてもおもしろいと思います。

秋田県藤里町。

このまちの特産品のひとつが、「白神まいたけ」です。

これまであまり情報発信をしてこなかったので、初めて知る方も多いかもしれません。世界自然遺産・白神山地で磨かれた水と、そこで育った広葉樹のチップを使ってつくられています。町内外にファンも多く、かつては大手メーカーも白神まいたけの視察に来たのだそう。

そんな白神まいたけを生産している「まいたけセンター」を拠点に、舞茸産業の活性化に取り組む地域おこし協力隊を募集します。

活動内容は、白神まいたけのPRや新たな加工品づくり、販売促進など。将来的には、舞茸に関わる事業経営を担っていけるような人に来てほしいとのこと。

きのこ、それも舞茸に特化したなかなかニッチな募集ではありますが、ここまでの裁量を持って地場産業に関われる機会は、なかなかないと思います。調理や産品のPRなどの経験を活かしたい人。何よりきのこが好きで、その魅力をもっと伝えたい、と思っている人にぜひ知ってほしい仕事です。

 

藤里町は、秋田県の最北端に位置するまち。青森県との県境には、世界自然遺産の白神山地がある。

藤里町には、鉄道も国道も通っていない。今回の取材には、自宅のある岩手から車で向かった。

高速道路を降りたら、「白神山地」を指す看板に沿って車を走らせる。待ち合わせ場所は、町の商店街の一角にある地域交流拠点施設「かもや堂」。

今回の地域おこし協力隊の担当課である商工観光課の成田さんが迎えてくれた。

「藤里町の人口は約2900人。町の9割が森林で、町民の約半数がこの周辺に密集しています。町内にはコンビニがなく、大きな商業施設もありません」

「それでも岳岱(だけだい)の森や小岳など、過度に観光地化されていない自然の魅力を感じられる場所がたくさんあります。住んでいると当たり前になってしまうんですが、この環境に惹かれてくる方はやっぱり多いですね」

岳岱の森は、「もののけ姫」の作画チームも参考にした土地なのだそう。

白神山地を中心に、人の手が入っていない原生的な自然が広がる藤里町。都市的な便利さはないぶん、住宅地から車で1時間かからない範囲で、豊かな自然にアクセスできるのがまちの特徴だ。

まいたけセンターがあるのは、ここから車で5分ほどのところ。成田さんと車に乗って向かう。

舞茸の栽培から出荷までの一連の作業が行われているまいたけセンター。施設内に入ると、ずらっと並ぶ丸太にまず目を奪われた。

「これらは全部、町産のナラの木です。舞茸を栽培する原木として使われています。天然の舞茸は、ミズナラの根元に生えるので、地元のナラを原木にすることで、天然に近い味や香りを持った舞茸ができるんです」

原木はチップにして、舞茸を育てる“菌床”と呼ばれる土台に。その後、殺菌消毒をし、舞茸の菌をつけて栽培が始まる。

「菌をつけてから収穫するまでには、60日〜75日程度かかります。その間、日々の状況に応じて湿気や空気量を調整しながら、徹底的な管理のもとで栽培を行っています」

白神まいたけは、町内外のスーパーや産直、都内の飲食店などに流通している。まいたけセンターで直接購入することもできるため、お話を聞いている最中、ダンボールで箱買いしていくお客さんもいた。

 

まいたけセンターの作業がひと段落したところを見計らって、スタッフの方々にもお話を聞く。

まずはこの道30年以上の大ベテラン、土佐さん。

「ここでは設立当初から働いています。もともと町の給食センターで働いていたんですが、町役場の職員から『新しくきのこをつくる事業を始めるから、そこで働かないか』と声をかけられて、この仕事に就きました」

藤里町で白神まいたけの栽培が始まったのは平成2年。土佐さんは群馬県桐生市で1年間舞茸づくりを学び、ひたすらその腕を磨き続けてきた。

「自分は最初から『いいきのこを一生懸命つくろう』ということしか頭にありませんでした」

「31年この仕事を続けていますが、毎朝必ずきのこの様子を見に行くんです。きのこに触って水分量を確かめて、培養室で深呼吸をして空気量を確認する。それをこれまで1日もかかさず続けてきました」

機械で測るのではなくて、自分で感じるんですね。

「そうですね。感覚で判断できるようにならないと、いい舞茸はつくれないと思います」

収穫時の舞茸は、両手で抱えても溢れるほどの大きさになる。身近なスーパーで見かけるものとはだいぶ違いますね。

味もやっぱり、違いますか?

「白神まいたけは一般的なまいたけに比べて、水分量が少なく、シコシコとした食感が特徴です。身がしまっていて、味も濃いと思います」

土佐さんのおすすめは、熱燗。ひれ酒のように炙った舞茸を入れると、香りがお酒に乗っておいしいのだとか。

ほかにも味噌汁の具にしたり、バター炒めにしたり、いろんな食べ方を教えてくれた。10年ほど前からは、藤里町の社会福祉協議会が中心となって、白神まいたけを使ったキッシュを販売し、好評だという。

今回募集する人は、舞茸づくりを学びながら、白神まいたけの新たな需要を生み出していくことが大きな役割になる。たとえば、ブランディングを意識したPRや営業、おすすめのレシピをSNSで紹介したり、新しい商品をつくったり。まいたけセンターの近くには加工所もあるので、まずは舞茸のいろんな調理法を試してみて、発信していくのがいいかもしれない。

 

続いて、土佐さんに教わりながら舞茸づくりに励むスタッフの石川さんにも話を聞いた。

今年の2月に東京から移住し、まいたけセンターに就職した石川さん。センターのなかでは一番の若手だ。

「もともと藤里町のことは知らなかったんですが、地方の住宅が載っている情報誌で見つけて。一度来てみて、まちの自然に触れるなかで、ここに住みたいと思うようになりました。仕事を考えるときも、せっかくなら地域に関われるものがいいと思って」

以前はトラックのドライバーをしていたそう。食べものの生産者になるのは、なかなか大きな方向転換だったと思うのですが、半年ほど働いてみてどうですか?

「自分で菌をつけたものが、舞茸になっていく姿を見るのがすごく楽しいです。同じ環境にいても一個ずつ育ち方が全然違う。その原因を考えて試行錯誤するのがおもしろいんです」

「今後は、まず一人でできる仕事を増やしていかないといけないなと思っています。今はわからないことがあったら土佐さんに聞いているんですが、そうするとすぐ解決するんですよね。もうすごい、神ですよ」

石川さんが「神」と語る、土佐さんの技術やノウハウ。ただ数値を測るだけでなく、五感を使って舞茸の成長を見極めていく育て方には、たしかにたくさんの経験が必要そうだ。

土佐さんも今後について「あとは引退までにスタッフを指導するだけ」と話す。

「舞茸は、もうこれでいいかなという形ができています。あとは、若いスタッフに技術や知識を伝えていけるといいですね」

30年以上の積み重ねと自然の恵みを活かして、高い品質を誇ってきた白神まいたけ。

一方で、藤里町の舞茸産業は今、ピンチを迎えているという。

 

そんな現状について教えてくれたのは、役場の商工観光課の佐々木さん。

「これまで土佐さんたちが一生懸命舞茸づくりを続けてきたことで、徐々に近隣地域での知名度は上がっています。一方で、営業的な活動が弱く、魅力を伝えきれずに新しい取引先の開拓はできていないのが現状です。これからどうやって市場と需要を広げていくか。何か、今までのやり方ではない新しい風を吹かせる必要があると思っています」

では、地域おこし協力隊になる人は、具体的にどんなことができるといいでしょうか?

「素材のよさを引き出しながら、要素を整理して、メッセージを発信できるといいなと思います。職人肌な人が現場でいい舞茸づくりをしてくれているので、それを対外的に広報していけるといいですね。そういう意味では、編集的な目線を持っている人が向いているのかもしれません」

佐々木さんはこれまで、「ふじさとReデザインプロジェクト」や藤里町移住応援サイト「ふじさとのいきかた」の設立など、地域活性化に向けた活動を積極的に行ってきた人。地域内外のデザイナーや作家との協業の経験も多い。

産地としての打ち出し方を考えていくにあたって、とても心強い存在だと思う。

ただ、すでにあるアイデアや業界の“当たり前”にとらわれず、柔軟に考えることも大切。

「今回の募集を地域おこし協力隊という形にしたのは、3年間ベーシックインカムを得ながら、自由な発想で活動に取り組んでほしいというねらいがあります。なので、これまでにお話しした方法以外でも、その人の経験やスキルを活かして、舞茸産業に貢献する形を一緒に見つけていけるといいですね」

舞茸は、山の中で見つけたら舞い上がるほど嬉しいことから、その名がついたと言われている。「食べ物」としてだけでなく、「自然資源」という側面からも光を当てて、たとえば山に分け入っていくアウトドアアクティビティと関連づけることもできるかもしれない。

藤里町ではちょうど、グリーン・エコツーリズムに携わる協力隊も募集中。連携して打ち出せる企画もあると思う。

取材の途中、休憩がてら佐々木さんと成田さんと一緒にランチへ出かける場面があった。

ふたりのおすすめは、ごはんの上に馬肉の煮付けと白神まいたけを乗せた「白神丼」。

初めて食べた白神まいたけは、たしかにほかの舞茸よりも歯ごたえのある食感が印象的。さっぱりとした味わいで、藤里町内では毎日食べる人がいるというのも納得できるおいしさだった。

土佐さんや石川さんに教えてもらったいろんなレシピも試してみたいし、自分でオリジナルの食べ方を考えるのも楽しそうだ。

「最近、地元の居酒屋さんに協力いただいて白神まいたけの食べ方を研究する会を開いているんです。この間は舞茸の唐揚げを試してみたんですが、すごくおいしかったですよ」と佐々木さん。

地域の人たちが、まちの特産品として愛着を持っている白神まいたけ。新しい楽しみ方やPR方法を考えることで、地域内でも舞茸についてコミュニケーションを取る機会が生まれてきているのだそう。

 

このまちには、いい舞茸と豊かな自然、そして想いを持って実践を続けてきたつくり手とそれを支える人々がいます。

その土地柄、近代的な発展から距離を置いてきたまちだからこそ、残っているものがある。舞茸産業もそのひとつとして、藤里町のみなさんと一緒に未来へ残していってください。

(2021/7/8 取材 宮本拓海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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