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人が咲き、輝くために
探究する高校を
そばで支える

四国の最西端に位置する、愛媛県・伊方町(いかたちょう)。

このまち唯一の高校、愛媛県立三崎高等学校は、生徒数の減少から数年前分校化の危機にありました。

三崎高校を地域の学び舎として残していきたい。

そんな想いのもと、2018年にまちと高校が共同で立ち上げたのが、公営塾「未咲輝(みさき)塾」。高校の先生たちと塾が連携し、学習サポートやキャリア教育を充実させることで、三崎の魅力が高まるような取り組みをしてきました。

その成果もあり、生徒数はここ数年で増加。三崎高校は存続の危機を脱し、新しい町営の寄宿舎もできました。未咲輝塾では引き続き、学習サポートという面で学校を支えています。

今回は地域おこし協力隊として、この未咲輝塾で講師をする人を募集します。

(取材はオンラインで行いました。写真は提供いただいたものを使用しています)


四国の最西端、佐田岬半島に位置する伊方町。

このまちにある三崎高校は、全校生徒131名の小さな学校。

まずは、三崎高校の高校魅力化プロジェクトを担当している河野(こうの)先生に話を聞く。

「赴任した3年前と比べて、最近は『こんな活動をしたい』という熱意のある生徒が増えましたね。わざわざ県外から三崎高校に来てくれる生徒もいて。いろんな活動が、少しずつ芽を出していると感じています」

高校魅力化プロジェクトとは、地域性を活かしたカリキュラムや、行政と高校が連携して運営する公設塾、遠方からの生徒を受け入れる寄宿舎などを設置して、中山間地域や離島の高校を存続させるための取り組み。

三崎高校では週に一度の「総合的な探究の時間」を使い、伊方町の地域活性化を目指す「地域探究』という活動をしている。商品開発や観光、防災など大きなテーマはあるけれど、具体的な活動内容は生徒のアイデア次第。

オリジナルの体操をつくって町民の健康増進をサポートするグループもあれば、手づくりの塩を使ったスイーツを提供するカフェを開くグループもある。

なかには県や全国の場で表彰された取り組みもあるそう。

「活躍する先輩の姿に憧れて入学する子たちもいて。授業の時間以外でも、独自にテーマをつくって自主的に活動している生徒もいます」

「ただ、自由度の高い取り組みをしているからって、普段の高校生活がおざなりになるのはよくない。宿題やテストはしっかり頑張るし、服装や礼儀がちゃんとできてこそ、探究活動がある。生徒たちには、そのメリハリをつけられるように指導しています」

探究学習が魅力の三崎高校だけど、普段の学習や部活動にも励んでもらいたい。いそがしい生徒たちの学習面をサポートしているのが、校内の空き教室で運営している未咲輝塾。

「うちは受験勉強と探究学習が同時に進行するので、生徒も教師もいそがしい。未咲輝塾は、同じ学校の中で状況をつぶさに共有しながら学習面をサポートしてくれる存在で、僕たち教師としてもすごく助かっています」

「塾講師の人たちは、年齢が近いこともあってプライベートで遊びに行くことも多いんですよ。学校の先生たちは頑張る人をほっとかない性格なので、塾だけじゃなく、僕たちとも一緒に協力していきたいって思ってくれる人だとうれしいですね」


生徒たちも、先生たちのことも支える未咲輝塾の講師たち。どんな人たちなんだろう。

話を聞くのは、神宮(じんぐう)さん。1年半ほど前、講師として伊方町へやってきた。

学生時代、イタリアへ留学していた神宮さん。現地の人との出会いをきっかけに、演劇の世界にのめり込んだ。

「演劇を学んでいない人と即興で劇をつくるプログラムに参加していて、それがおもしろくて。数年勉強をして日本へ戻ったとき、能登の公営塾で演劇のワークショップをする機会があったんです」

「演技するのって、最初は恥ずかしいじゃないですか。けれど、ワークショップをしているうちにだんだんと子どもたちの体や表情がほぐれていくのを見て、演劇を通じて悩みや問題を抱えた子たちの力になれるんじゃないかって思いはじめたんです」

そんなときにたまたま見つけたのが、日本仕事百貨の未咲輝塾の募集記事。

「勉強だけ教えるんじゃなくて、いろんなことを伝える余白がありそうだなと。勉強を教えた経験はなかったので、自分自身も成長できそうだと思ったんです。あと… 伊方の伊、ってイタリアの伊でしょ、運命感じちゃって(笑)。勢いのまま応募しました」

神宮さんの担当科目は英語。最近は、英検受験をする生徒の対策にかかりっきりだそう。

「学校の先生からも『あの子はリスニング苦手だから重点的に教えてあげて』とか、細やかなアドバイスをいただけるので、講師の経験がなくても何をすべきかわかりやすい環境だと思います」

未咲輝塾に通う生徒は、約100人。時期にもよるけれど、一日あたり20〜30人の生徒が教室を訪れる。

基本は自習形式で、わからないところがあれば講師に質問ができ、集中的に個別指導してもらうこともできる。

「なかには勉強がすごく苦手な子もいる。こう話したらわかりやすいかな、と思っても伝わらないこともあって。言葉を噛み砕くうちに、ポカンとした顔から『おもしろいね』という反応に変わっていく。伝わった、と感じる瞬間はやっぱりうれしいですね」

塾といえば、普通は学校での授業内容を追いかけるように指導することが多い。けれど未咲輝塾では、生徒の進路希望にあわせて、授業を提案することもあるのだとか。

たとえば、生物の授業。獣医を目指して本格的に生物を学びたい生徒がいたけれど、カリキュラムの関係で、生物が専門ではない先生のもとで授業を受けていた。そこで、生物が得意な未咲輝塾の講師が塾で講義をおこない、学校では復習をすることに。

生徒は万全の体制で生物を学べるし、学校の先生の負担も軽くなる。学校と塾が連携を取れる関係だから、進度に合わせてフォローできる。生徒のためになることなら、まずはやってみようと背中を押してもらえる環境なんだそう。

「ただ、ちょっと意外だったのは、教科指導以外のことにかけられる時間があまりないこと。塾の生徒数が増えるなかで、日々生徒の質問に答えていくだけで終わってしまうことが多くて。もともとやりたかった演劇のワークショップとかは、まだできていないんです」

部活動がない日には演劇についての講座や短編映画の鑑賞会を開くなど、小さな企画は試せているけれど、しっかりと時間をかけて実行できていないもどかしさもある。

はっとした出来事があるという。

「ある生徒が『やりたいことに挑戦できていない』と悩んでいたんです。共感して、『俺もそうなんだよ。学校で演劇したいけど、なかなかできていないんだよね』と言ったら、『先生それ、去年も同じこと言ってましたよね』と言われてしまって」

「受験や進路の話になるとつい偉そうにしてしまうけれど、生徒の言葉に気付かされることも多いんです。自分も人間として成長している姿を見せないと、説得力がないんだなって」

いろんなことにチャレンジできる環境だからこそ、講師自身も自分の足で踏み出さないと、なにも生み出せない。神宮さんも、芸術や音楽など、表現することに興味がありそうな生徒に声をかけて、卒業までに何か一緒にやろうと考えているところだ。

自分の知識や経験を伝えるのはもちろん、まだまだ学びたいという向上心を持っているかどうかが大切なのだろうな。

「時間があるときは、英語以外の教科を教えることもあるし、入試のあり方も年々変わっている。自分の経験がすべてではないという前提で、知ろう、学ぼうとする僕らの姿を、生徒はいちばん見ていると思うんです」

生徒にとって講師は、人生の先輩。それに甘んじることなく、前に進んでいくことができるかどうか。ここは、講師自身も育っていく場所なんだと思う。


実際に未咲輝塾に通う生徒にも話を聞かせてもらった。

話してくれたのは、三崎高校2年生の平野さん。都道府県の枠を超えて全国の学校に留学できる「地域みらい留学」を通して三崎高校を知り、東京からやってきた。

「説明会で三崎高校の先生たちと話をしていて、本当に学校のことが好きなんだと感じて、いいなと思ったんです。中学校のころ、あまり学校へ行けていなかったのもあって、知らない土地の学校に行くのは不安だったけど、勇気を出して進学を決めました」

そう話す平野さんの表情は、不安なんて感じさせないほど明るい。

「三崎高生は暇じゃないんですよ(笑)。学校では授業に試験、探究活動もあるし、行事も一生懸命やる。わたしは地域みらい留学のPRも担当しているので、放課後はとてもいそがしいんです。用事をすべて済ませてから塾へ行っています」

塾へは、部活の後に行く人もいれば、通学バスを待つ数十分だけ来る人もいる。毎日遅い時間まで残っている生徒もいて、人それぞれ自分の好きなように塾を活用している。

「疲れて、勉強だるいな〜って思うときもあるけれど、先生たちがおもしろいので、塾に行きたくなるんですよ。南極で研究していた先生とか、演劇をずっとやっていた先生、それぞれいろんな背景を持っていて」

「話を聞いていて飽きないし、一人ひとりの疑問とか悩みに合わせた教え方をしてくれるから、すごいと思って」

「わたしはあんな大人になりたいんです」と、はにかむ平野さん。目指したくなる、かっこいい大人が身近にいるって、いいなぁ。

新しく塾に来てくれる人は、どんな人がいいと思いますか?

「塾の生徒が増えて、質問する列が渋滞しているので、先生が増えたらそれだけでうれしいですね。あと、先生は理系の人が多いので、現代文、古文、漢文とか…文系科目を教えられる先生がいるとうれしいです」

「わたしのように県外から入学して地域での探究活動に励む人もいれば、生き物が好きすぎて学校でグッピーを飼っちゃう人もいる。生徒も個性的なんです。こんな環境を面白がってくれる先生と出会えたら、毎日がもっと楽しくなると思います」


最後に、三崎高校のOBでもある教育委員会の三好さんに話を聞いた。

「探究活動を通して、生徒とまちとの関わりが生まれて。生徒たちが果敢にチャレンジする姿を見て、わたしたちも勇気づけられています」

未咲輝塾ができて、探究にも、勉強にも打ち込める環境が整った。どんなことへも一生懸命に取り組む生徒の姿を見て、地域の人も「なにかできることはないか」と、三崎高校のことをより気にかけてくれるようになった。

「まちの外を見てきた塾講師の存在は、子どもたちにとっても、まちにとっても刺激になると思うんです。自由な発想で、みなさんの経験を子どもたちに伝えていってほしいです」


公営塾がスタートして、3年半。分校化という危機を脱して、三崎高校を中心に、まちの機運が高まっているように感じました。

そのなかで、未咲輝塾はどんな役割を果たすのか。学校を支える裏方の役目もありつつ、まだまだできることもありそうです。

伊方町のみなさんと、その先の景色をつくっていってください。

(2021/9/21 オンライン取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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