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たのしく、まじめに届けよう
北の大地の
春夏秋冬、人、暮らし

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

初めて訪れる土地で、ご当地のスーパーやコンビニに行くのが好きです。

九州の醤油って甘いんだ!とか、こんなお菓子があるんだ、とか。地元の人の日常に触れるような感覚が新鮮で、いつしか出張のルーティンのひとつになりました。

地域のあたりまえこそおもしろい。

北海道のまんなかに位置する東川町には、道北・道央の暮らしを発信するココ企画という会社があります。

地元民の生活を伝えることで、地域の豊かさを感じてほしい。そんな考えから、地域のお店や働く人を紹介するフリーペーパーの発行、地場産業に光を当てたツアーの企画など、さまざまな事業を展開しています。

今回は、この会社で働く人を募集します。地域おこし協力隊の制度を活用しますが、3年間の任期後も社員として働いてほしいそう。

たった3人の小さなチームです。一足先に、北海道まで会いに行きました。

 



旭川空港を出て、車で東川町へ。10分ほどで町に入ったことを知らせる看板が見えた。

9月末の東京は30℃を超える日もあるけれど、こちらはもうシャツ1枚では肌寒い。紅葉も始まっていて、すっかり秋の空だ。

待ち合わせ場所に向かうと、ココ企画の3人がそろって待ってくれていた。そして車はなぜかおむすび屋さんへ。

「ここのおむすび、すごくおいしいんですよ」と、車をとめて外に出る3人。

おむすびを選んだら、今度はマフィンのお店、その次は景色のきれいな高台…。

いろんなスポットを連れ回してもらって、取材というよりは旅行に来たみたい。

 



「今まわったお店は、僕らのフリーペーパーを長年置いてくれているんです。ちょうど最新号が出たばかりで、先週から過去の掲載店も含めて170か所くらいへ手渡しに行っていて。直接会って話すことをないがしろにしたらうちはおしまいだ、くらいに思っています」

高台を歩きながら、代表の林さんがそう教えてくれた。

ココ企画は、地元の運送会社の同僚だった3人が立ち上げた合同会社。

3人は地元の観光を盛り上げようと設立された観光企画課で働いていて、この春、もとの会社から事業譲渡をうけて独立した。

「やっていることはずっと変わりません。旭川の日帰り圏内半径100kmを活動範囲に、暮らしをテーマにした情報発信や、地場産業に密着したツーリズム事業をおこなっています」

たとえば、ココ企画の代名詞でもあるフリーペーパー『モトクラシー』。

年3回、「食」「体験」「買い物」という3つの切り口から地域のお店を紹介している。

飾らない文章と写真からは、そこで働く人の雰囲気が伝わってくる。Web版には取材のこぼれ話も載っていて、読みながらついふふっと笑ってしまう。

そして、ツアー企画。「旭川家具ができるまで」「りんごが果樹園からたどる道」など、特産品を食べたり、現場の人の話を聞いたりしながら、地場産業を深く知れるようなツアーをつくっている。

「お店の取材から冊子制作、アクティビティの企画、ツアーガイドまで全部自分たちでやるので、何業と表現すればいいのかわからないんです」

林さんたちが活動を始めた2015年は、インバウンド観光の盛り上がりと重なる。

富良野市や美瑛町など、人気の観光地が点在するこのエリアにも、観光客が次々とやってきた。

「当時の観光業界では、外国人には法被を着せて餅つきさせればいいとか、自分たちが普段していない体験を提供する企画もけっこうあって。それってお客さんを非常に馬鹿にしているし、誰にも刺さらないと思うんです」

「なにより、外から来た人ばかりを気にかけて、地元の人が蚊帳の外なのはおかしいんじゃない?と感じていました」

買い物をして、ご飯を食べて、景色を眺める。外から来た人にとっては、地元民の何気ない生活こそ新鮮でたのしい。

それに、大小含めて200社以上ある旭川家具ですら、地元の人にはあまり知られていない。地場産業を知るツアーがあったら、地元の人もたのしめるんじゃないか。

林さんの考えるツーリズムは、一日だけ地元民になろうという“Local for a day”の考え方ですべてつながっている。

現在は、自治体やDMOからツーリズムやまちづくり事業の受託もしているココ企画。地域の悩みに向き合い、さまざまな企画を立ち上げるうちに、できることも少しずつ増えてきた。

モトクラシーのバックナンバーがほしいとか、ファンですというふうに声をかけられることも、ここ数年で増えているそう。地元からツアーに参加する人も出てきていて、林さんの思いは着実に実り始めている。

「モトクラシーは去年フリーペーパーのコンテストで大賞をいただいたんですけど、そのときも僕らより周りの人のほうが喜んでくれたんです。さっきのおむすび屋さんなんて、新聞の切り抜きをラミネートしてお店に貼ってくれて。大賞以上にうれしかったです」

 



林さんの話を、表情をころころと変えながら聞いていたのが小川さん。

「私は独立前の会社に、一般事務で就職しました。気づけば添乗員の資格をとったり、サウナを始めるために公衆浴場法を勉強したり。デザインや編集も全然やったことがなかったけど、頑張って少しずつできるようになりました」

その言葉通り、小川さんの毎日は実に多彩。

たとえば今の季節は、地域のお店を取材してフリーペーパーの制作をすすめつつ、ツアー企画も検討。近隣の自治体の会議に出席し、ツアー当日には自らガイドする。

制作も、外注を一切しない地道な手作業。「PDCAどころか、DoDoDoDoです」と話すように、まずやってみよう精神で何事も乗り切ってきた。

「おいしいもの食べて、外で遊んで、いい仕事だねって言われるんですけど、当然それだけではなくて(笑)。地味な事務仕事のほうが多いです」

「あと、情報共有は徹底しています。『担当が不在なのでわかりません』はNGなので、会議は毎日しますし、パソコンに向かってそれぞれ作業しているときも、お昼を食べるときもよく3人で話していますね」

誰か一人でも受け身でいると仕事が止まってしまうため、あえて明確な役割分担はしていない。会社の売上も一円単位で共有しているそう。

これから入る人も、能動的に考えて行動していってほしい。

「いそがしさを言い訳にお客さんへの対応が雑になったときは、林に叱られました。最初は『なんでそんな厳しい言い方をするんだ』とムッとして、さらに注意されて(笑)」

「でもそれは、社外の人を尊重しなかったからなんですよね。社内のミスにはすごく寛容で、笑い飛ばすくらいです。逆にお仕事相手からの尊重の気持ちが感じられなかったときは、林は『このままではご一緒できないです』ときっぱり言ってくれて。全員根がすごくまじめで、誠実です」

今は自治体を中心に安定して仕事の依頼がある。今後は自主事業の割合も増やしていきたい。

今年始めた電動スクーターのレンタル事業は、その第一弾。発案者は小川さんだったそう。

「私が何気なく、スクーター乗りたいんですよねって言ったら、突然林が『それだー!』って叫んだんですよ。ええっ、何!?って(笑)」

というのも、北海道はレンタカーでの観光が主流。ひとつの地域を深堀りしないまま、次の目的地へ移動してしまう人も多い。

電動スクーターなら、移動範囲は限られるのでじっくり滞在することになるし、バッテリーの充電スポットとしてお店を案内すれば、自然と店員さんとの会話や買い物の機会も生まれる。

何より、風を浴びながら広い道路をのんびり走ると最高に気持ちがいい。

「ただ貸すだけじゃ味気ないので、『ポケットモトクラシー』もつくりました。充電させてもらえるお店をコンパクトにまとめたんです」

スクーターの選定も、お店との交渉も、予約管理や当日の貸し出しも、全部自分たちでやる。

泥臭いけれど、分業しないからこそ全部見える面白さがここにはある。

「スクーターに乗って帰ってくる人が、みんなとにかく笑顔なんですよ。地元の人もまた乗りたいって言ってくれて。事業単体で見ればまだ赤字ですけど、新しい移動手段を提案する意味はすごくあると思っています」

「私、この地域にはイオンしかないと思っていたんです。でもそんなこと全然なかった。人もモノも、いいものがこんなにあるんだよって、今は心から言えます」

 



最初の4年間は、林さん、小川さんの二人きりだったチーム。そこへ2年半前に仲間入りしたのが河野さん。

大学まで札幌で過ごし、卒業後は国家公務員に。4年ほど勤めたのち、ココ企画に転職した。

「仕事はやりがいがあったんですけど、だんだん誰のために働いているのか見えなくなってしまって。地元の北海道で、顔が見えるような仕事がしたいと思っていたときに募集を知りました。おもしろそうだなって、帰省をかねて会いにきてみたんです」

「朝空港まで迎えにきてもらって、今日みたいにドライブして、解散したのが13時間後(笑)。仕事内容というより、このふたりと働いてみたいなと思いました」

林さんいわく、河野さんの「地方活性!と肩肘張らない、適当な温度感」が合っていたそう。

「ただ、地元といっても北海道は広いので、一年目は知らない土地での暮らしに慣れるので精いっぱいでした。関係者さんへのご挨拶と仕事の流れを覚えることに必死で。このままやっていけるのかなと不安に思ったこともあります」

新しい土地で暮らし働くことは、一筋縄ではいかない。北海道内で人気の移住先である東川町でも、理想と現実のギャップに土地を離れる人もいるという。

仕事も暮らしも、一歩ずつ新しい環境を歩んでいくなかで、自分なりの居場所をつくっていけるといい。

河野さんは今、どうですか?

「自分の仕事が形に残るのがうれしいです。たぶん出版や観光業界で働いてきた人が見たらびっくりしちゃうくらい、紙面も企画も全部自分たちでつくるので」

河野さんが中心となって手がけた大仕事の一つが、体験型カタログギフト『ここのこと。ひがしかわ』。

東川町役場からの依頼で発行したこの冊子では、酒蔵見学とお土産セット、雪と戯れる特別なガイドツアーなど、全部で34個ものプランが紹介されている。

「この冊子を通じて動くお金は、一円も町の外に出ません。使い終わってもそのまま読み物になるし、2021年の東川町にはこんな暮らしがあったんだよと伝える目的もあって」

こうした冊子ができると、毎回いちばん喜んでいるのは河野さんだそう。

一方で、自分たちが心からいいと思うものをしがらみなく紹介するために、地域の人とは意識して一線を引いている。意外にも、地域の飲み会も極力参加せず、SNSでのつながりもほぼないのだとか。

「プライベートで雑貨を買ったりごはんを食べに行ったりはしますけど、本当にそれくらいで。社内でも休日何をしたかは話すけど、結局『あのお店がおいしかったから取材しよう』とか、仕事の話になっちゃうんです」

話が一段落したところで、「よし、スクーターに乗りに行きますか」と林さん。また車に戻ってドライブが始まる。

ここに加わる4人目はどんな人がいいだろう。よく笑って、食べものや雑貨が好きで、几帳面で… 素直さがいちばん大事かもしれない。

北の大地の暮らしを楽しくまじめに届ける仲間を、楽しみに待っています。

(2021/09/26 取材 遠藤真利奈)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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