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たとえば、地方への移住を考えたとき。仕事を探さないといけないし、きっと車も必要。人づきあいには気合いもいる。もし子どもがいたら、学校のことも調べないといけない。
考えることや準備することがたくさんあって、なかなか一歩を踏み出せない人は少なくないと思います。
今回紹介する滋賀県・愛荘町(あいしょうちょう)は、地方への移住を考える人がはじめの一歩を踏み出すには、ちょうどいい田舎かもしれません。

今回は、愛荘町のみなさんと関わりながら、地域の魅力や課題を掘り起こし、地域内外の人とつながりながら発信・解決していくコーディネーターを募集します。
伴走してくれるのは、Next Commons Lab。全国でまちづくりに関わってきた知見をもとに、まちの拠点づくりや事業構築など、コーディネーターの仕事をサポートしてくれます。
最初の3年間は地域おこし協力隊として活動し、任期後は自分で新しい事業を立ち上げて活動することが求められる環境。
まずは3年間、地域にどっぷり浸かりながら、自分ごととしてまちに興味を持つこと。そうすれば、おのずと道をつくっていけると思います。
経験はなくても大丈夫。地方での暮らしや、人をつなげることに興味のある人は読んでみてください。
米原駅から新快速で約20分。となり町にある能登川駅で降りて、タクシーで交流施設「ゆめまちテラスえち」へ向かう。
滋賀といえば新幹線から見える田んぼのイメージがあったけれど、このあたりは住宅街という感じ。戸建ての家がいくつも並び、下校途中の中高生が道を歩いている。
10分ほどで、ゆめまちテラスえちへ到着。レトロで雰囲気のある建物だなぁ。

「愛荘町の人口ってずっと増加していて。戦後すぐと比べると、4〜5千人は増えているんじゃないですかね」

町として移住政策に力を入れてきたわけではないものの、暮らしやすさもあり、自然と移住者が集まる地域になっていたという。
「町のなかに幼稚園から高校まであるので、子育て世帯が移住されることも多いんです。一方で、積極的に地域を盛り上げる取り組みをしなくていいのか、という思いもあって。コロナ禍をきっかけに地方での暮らしを考える人も増えつつあるので、町としても何か動いていこうという話になりました」
「僕らが見落としているような魅力が、愛荘町にはまだまだあると思うんです。まちの人だけではなくて、外から来られた方の目線が組み合わさることで、新しい価値を引き出せるんじゃないかと考えています」

NCLは地域おこし協力隊の制度を利用して、地域課題と起業家人材をマッチングする仕組みをつくってきた一般社団法人。全国にある拠点のひとつ、滋賀県湖南市では市民食堂や地域に根ざしたブックカフェなど、9つのプロジェクトが立ちあがっている。
「NCL湖南のみなさんにいろいろお話を聞かせていただいて。愛荘町でもこんなふうに魅力発見と事業づくりができたらと思って、まずはコーディネーターを募集することにしました」
今回募集するコーディネーターの仕事は、地域にどんな課題があるのか、地域の人と話しながら探っていくところから始まる。
そして見つけた課題をもとに、東京にいるNCLのスタッフと壁打ちしながら、どんな方法で解決できるか具体的な事業を考えていく。そうして考えた事業は、自分がそのまま手がけることもできるし、興味を持ってくれた起業家とマッチングして実現していくこともできる。
たとえば愛荘町には子育て世代が多いので、子連れも楽しめるような居場所づくりや、子ども向けのソーシャルビジネスができれば、よりまちが活性化するかもしれない。
「コーディネーターの仕事を通して、いま住んでいる人も新しくまちに来る人も、暮らしていて楽しいと思えるようなまちをつくっていってほしいです。どんなことも面白がることができる人だといいですね」
「まちのことなら何でも教えてくれますよ」と森さんに紹介してもらったのは、愛荘町役場に勤める青木さん。

さっそく話を伺おうとしたら、鞄の中をごそごそ探し始めた。どうしたんですか?
「愛荘町のガイドブック出さな。常に持ち歩いとるんですわ。営業せんといかんでしょ」

「愛荘町はね、2006年に愛知川(えちがわ)町と秦荘(はたしょう)町が合併してできた町で。いまおるのは愛知川。この辺は中山道の宿場町として栄えた地域でね、商売やっている人が多かった。秦荘は田んぼと山の地域やから、農業がさかんやね」
旧愛知川町出身の青木さん。愛荘町に暮らし続けるのは、友人の存在が大きいという。
「同級生は高校まで町で育った人が多くて、いまも住んでる人が多いんよね。会いたいときにすぐ会える距離感なのがいい」
町内で一緒にイベントをすることもあるのだとか。
「材木屋をやっている友人がマルシェをやろうと言い出して、地域の人たちがブースを出展したんですよ。コーヒー淹れたり、クラフトレザーを販売したり。私はピザを焼いてね。コロナで中断してしまったけど、またやりたいよなぁ」

愛知川地域は商人気質の人が多く、横のつながりも強かった。明治時代から130年以上にわたって続けられてきた花火大会や、商工会の青年部が主催し、30年続いている物産展など、地域が主体となってすすめてきたイベントも多い。
地域には、活発に活動される方が多いんですね。
「だけど、だんだん元気がなくなっている感じはあるね。自治会活動も昔はもっとやっていたけれど、もう疲れてしまったからいいやって、行事の数も減ってきた。逆に移住者の人は、地域に昔から住んでる人と出会える機会を求めているかもしれない」
「マルシェとか地域の運動会とか、なにかやるとなれば、人を連れて遊びに来たり、ものを買ったりしてくれる人は多い。『この指とまれ!』と言える人がいるといいかもしれないね」
「愛荘町は水がおいしいから、それを活かせるといいかもしれませんね」
と、話してくれたのは愛荘町役場で広報を担当している北岸さん。まちのことをよく知っているから、コーディネーターにとっていい相談相手になると思う。

「山からの伏流水がこんこんと湧く地域だから、お米がおいしいですよ。あの水でコーヒーを淹れるような店があれば、飲みたい人もいるんじゃないかな。夏には川沿いでキャンプする人も多いし、キャンプを楽しめる施設があってもいいかもしれないですね」
山には遊歩道も整備されていて、琵琶湖を望む展望台もある。ハイキングも楽しめそうだ。

「子どものころはにぎやかな愛知川に憧れていましたね(笑)。愛知川は都会というわけではないけど、スーパーもあるし田舎ではない。農業のさかんな秦荘町と合併したことで、愛荘町は『ほどよい田舎』になったように感じます。わるく言えば、中途半端でもあるかな(笑)」
都会には近いけれど、進学や就職を機により便利な地域へ出て行ってしまう若者も多い。一方で、自然にどっぷり浸れるような地方暮らしを求めている人には、思っているより都会に見えてしまうかもしれない。
「田舎か都会か、両極端を求めている人には合わないかもしれないけれど、田舎暮らしをはじめたい初級者には適した地域かもしれないですね」
そう話すのは、移住コンシェルジュとして働く寺田さん。旦那さんが愛荘町の地域おこし協力隊となったことをきっかけに、3年前に移住してきた。

選択肢がある。
「子育てをしている方や高齢の方は、もしかすると買い物が唯一、人と交流できる時間かもしれない。商店街だとちょっとした会話もできるからうれしいですよね。逆にスーパーで気楽に済ませたいときもあるだろうし」
「状況に応じて選択できる心地よさが、結果的にこの地域で暮らし続けていけるかどうかにつながっていくと思うんです」

「地域の方とコミュニケーションをとるのが楽しい、と思える人がいいですね。まだまだ移住者と地元の方がつながる余白があると思うので、垣根なく関われる場ができるとうれしいです」
移住者のなかには、家族の転勤についてきた人もいる。まちの中心部、愛知川には新興住宅エリアもあるけれど、地域行事がだんだん減ってきているので、横のつながりを持ちづらいと感じている人もいるみたい。
「青木さんが参加していたマルシェとか『楽しそうだけど、ハードルが高い…』と敬遠される方も一定数いて。コミュニケーション能力の高い人だけ参加すればいい、という考え方もあるけれど、せっかくならいろんな人が気軽に参加できる、開かれた場にしたいですよね」
これから、愛知川駅近くにある地域交流施設付近に新しくコーディネーターの拠点をつくるそう。まずは若い移住者が多いこの地域で人をつなげる機会をつくって、段々とエリアを広げていったらいいかもしれない。

まずは自分が愛荘町での暮らしを楽しむこと。そこから応援してくれるまちだと思いました。
(2021/10/1取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。