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未完成なまちを
面白くする伴走者

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「真岡市って、まちのカルチャーみたいなものがまだ出来あがっていなくて。そこが、ポテンシャルがあって面白いって感じるんですよね」

そう話すのは、栃木県真岡(もおか)市でお店を営む井上さん。

真岡市は栃木県の南東に位置し、いちごの生産量日本一を誇るまちです。

とはいえ、真岡という地名を初めて聞いた人も、きっと多いのではないでしょうか。

まだまだ全国的には知られていないからこそ、どんなふうにまちをつくっていくか、考える余白があると思います。

今回は、ここでまちづくりに取り組む地域おこし協力隊を募集します。



東京駅から在来線で3時間、新幹線だとその半分の時間で到着する、真岡駅。

まずは駅から車ですぐの場所にある、真岡市役所へ向かう。

担当者の林さんをたずねると「せっかくなんで、景色のいい場所で話しませんか?」と、挨拶も早々、市役所の目の前にある河川緑地へ移動することに。

広々としていて気持ちがいい場所。川沿いを散歩している人や、ドッグランコーナーで犬と遊んでいる人もいる。

芝生に腰掛け、まずは林さんに、これまでの真岡市でのまちづくりの取り組みを教えてもらう。

「新卒から25年くらい働いていきて、実はずっともやもやしていたんですよ。ほかの地域を見ていると、真岡でももっとまちを盛り上げるためにできることがあるんじゃないのかなって。最近ようやく、やりたいと思っていたことができるようになってきて、すごくやる気満々なんですよ」

4年前、まちに複合施設をつくる計画がスタートしたのをきっかけに、「プロジェクト推進室」という課が立ち上がった。今回募集する協力隊も、ここに所属することになる。

「行政ってハコモノをつくって終わってしまうことが多いけど、できた場所をどう使ってもらうかが大切じゃないですか。それで、令和6年度の新施設開館に向けて、ソフト面でのまちづくりも進めていこうという話になって」

新施設は、図書館や子育て支援センターなどの機能を持った、まちの人たちが日常的に集まれるコミュニティ施設となる予定。

今回募集する協力隊は、この施設の活用方法をともに考えていくことになる。

さらに、一緒に取り組んでほしいのが、「まちをつくろう」プロジェクト。

市民が“場を使う”イメージがしやすくなるよう、林さんと若手職員の2名で今年度から企画・運営している。

「真岡には、使われていない公共空間がたくさんあって。まずは、それらの活用方法を考えて形にしていくことで、新しい施設でも『この場所をこんな風に使いたい』って自主的に行動してもらえるようになるんじゃないかなと思ったんです」

大人10人・学生10人の参加者が県内から集まり、まちにある文化財や無人駅の待合室、旧町役場といった公共施設をどう利活用するのか。講義や視察を経たのち、チームごとにアイデアを練ってきた。

「今いる場所も、“まちつく”プロジェクトの舞台なんですよ。ここは、年に一度の花火大会のときしか使われていない芝生広場だったんですが、メンバーからは『広くて綺麗』『ピクニックやドッグランをしたい』って声があがって」

そこで、芝生広場のシンボルとなるような看板と、ドッグランができるコーナーを自分たちで製作。

まちの人にこの場所を知ってもらうためピクニックマルシェも企画し、出店の依頼から告知、運営まですべてメンバーで担当した。

当日はなんと、2000を超える人が集まったんだとか。

レジャーシートの上でお昼寝したり、親子でシャンボン玉で遊んだり。思い思いに芝生広場での時間を楽しんでいたそう。

「来てくれた人は、そもそもこんな芝生広場があるなんて知らなかったっていう声がほとんどで。この場所はこんなふうに使えるんだよって、まちの人に知ってもらえるイベントになったなと感じています」

実際に「あの場所でラジオ体操を開きたい」「太極拳の大会の開催場所として使用したい」というような声も出てきているそう。

「イベント当日には、学生メンバーの友達がボランティアできてくれたり、ドローン操作できる人が写真撮影してくれたりして。プロジェクトをきっかけに、輪が少しずつ広がってきている気がしますね」

こんな場所があるなら、こういうことができるかも。

そんなきっかけから、このまちで自分のやりたいことに挑戦していく人が増えていくかもしれない。

「自分で何かやるのは難しくても、まちで何かやっている人を見て『面白そう』『手伝いたい』って思う人もたくさんいると思っていて。さまざまなレイヤーの人たちがつながることで、想いのある人の動きも加速していくんじゃないかな」

「これから真岡をどんどん面白いまちにしていきたいですね。そのために、今回募集する人には、まちで活動する人を増やしたり、つないだりする役割を担ってほしいんです」

具体的な活動として、まずは林さんたちとともに、例にあげてくれたまちづくりプロジェクトに取り組んでいく。

「運営側、事務的なところはまずは私たち役所のメンバーがやれたらと思っていて。新しく来てくる人には、プレイヤーの1人として参加するくらいの気持ちで、どんどん参加者さんたちと関わってもらいたいですね」

「あとは、まちつくを通じて出会った人や、すでに真岡で活動している人たちが、今後まちでやってみたいことを一緒に形にしていってほしい。その過程で、人のつながりがどんどんできていくと思います」

はじめは林さんたちがまちの人を紹介してくれるとのこと。そのつながりをきっかけに、自分自身もまちで暮らししながら、たくさんの人と出会っていってほしい。

関係性が深まるにつれて、同じ想いを持っている人同士を紹介したり、「この人とこの人は気が合いそう」みたいなつなげ方もできたりするようになっていくと思う。



「真岡には、まちで活躍する先駆者のような人たちがたくさんいるんですよ」と林さん。

その人たちは、今後まちでどんなことしたいと思っているんだろう。芝生広場から移動して、まず紹介してもらったのは「そらまめ食堂」の代表、成田さん。

2011年のオープン以来、まちの小さな食堂としてランチやカフェを提供しているお店で、歩いてすぐの場所に女子高校があるため、学校帰りの学生が訪れることも多いんだとか。

「テストで100点とったらクレープ無料、みたいなサービスもしててね。よく来てくれるんです。放送部の子たちが、そらまめ食堂のことをドキュメンタリーにしてくれたこともあったんですよ」

「うちでは障がい者さんがスタッフとして働いているから、8年前からはボランティア部の子たちと一緒に、障がい者に関わる活動もやるようになって」

年に2回、地域の子どもと障がい者の交流ワークショップを開催しているほか、昨年はバリアフリーマップも学生と一緒につくったんだとか。

食堂の枠を超えて、いろいろな活動をしているんですね。

「もともと食堂を始めたときは、ここで障がい者と向き合って支援をしていくことしか考えてなかったんですよ」

「だけど、いいお客さんに恵まれて、いろんなつながりもできて。今では、このまちのことが本当に大好きなんです。だから、地域に根ざしたお店として、この地域の人を幸せにすることができたらなって」

そんな想いから、最近は子ども食堂も始めたんだとか。

「真岡でも、お母さんと一緒にご飯を食べれない子や、給食費が払えない子がいる。それをどうにかサポートできたらなって。7月に試験的に子ども食堂をやってみたら、協力したい人って言ってくれる人たちがたくさんいたんです」

「これからは、そういう人たちを集めて実行委員会をつくろうと思っていて。どうしたら持続的に、本当に困っている子どもにたちに届けていけるのか、いろんな人とアイデアを出し合いながら行動できたらなと思っています」

子ども食堂の日は、高校生がここで勉強も教えてくれる、なんてことができたら、塾に通えない家庭の勉強サポートもできそう。

新しく協力隊として赴任する人も、そらまめ食堂さんのつながりを活かして、やれることはいろいろありそうですね。

「実は昨日も、林さんと23時ぐらいまでメッセージのやりとりをしてたんです。そうやって話を聞いてくれる人が増えるだけで、とってもありがたいですね。そのなかで、面白そうって思ってくれたことは、一緒に楽しく取り組んでもらえたらうれしいな」



まちづくりとは、地域の人はもちろん、外から訪れる人がまちと楽しく関わっていくきっかけをつくることでもあると思う。

3年前に真岡でお店をオープンし、アウトドアブランド「Nruc(ヌルク)」を手がけている井上さんも、「お客さんにこのまちを楽しんでもらいたい気持ちが、自然とまちづくりにつながっていた」と話してくれた。

「商品は、僕が一つひとつ手作業でつくっています。今は1年待ちの注文が200件くらいあって。お客さんと直接会話をしていろんな要望を聞いた上で商品をつくりたいので、うちのリュックは、このお店でしか注文をとっていないんですよ。だから、大阪とか九州から来てくれる方も結構多いんです」

それはすごいですね…!

「オープン当初から、9割ぐらいが県外のお客さんだったんですよ。途中から、何時間もかけて来てくれた人を10分くらいで帰らせちゃうのが申し訳なくなってきて」

「それで店内でカフェを始めて、近くの飲食店とかの情報もInstagramで発信するようになったんです。お客さんに、真岡だけで1日楽しめるような提案ができたらいいなって。それが、いつの間にかまちづくりみたいな活動にもつながっていったんですかね」

ここ数年は、仲の良い同業者たちと、自分たちでマルシェを企画して開催することも多いんだとか。

「真岡でお店をやらせてもらっている以上、まちが盛り上げるきっかけになればいいなっていう気持ちはやっぱりありますね。行政じゃなくて民間の僕たちが動かないと、まちは面白くならないと思うんですよ」

一方で、これまではお店が忙しくて手が回りきらず、実現できなかったアイデアもたくさんあったという。

今回募集する人が、積極的にアイデアを拾い形にしていく役割を担うことで、井上さんのように「想いはあるけど忙しい」という人が、よりまちづくりに参加しやすくなるかもしれない。

「真岡に来ていろんな人と出会ったことで、お店や自分の考えもどんどん変わったんです。だから、これから来てくれる人を通じて新しいつながりができたら、もっと面白い動きが生まれていく気がして楽しみですね」



まちで活動する人たちの話を聞いて、必要な役割を補ったり、困りごとを一緒に解決したり、もっと活動の幅が広がるよう自分から働きかけたり。

今回募集する協力隊は、そんなふうに寄り添って、まちで暮らす人たちがより輝けるように、伴走するような役割だと感じました。

誰かとともに、ときには縁の下の力持ちとして、まちづくりに関わりたい人にぴったりだと思います。

(2021/10/28 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。
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