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人と関わることの
喜びと学びを、このまちで
体いっぱいに吸い込んで

「地元ってどんなところ?」

そんなふうに聞かれたら、なんと答えますか?

自然が豊かで、食べ物がおいしくて、景色がきれいで…。私は北海道出身なのですが、どれもありきたりに感じてしまって、以前だったら「何もないよ」と答えてしまうことが多かったように思います。

けれど大人になって地元に帰るたびに、地元素材のクラフトビールや、地域の面白い人を巡るガイドブックなど、いろんな取り組みをしている人たちのことが見えてきました。

もしかしたら「まち」は主語として大きすぎたのかもしれない。学生時代に「人」と出会う機会がもっとあったら、地元について話せることもいろいろあったような気がします。

石川県輪島市で、今年度から始まった高校魅力化プロジェクト。

その柱は、輪島塗の職人や漁師さん、起業家など地域の大人と連携した探究型学習 と、生徒の学力向上を支援する学習センターの2つです。学校のなかにとどまることなく、地域全体をフィールドと捉えることで、ここにしかない学びの場をつくっていきます。

今回は、地域おこし協力隊としてプロジェクトの立ち上げと運営を担うスタッフを募集します。

 

のと里山空港を出ると、蒸し暑い空気に包まれる。北陸はちょうど数日前に梅雨明けしたそうで、日差しもとても強い。

ここからバスで30分ほどかけて、輪島市へと向かう。

瓦屋根の家がずらりと並ぶ輪島市の中心部。輪島塗のお店や、「日本三大朝市」として有名な朝市の看板もある。

風情あるまちなみを歩いて市役所に向かう。お会いしたのは、輪島市役所の卯木(うのき)さん。

「昨日、炎天下で子どもたちにソフトテニスの指導をしていて。肌が真っ赤に焼けてしまいました」

輪島出身という卯木さん。まずは車で市内を案内してもらうことに。

「最初は海に行ってみましょうか。輪島の中心部からすぐ行けるんです」

「輪島といえば、まず海の幸ですね。今だとアワビ、サザエ、モズクあたりがおいしいです。ちょうど7月から海女漁が解禁になって、18歳から90歳まで、約200人の海女さんが海に潜っています」

日本海側の港のなかで、漁船数が最も多い輪島市。毎年8月の「輪島大祭」では、たくさんの漁船が大漁旗を掲げ、圧巻の光景が広がるそう。

海岸線を車で走っていくと、たくさんの子どもたちが泳いでいる姿が見えた。次々と海に飛び込んでいく。

「地元の高校生ですね。僕が学生のころも、ああやって勇気試しをしていました。僕は飛び込んだことはないですけど(笑)。泳いだり釣りをしたり、輪島の子にとって海は身近な遊び場です」

車は海を離れ、田んぼが広がる道を進んでいく。これから向かう門前(もんぜん)地域は、輪島のもう一つの市街地。

「總持寺祖院(そうじじそいん)というお寺を中心にした地域です。總持寺祖院は、明治時代までの数百年間、曹洞宗の大本山でした。日本中からお坊さんが入れ代わり立ち代わりやってきたそうです」

門前は北前船の寄港地で、船主や船乗りも多く暮らしていた。輪島塗の行商人も全国に足を運んで文化を持ち帰るなど、とても活気があったそう。

お寺の前で車をとめる。商店やお土産屋さんが並び、遠くに山々が見える、のんびりとした時間が流れる場所。

「奥能登では、あらゆるものに神様が宿っていると考えます。田んぼの神様をおもてなしする神事は今でも毎年行われていて。漆や漁業、農業、その恵みに対する信仰。地域ならではの文化が根付いている、素朴でいいところです」

そんな輪島市でも、少子高齢化が大きな課題になっている。産業の存続にかかわる後継者不足も深刻。

とくに近年は、高校進学のタイミングでまちを離れる子どもたちが増えているという。

「輪島市には2つの県立高校があります。ここ門前にある門前高校と、中心部の輪島高校です。2校とも10年以上定員割れが続いています」

卯木さん自身も輪島高校のOB。高校から活気がなくなっていく様子をもどかしく感じているという。

「私の学生時代は、輪島高校は進学校、門前高校は全国屈指のソフトボール強豪校として人気がありました。でも今は、新たに特長をつくらなければ人が集まらないのが現状です。そう考えたときに、輪島だから学べることを提供したらどうだろうと思いました」

「輪島にはこれだけ豊かな自然と文化があります。それにひとりの父親としても、息子たちには『地元は何もない』と思ってほしくない。輪島ってこんな場所なんだ!って学べる機会を1回でも2回でも増やしてあげたいと思っています」

今年度から始まった2校の高校魅力化プロジェクト。

具体的にはどんなことに取り組むのでしょう?

「まず一つの柱として、高校の総合的な探究の時間などを使った探究型学習をおこないたいと思っています」

たとえば、と卯木さんが話してくれたのは、特産品であり、主要産業でもある輪島塗のこと。

「私の父親は現役の輪島塗の職人でして。輪島塗って、一つの漆器が完成するまで120以上の工程があるんですよ」

原木から器の形を掘り出す木地づくりに始まり、漆塗り、蒔絵や沈金での加飾など。各工程に専門の職人がいる「分業制」が、輪島塗の特長なのだとか。

「輪島塗は、丈夫で美しいという意味で“堅牢優美”といわれます。品質が高いのは、その道一筋で技術を極めてきた職人技が詰まっているからなんですね」

バブル期は飛ぶように売れた輪島塗。しかしその後は、長期化した景気低迷やライフスタイルの変化、多種多様な生活用品の普及により、売り上げも落ちていった。

「高校を卒業するとき、父からは『辛くて危険で割も合わんことやし、継がんでいい』と言われて。輪島といえば輪島塗というくらいの産業ですが、課題はたくさんあります」

探究型学習では、生徒と職人が対話するゼミのような場をひらき、輪島塗のすばらしさとともにリアルな課題も伝えたい。

そもそも輪島塗はどうやって生まれたんだろう。後継者不足にある背景は?

教科書だけではわからない実態を学んで、自分たちなりの答えを出していく。

すでに輪島高校では、輪島塗体験や朝市への出店をはじめとする地域活動をおこなっている。門前高校も、地域の商店街とともに「總持寺祖院700周年」を祝う商品開発などに取り組んでいるという。

プロジェクトでは、こうした高校の活動と連携しながら、生徒が出会う大人のすそ野をさらに広げていきたい。

「職人や漁師はもちろん、僕の友人で高校OBの医師や、IT企業の方、飲食店経営者など輪島に戻って頑張っている人も紹介したくて。幅広い大人に出会うことで、将来の夢を見つける子も出てくるかもしれないですよね」

「うちの子もそうなんですけど、子どもって県大会優勝とか、全国大会出場とか、自分でつくった目標があるとすごく頑張るんです。高校生にもプロジェクトを通して将来の目標を定め、その実現に向けて日々の勉強を頑張るきっかけを提供できたらと思っていて」

今回のプロジェクトでは、教科学習のフォローや進路実現をサポートするための学習センターも立ち上げる。

センターは一斉授業ではなく、各自が分からないことをスタッフに質問する自学自習スタイル。

一年生も三年生も、就職希望の子も、進学を目指す子も。誰でも気軽に勉強できる場を用意して、学習面からも夢の実現を応援したい。

「高校生には、知識を取り込むだけじゃなくて、課題を見つけて自分なりに深く考える勉強をしてほしい。就職先や進学先でも役立つだろうし、輪島を知るなかで『いつかここに帰ってくるのもありかも』と思ってもらえたらすごくいいなと思っています」

卯木さんたち市役所チームと、2校の県立高校、そして各地の高校魅力化プロジェクトをサポートしている民間コンサルタントが共同で進めているプロジェクト。

今年度は、2022年1月に学習センターをオープンすることと、探究型学習の授業アイデアを練っていくことを目標にしている。

今回募集したいのは、学習センターの運営、もしくは探究型学習のコーディネートを担当するスタッフ。最初は役割を固定せずどちらの仕事も経験してもらって、適性を見ながら徐々に配置を固めたいと考えているそう。

学習センターは、輪島高校の空き教室に開設する。オープン時間は放課後で、門前地区とはオンラインでつなぐほか、スタッフが定期的に巡回する予定だそう。

もう一つの柱である探究型学習のコーディネートは、地域と高校をつなげる仕事。いろいろな場に顔を出して、地域の人と関係性をつくっていく。営業マンのようなイメージかもしれない。

任期の3年間は、きっと打ち合わせを重ねては現場に飛び込む、まさに「やりながら考える」毎日になると思う。

「目に見える成果が出るまでには、長い時間が必要だと思います。それでも、自分たちのアイデアや行動が子どもたちの将来をちょっとでもいい方向に変えるきっかけになるのなら、すごく意味があることだと思うんです」

 

高校の先生は、このプロジェクトをどう思っているんだろう。お会いしたのは、輪島高校の上野校長先生。

輪島高校は、以前は一学年160人だった定員が昨年度から120人になった。毎年、定員の8~9割の生徒が入学しているという。

「輪島高校は、市外に行く子をのぞいて地域の子どもがほぼそのまま進学します。難関大学を目指す子もいれば、テストは苦手でもリーダーシップがあって慕われている子もいるし、生きづらさを抱えている子もいます」

「偏差値というものさしだけで生徒を評価する教育は、この学校には合いません。今回募集するスタッフさんも、勉強はもちろん、部活、友人関係で困った生徒がふらっと相談できるような人だといいですね」

スタッフは、学校の先生とはまた違う立場で生徒にかかわることになる。過去取材した各地の魅力化プロジェクトのスタッフも、生徒と近い距離感で接して成長を見守れるのがやりがいだと話していた。

一方で、型のないところから関係性を築いていく難しさもあると思う。

「魅力化プロジェクトは、この高校にとってはじめての取り組みです。最初は先生方も戸惑うだろうし、想定外のことが起きて互いに『どうしたらいいんやろう』と思うこともあると思います」

「だからこそ歩み寄ることが大事です。私たちもスタッフの方が能力を発揮できる環境をつくりたいし、スタッフの方も先生と協力してくれたらうれしい。最初は30点でも、少しずつ100点に近づけるように一緒に頑張りたいと思っています」

 

地域の学び舎が減っていくなかで、ますます「その場所だからできる体験や学び」を磨くことが求められています。

豊かな海と緑に囲まれ、独自の産業や文化を育んできた輪島市。このまちの高校生と大人が出会ったとき、どんな化学反応が生まれるのか楽しみです。

(2021/7/18取材、2021/11/17再募集 遠藤真利奈)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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