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なくてもいい仕事に
胸を張る覚悟

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「極端な話、私たちがやっている市場調査やコンサル業って、ド・虚業だと思うんですよ。なくても世の中、まったく困らない。だからこそ『誰かの役に立つためにはどうするか』を考え抜いて、自分の仕事を信じて真剣に取り組めるかどうかがすごく大事だと思うんです」

そう話すのは、合同会社Cobe Associeの代表、田中さん。

2018年9月に立ち上げたCobe Associeでは、新規事業立ち上げや戦略検討に関わる市場調査やコンサルティング、組織コーチングなどに取り組んでいます。

これまでは田中さんを中心に、インターンや業務委託の力を借りて会社をつくってきましたが、今回は初めて、ともに事業を育てる仲間を募集することになりました。

市場調査やコンサルティングなど既存の事業に関わってもいいし、これから立ち上げていく人材紹介の仕事をメインにやってもいい。会社自体、型にとらわれない「なんでも屋さん」として育てていきたいそうです。

戦略があるようでなく、ないようである。Cobe Associeのすべてを伝えることはむずかしいのですが、まずは田中さんの人となりを知ってもらうのがいいと思います。

 

普段は全メンバーがリモート勤務だというCobe Associe。今回は、拠点を置く神戸のシェアオフィスで話を聞くことになった。

JR三ノ宮駅から歩くこと5分。落ち着いた雰囲気の通りが続くと思っていたら、旧居留地のエリアに入っていたみたい。

少し離れたところには緑いっぱいの公園。振り返れば、山。朝の空気が気持ちいい。

待ち合わせ場所で待っていると、田中さんとインターンの田辺さんが談笑しながら現れた。

「お待たせしました。今ちょうどそこで田辺さんと会って。1年ちょっとのお付き合いになるけれど、対面で会うのまだ3回目なんですよ。なんだか慣れないね(笑)」

話し方が親戚のお兄さんみたいで、親しみやすい雰囲気。

さっそくシェアオフィスの中に入って、話を聞かせてもらう。

田中さんは、新卒で外資系のコンサルティング会社に入社し、その後ヘルスケアのベンチャー企業で執行役員を経験したそう。

「私の進路って、全部たまたまなんですよ。大学も一番普通科っぽい経済学部を選んで、新卒で勤めたコンサル会社も、最初に内定をくれたからで。さまざまなプロジェクトを経験するなかでヘルスケア領域に関心を持つようになり、独立する前には医療介護領域のベンチャーで働いていました」

「大学院を卒業してからはずっと東京で生活していて、ベンチャーで働くのがかっこいいとか、年収がステータスになるとか、だんだんそういう価値観から距離を取りたいと思うようになって。学生時代に暮らしていた神戸へ引っ越すことにしました」

移住のタイミングで前職の会社とは業務委託契約に。特に起業すると決めていたわけではなかったけれど、個人で仕事を受けやすくするために立ち上げたのが、Cobe Associeだった。

Cobe Associeでは、新規事業の立ち上げに伴う市場調査や戦略コンサルティング、また組織向けの研修やコーチングなどの事業を展開。2021年10月で4期目を迎えた。

神戸に拠点を置き、日本だけでなく海外の企業も含め、さまざまなお客さんと仕事をしている。

「流されているなりにも、それぞれの仕事で学んだことがいまにつながっていて。ヘルスケアのことなら田中に頼んでみよう、と相談をくださる方もいます。大学院での経済学研究や、コンサル会社で身につけたものの考え方は自分の基礎になっていると思いますね」

「私は、新規事業のリサーチや戦略を立てるうえで必要な役割のひとつって、『翻訳家』だと思うんですよ」

翻訳家?

「たとえば、『半導体の市場規模を調べてほしい』と依頼されたとして、『◯億円です』という回答は、実はお客さんの求めているものではないかもしれない。『調べてほしい』と依頼する背景に、どんなニーズがあるのか。それを想像してリサーチするのが、翻訳であり、私たちの仕事だと思うんです」

 

すると、隣で聞いていた田辺さんが「リサーチのことで、最近悩んでいるんですけど…」と話に加わってくれた。

田辺さんは大学4年生。コロナ禍で大学がオンライン授業になったタイミングで、リモートで参加できるインターン先を探し、Cobe Associeと出会った。

いまは学生インターンとして、田中さんのリサーチアシスタントを担当している。

「田中さんから『物流業界におけるSDGsの取り組みを調べてリストアップしてほしい』と言われていて。今、そのリサーチを担当しているところなんです」

「SDGsの取り組みって、大小さまざまで。『こまめに電気を消す』のもそうじゃないですか。でも、そんな当たり前のことをリサーチする意味あるのかなって。きっと、新規事業につなげたいという意図があると思うんですけど、アイデアにつながりそうな事例が見つからなくて」

それを聞いた田中さんは、「超いい悩みだね〜(笑)」と言いながら、ホワイトボードに何か書きはじめた。

背景、課題、問い…。先程出てきた言葉もあれば、「示唆」という新しい言葉もある。

「物流業界においてそんなに目立つ事例がない、っていう事実自体が示唆になり得るんだよね。もしかすると、お客さんはいい事例を知りたいわけではなく、自分たちが新しいことをするにあたって、他社がやっていないことを確認したいと思っているのかもしれない」

いい事例を探そうとすると、意識していないところで情報を切り捨ててしまうことがあるけれど、ときに捉え方を変えて「この状態が示唆することはなんなのか」と俯瞰して考えてみるのがコツなんだそう。

「コンサル会社にいたとき、リサーチ結果を上司へ伝えても『で?』と突き返されることがほとんどで。最初は戸惑いますよね(笑)。それで『この情報が意味することは何なのか』と考える習慣が身につきました」

リサーチを依頼するお客さん自身、調査結果をどう活用するか、明確に想定しているとも限らない。

「知りたい」というシンプルな依頼から問いを立て、お客さんの背景や課題を想像する。一歩引いて構造を捉えて、示唆するものを考える。

市場調査といえば、ひたすらデータを集めて渡すようなイメージだったけれど、こんなリサーチの仕方もあるんですね。

「事業立ち上げの根拠になるような、ただデータを集めるリサーチができないか相談されることもあります。でもそういうご依頼は、話し合った結果お見送りになることも多いんですよ。データを集めるだけなら、より効率的にできる企業があるだろうから、私たちが無理に引き受ける必要はないと思うんです」

「お客さんのため、だけでもよくないし、自分たちのため、だけでもない。両方を立てながら、うまくバランスをとる。絶対的な正解はないということを自覚しつつ、できる限りフェアな状況を目指すようでありたいと思っています」

田中さんの話を聞いていると、無理をせず、自分たちができることをしっかりやる、という姿勢を感じる。

今回募集する人は、リサーチや戦略コンサルティングのような、田中さんが得意とする領域の仕事に一緒に取り組んでもいいし、これから始める予定だという人材紹介の仕事をメインに取り組んでもいい。

リサーチやコンサルのノウハウは、田中さんとともに案件を担当するなかで身につけていくことになる。データのほかにも、お客さんの言葉づかいや関係性など、行動一つひとつから得られる情報もあるそうなので、自分で想像してみたことをもとに田中さんと壁打ちしながら学んでいくといいかもしれない。

一方で、人材紹介の仕事は、田中さんも専門的な知識があるわけではないそう。

「事業の立ち上げに関わっていると、『立派な戦略はあるけれど、本当に実現するのかな?』と思うことがあって。マーケターがいたらいいなとか、専門的な知識をもったエンジニアが加わるといいなとか。見立てはできるけれど、なかなか人材の紹介まで手が回らなかったんです」

なんとか形にしたいと考え、この春、人材紹介の業許可を取得。これから加わる人とともに、仕組みづくりから考えたいという。

とはいえ、代表社員は田中さんだけで、インターン生をあわせても7名という小さな会社。会社全体を見渡しながら、さまざまな仕事に関わることになると思う。

「リサーチやコンサルのプロになりたい方は、うちじゃなく、大きな会社でいろいろな人と仕事をして経験を積んだほうがいいと思うんです。そのほうが絶対力がつくので。うちのような小さな会社は、いろいろな仕事を経験するのに向いていると思います」

人材紹介のように、すでにある事業から発展するかたちで新しい事業を始めることは、今後もあるんでしょうか?

「あると思います。たとえば2年後、同じ事業を続けているかもわからないと思っていて。計画はあえてつくっていないです。時代の流れやそのときの状況に応じて、必要とされることって変わるじゃないですか。それにあわせて会社も変えていけばいいんじゃないかと思っています」

「リサーチやコンサル業って、なくても成り立つ仕事だと思うんです。それを認めたうえで『それでも、この仕事で誰かを幸せにするんだ』と覚悟をもって、お客さんの言葉ひとつ、数字ひとつと真剣に向き合えるかどうかが大切で」

はっとした言葉があるという。

「私が中学校のとき、難病の娘さんを抱えた先生がいて。その先生が離任式でされた挨拶なんですが…」

『娘の看病をしていて、気づいたんです。娘の治療・ケアに関わってくれているのは、なにもお医者さんだけじゃない。病院の中にいる看護師さんや薬剤師さん、病院食をつくっている人、病棟を掃除してくれている人、駐車場の出入り管理をしている人。いろんな人の力で娘の治療を続けることができています。これから社会に出て働くことになる君たちも、巡り巡って娘を支えてくれる存在です。だから先に伝えておきます。ありがとう』

「いまでも深く、心に残っていて。その言葉があったから、どんな仕事でも回り回って誰かのためになるんだと、信じられています。これから一緒に働く方とも、こんな価値観を共有できるとうれしいですね」

仕事のなかには、地道に一日中データを集めたり、数時間連続してExcelと睨みあう日もある。そんなときでも、目の前の仕事をただこなすのではなく、視座は高く、視野を広げて仕事を捉えられるといい。

 

取材終わりに外へ出ると、秋晴れが気持ちよく、公園で休憩することに。

好きな読みものの話をしていると、「私は将棋が好きでね」と、棋士のインタビューのおすすめ記事を教えてくれた。

「将棋ってAIソフトの活用がぐんぐん進んでいて、今や研究には欠かせない存在なんです。けれど、プロの先生方の対局を見ていると、勝負師や芸術家など、指し手ひとつにその人らしさが表れているんですよね。それがたまらなく面白い…面白いんですよ」

理論立てていくこともあれば、状況に応じていくやわらかさもある。両端にありそうなものを絶妙なバランスで行き来している。田中さんのあり方と似ているのかも、と思いました。

それを心地よいと思う人がいたら、楽しく仕事ができると思います。ぜひ一度、田中さんと話をしてみてください。

(2021/10/29取材 阿部夏海)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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