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「新しい生活様式」が広まっていくなかで、公園に足を運ぶ機会が増えました。周りを見渡すと、散歩や読書をする人、テントやハンモックを持ち込む人もいる。子どもの遊び場、というイメージだったけれど、頭を柔らかくすれば、大人だってもっとこの空間を味わえるのかもしれない。
公園をもっと自由に、楽しく。
そんな想いで仕掛けをつくっているのが、インザパークのみなさんです。
静岡・沼津市にあるインザパーク沼津。「泊まれる公園」をコンセプトに、宿泊や飲食事業、イベントの企画・運営をしてきました。
そして2022年3月には、福岡・国営海の中道海浜公園に、2つ目の拠点となる「インザパーク福岡」をオープンする予定。今回は、そのオープニングスタッフを募集します。
宿泊サービスを1からつくりあげると同時に、今後増えていくスタッフのマネジメントやイベントの企画・運営を担います。
福岡でのサービスをもとに、全国へ拠点を展開させていく構想もあるそう。将来、地元へ帰って何かしたいと考えている人にとっては、チャンスとなる事業かもしれません。
東京・日本橋。清澄白河のオフィスから地下鉄と徒歩で15分ほどの場所に、インザパークの運営に携わる株式会社オープン・エーが入った事務所がある。
迎えてくれたのはインザパークのディレクター、三箇山(みかやま)さん。インザパーク沼津の立ち上げ当初から関わっている方だ。
さっそく、インザパーク沼津を立ち上げたときのことを教えてもらう。
「沼津市が、少年自然の家の施設を活用してくれる事業者を探していて。いろいろなご縁で、まず僕が現地へ視察に行くことになりました」
「お題の施設のすぐそばに芝生広場があって、そこを見たとき直感したんです。『ここで、なにかいいものができるかもしれない』って」
どういうことでしょう?
「少年自然の家がある愛鷹(あしたか)運動公園はとても広い公園で、隣には高校野球の地方予選が行われる野球場もあるんです。市街地から離れた場所にあるけれど、ちゃんとお金を使って整備されているので公園内の景観はとても良くて」
「なにより芝生広場が自然を感じられる気持ちのいい場所で。しかも沼津は関東圏からも近い立地。当時は訪れる人も少なかったけど、しっかりブランディングすれば人が集まる、ポテンシャルのある場所だと思ったんです」
そして2017年にオープンしたのが、インザパーク沼津。「泊まれる公園」として宿泊や飲食はもちろん、自然を楽しめるイベントなどもひらかれている。
インザパークの象徴とも言えるのが、森のなかで宙に浮かぶ球体テント。不思議な光景が話題になり、オープン当初から宿泊客が殺到したという。
「施設の改修とかも、ほぼ自分たちでやって。手づくり感や抜け感があるのも、インザパークの特徴なんじゃないかな。僕たちは、もともとある環境や状況を活かすやり方で、『公園の楽しみ方』を提供できたらと思ったんです」
もとからある少年自然の家を残しつつ、公園全体を宿に見立てたこともそのひとつ。ほかにも、森の中でマルシェをしたり、野外で夜通し映画を楽しむフェスを開いたり。
メインイベントの開催場所になる芝生広場は、市の所有物だから誰でも自由に使うことができる。さらに、インザパークができて宿泊可能になったことで、昼夜関係なくイベントを開催できるようになった。
「最近の公園って、禁止事項が増えてしまって、どう過ごしていいかわからない人が増えていると思うんです。『公園ってこんな楽しみ方もできるんだ』と、可能性をひらくような存在になれたらと思っています」
インザパークの存在が世の中の公園のあり方に与えた影響は大きいと思う。その第二弾としてつくられるインザパーク福岡は、どんな場所になるんだろう。
もう一人のディレクター、伊藤さんに聞いてみる。
「三箇山はいい場所を見つけるのが上手いんですよ。新しい拠点ができる海の中道公園も、すごくおもしろい場所なんです」
海の中道公園は、福岡市東区に位置する、東西6km、面積350ヘクタールと広大な面積をもつ国営公園。
玄界灘と博多湾に挟まれた砂洲にあり、博多湾を挟んで福岡のまちを一望できる。水平線の丸さを感じられるくらい、ワイドな風景が見えるそう。
もともとリゾート地として開発されていた場所で、プールやフラワーミュージアム、水族館もあり、年間200万人近い人が訪れるという。
インザパークが進出するのは、自然豊かな東部エリア。110ヘクタールの敷地に球体テントやグランピングスペースのほか、サウナやアスレチックスペースなど、宿泊以外のお客さんも楽しめるスペースも併設される予定。
「今回は国営公園なので、沼津より制約のある中でのチャレンジになります。それと、僕ら以外にもプロジェクトに参加する企業がいるのも特徴。とは言っても、僕らの担当は主に宿泊施設の運営とイベントの企画・運営を担当するので、基本は沼津と同じですね」
プロジェクトの全体コンセプトは“パーク・ツーリズム”。
「宿泊だけでなく、文化的・教育的な体験も提供したいと思っていて。公園といえば体を使って遊ぶ場所でしょ、というイメージを変えるイベントや仕掛けをつくっていきたいですね」
ひとつの軸として考えているのが、音楽。
アーティストのライブ会場として使ってもらうのはもちろん、地元の合唱団に研修や発表の場として使ってもらってもいいかもしれない。
イメージは夏フェスのキャンプ場なんだそう。
「常に音楽が響いている公園って、なんだか特別感ありませんか? 公園なので、老若男女が楽しめる開かれた場所でありつつ、非日常感も味わえる仕掛けをつくっていきたいと思っています」
今回募集するのは、来年3月のオープンに向けて、インザパーク福岡を立ち上げていくスタッフ。PAやDJなど、音楽関係の経験がある人が仲間に加わると、構想が加速しそうだ。
とはいえ、あくまでもメインは宿泊部門。軸となる事業がきちんと成り立ってこそ、さまざまなイベントや仕掛けが活きてくる。
「日常で必要とされるのは、予約管理や接客などの施設を回す仕事が95%、音楽に限らず得意分野に特化した仕事は5%くらいの割合です。ルーティン業務を楽しめる人でないと、なかなか難しいかもしれません」
現場は日々、どんな仕事をしているんだろう。話を伺うため、後日沼津へ向かいました。
沼津駅からタクシーを10分ほど走らせると、だんだんと人気の少ない山のエリアへ。車が止まったのはインザパークの本館の入り口。
三角の屋根が、どこか懐かしさを感じる。
「雰囲気あるでしょう。大枠は少年自然の家をそのまま活用していて。自分たちで壁を塗ったり、窓を新しくしたりしました。お金がないので、工事というよりDIYでしたね(笑)」
そう話すのは、インザパーク沼津立ち上げ時の支配人、山家(やまが)さん。マネージャーとして運営を管理する傍ら、インザパーク福岡の立ち上げも担当している。
新しく加わる人は、山家さんのほか沼津から福岡へ向かう3人のスタッフと一緒に、拠点をつくっていくことになる。
もともと、宿泊業の経験はなかったという山家さん。
最初は、未経験の4人からのスタートで、当時は公園の活用を考えるよりも、目の前のお客さんと向き合っていくことに追われる日々だったそう。
接客という見えやすいところだけでなく、お客さんからは見えない部分まで。いかに先回りして把握するかが大切だと山家さんは言う。
「管理業務と呼んでいる日々の仕事は、かなりルーティン的なものだと思うんです。でもそれって、結局はお客さまにインザパークで過ごす時間を楽しんでもらうための準備のようなもので」
「積み重ねるようにサービスをつくってきたので、もしかすると、ほかのホテルだと当たり前のことができていないかもしれない。だけど、だんだんと胸を張ってサービスをご提供できるようになってきたなっていう実感があるんです」
4年間で培われた宿泊事業のノウハウを活かしつつ、インザパーク福岡では、公園という資源を活用したイベントの企画運営にも力を注ぎたいとのこと。
沼津でも、スタッフの発案はもちろん、外部の方から声をかけてもらって、一緒に企画を形にしていったこともあったそう。
「芝生広場でウェディングができないかと問い合わせいただいたことがあって。やったことはなかったけれど、プランナーさんと相談しながら、なんとか挙式とパーティーをおこなうことができました」
広場の自然を活かした開放的な雰囲気が話題となり、いまでは挙式やパーティーの依頼が年間で10件以上くるように。
さらに、挙式を見かけた近所の人が「式、挙げられてよかったね」と声をかけてくれたり、少し離れた場所から拍手を送ってくれたりすることもあったそう。
「うれしいですよね。ウェディングは一例ですが、『インザパークに行ったら、なにか面白いことを体験できるんじゃないか』と関心を持ってくれる方が増えつつあるように感じていて。公園の新しい楽しみ方を少しずつ伝えられている、そんな実感があります」
新しくできる福岡でも、ウェディングサービスには力を入れていきたいと考えているそう。
ウェディングプランナーの経験がある人が仲間に加わると、最初から最後まで手がけることができ、より質の高いサービス提供につながると思う。
それに、ウェディングの催しをきっかけに、インザパークの取り組みに興味をもつ人が増えるかもしれない。
インザパーク福岡は、沼津での経験を土台に据えつつ、仕組みや取り組みをさらに磨いていく場所になる。0から1へ、というよりは1から100を育てるつもりで臨むといいかもしれない。
山家さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「外の地域から飛び込んでくる人だけじゃなく、地元の人にも働いてもらいたいですね。地域の面白い人とつなげてくれるっていうのは、よそ者にはない強みだと思うので」
「あとは、泥臭いコミュニケーションを厭わない人かな」
泥臭いコミュニケーション、ですか。
「私がそういうタイプで(笑)。どれだけいそがしくても、顔を突き合わせて話をして、全体を捉えていたい。顔の見える関係だと、意見も言いやすいと思うんです。そんな関係づくりができる人と一緒に働けたら心強いですね」
最後に、沼津の敷地内を歩きながら、山家さんがこんな話をしてくれました。
「宿泊だけじゃないし、それ以外ばっかりでもない。公民連携の事業だし、どちらも成功してこそ評価される側面もあるから、そのバランスは常に意識していて」
「…という話を聞くと、特別な仕事に見えるかもしれない。けれど、相手がお客さんでも、公園を使うご近所さんでも、行政でも。人と人同士であることは変わりない。なにを思って、どうしていきたいと考えているのかをわかろうとすれば、おのずと道は開けると思うんです」
成功を収めてきたように見えるインザパークの事業も、きっと人との関係を丁寧に積み重ねてできたものなんだと思う。
ワクワクを現実に変えたい。そう思う人がいたら、インザパークでの日々はかけがえのないものになると思います。
(2021/11/8、12/2取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。