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眠る前や、仕事に集中したいとき、「滝の音」や「鳥の声」、「雨の音」などを検索して再生することがある。
情報に溢れた都市の小さな部屋にいても、自然の情景が目に浮かび、心も静かになっていくような気がする。
今回紹介するのは、そうした自然のインスピレーションをもとに空間を演出する仕事。
オフィスや商業施設などの空間にグリーンを取り入れる提案で多くの実績を持つ、緑演舎でプランナーとして働く人を募集します。
出来上がった空間に鉢植えやプランターを配置するのではなく、空間全体で自然の風景を再現するようなダイナミックなデザインが、緑演舎の強みです。
最近は建築家とのコラボレーションや、全国に支店を持つオフィスのトータルプロデュースなど、規模の大きいプロジェクトに携わることも増えています。
そのなかでプランナーの役割は、空間のグリーンをデザインするだけでなく、庭師や内装屋といった協力業者さんとの連携、プロジェクトを円滑に進めるための調整など、多岐にわたります。
空間づくりや内装関係の経験を活かせる現場だと思いますが、必須ではありません。
緑演舎ではほかにも、個人住宅の庭づくりや、グリーンに関するプロダクト販売など、さまざまなチャンネルがあります。どれも植物を楽しみたいという気持ちが手掛かりになるはず。興味がわいたら読んでみてください。
渋谷駅のハチ公口からスクランブル交差点をすり抜けて公園通りへ。
消防署の角を曲がり、坂を上ると、緑演舎のオフィスが入るビルがある。入り口のサインを見て、ここだとすぐにわかった。
岩肌に苔が繁茂するような壁の造形に気を取られ、1階のインターホンに気付かないままエレベーターに乗ってしまった。
7階に着き、エレベーターの扉が開くと、そこはすぐオフィス。ここにも、いたるところに葉っぱや蔓、苔、と植物が手を伸ばす。
「植物がある空間」というより、「植物のなかで人が仕事をしている」という感じ。中央には大きな水槽が置いてあり、中で水草が揺れている。
「アクアリウムは、僕が中学生のころからの趣味なんです」と、代表の大山さん。
「当時、一緒にアクアリウムをやっていた友達は、アロワナに金魚やザリガニを補食させたりしていたんでいたんですけど、僕は水草のほうに興味が向いて。水槽のなかに自然な水景をつくり、魚の群れを泳がせて遊んでいました」
その後は陸上競技に熱中し、将来は選手を支えるスポーツ医療の道に進みたいと思うように。ところが、大学進学のための浪人中、何気なく手にした雑誌がきっかけで進路が変わる。
「父親が定期購読していた建築の雑誌で、屋上庭園の特集があったんです。四角いビルの屋上を緑でレイアウトするって、水槽にひとつの世界をつくるのと似ている。これはおもしろそうだと思って、東京農大の造園学科に進むことにしたんです」
大学卒業後は、ビルやマンションの屋上緑化に特化したメーカーに就職。屋上というフィールドは地上に比べ、ゼロから庭のデザインに取り組める余白も多い。
さらにここ10年ほどはインテリアにも、グリーンのニーズが広がってきた。
2016年に独立し緑演舎を立ち上げてからは、商業施設やオフィスなどの空間演出を中心に手掛けてきた。
「同じ屋内空間でも、商業施設とオフィスではアプローチが違います。商業施設の場合は、お客さんを惹きつけるための演出なんですが、オフィスはそこで過ごす人たちの心地よさを追求していくためのもの。だから、より自然の風景をリアルに可視化することを目指しています」
今年竣工した資生堂汐留オフィスのラウンジは、まさに植物に包まれるような空間。
人々を迎え入れるカーテンのようにシダが垂れ下がり、床から伸びる木々が自然な動線をつくる。ところどころに木陰ができることで、大きな空間がさりげなく分割され、ひとつの場所のなかでいろんな対話や関わりが生まれるようになっている。
緑に包まれることで、光や音の感じ方も変わってきそう。本当に、空間そのものをつくりあげていく仕事なんですね。
「なぜそれができるかというと、我々がつくりだす空間の85%くらいは、生の植物じゃない素材を使っているから。このオフィスもそう。ここの苔もプリザーブドだし、このシダもフェイク。岩はモルタルで、藤の蔓は山で採ってきて乾燥させたもの、その隣の葉っぱは本物です」
そうなんですか? たしかに、人と植物が生きやすい湿度や温度は、それぞれ違いますね。
「もちろん単品で見比べたら、葉っぱの質感とか、本物との違いは見えてくる。だから僕らは、フェイクを用いるときは必ず、生の植物も織り交ぜながら風景をつくるんです」
施工では植物を熟知した庭師さんが、枝の微妙な角度や葉の生え方などを細かく調整し、リアリティを追及する。
つねに本物の植物や自然の風景を完成形としてイメージしながら、素材を選び、構成していく。
「僕も20代のころはフェイクを使うのに葛藤がありました。でも本物の植物だけでは、この雄大さは表現できない。やるならプロとして徹底的に、リアリティを追求していこうと振り切ったからこそ、表現の幅が広がってきたんじゃないかと思います」
建築家と一緒にゼロから空間設計に携わることも増えてきた。生の植物にこだわらなければ、海外のプロジェクトにも参加できる。
以前はオフィスデザインのチームや不動産会社から依頼を受けてプロジェクトに参加することが多かったものの、最近はクライアントから直接「グリーンに溢れたオフィスをつくりたい」と依頼がくることも。
「グリーンの仕事って今までは、完成した空間に入れるだけの、いわゆる“ひ孫請け”くらいのポジションだったんです。最近はそれが逆転してきて、うちから逆指名で内装やデザインのチームを組んでいくこともある。今まで以上にディレクションの力が必要だなと感じています」
アイデアを形にしていくために。まずはプランナーとして、大山さんと一緒にプロジェクトを推進していくメンバーを増やしたい。
「ただ、あんまり規模を拡大するつもりはなくて。今はプランニングやメンテナンス、小売、PRなど、一人一役くらいの感じで分担しています。やっぱり10人前後がちょうどいい。ちゃんと一つひとつのプロジェクトに自分の目が届くようにしておきたいから」
「グリーンの仕事って、いいイメージがあるかもしれないけど、うちは基本アトリエ事務所みたいなものなので、やることはたくさんありますよ。何かを学んで、成長したいっていう意欲がある人のほうがいいと思います」
これからプランナーとして加わる人にとって、一番身近な先輩になるのがディレクターの槇田さん。
プランナーやディレクターの仕事は、まず大山さんと一緒にクライアントからニーズを引き出し、出てきたアイデアをブラッシュアップして提案すること。その後は、現場に足を運びながら、竣工まで進行管理をしていく。
また竣工して引き渡した後も、メンテナンスを通して空間の維持管理を続ける。実際に手を動かす作業は、それぞれの地域の業者さんに委託するので、プランナーはその段取りをしたり、クライアントの要望を受けて追加の提案をしたり。
プロジェクトマネジメントのような役割を担うことも多いので、スケジュール管理の力がるといい。
「調整役でありつつ、自分もアイデアを一緒に考えていくような役割だと思います。大山さんは、こういうのはどうですか?って提案すると前向きに考えてくださるので、指示を待つタイプよりも、自分でなにかやってみたいという人のほうがいいと思います」
施工の際は照明や内装など、さまざまな業者や職人さんとのやりとりも多い。日によっては、現場から現場へ直行直帰することも。
「本当に移動が多い仕事なので、1週間ずっとオフィスにいることはほぼないですね。スーパーフレックスなので、自分で時間をコントロールできる良さはあると思います」
あまりオフィスに立ち寄れないときは、些細な用事でも会社のメンバーに連絡を入れて、コミュニケーションをとるようにしているという槇田さん。
「植物も好きだけど、みんなで働いているからこそ楽しいというか。うちのメンバーはみんな食いしん坊で元気な人たちです(笑)」
「入社2年目になる福岡くんも、すごくパワーがあって、いい人です。彼には入社早々、模型づくりを手伝わせるわ、住宅展示場の施工に連日立ち会わせるわ…、いきなり私たちに連れ回されて、大変だったんじゃないかと思います」
と、槇田さんから紹介を受けた福岡さん。実際、どうでしたか?
「僕はもともと『とりあえず、やってみよう』っていう性格なので、いろんなことを経験させてもらえるのはありがたかったです。でもまあ新卒で入社して、その夏に一人で出張を頼まれたときはさすがに緊張しました。その土地の協力業者さんに、自分が指示を出して空間をつくっていかないといけないので」
福岡さんの実家は代々続く造園業。物心ついたころから、いつかは植物に関わる仕事をしたいと思ってきた。
緑演舎で今担当しているのは、個人住宅の外構や庭づくり。生の植物も多く扱うため、竣工後のメンテナンスのことも考えながら、提案を進めていく。
「最初は本当に『おしゃれな感じに』というくらい、ざっくりしたご要望からプランニングがはじまります。ヒアリングを通して、家族構成やライフスタイルを探りながら、本当に求めているものを具現化していくような感じです」
住宅の庭づくりは、法人のプロジェクトよりも、個人の思いにフォーカスする仕事。
なるべくメールよりも電話、zoomよりも対面でのコミュニケーションを大切にしたいと福岡さんは言う。
一方、その分だけ時間はかかる。
「僕はまだ先輩に比べて仕事のスピードも遅いですし、並行するプロジェクトで提案や竣工のスケジュールが重なって大変なときもあります。そこを工夫していくのが、今後の課題なんだと思います」
これから後輩になる人に、伝えたいことはありますか?
「この仕事をはじめてよかったな、って思っていることですかね。緑演舎に入っていろんなプロジェクトに携われたおかげで、植物の仕事には幅広い可能性があるんだなって気づくことができたし。僕自身、この会社で勉強したいことがまだたくさんあります」
グリーンと暮らす心地よさを、いつでも、どこにでも。
私たちが思っている以上に、まだまだ緑化の余白はあるのかもしれません。
(2021/11/15 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。