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秘境で暮らしをつくる
自給自足2.0

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

蛇口をひねるときれいな水が出てきて、ボタン一つでお湯も沸かせる。

都会に住んでいると当たり前のことが、自然のなかではむずかしい。水源を見つけ、濾過して、火を熾し…。とてつもない労力と知恵が必要だということがわかる。

でもそんな暮らしにしかない、手応えもある。

宮崎県椎葉村。日本三大秘境のひとつと呼ばれるこの村に、この春、ちょっと変わったシェアハウスが誕生します。

変わっているのは、そこでの暮らし方。インターネットなど現代の便利な技術と、昔ながらの生活のいいとこ取りをした「自給自足2.0」という考えのもと、暮らしをつくっていきます。

今回募集するのは、このシェアハウスの立ち上げからかかわる住人です。

最初にはっきりと伝えたいのが、仕事の募集ではないということ。

シェアハウスなので、住む場所と暮らしに必要な最低限のものはありますが、仕事は提供できません。場所を選ばずできる仕事を持ち込むか、村で稼ぎを得る手段を探すか、働き方はこれから来る人に委ねられています。

期間はまず1年。気に入ったらそのまま住み続けてもいいし、別の場所に行ってもいい。

田舎で自給自足の暮らしを体験してみたい、都会で暮らすことに違和感を感じている。そんな人には、面白い場所だと思います。


椎葉村までは、熊本空港から車で2時間ほど。もしくは宮崎空港から、電車と少ないバスを乗り継いでも行くことができる。

日本三大秘境のひとつと言われているけれど、意外とアクセスはわるくない。ただ、村の面積は東京23区より少し小さいくらいと、かなり広い。村内の移動には車が必須で、時間もかかる。

今回住人を募集するシェアハウスがあるのは、村役場がある中心部から車で30分ほどの場所にある、川の口という集落。

「村には10の地区があって、全部で2500人くらいが暮らしています。僕はアメリカに例えて、ユナイテッドステイツオブ椎葉ってよく言うんですけど、それくらい地区によって方言や文化がちがっていて。それが面白いんですよ」

そう話しながら迎えてくれたのは、今回のシェアハウスプロジェクトの発起人であり、管理人でもある村上さん。元地域おこし協力隊で、任期後は村内のキャンプ場の管理運営をしながら、この村で暮らしている。

「これがシェアハウスになる建物です。見た目のインパクト強めだと思うんですが、これでも外壁を焼き板に張り替え終えて、ずいぶんきれいになったんですよ。いまは内装の工事をしてもらっているところで、2月には工事が完了する予定です」

名前は「平(でぇら)の家」。「平」は屋号で、このあたりの家にはすべて屋号がついているそう。

「なかもご案内しますね」と、工事中の家のなかも見せてもらった。

入り口を入ると大きなL字型の土間になっていて、そこから一段上がった広い部屋が共用のリビング。ここは無垢杉を使ったフローリングとソファ、そして薪ストーブを入れて、ゆっくりくつろげる空間にする予定だそう。

リビングの向かいには大きめのキッチンを設置。入居者の個室は3つあって、それぞれが6畳くらいの広さ。方角と窓の関係で明るさに差があるため、どの部屋に入るかは入居者と相談しながら決めていきたい。

トイレは簡易水洗で、お風呂は太陽熱と薪で沸かすつくり。水は山から引いていて、電気もネットも通っている。

「内装も石膏ボードを貼るところまで職人さんにお願いしているんですが、そこから先は自分たちでやろうと思っていて。リビングは漆喰を塗る予定で、部屋は入居してくれる人の好きなように仕上げてもらうのがいいんじゃないかなと考えてます」

住む人が自由に内装をつくれる、DIY賃貸のような感じ。

目の前にはあいている土地もあるので、自分たちで畑や田んぼもできる。村上さんの構想では、ある大学の研究室と連携して浄化槽も自作する予定なのだとか。

できる限りの自給自足生活をすることが可能で、なおかつインターネットなども使える。

そもそも、どうして村上さんはそんな場所をつくろうと思ったのだろう。

「僕の暮らしの根っこには、環境問題への意識があって。上京して一人暮らしをはじめたときも、合成洗剤を使わずにせっけんを使うとか、プラスチックゴミはリサイクルできるようにきっちり洗って分別するとか。そういう細かいところまで気を遣うような暮らしをしていました」

20代のころは、舞台俳優を志すも挫折。その後はアイルランドとイギリスへワーキングホリデーに行ったり、愛媛の無人島でカフェをしたりと、聞けば聞くほど面白い経歴の持ち主。

椎葉村にやってきたのは、5年前のこと。地域おこし協力隊の募集を見つけたのがきっかけだった。

「最初は自分が住むために、この家を借りたんです。『人が住むような場所じゃねえから』って大家さんに止められるくらいボロボロだったんですが、そこをなんとか説得して。あまりにも多すぎる隙間を塞ぐのは早々に諦めて、蚊帳の中で布団にくるまって住んでました」

無農薬と手作業でお米をつくったり、お風呂や暖房は薪を使ったり。村上さんがやりたいと思っていた環境にやさしい自給自足の生活は、少しずつ形になりつつあった。

そんなとき、川の口集落で行われている集落営農の活動をするなかで、シェアハウスの構想が膨らんでいったという。

集落営農とは、使われなくなった農地を活用して、人手が必要な農作業を集落みんなで協力して行う仕組みのこと。

取り組みが始まった16年前につくられたスローガンが、“都会と田舎の交差点 住んでよし かてーりの里 川の口”。かてーりは、みんなで協力し合う、という意味なのだとか。

「この川の口集落の人たちはすごく先進的な考えをしていて。将来的に人口が減っていくことを考えると、都会の人が地域に何らかの形でかかわる仕組みがあったほうがいいんじゃないかと、16年前から考えていたみたいなんです。それで、農作業体験をはじめて」

「残念ながら、最近は続いていないんですが。この『都会と田舎の交差点』っていうのが、僕はすごく素敵だなと。これを今の時代に活かしつつ、自分がやりたい暮らしと重ねて考えたときに、じゃあここに自給自足をコンセプトにしたシェアハウスをつくろうって考えついたんですよね」

自給自足の暮らしができる場をつくり、そこに村外の人がやってくる。長期的に暮らす人も、民泊のような形で短期的に宿泊する人がいてもいい。

都会の人と椎葉の人が出会う交差点が生まれれば、集落全体にもいい影響があるはず。

とはいえ、九州の秘境に移住するというのは、なかなか勇気が必要なこと。村上さんも協力隊時代、移住コーディネーターとして働いていた経験から、そのハードルはよくわかるそう。

「移住するときのハードルって、家と仕事と人間関係だと思うんです。たしかに見ず知らずの土地に行くことは不安だと思うんですが、ここにはまず家があって、すぐに暮らしを始めることができる。人間関係も、僕が5年かけて集落の人と関係をつくってきたので、サポートすることができます」

「ただ、安定した仕事はどうしても用意できなくて。なので、たとえば場所を選ばずにできる仕事を持ち込んでもらうか、村で短期のお手伝いみたいな仕事は意外とたくさんあるので、それを積み重ねてもらうか。どちらかになるのかなと思います」

シェアハウスの家賃は、水道光熱ネットすべて込みで月3万円。村の人におすそ分けしてもらったり、敷地内で育てたりした野菜やお米は山分けする。

住む人に椎葉の春夏秋冬を経験してほしいという思いから、今回の募集では1年間という区切りを設けている。気に入った人はそのまま住み続けてもいいし、別の道に進んでもいい。

「僕がここで暮らしていて感じるのは、都会で普通だと思っていたことに、実はとんでもない労力や技術がかかっているんだっていうこと。たとえば薪でお風呂を沸かすのも、すればするほど灯油や電気の偉大さがわかるんですよね。楽だし手間もかからない」

「それは食べ物もそうで。無農薬でお米をつくろうとチャレンジしたら、草とりや害虫とかの問題で育てるのがすごくむずかしい。でもそれって、自分でやってみて初めて気づくことだと思うんです」

身体や環境のことを考えて「無農薬の農作物がいい」と消費者の立場で言うのは、ある意味簡単なこと。

その背景にはどんな苦労があって、どれだけの労力がかかっているのか。自給自足の暮らしを通じて、生身の体験として感じてほしい。

「自分でやってみて、それでも無農薬がいいとか、やっぱり農薬や機械を使ったほうがいいとか。どっちでもいいんですよ。よくわからないまま声高々に言うのは、かっこよくない。だから自給自足みたいな暮らしに憧れている人が来てくれて、やっぱり無理だって悟る。そういうことが起きてもおもしろいなと思ってるんです」

今後シェアハウスに住みたいという人が増えたら、離れのような小屋をまわりに建てる構想もあるそう。

村上さんは、どんな人に来てほしいですか。

「そうですね… 生きてる手応えがほしい人かな。本当に環境に優しいことをやろうとすると、多少の不便は避けられないじゃないですか。でもその不便さを楽しめたらいいと思うんですよね」

「自分の好きなように部屋の内装を仕上げようとか、田んぼで米をつくるとか。僕にとっては、それが自分の暮らしを自分でつくるっていうことなんです。お金で買う生活に飽きちゃった人とか、違和感を感じてる人。そんな人だったら、一緒に楽しみながらでぇらの家での暮らしをつくっていけるんじゃないかなと思います」


村上さんが椎葉でつくろうとしている新しい場所。川の口集落の人はどんなふうに感じているのだろう。

ちょうどこの日、集落の方3人が集まってくれて、座談会形式で話す時間をつくってもらった。

左から、でぇらの家の大家さんである黒木さんと、村内のバス会社社長の那須さん。

村上さんの構想を聞いたとき、率直にどう感じましたか?

「こういうのができたらええよなって思うよね。いろんな人に来てもらって。集落営農をはじめたとき、懇親会も最初は集落の人と都会の人で分かれてたのが、自然と溶け込んで。盛り上がったよな」

「村で人手がほしいときに手伝ってもらえたら、なおのことありがたいよね。春は椎茸の種植えとか、手伝ってもらえると農家の人も助かるから。余分に手ができるからじゃまにはならんよ」

みなさん外から人が来ることに対しては、とてもオープンな感じ。村上さんも、川の口の人たちは村のなかでもとくに、いい意味で都会っぽい感覚を持っている人が多いと話していた。

すると、農家民泊をしている右田さん。

「こっちは川と田んぼが売りたい、みんなが喜ぶもんな。あとは農業とか、自分たちでつくることができる場所があるから、田んぼやってみたいとか、そういう人やったらいいね」

このでぇらの家がうまく軌道に乗れば、ほかの集落でも独自のコンセプトでシェアハウスをつくろうという人が出てくるかもしれない。そうなってくれたらすごく面白い、と村上さん。


まずは一歩踏み出して、自分の暮らしを自分でつくりあげてみる。

その体験は、この先の人生でもかならず光るときがあるように思います。

(2021/11/30 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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