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プロマネ求む
工芸のまちを駆ける
縦横無尽なデザイン事務所

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

形を与えて投げかけたものが、どんな波紋を描くのか。

自分たちがデザインしたポスターやパッケージを喜んでくれる人がいて、お店の、街の、風景が少しずつ変わっていく。そうして、自分自身のその土地での暮らしも楽しくなる。仕事と街と暮らしがつながっている、はっきりした手応え。

ROLEはグラフィックを通じて、ものやことの社会性をデザインするデザイン事務所です。

居を構えるのは、かつて加賀・前田藩の町民文化が花開き、今も地場産業が盛んな富山県高岡市。土地に根ざした産業との関わりが、これまでのROLEを形づくってきました。

今回募集したいのは、プロジェクトマネージャー。

これまでアートディレクター・デザイナーとして邁進してきた羽田さんが、ROLEを発展性あるデザイン事務所にしていくために、新しい仲間を募集します。

ものや街を内側から輝かせることが好き。そんな人はぜひ読み進めてみてください。

 

富山県高岡市。

高岡駅を降りて目に入るのは、ロータリーに並ぶドラえもんの銅製オブジェ。高岡は日本一の銅器製造の街であり、藤子・F・不二夫の出身地でもある。

駅前は閑散としているものの、しっとりした文化の気配も確かに感じる街並み。

通りを外れて趣ある路地を歩いていくと、「印刷ビル」と書かれた建物が現れた。

2階に上がってドアをあけると、空気の質がパッと変わる。あ、おもしろい。こんな場所が古い住宅街のなかにあるんだ。

迎えてくれたのは、代表の羽田さん。話し方のトーンから、関西の人だとすぐにわかる。出身は大阪の枚方で、高岡に来たきっかけは市内にある美大への進学だったそう。

「たまたま条件が合って来たんだけど、今もいますね。高岡の地場産業の熱さとか、暮らしのなかにある祭りの勢いとかがおもしろくて」

ROLEは羽田さんが7年前に立ち上げた会社事務所。これまでにさまざまなデザイン賞を受賞している、富山を代表するデザイン事務所のひとつだ。

羽田さんの前職は、ギャラリーの企画運営。大学卒業時に立ち上がった産学官連携のギャラリーで、キュレーションを8年間担当していたそう。

「食、工芸、和菓子とか、土地から失われつつある大切な文化を、展覧会として発信する方法をずっと模索していました。ただ並べるだけだと興味を持たれない、展示を通じて新しい発見ができないかな?と」

たとえば、富山の食文化「細工かまぼこ」の生産組合と組んだ『かまぼこ大學』という展覧会では、つくりかたの詳細や、細工かまぼこにまつわる富山県東西の文化の違いを紹介。

地元のクリエイターとかまぼこ業者をマッチングさせ新たな商品を開発し、さらには興味を持ったギャラリーの来場者がすぐに食べに行けるよう、近隣の飲食店に協力してもらい、かまぼこのしゃぶしゃぶ(!)などのオリジナルメニューを各店舗で出してもらった。

自主企画を中心に、年間30を超える展覧会を仕掛けていたそう。

まぶしいほどの企画力と実行力。同時に羽田さんはグラフィックデザイナーでもある。

…デザインはいつ、どこで学んだんですか?

「独学です。学科は木工科だったし、デザイン事務所で働いたこともない。だけどギャラリーの展示に必要なキャプションや商品のラベル、DMをつくるために勉強していたら、いつのまにか技術が身についたんです。企画や切り口の強度に重きを置く考え方も、この8年間で身につきました」

もうひとつROLEを語る上で大きいのが、高岡伝統産業青年会(以下、伝産)との関わり。

伝産は、高岡銅器や漆器、菅笠などの伝統産業に携わる40歳以下の若手の団体。羽田さんはギャラリー運営時代から参加していて、今年で15年目になるそう。

「ギャラリーをやってるときに、『地域のものを扱うなら、もっとリアルなシーンに飛び込んでみれば』って言われたのをきっかけに参加することになって。当時はまだ職人と問屋しかいない組織だったので、どちらでもない僕ができることを考えて、はじめにつくったのが似顔絵イラスト入りの名刺でした」

それまで名刺を持ったことのなかった職人さんは、まず名刺そのものをとても喜んだ。

当時は、職人自ら産地や伝統工芸の価値を訴求していく流れが全国で加速した時期。伝産では、職人が自らツアーコンダクターとなる工場見学ツアー “クラフツーリズモ”の企画が立ち上がり、ギフトショーへの出展、BEAMSや代官山蔦屋での鋳物体験を含めたポップアップ展示などが盛んに行われるようになっていった。

羽田さんのグラフィックは、それまで裏方にいた職人さんたちの想いを伝える武器になった。

「伝産は僕にとってはライフワーク。高岡のものづくりや職人たちを次世代につなげていくにはどうしたらいいのか、みんな真摯に向き合って、延々酒飲みながら話したり、YouTubeの配信をしてみたり。熱い人たちだから、好きなんです」

後日談として、イラストは高岡市のブランディングビジュアル、さらには富山県の工芸冊子やクラフトの土産パッケージ、さらには全国の伝統工芸職人のイベントビジュアルにも展開している。

地方では、デザイナーがある種コンサルのような相談役になることは珍しくはない。羽田さんには、そこからさらに踏み込んで、相手方の社員の一員になるような感覚があるそう。

高岡市内にある老舗和菓子屋との仕事では、広告の効果を明確に知りたいというクライアントに対して、羽田さんは要望を聞いたその場でキャンペーンを提案。

キャンペーン自体は数個買ったらもう一個、という単純なものながら、読めるのに読めない文章が書かれた広告が大ヒット。和菓子屋さん百数十年の歴史で最大の売り上げを記録した。

その会社とはその後、『レンジでチンしたらバターが溶けるどらやき』という商品(ホットドラバター)を一緒に開発し、これまた大人気に。

「こういうのって、わざわざ広告を見なくても聞いただけで美味しそうな画が浮かぶじゃないですか。グラフィックデザイン以前の、“やろうとしていること”を成立させる組みたてが大事だと思っています」

見せ方を工夫するだけでなく、受け取った人の気持ちや社会への広がり方まで含めて、筋道を立てて考えていく。一見ロジカルだけど、直感やユーモアも忘れないバランスが絶妙だと思う。

立ち上げから7年を迎え、羽田さんは「デザイン事務所として次のステップに進みたい」と考えている。そこで募集したいのが、プロジェクトマネージャーだ。

「今までとは違うディレクションとか、経営を考えたくて。ここ10年はデザインの精度をあげてきたり、おかげさまで沢山の広告賞をもらったりしてきたけど、それを繰り返すだけじゃおもしろくない。発展性のあるデザイン事務所のあり方をつくっていきたいんです」

グラフィックデザインの前段階を重視するというROLE。商品開発から一緒にとなれば、打ち合わせの回数も多くなる。

結果、羽田さんの日中は打ち合わせとメールのやりとりで終わり、夜になってから作業に入ることも珍しくない。

「できちゃうからダメなんですよね。僕がやらなくてもいいことを、やらなくてもいい時間にやってしまう。なのでプロジェクトマネージャーには、誰が何をいつどうやるのがいいのか、一緒に考えてほしい。全然だめですねってところは指摘してもらって、より良い方法論をつくるパートナーがほしいと思ってます」

「デザインソフトは使えないほうがいいくらい。使える人だと、結局その人がやらなくていい業務まで頼んでしまって、今とあまり変わらない状況になってしまう気がするので」

プロジェクトマネージャーの仕事は、成果物を期日までに着地させる管理と調整の全般。取引先、社内、プロジェクトに関わるスケジュールそのほか全てについて、常に全体像を把握しながら最適化していってほしい。

まずは羽田さんに秘書のようについてROLEの価値観を体に染み込ませつつ、より良い業務分担や組織の在り方をつくっていく。

既成概念にとらわれず、オリジナルな方法論を編み出していくのは、すごくおもしろい仕事だと思う。

「ROLE発信の何かをしたいとも思ってるんです。工芸産地かつROLEならではのプロダクトをつくるとか、ビルの3階が空いてるから、ゲストハウスをやるのもいい。そうするとまた街に新しい人の流れができますよね。やりたいけど手が回ってないこともたくさんあって」

事務所に併設するギャラリーでの展示会や、レセプション等の空間デザインを行うこともある羽田さん。

仕事を交通整理しながら、人と人、技術、もの、土地を結びつけていく。おいしいものや楽しいことに敏感で、くるくるアンテナを張っている人なら、どこまでも立体的な展開が広がっていきそう。

継続に関しては、重く考えすぎなくていいという。

「長く勤めてほしいとも、長く勤めないでほしいとも思っていません。1年でさようならはちょっと困るけど、最低2年はいてくれたらいいなと。もちろんずっといてもらってもいいですし」

 

この日は春に独立するというデザイナーの久保田さんにも話を聞いた。

久保田さんは東京出身で、羽田さんと同じ美大を卒業。従業員35人ほどの大きなデザイン事務所で3年働いたのち、ROLEへ来た。

「前の職場ではいわゆるDTP作業員で、やれることが限られていて。ここでは全体を組み立てられるので、得るものがすごく多い。独立するにはビジュアルの制作だけじゃなくて、進行管理や提案も重要だと実感しました」

「知り合いもROLEに来てからのほうがすごく増えましたね」

プロマネになる人は何よりも羽田さんとの呼吸感が大事だろうと久保田さん。羽田さんはどういう人ですか?

「外から見ているときは、天才なのかなって思ってたんです。腰が重そうな老舗和菓子屋さんや日本画の美術館なんかと、どうしてあんな振り切った仕事ができるんだろうって不思議で」

「でもなかに入って、それは裏側でのめちゃくちゃな努力があっての仕事なんだと知りました。お客さんによっては良い案を出しても白紙にされたり、結局丸く落ち着いちゃうこともある。そういう難しさもあるなかで、外に届ける提案を続けてるんですよね」

ROLEで学んだのは、デザインがどう世の中で機能するかの想像力と、クライアントへの思いやりだという久保田さん。

独立後もさまざまな人とのつながりができた高岡で活動していくそう。

ただ、世の中の状況は刻々と変化していく。最近は伝統工芸界の動きを牽引してきた高岡の街のうねりが良くも悪くも落ち着いて、次のアクションが必要になっている、と羽田さん。

「これからまた何かしないといけないって、使命感もあるんですよ」

必要な役割を果たし、街や伝統の潜在的な力をかたちにしていくROLEの働き。プロマネという新たな職能を得た新生ROLEは、街にどんな変化をもたらすだろう。

投げかけたものが、どう広がっていくかは、時流の読み方と投げ方次第。

その一投にワクワクする人、まずは羽田さんの話を聞いてみてください。

(2022/1/11 取材 籔谷智恵)

撮影時はマスクを外していただきました。

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