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早起きは三文の徳
海のうえで
気持ちよく稼ぐ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

健やかに生きていくために、必要なものってなんだろう。

時間、お金、人との関わり、仕事のやりがい、自然との近さ、趣味、刺激…。

人によって大事なものは違うかもしれません。

今回紹介するのは、朝早くに出て昼過ぎには終わる、ちょっと特殊なタイムスケジュールの仕事です。こんなリズムで働けたらと、頭のどこかでイメージしていた人もきっといるはず。

鹿児島県長島町で、ぶりやかんぱちの養殖に携わる人を募集します。

仕事の内容はいたってシンプル。魚に餌をやり、水揚げ・加工し、発送する。基本的には、この繰り返しです。

養殖ぶりの生産量日本一を誇る長島町。そのなかで漁協に属さず、独自に商品開発や販路開拓を続けてきた有限会社鶴長水産で働くことになります。

自然や生きものと向き合いながら、日々淡々と体を動かす。そんなリズムのなかでこそ、見えてくる生活の形もあるような気がします。経験は問いません。

 

鹿児島県の北西端に位置する長島町。

4つの有人島を含む大小23の島々からなるまちで、人口はおよそ1万人。一番大きな「長島」には橋がかかっているものの、鹿児島の空港や市街地からは、いずれも車で2時間ほどかかる。

雨のなか車を走らせ、やがて小高い丘のうえに鶴長水産の看板を見つけた。振り返ると湾が広がっていて、養殖用のイカダがいくつも浮かんでいる。

天気がよければもっと気持ちいいだろうなあ。

事務所に入ると、すぐ左手の扉の窓から鶴長さんの背中が見えた。氷水から大きな魚を取り出し、ものすごいスピードで捌いている。

「魚捌きは我流です。九州で一番ぐらい早いかも。疲れない切り方を自分で編み出すんですよ」

言葉に迷いのない、サバサバした方だな、というのが第一印象。

作業がひと段落したところで、事務所に移って話を聞くことに。

お父さんの代から続く鶴長水産は、鶴長さんの生まれた44年前に創業した。

鶴長さん自身、幼いころから継ぐつもりでいたという。

「わたしは三男坊なんです。一番上の兄貴が学校の先生で、次男はうちで一緒にやってます。小さいころから親の洗脳が入ってて」

洗脳、ですか(笑)。

「あなたがするんだ、するんだ… これずっと言うんですよ。ああ、よかよーって返事してるうちに、今に至ります(笑)」

「海の仕事は最初にはじめる人が大変です。設備投資で何億とかかりますから。ほんで売るのは、仕掛けて1年半か2年後。引き継ぐのは楽ですよ」

とはいえ、走りはじめてからもお金のかかる養殖業。餌代だけで、毎日200万円ほどかかるのだとか。

「毎日大型車一台分くらい、ドカドカ食いますね。こういうとこで茶飲んでたほうが安いです。生きもの相手だから常にリスクもありますし、言ってみれば博打ですよ」

海中のプランクトンが異常に増えて発生する「赤潮」の影響で、平成21年には1億円以上の被害が出た。

その後、養殖の網を水中深くまでのばしたことで、被害はほとんどなくなったものの、リスクを伴う仕事であることに変わりはない。市場の相場は変わりやすいし、“魚ばなれ”が進んでいるというデータもある。現に、養殖業者の数は全国で少しずつ減っているそうだ。

「うまくやらないと、採算が合わなくなってきてるんでしょうね。でもぼくは突き進みますよ。だいたい、リスクがあったほうがおもしろいんです」

その言葉通り、鶴長さんは厳しい状況をあえて楽しむように、さまざまなチャレンジを重ねてきた。

たとえば、ボンタンぶり。

お隣の阿久根市の特産品であるボンタンをシャーベット状にし、餌に混ぜることで、臭みのないすっきりとした味わいのぶりが育つという。

「うちに子どもがいますけど、贅沢こいてこれしか食わないんですよ。それぐらい、全然違いますね」

またあるとき、鶴長さんは全国の相撲部屋にぶりを送った。ぶりが出世魚であることにちなんで、昇進時の縁起物として贈るのはどうかと考えたそう。

知り合いもツテもない業界へ飛び込み、結果としてそこから「昇格ぶり」という贈答品の商品化につながった。

ボンタンぶり生餃子、昇格ぶりカツ、ぶりツナ…。その後も次々に新しい商品を生み出してきた鶴長さん。帝国ホテルにも魚を卸しているという。

そもそもなぜ、長島のぶりはおいしいんですか。

「ここは海流がいいんですよ。川のように流れているところもあります。そうするとやっぱり、魚は泳ぐじゃないですか。泳ぐと筋肉ができてくる。今は養殖技術はどこもほとんど変わらないと思うんですけど、環境の違いは大きいと思いますね」

東シナ海と八代海に挟まれた黒之瀬戸海峡は、日本三大急潮とされるほど潮の流れが速く、古くは万葉集にも詠まれる海上交通の難所だった。

1974年に橋がかかるまでは、九州本土との行き来も一苦労。その環境が今では島の産業を支えているのだから、おもしろい。

さらに、鶴長水産がユニークなのは、漁協に所属していないということ。

「個人向けに売ろうが、長崎の市場に出そうが、東京に売ろうが勝手なんですよ。その代わり、バックに誰もついていないっていう。だから資金繰りも何も全部、自分でしないといけない。ある意味すごく自由ですよね」

今回は、そんな環境で鶴長さんと一緒に働く人を募集する。

出勤は午前6時が基本。出荷数に応じて水揚げした魚を締め、ひたすら捌く。

短めの休憩を挟んで、今度は餌やり。フォークリフトを使って餌を積み込み、イカダのそばに船をつけたら、機械で餌をまいていく。

内勤のスタッフはそのあいだ、加工場で袋詰めや包装を進める。

「早い人は10時ごろには上がってきますね。12時から、遅くても14時には終わります。夏場なんか暑いから、早くやめろって言いますもん」

朝に出て、お昼には終わる仕事。健康的でいいですね。

「一回海やると、ほかの仕事はなかなかできないですよ。朝が早くて大変なイメージもあるだろうけど、慣れれば全然。年中スーパーサマータイムですから」

それ以外のイレギュラーな仕事といえば、3〜4月に稚魚をとりにいくことと、年に数回の大口出荷に向けて、4時半に出勤することぐらい。

餌を食べたり食べなかったり、その日のコンディションによる魚の変化もあるので、鶴長さんから出すのは大まかな指示のみ。仕事の進め方は各自に大きく委ねているそうだ。

「いっときは勉強です。見て覚えればいいんです。だんだんわかってきますよ。ああ、こうしたらいいんだ、ああしたらいいんだって」

お話を聞いていると、なんだかとても簡単そうに聞こえます。

「簡単、簡単。誰でもできますよ。毎日走ってたらそこそこ足が速くなるのと一緒です。餌もリフトで運ぶし、魚を締めたり箱に入れたりするのも、肉体労働ってほどじゃない」

「多く働いたら、そのぶんボーナスでドカンと出します。そうしないとおもしろくないじゃないですか。なんだかんだお金も大事です。言葉でどうこう言うよりもね」

スタッフは正社員が5名とパートタイムが2名。個人で進める仕事がほとんどなので、チームで何かに取り組む機会は少ないし、ある種ドライに感じるかもしれない。

そのぶん、効率よく働き、しっかり稼いで、なおかつ自分の時間をつくれる仕事でもある。自然と朝型になっていくだろうし、自分のペースで新しい生活リズムをつくりたいという人には合っていると思う。

「仕事が終われば、酒飲んでようが、デートしようが、寝ようが、人の勝手ですわ。やるべきことやればいいだけの話なので、とにかくガチガチにはしません。けど、自由には責任があるんだよってことはいつも言いますね」

鶴長さんは、どんな人と働きたいですか。

「ずっと転々とする人は、あんまりよろしくないなあ。それもそれでひとつの人生だけど、いっちょマスターせんか、と思いますね」

なるほど、ある程度腰を据えて取り組める人。

「うん。あとはできれば、事務系のことができる人に来てほしい。今は普通の人が10分で済む作業を、1時間ぐらいかけて自分でやっているので(笑)。現場も事務方もできる人だと助かります」

 

そんな鶴長さんに代わって、今回の取材に向けたメールのやりとりに入ってくれたのが小楠さん。長島を舞台にした映画のプロデュースのため、地域おこし協力隊として長島で活動し、そこで鶴長さんとも知り合ったという。

現在は任期を終えて長島を離れているものの、地域での暮らしのことなど、外からの視点で後日話を聞かせてもらった。

「コロナ前までは絶えずやっていたぐらい、長島ってイベントが多いんですよ。お祭りやまち歩き、アート展とか。島内向けだと、集落の対抗行事もあります。若い人からベテランの人まで、みんなで集まってわいわいソフトボールの試合をしたあとに、飲ん方だ!って。あ、反省会だったかな?なんも反省しないけど、反省会」

そういうテイでやるんですね(笑)。

「建設業や役場、漁業組合の人、農家さんだったり、個人商店だったり。職種も年代も超えて、ぎゅっと集まってみんなで仲良くなれる。ぼくみたいな余所者も、そこで顔覚えてもらえたり、おうちのバーベキューにお呼ばれしたりして、居心地はすごくよかったですね」

直近はそういった集まりも減ってしまったものの、おおらかに迎え入れてくれる空気感はある。

今回入る人も、社内だけにこもらず、地域に対してもオープンになれる人だと、長島での暮らしを楽しみやすいかもしれない。

「あまりプライバシーはないですよね。どこどこにいたでしょ?とか、よくあります。そういう島ならではの距離感の近さがある反面、大陸っぽいスケール感もあって」

大陸っぽい?

「無人島も含めてたくさんの島があるし、漁業だけじゃなく、農業や畜産業もある。そもそも長島町って、13年ぐらい前までは東と西で町が分かれていたんです。東西で文化も違うし、言葉もちょっと違う。一括りにできないおもしろさがあると思います」

橋でつながっているとはいえ、もともとは離島だった長島。都市部へのアクセスはけっしてよくないけれど、いっそ足元に目を向けて、地域の魅力を深掘りしてもおもしろいと思う。

ちなみに、小楠さんから見て鶴長さんってどんな方ですか?

「かっこいいなって思いますね、一言でいうと。断るところを見たことがない。同年代の養殖業者さんも、鶴長さんはすごいよって尊敬してる人もいるぐらい、熱心に仕事をしている人だなと感じます」

映画の制作にあたっても、実行委員会に入って地元の協力を呼びかけたり、撮影で養殖の現場を開放したりと、快く受け入れてくれたそう。

養殖業のこと以外でも、鶴長さんと身近に働くなかで気づくこと、学べることはいろいろあるように感じました。

転職というより、生活を変えてみようというつもりで飛び込めば、これまでと違った視界が開けるかもしれません。

(2021/11/22 取材 中川晃輔)

撮影時はマスクを外していただきました。

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