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未来に種まく
サステナブルな修学旅行

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

徳島市内から車で約1時間。市街地をあっという間に抜け、信号の少ない山道を走っていくと、人口およそ1500人の上勝町にたどり着きます。

料理に彩りを添える“つまもの”を栽培・出荷する「葉っぱビジネス」や、45種類の分別をはじめ、ゴミを出さない町を目指す「ゼロ・ウェイスト宣言」など。小さな自治体ながら、数々の先進的な取り組みが注目を集めてきた上勝町。

葉っぱやゴミといった身の回りのものに、新しい角度から光を当てて価値を生む。その手法を学ぼうと、これまでも国内外から視察や研修を受け入れてきました。

とくに近年は、SDGsへの関心が高まっていることもあり、企業からの問い合わせも増えているそうです。

そうした視察や研修の受け入れを担ってきたのが、合同会社パンゲア。今回はここで働く人を募集します。

主に担当してもらいたいのは、修学旅行の受け入れです。各学校の先生から想いを聞き、一件ずつオーダーメイドで企画・運営していきます。経験は問いません。

まず思ったのは、「自分の知っている修学旅行じゃない!」ということ。学校にもよると思いますが、最近の修学旅行はだいぶ変わってきているようです。

 

パンゲアのみなさんに話を聞くのは、今回で3回目。過去2回は、上勝町でのフィールドワークや座学を通じて事業プランを考え、発表する「上勝起業塾」の取材だった。パンゲアでの募集ははじめて。

状況を鑑みて、今回はオンラインで話を聞くことになった。まずは代表の野々山さんから。

昔からなんでも自分でやってみたかったという野々山さん。高校生のころには、宇宙飛行士を目指していた。

「未来の宇宙飛行士を育てる『スペースキャンプ』という取り組みがあって。NASA宛にたどたどしい英語で手紙を書いたら、ちゃんと返事がかえってきたんです。年齢制限で参加資格はなかったんですが、オブザーバーとして参加させてもらいました」

その後は現地の大学に通い、大学の先輩の両親が経営する会社に就職。日本食ブームに乗って、ショッピングモールでの日本食レストランの開業支援を手がけていた。

「長いとこだと3年くらい、スタートアップからベタ張りで一緒にやっていくようなお仕事でしたね。そこで事業をやる人たちを間近に見ていたので、自分でもやってみたくなったんだと思います」

帰国後は人材会社に勤め、やがて起業を志すように。

上勝町にはじめて訪れたのは2011年のこと。きっかけは、テレビで見かけた葉っぱビジネスの特集だった。

「葉っぱはだいたいどんなまちにもあるものですよね。これだったら、ほかの地域で自分もできるんじゃないかと思って」

ただ、実際に現場を訪ねてみると、そう簡単に真似できないことがわかった。木の苗を植え、育てて、収穫して…と、準備段階でもかなりの時間がかかるからだ。

1ヶ月の滞在を終えて、地元の愛知に戻った野々山さん。その後、葉っぱビジネスを立ち上げた株式会社いろどり代表の横石さんから「上勝町の交流人口を増やす事業ができないか?」と相談を受け、年間で20回ほど上勝へ通うようになる。

「自分で事業がしたいと常々言っていたので、たぶんそれを覚えてらっしゃったんだと思います。そこからいろんな話を詰めていって、2013年の4月に上勝町ではじめての地域おこし協力隊として赴任しました」

まちの交流人口を増やすために、何ができるか。野々山さんは、滞在拠点とコンテンツに注目した。

協力隊期間を通じてさまざまなつながりをつくりながら、2016年にパンゲアを設立。任期満了と同時に、それまで第3セクターが運営していたキャンプ場の指定管理を受託し、ソフト面では視察や研修の企画・受け入れをはじめた。

当初は行政関連の視察が多かったものの、修学旅行のニーズが増加。近年はSDGsの文脈もあり、ゼロ・ウェイストに関心を寄せる企業からの問い合わせも多いという。

「うちでもこんなことがしたい!という声はよく上がります。ただ、ぼくが葉っぱビジネスに挫折したように、上勝町で成立していることをそのまま移植することはできない。どうして今の形になり得たのか、そのプロセスを共有することが大事だと思っています」

プロセスを共有する。

「たとえばいろどり代表の横石さんは、その土地の住民性や心理をちゃんと掴むことが大事だって言いますね。農家さんを下の名前で呼んだり、商品のパック詰めがきれいだったら、そのものを褒めるんじゃなく『いつも家をきれいにしてるんやね』って声をかけたり」

そういう過程の話って、“成果”と比べてあまり表立って語られないですよね。

「そうそう。上勝町を表面的に真似するだけじゃなくて、自分のまちなら何ができるか、将来どんな会社にしたいか、個々にとっての豊かさはなんぞや?と問いを立てながら、その過程の考え方を身につけてほしいんです」

今回募集したいのは、中高生の修学旅行の受け入れ担当。現在は野々山さんがその役割を担っている。

「受け入れ当日は、人数がいればなんとかなるんです。大変なのは準備段階で」

学校や旅行会社から問い合わせを受けたら、まずはしっかりとヒアリングする。

「人数規模や滞在期間といった具体的な情報もそうですし、どんなプログラムにしたいのか、先生方の想いや考えをたしかめることが大事です」

葉っぱビジネスを生徒たちに体験してもらいたいのか、ゼロ・ウェイストの考え方に触れてほしいのか、あるいはもっとざっくりしているのか。学校によって方針はさまざま。

一学年16人ほどの学校もあれば、一挙に170人ほど受け入れることもある。人数や時間の制約を踏まえつつ、旅程を組んでいく。

「修学旅行の1ヶ月前には学校を訪問して、体育館などで上勝町について事前のインプットをします。クラスや班ごとにテーマを設定して、修学旅行当日もそれをもとに進めていきます」

葉っぱの収穫や出荷体験、地域の事業者のインタビューなど。さまざまなことに取り組みながら、それぞれのグループのテーマを深掘りし、最終日には学んだことの発表の機会まであるという。

「高校生なんかはとくに、大学に入って自分で服を買う機会も増えると思うので、ファッションとゼロ・ウェイストの関係をクイズ形式で出題したり。お昼は自分たちでカレーをつくるんですが、皮を剥いたらゴミが出るとか、食べ切れる量をつくるとか、そういう視点を得てもらったり。2泊3日くらい時間をもらえると、いろんなことができますね」

なんだか、自分の知っている修学旅行とはだいぶ違った印象です。学びの要素が強いというか。

「2020年度から学習指導要領が改訂されて、アクティブラーニングやキャリア教育がキーワードとして入ってきたんです。それに対応する教科書も教え方も確立されていないなかで、まずは修学旅行から取り入れていこうという学校さんが増えているんでしょうね」

修学旅行の思い出の大半は、友だちと過ごした時間が占めているという人も正直多いと思う。ぼく自身もそうだ。

だけど、もともと環境問題や起業に興味のある生徒にとっては、その後の進路選択に関わってくるかもしれないし、のちのち関心を持ったときに「そういえば」と思い出す人もいるかもしれない。

もちろん、ただ知識を詰め込むだけの企画では成り立たないので、「楽しく学べる工夫は必要」と野々山さん。そこに担当スタッフの腕の見せ所がある。

これから入る人は、まずは何度か事前準備や受け入れに立ち合うなかで、進め方を身につけていってほしい。

最初のうちは裏方の作業をしたり、ついていけていない子がいたら声をかけたりと、些細なことからでいい。まちの取り組みについても少しずつ理解を深めて、ゆくゆくは野々山さんと同じように、人前に立ってのプレゼンテーションや窓口の役割も担ってもらえたら、とのこと。

視察や研修でも、修学旅行においても、野々山さんは「先入観やバイアスをいかに外すか」を意識しているという。

「葉っぱビジネスもゼロ・ウェイストも、ありふれたものの見方を変えることで価値を生んでいる。その感覚を、いかに訪れる人に掴んでもらうかが大事になってきます。まあ、言葉でいうほど簡単ではないんですけどね」

 

その点、「子どもたちから学べることは多い」と話を継いだのは、2016年に入社したスタッフの新居(にい)さん。

子ども向けの自然体験キャンプを中心に、修学旅行の企画・運営も担当している。

「小さな石ころを拾って、めちゃくちゃきれい!って眺める子がいて。よーく見ると、いろんな色の粒々が混ざっていたり、形から何かを連想していたり。川のなかにも青や黒だけじゃなく、白や黄色が混ざっていることに気付いたり。大人が子どもたちから教わること、多すぎる!って思うんです」

たしかに、子どもと過ごしていると、自分の当たり前が次々と覆されますよね。大人にとって子どもは、「枠にとらわれない目線」の先生とも言えそうです。

「子どもの感性やアイデアと、大人の知恵を合わせて、一緒に遊びをつくっていく。日々そういう場面の連続ですね」

夏はもっぱら川遊び。

ただ出かけるだけでもいいけれど、宝の地図や挑戦状を準備して、ゲームのような仕掛けをつくることもある。

火おこしも、マッチを使ったり、薪を割るところからやってみたり、図示しながら火がつく原理を学んだり。年齢に応じてさまざまな体験ができるように工夫している。

「小さな達成感を積み重ねて、自信をつけながら自然のなかに入っていってほしくて。今は、あれもこれもダメって、抑圧される環境が多いですよね。自然の楽しさも危険性も、上から伝えるんじゃなく、一人ひとりが自分で気づくお手伝いができたらと思うんです」

プログラムは毎週末に企画しているので、何度も参加している子は顔と名前がお互いに一致してくる。

「わたし、キャンプネームが『ワカメちゃん』なんですけど。“ワカメちゃんにまた会いたい”って言って来てくれる子もいます。お仕事を通じて、人間的なつながりをつくれることはうれしいですね」

新居さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「好奇心のある方ですかね。あれをやってみたい、こういう経験を積みたいとか。わたし自身、けっこう公私混同していて、プライベートでの気づきが仕事につながったり、個人的に企画しているイベントにパンゲアのお客さんが来てくれたり。そういう働き方が楽しくて」

お隣の勝浦町出身で、実家が農家の新居さん。田植えや土いじりの体験イベントを自主的に開いているそう。

ほかにも学生インターンを中心に、リサイクル文化が根付いていた江戸時代の暮らしぶりに学ぶ「バック・トゥ・ザ・エド」や、最近買ったものがどこでつくられ、どんな行く末を辿るのかを考えてみる企画など、ゼロ・ウェイストをテーマにした新しいコンテンツづくりにも取り組んでいるところ。

自然や人との出会いから学び、還元していく。そんなサイクルに喜びを見出せるような人を待っています。

(2022/2/5 オンライン取材 中川晃輔)

写真は過去の取材で撮影したもの、新たに提供いただいたものを使用しています。

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