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研究室にまだないものを
理化学ガラスの御用聞き

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

小学校や中学校時代、理科室にあったビーカーやフラスコ。これらの実験器具は、理化学ガラスという特殊な素材でつくられています。

最近は実験の用途だけでなく、インテリアや蒸留器として使う人も増えているそう。たしかに、お店などでも花器やディスプレイに使われているのを見かけるようになりました。変わった形のものが多いし、丈夫なので、さまざまな見立て方ができるのが魅力なのかもしれません。

そんな理化学ガラスを扱っているのが、関谷理化(せきやりか)株式会社。メーカー品や理化学製品の卸をしつつ、職人へ理化学ガラスの加工用素材も販売しています。

今回募集するのは、卸営業の担当者です。主に理化学製品を扱う商社に対して、製品を販売していく役割になります。

カタログに載っているような既製品を販売するだけでなく、職人と相談しながら特注品をつくったり、壊れてしまった製品の修理に対応したり。ものづくりと研究の現場、両方に関われるおもしろさがある仕事だと思います。

 

東京・日本橋。

日本橋三越から歩いて5分ほどの場所に、関谷理化の本社がある。

ビーカーやフラスコが並ぶ1階を通り抜け、階段で4階へ。迎えてくれたのは、代表の関谷さん。

関谷理化は、ビーカーやフラスコなど、主に理化学実験に使われる理化学ガラス製品とそれに付随する研究用製品、加工用のガラス素材を販売している会社。

創業89年。関谷さんで3代目になる。

「祖父は函館の生まれで、単身東京に出てきて理化学ガラスの世界に入ったと聞いています。実験用の器具とか、理化学ガラス以外の製品の代理店を担うことで、企業の研究所や大学の研究室まわりものは一通り販売できるという体制でやってきました」

理化学商社に製品を卸し、主に研究者などのエンドユーザーの手に渡っていく。一般的にはあまり馴染みのない、BtoBの商売が長年の軸だった。

そのなかで直近は、BtoCの事業も展開。そのひとつが、東京・清澄白河にある直営店「リカシツ」。

ビーカーを花瓶として使ったり、フラスコを電球にしたり、理化学ガラスの新しい使い方を提案することで、一般の人も理化学ガラスに触れてもらえるような場をつくっている。

「今までにない、新しいことをはじめないといけないって思ったきっかけがあって。それが、理化学ガラスの職人さんがどんどん減っている、ということなんです」

「さらに言うと、企業の合併で研究施設が減ったり、少子化で大学が縮小したりと、直接的な売り先がじわじわと少なくなってきている。僕らは研究開発支援産業って言われるんですけど、研究開発向けだけでは将来的に厳しいのが見えてきていて」

理化学ガラスというニッチな領域において、売り先が減ることは大きな打撃になる。それは製品や素材を扱う関谷理化はもちろん、理化学ガラス職人にとっても一大事。

「職人さんの仕事をなくさないためにも、売り先のフィールドを広げることが、僕たちにできることなのかなと。リカシツはその手段の一つですが、BtoBの領域でもまだまだできることがあるんじゃないかと思っているんです」

BtoBの新しい可能性のひとつとして関谷さんが考えているのが、特注品の受注を増やすこと。

通常、理化学ガラス製品の多くはカタログに載っている既製品で、注文された品番通りのものを販売している。

一方で、形や大きさなど、既製品では対応できないものを求められたときは、職人さんに特注でつくってもらっているそう。

「うちの特色は、理化学製品のなかでもガラスの分野に強いということです。ガラスは職人さんによる手づくりなので、特注で頼むものを増やしていけたら、会社にとっても職人さんにとっても、そしてユーザーにとってもプラスになる。今回募集する人には、その領域を開拓していってもらえたらと思っています」

特注品の依頼を得るためには、ディーラーに対して「自分たちはこんなものもつくれますよ」ということを知ってもらう必要がある。

その上で、ユーザーにどんな困りごとがあるのか、御用聞きのように掬い上げてものづくりに反映していくことも必要。

「既製品が多くを占めるなかで、新しい可能性を模索していくので、もちろん初めは難しいはずです。徐々にそういうところにも考えを巡らせていってもらえたら、と思っています」

関谷さんの話を聞いていると、理化学ガラスの職人さんたちとの関わり方がひとつのポイントになってきそうな感じがする。

「うちの場合、職人さんは加工素材を販売するお客さんでもあり、モノをつくってもらう仕入先でもある。少し特殊な関係性だからこそ、フラットな人間関係をつくっていくのがいいんだろうなと思っていて」

「たとえば、材料を買ってやってるんだぞ、みたいな態度をされてしまうと、フラットじゃないですよね。飲み仲間みたいな付き合い方、っていうのかな。どっちかが無理してると、必ずしわ寄せが来て楽しくない。お互いウィンウィンでありたいなと思っているし、それが一番大事なことだと思います」

 

今回募集するのは、卸営業の担当。

受注処理や見積もり作成といった事務作業もしつつ、納品や営業のための外回りもする。客先やメーカーへは社用車で移動することが多いそう。

具体的にどんなリズムで働いているのか、卸営業を担当している大島さんに聞いてみる。

理化学ガラスのメーカーで働いたあと、ディーラーに転職。そして関谷理化へ。理化学ガラス業界の仕事を一通り経験してきた方だ。

「ほぼ毎日外に出ていますね。一日中会社にいることは少ないです。納品や営業以外にも、割れちゃったものの修理を依頼されることもあって。そのときは、引き取ったあと職人さんのところへ行って、修理をお願いします」

「あとは特注品を依頼されたとき。どんなものをつくりたいのか、しっかりヒアリングして職人さんのところへ持っていきます」

特注品って、どんなものがあるんでしょう。

「そうですね… たとえばガラスの瓶に、何箇所か枝管をつけてほしいっていう依頼があって。管を何本かつけられるようにしたいけど、既製品にはそれに応えられるものがなかった。特注だと、下から1センチのところにつけるとか、細かく調整できるので、要望をしっかり聞いて職人さんに伝えるようにしています」

こういうものつくれますか?と聞かれたときに、すぐ判断できるものなんでしょうか?

「それはやっぱり経験が必要だと思います。たとえばメスシリンダーの修理でも、上の部分が欠けたのであれば、欠けた部分の断面を加工すればいいんですけど、下の足の部分が欠けると直すのは難しい。それってつまり、ガラスはパーツをあとから足すことができないからなんですよね」

なるほど… 経験があってこそわかることなんですね。

「最初は職人さんに聞いて、お客さんに説明して、の繰り返しだと思います。僕だって、今でこそわかったふうに話してますけど、今までたくさん恥をかいてきていますからね(笑)。だから最初は間違えながら、教えてもらいながらで大丈夫だと思います」

「特注品とかは面白いんですよ。どういう実験で使うんだろうって、初めて目にするものばかりなので。知らなかったことを知れるのは面白いですよ」

営業チームは、大島さんも含めて2人。通常のカタログ注文は事務の方が対応してくれるため、大島さんは特注品や修理などを担当することが多いそう。

「うちは営業ですけど、個人で数字をひたすら求めるような感じではないと思います。目標は各々が背負うものじゃなく、チームで達成できたらいいっていう考えでやっているので」

個々人の数字じゃないとすると、大島さんが働くモチベーションはどういうところにあるんでしょう。

「誰からお金をいただいているんだって考えると、やっぱりディーラーさん、ひいては製品を手にするユーザーさんの要望に応える必要があると思っていて」

「どうやったら相手がうれしいだろうって考えると、顔が見えてくるんですよね」

顔が見えてくる。

「そう。ディーラーさんも、ユーザーさんに対していい提案ができたら、きっとうれしいじゃないですか。そのために自分ができることってなんだろうって考えて、ベストな提案をしたいですよね」

「最近、大島さんがいるからって注文をくださった方がいて。そんなふうにいい関係性をつくっていくなかで、自ずと提案の機会も増えていくんじゃないかなと思います」

 

最後に話を聞いたのは、昨年の8月に日本仕事百貨の記事を見て入社した下倉さん。主にBtoCの企画営業を担当している。

入社してみて、どうですか。

「社長のフットワークがとにかく軽いんですよ。気になるものを見つけたとき、すぐに現地に行ったりするし、ふとした相談もちゃんと聞いてくれる。社長以外の先輩も、相談ごとにすぐのってくれて、声の届く範囲にいてくれているのはありがたいなと思います」

卸営業も、最初のころは製品の知識を増やすためにリカシツへ行くこともあるそうなので、下倉さんと会うことも多いと思う。

「私が卸営業の人と話すときは、製品の本来の使い方を聞くことが多いです。ここに入るまで、理化学製品のことはほとんど知らなくて。丸っこいビジュアルがかわいいな、くらいの認識だったんですよね」

「見た目がかわいいでも、ガラスが好きでも。なにかしらのとっかかりを持っていれば、そこから学んでいける環境はあります。愛を持って、知識を広げていきたいって思う人が来てくれたらうれしいです」

 

代表の関谷さんも、やってみたいと思ったことにはチャレンジしてほしいと話していた。

お客さんの要望に応えるために、こんなものをつくってみたらどうだろう。実験と検証を繰り返す、理科の実験が好きだった人にとっては、面白い環境かもしれません。

研究とものづくりをつなぐ世界。面白がれる人は、きっと少なくないと思います。

(2022/2/15 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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