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SHIBUYA CHEESE STANDはその名の通り、渋谷にあるチーズ屋さんです。店頭に並んでいるのは、東京・清瀬の牧場から届いた新鮮な牛乳でつくったフレッシュチーズ。
「街で出来たてのチーズを」をコンセプトに、チーズのさまざまな楽しみかたを紹介し続けています。

仕事は多岐に渡りますが、特に、数字をしっかり見ながら、会社の文化や空気感をつくるような役割になると思います。
ほかにもチーズケーキ職人や店舗で接客やオンラインショップの運営に携わる人も募集中。
誰も歩いたことのない道を進んでいく。そう聞いてワクワクする人は、ぜひ読み進めてみてください。
代々木公園から、NHK方面に向かって徒歩6分。
奥渋と呼ばれ、人気のお店が並ぶエリアの一角にあるのが、SHIBUYA CHEESE STAND。

まずは代表の藤川さんに、この店をつくった経緯について聞かせてもらう。

高校を卒業してすぐ料理の道に進むことも考えたものの、いったん進学を選び、大学ではイタリア語を専攻。ラグビーとバイトに明け暮れる楽しい大学生活を送った。
「4年生のときに、バックパッカーでいろんな国を回りました。そこで自分の夢を叶えようとしている人にたくさん出会って。なかには料理人になるためにイタリアに来たんだっていう人もいて」
「そういう人たちの話を聞いて、旅の途中で眠れなくなったんです。僕も本当は料理がやりたかったんじゃないかって。悩んでいてもしょうがないので、そのままナポリピザの店に行って。飛び込みで3ヶ月、働かせてもらうことにしました」
お店があった南イタリアは、チーズの生産地として有名な地域。周りにはチーズ工房がたくさんあった。
「工房で、できたてのモッツァレラチーズを食べさせてもらいました。本当にすごく感動して、なんだかうれしくて。チーズの店をやってみたいと思ったのは、そこがはじまりですね」
その後帰国して、日本でもナポリピザの店で働きはじめた藤川さん。
自分でお店をやる覚悟を決めたのは、お店の研修で、アメリカのシェ・パニースというレストランを訪ねたときのことだった。
「素材を大切にすること、顔の見える生産者のものを使うこと、持続可能な社会を考えることを1970年代からずっと提唱しているレストランで。もちろん料理はおいしかったですし、僕はそこまで考えたことがなかったって感動しました。そのとき、食に生きていこうと決めたんです」

モッツァレラやリコッタなどのフレッシュチーズをつくって販売する店は当時東京にほとんどなかったため、仕入先探しから保健所とのやりとりなど、試行錯誤の連続だった。
「牛乳は都内の牧場から、毎朝3時に届けてもらいます。牛の食べる餌や季節によってミルクの味は違うし、温度やphの小さな変化で乳酸菌の働きも変わります。ぶれを減らしていくのが、職人の仕事ですね」
「今日こうなったから明日はこうしてみようって。毎日深堀りしながら、理想の味に近づけていく。10年やってミルク感が強くなったし、モッツァレラは余韻の長さみたいなものが出せるようになってきました」
日本ではじめて、生クリームとモッツァレラを包んだブッラータというチーズの商品化に成功。
藤川さんたちのつくるチーズは、毎年のように国内外のコンテストで賞を受賞している。
「賞が欲しいというよりは、それによって認知度も売上も上がるし、なにより働いている子たちのプライドにつながりますよね。そこは妥協なく、今後もやっていきたいことのひとつです」

テレビで紹介され、長い行列ができるような時期もあったそう。
チーズを販売するだけでなく、ワインとペアリングして楽しむイベントを開催したり、チーズづくりをパフォーマンスとして披露したこともあった。卸先も増え、料理人とのつながりもだんだんと増えていった。
「朝チーズをつくって、お店に入って、夜はイベントして。10年前ってフレッシュチーズは身近なものではなかったし、できたてのチーズはおいしいっていう概念すらなかったと思うんです。やればやるほど、オセロを裏返していくような感じで楽しかったですよ」
製造量を増やすため、2016年には徒歩5分のところに工房とショップををオープン。スタッフも増え、できることもぐんと増えていった。
「ただ、それぞれに働く時間帯も違ったのでコミュニケーションがとれなくて。スタッフが一気に離れてしまうこともありました。みんなに申し訳なかったし、大変でしたね。制度を見直しながら、今、ようやくチームができてきたような感じがしています」

藤川さんは日本各地でチーズづくりをしている人たちと一緒にイベントを開いて情報交換をしながら、人の輪を広げている。
ほかにも料理人や生産者を紹介するオウンドメディアを運営したり、料理人とコラボしてレシピを考えたり。チーズのキャラクターが登場する漫画や絵本づくりなども行っている。
「僕、クリエイティブな時間が好きなんです。ついこの間オープンした尾山台の新しいお店も、大変でしたけど、考えてる時間がすごく楽しくて。おもいつきでいろいろやっちゃうから、日々の運営を考えるスタッフは大変だと思うんですけど」
今も職人としてチーズをつくることもあるという藤川さん。チーズをつくり、つくり手とつながり、クリエイターと話し、お店を運営する。
いろんなことをやり続けるエネルギーは、どこからくるんだろう。
「ほかの人がチーズでおもしろいことやってると、悔しいんですよね。チーズってすごくおもしろいんだっていうのを伝えていきたいし、もっとチーズの消費量を上げたい。チーズを軸にしてできることが、まだまだあると思うんです」

新たな動きのひとつとして、自分たちの考えていることを整理して世の中に伝える準備を進めている。
「国産のチーズを見かけることが増えた気がしませんか。ちょっとずつ、僕らのやってることがあたり前になってきた感じがするんですよね。僕たちはなにをやっていくのか、どういう会社なのかを、整理するタイミングなんだなって」
「遊び心を持って、自分たちで考えてやっていく。そのためにも、店舗を責任持って運営してくれるマネージャー的な存在が必要なんです。僕らが強いとは言えない、数字をしっかり見てくれる人に入ってもらえるといいんですけど」
3店舗の運営に加えて、ECサイトがあったり、飲食店や食料品店へ卸したり。事業が広がっているなかで、全体を見てくれる人を探している。
「数字といっても回転率とか原価率っていう部分じゃなくて。根拠のある予算を設定して、ちゃんと目標を立てて、そこにコミットしていく。そういう姿勢みたいなものを、チームに入れていきたいんです」
売上を増やして大きくなっていくよりも、数字が見えることで目標を明確にして、スタッフそれぞれがまっすぐ進んでいける強いチームにしていきたい。
マネージャーといっても自ら接客したり、スタッフとじっくり話す時間をつくるのも仕事のひとつ。指示を出す人というよりは、一緒になって試行錯誤しながらお店づくりをしてほしい。
「元気にみんなを引っ張っていってくれるたらうれしいですよね。自分のお店として、責任を持ってコミットしてくれる人を探しています」
3店舗あるうち、SHIBUYA CHEESE STANDを引っ張っているのが佐伯さん。パティシエの経験がある方で、3年半前にここにやってきた。

好きなことを仕事にしようと、お菓子づくりを学べる専門学校に進学。その後は有名なお菓子屋さんに就職して、パティシエとして2年間、朝から晩まで働いた。
「いろんな経験をさせてもらったんですが、体を壊してしまって1年ほど休むことになりました。次の仕事でも今までの経験を活かしたい。そうしてたどり着いたのが、この店だったんです」
チーズが好きだったんですか。
「正直、候補のひとつっていう感じでした。藤川さんに話を聞かせてもらったあと、帰りにチーズプレートを食べたんです。そこで衝撃を受けて。リコッタにはちみつをかけただけなのに、デザートみたいな甘さと柔らかさがあって。今まで食べたことのない食感でした。これは可能性があるぞと思って、働くことを決めたんです」

お店での接客から売上管理、スタッフのシフトづくりなど、佐伯さんの仕事の幅は広い。
「距離が近いお店でありたいです。チーズの説明もしたいし、おいしい食べかたも知ってほしい。お客さんからレシピを教えてもらうこともあります。スピードも求められるけど、全部、手を抜かずにやりたいんです」
大きな仕事のひとつが、毎月変わるメニューを開発すること。
最初のころは藤川さんのOKをもらうのに苦労したんだそう。
「試食してもらって、フィードバックがあって、またつくるっていうことを何度も繰り返していた時期がありました。最近になってようやく基盤ができたというか。ちょっと調整するくらいで、メニューとして成り立つものができるようになったんです」
基盤って、どういうものなんですか。
「リンゴがおいしい時期に、焼きリンゴのブッラータっていうメニューをつくりました。いつもは1日くらいで仕込むのを何日か寝かせてみたら、満場一致でOKが出たんですよ。それまでと違ったのは、素材の味を活かすっていうことだったんだと思います」
自分たちがつくっているチーズ、一緒に食べる野菜などの素材が、ともに活きる味。
それは牛乳を届けてくれる牧場の方々、チーズを卸している料理人、さまざまな食材をつくる生産者などたくさんの人と関わりながら仕事をしているからこそ、目指したいと思う味なのかもしれない。

これも佐伯さんの仕事なんだな、と思いつつ話を聞くと、今後はパティシエの経験を生かしてチーズづくりに力を入れていこうと、体制を整えているところだと教えてくれた。

人をたのしませたい。おもしろいことをしたい。
そんなチーム支える、しっかり者からのご連絡お待ちしています。
(2022/2/8 取材 中嶋希実)