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シェアキッチンが
社会にもたらす
これからの副業のかたち

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

どんな小さな取り組みでも、自分のやりたいことを実行している人って、かっこいいなと思います。

今回は、シェアキッチンという場づくりを通して、自分のビジネスに挑戦する人たちを、支援していく仕事を紹介します。

東京都内に菓子製造専門のシェアキッチンを4店舗展開する、株式会社anova design。

今回は、シェアキッチンの仕組みづくりや利用者とのコミュニケーション、シェアキッチンの新規開発を担うマネージャーを募集します。

業務委託で、勤務時間は月に48時間ほど。基本的には自分の裁量で仕事をしますが、求める条件がふたつあります。

ひとつめは、自宅から浅草橋・日本橋・清澄白河の各シェアキッチンまでのアクセスがよいこと。それと、日中にメールやLINEでのコミュニケーションができること。

たとえばフリーランスでより仕事の幅を広げていきたい人や、不動産や場づくりの経験を成長中の分野で活かしたい人などに、副業的に関わってもらうイメージです。

製造したお菓子を販売したり、ワークショップや教室を開いたり。シェアキッチンで新たな挑戦をはじめる利用者さんたちが、より活動しやすくなるような舞台を整える仕事です。

 

取材に訪れたのは、anova designが運営するシェアキッチンのひとつで、東京都江東区にある「conato|粉と」。

大江戸線の清澄白河駅と森下駅、どちらからも歩いて5分ほどの商店街にある。

キッチンに店舗が併設していて、登録メンバーが日替わりで手づくりのお菓子を販売している。

今日は店舗利用がない日なので、店舗内に椅子を並べて、代表の宮地さんに話を聞く。フレンドリーで、ざっくばらんにいろんな話をしてくれる方。

建築設計事務所に勤めたのちに独立し、空間デザインや場づくりの仕事をしてきたという宮地さん。今は設計やデザインの仕事のほかに、建築の企画・運営や家具ブランドの立ち上げを行なっているそう。

そんなバックグラウンドを持つ宮地さんが、シェアキッチンの事業をはじめたきっかけはなんだったんでしょう?

「自分がすごくやりたかったというよりは、なりゆきでやることになった感じなんです」

発端は、日本橋にあるクリエイターが集まるシェアキッチン「社員食堂Lab.」。食を通じてコミュニティを醸成する場として、ビルの入居者間で食事会やワークショップなどに利用されていた。

ビルのリノベーションと運営に携わっていた宮地さんは、このシェアキッチンのマネージャーを任されることになったそう。

「まずは衛生管理の徹底やルールづくりからはじめて、外部の人も利用できるように、予約システムや料金体系も整えていきました」

「そうすると、菓子製造に使いたいという問い合わせが増えてきたんです」

そのときにはじめて、お菓子づくりが得意で、自分のつくったものを売りたいという人たちが多くいることを知ったそう。

同時に、その想いの受け皿となる場所の少なさも知ることになった。

自分でつくったお菓子を販売するためには、保健所から菓子製造許可を取得したキッチンが必要になる。とはいえ、そのために自宅を改装したり物件を借りたり、ましてやお店を開くにはかなりの費用がかかる。

シェアキッチンを利用するにしても、大量のお菓子づくりには5〜6時間かかるのが当たり前で、利用料も決して安くはない。

「せっかくのやりたいという気持ちを無駄にしてほしくなくて。安心して継続的に使える値段設定で、自分の活動拠点として使ってもらえる、菓子製造専門のシェアキッチンを新しくオープンしようと思いました」

そうして2017年に浅草橋に生まれたのが、「基地キッチン」。主に菓子製造や料理教室、ワークショップなどに活用できる、菓子製造専門の会員制シェアキッチンだ。

特徴的なのは、掃除や備品の補充など、施設管理の一部を利用者に任せていること。人件費を削減できるため、利用料を抑えることができている。

その仕組みのおかげもあり、店舗展開もしやすい。この4年間で、日本橋の「菓子河岸(かしかし)」、「conato」など、菓子製造専門のシェアキッチンを続々オープンしてきた。

2022年5月には、杉並区阿佐ヶ谷に「コーヒーと焼き菓子のシェアキッチン FOOCO」をオープン予定で、東村山市にも新店舗を計画中とのこと。

「毎回、利用者さんの声を反映して、新しいシェアキッチンをつくってきました。現在稼働しているなかで一番新しいのが、ここconatoです」

「大容量のガスオーブンを入れて一度に大量に焼けるようにしたり、キッチンを二区画に分けたり。同時に二組が入れるので、利用できる日の選択肢が増えるし、利用者さん同士の交流も生まれやすくなりました」

宮地さんがシェアキッチンの運営で特に重視しているのは、利用者同士の交流。

施設ごとにLINEグループをつくって、雑談や事務連絡、情報共有ができるようにしたり、複数のシェアキッチンで共同してマルシェに出店したり。月に一度は全施設のメンバーでオンラインミーティングを開くなど、コミュニティが醸成されるよう工夫を重ねている。

「単なる施設の利用者同士だと接点は生まれにくいですよね。でも、ここではベテランの人からノウハウが学べるし、『あの人が完売したなら、自分もできるかもしれない』とか、刺激がもらえると思うんです」

「僕らは、メンバーさん一人ひとりが店主だと思っていて。このシェアキッチンは、単なるスペース貸しではなくて、スタートアップを支援するインキュベーション施設として運営しています」

宮地さん自身、独立後は個人事業主として仕事をしていた期間があった。だからこそ、自分のビジネスをはじめようとする人たちを応援したい気持ちが大きい。

小さくても、自分の力で、好きなことでお金を稼ぎたい。その想いを形にするための舞台として、宮地さんはシェアキッチンをもっと社会に広げていきたいと考えている。

 

続いて話を聞いたのは、岩瀬さん。1店舗目の社員食堂Lab.の運営から携わり、シェアキッチン運営のサポートを続けてきた。

新しく入るマネージャーは、宮地さんと岩瀬さんと協力しながら、仕事を進めていく。

「本業はWebデザイナーなんです。クリエイターが集まるシェアアトリエをつくりたいっていう気持ちがもともとあって。でも、だんだんと食を切り口に場をつくるのもいいなと思って、宮地さんを手伝うようになりました」

「わたし、食べることが大好きなんですよ」

岩瀬さんは、デザインの仕事のかたわら、食に関するさまざまな活動をしている。たとえば、浅草の飲食店のインタビューや料理教室をライブ配信する「あさくさ食たび」の企画や、北海道フードマイスターとしてイベントの開催など。

この仕事も、いろいろなおいしいものと出会えることが楽しみのひとつなんだとか。

シェアキッチンの仕事は、具体的にはどんなものがありますか?

「まずは利用希望者への対応ですね。Webから問い合わせがあるので、現地を案内して。その後トライアル利用を経て、問題がなければ後日契約手続きを行います」

「問い合わせは多いんですが、すでにいるメンバーさんとうまくやれそうか、責任を持って施設の管理や掃除をしてくれそうか、見極めて受け入れています」

誰でも受け入れて稼働率を上げることよりも、大事なのはメンバーの活動しやすさ。一人ひとりが「店主」だから、彼らが自分の活動拠点として利用できることを一番に考えている。

「わたしがちょっと大変なのは、家から1時間くらいかかること。内覧も週に何回かあるので、近くに住んでいる人のほうが気持ち的に楽だと思うし、現場で何かあったときもすぐに来られるので安心ですよね。それもあって近場に住んでいる人を募集しています」

一方、日々の管理業務は、利用者や協力業者が主に担うので、内覧以外で現地を訪れることはあまりない。

そのぶん大切になるのが、日頃のオンラインでのコミュニケーション。

宮地さんと岩瀬さんは、シェアキッチンごとのLINEグループにすべて入っているという。

少し見せてもらうと、事務連絡のほかに、メンバーからのうれしい報告にはみんながリアクションするなど、アットホームな雰囲気のコミュニケーションが交わされているみたい。

「どのグループも、毎日何件かはメンバー間でのやりとりがあって。結構数は多いんですけど、なるべく全部に目を通しています」

「そのなかで、備え付けの機械が故障してしまったとか、新しくこういう備品を買ってほしいとか。運営側で回答が必要なものはチェックして、宮地さんと相談しつつ対応しています」

複数施設をカバーするのは、細やかな配慮が必要になりそうですね。

「もちろん丁寧に対応はするんですけど、ある種の割り切りも必要で。ある人がほしい備品もほかの人にとってはそうでないこともありますし、全員の要望をすべて聞き入れることはできないんです」

「サポートはするけど入れ込みすぎずに、コミュニケーションをとっていくのがいいかなと思っています」

 

最後に、日本橋のシェアキッチン「菓子河岸」に移動して、利用者の方にも話を聞いた。

2週に一度、ここでお菓子を製造販売している、笹山さん。「かかしのかまど」という名義で5年ほど前から活動している。

「グルテンフリーの、米粉のパンとお菓子をつくって販売しています。自分の体調不良がきっかけで小麦を控えるようになって。当時はグルテンフリーのパンやお菓子ってどれも味気なくて、だったら自分でつくっちゃえと思ったのがはじまりです」

4年ほど前からanova designのシェアキッチンを利用するようになり、今は一番のベテランメンバー。この菓子河岸では、8人のメンバーのなかで施設運営のリーダーを任されている。

各シェアキッチンにはリーダーが一人ずついて、必要備品の確認やゴミ出しの管理などと同時に、コミュニティづくりの中心的役割も担っている。

「一人でお菓子づくりするのと比べて、つながりができるのはすごく心強いです。『平日だとこの時間帯に人が多いよ』とか、『冬場はこの時間から灯りをつけたほうがわかりやすいよ』とか、些細なことでも情報交換できるのがありがたいですね」

ほかの仕事やそれぞれの家庭もあるなかで活動を継続していくのは、簡単ではない。

でも、同じ志を持ってがんばる仲間を近くに感じられるから、気持ちを絶やさずに続けることができるんだと思う。

最後に、宮地さんは、こんなふうに話していました。

「ここ数年、自分のやりたいことを副業にしやすくなってきていますよね。でも、個人で菓子製造販売に挑戦できるシェアキッチンは、まだまだ足りないのが現状です」

「シェアキッチンのビジネスに前例はなくて、僕らが一つひとつ仕組みをつくってきました。“菓子製造専門のシェアキッチン”に新しいビジネスの可能性を感じて、一緒に社会に広めていきたいと思ってくれる人と働けたらいいですね」

日々の仕事には地道な部分もあるけれど、視座を高く持って取り組むことで、何倍にもおもしろさが増す仕事だと思います。

自分の好きなことで、自分らしく働いて、お金を稼ぐ。

そのために、一歩を踏み出そうとする人たちが集まるこの場所には、前向きなエネルギーが溢れているように感じました。

(2021/12/23 取材 増田早紀)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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