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その身ひとつで
空をゆく

ロープアクセス技術とは、ロープを使って、人が入りにくい場所や高所を移動する技術のこと。ヨーロッパの洞窟探検で使われていた技がルーツです。

日本空糸はそのロープアクセス技術を活用して橋やダム、道路などの調査・点検作業を行っている会社。ほかにも、高く伸びた樹木の伐採、ロープ高所作業の特別教育や災害救助訓練などの教育事業も手がけています。

今回募集するのは、現場で構造物などの点検作業をするスタッフ。土木やロープの知識は仕事をしながら身につけていけますが、基礎的な工学の知識を持っていることが必須条件になります。

工学の心得があって、探究心や冒険心の強い人。また、自然に関わることや野外で過ごすのが好きな人に、ぜひ知ってほしい仕事です。

 

日本空糸が事務所を構えるのは、岩手県一関市。

東北新幹線の一ノ関駅を出発し、ショッピングモールや飲食チェーンが並ぶ国道から横道へ。だんだん建物が少なくなって、川や木々など自然豊かな景色が続く。

10分ほど気持ちよく車を走らせていると、日本空糸の看板が見えてきた。

事務所の中では社員のみなさんが写真や図面を広げながら、パソコンに向かって作業している。

そのとなりにある天井の高い倉庫のような建物には、ロープアクセス技術の練習スペースも。足場が組まれ、その横には何やら見慣れない機材がきれいに並べられている。

迎えてくれたのは、代表の伊藤さん。薪ストーブにあたりながら話を聞くことに。

じんわりした暖かさと、パチパチと爆ぜる薪の音が心地いい。

一関出身の伊藤さん。両親が畜産を営んでいたこともあり、幼い頃から自分の働き方については考えていたという。

「就職=会社に在籍することっていう考え方にずっと違和感があって。職に就くんだから、家業を継いでもいいし、自分で仕事を起こしてもいいんじゃないかと思っていたんですよ」

「中学校を卒業するときも、はじめは進学じゃなくて、働くことを考えていました。結局進学するんですが、受験がうまくいかなかったらその後何をしてもいいと思っていたので、滑り止めも受けなかったですね。先生に『滑り止まりません、自分でなんとかします』って伝えて」

もともとやりたかったのは、自然に関わるような仕事。地元の豊かな自然を守りたかった。

高専では化学を専攻し、卒業後は液体産業廃棄物の処理を行う会社に入社。働くなかで、より自然に近い仕事をしたいと考えるようになる。

「ネイチャーガイドやJAXAのスタッフなど、いろいろな仕事を模索するなかで見つけたのが、京都の企業。そこが、ロープアクセス技術専門の会社だったんです」

数年かけてロープアクセス技術を使った点検作業や会社経営を学んだあと、一関にUターン。高専時代の同級生だった副代表の熊谷さんと妻の清里さんと3人で、2015年にこの会社を立ち上げた。

「はじめはほぼ見切り発車でしたね。前の会社の社長に『伊藤さんは全部整えてから独立しようと思ってるやろ? それしようと思ったらな、おじいちゃんなるで。まずやりーや』と背中を押されて」

帰ってきてからすぐ県内外の企業へ飛び込み営業に。その後もダメもとでDMや営業の電話をかけ続けた。

すると、秋田の業者から電話がかかってきた。伊藤さんがもといた京都の会社は知っていたけれど、交通費の面で折り合いがつかず、困っていたそうだ。

それ以来、一度仕事をした企業から人づてに日本空糸のことが知られるように。依頼は少しずつ増えていった。

「この仕事はすごく自分に合っているなと思います。試行錯誤が趣味、みたいなところがあって。どの現場も毎回状況が異なるので、どうやってロープを張ったら安全か、よりスムーズに進められるか、考える必要がある。それが楽しいんですよね」

日本空糸が行っているのは、ロープアクセス技術を使った構造物や地質の調査。

橋の裏や急斜面に接する道路など、高所作業車や重機が立ち入れない場所へロープを使って移動し、目視で点検。記録をまとめ、建設コンサルタント会社を通して行政に報告する。

「僕たちがしているのは防災の仕事です。橋やダムなど、高度経済成長期の建設時には『半永久的』と言われていたコンクリート構造物の老朽化が進んでいる今、修理して残すか、解体するかを判断するために、点検の仕事が必要とされています」

現場は県内が多いですか?

「同じ仕事をしている会社は多くないので、東北に限らずいろいろな現場に訪れる機会がありますね。呼ばれれば全国どこにでも行きますよ」

北海道から沖縄まで。日本各地の構造物や地質の調査に行く。

これまで経験したなかでは、地上100メートルの現場で作業することもあったそう。

高所での作業はとても危険なイメージがありますが、実際どうなんでしょう?

「基本的にロープアクセスは安全な技術ですね。すべて力学にもとづいているので、力を使わずに上り下りできますし、身体能力に自信がない人でも大丈夫です。なかには高所恐怖症のスタッフもいます(笑)」

「あとおもしろいのは、人が普段入らない場所に行けること。気軽に前人未到を体験できるんです」

ああ、たしかに。つくられてから数十年、誰も見ないような場所も多そうですよね。

「だから『今回この橋ははじめて点検するんです』『じゃあ前人未到ですね』みたいな。そこに身ひとつで向かっていくおもしろさは、単純にありますね」

 

続いて話を聞いたのは、大学時代に探検部に入っていたという山田さん。

サークル活動のなかでも特に洞窟探検に力を入れていたため、洞窟の多い岩手には当時住んでいた千葉からよく通っていた。伊藤さんと出会い、日本空糸で働くようになったのも、当時の活動がきっかけだった。

「今世界中で未踏地って言ったら、海底と宇宙と地底。宇宙は宇宙飛行士にならないと無理じゃないですか。海底も潜水艦がないと行けない。そういう意味では、一番身近な未踏の地が地底、洞窟探検なんですよね。その高揚感や楽しみは、今の仕事も近いものがあります」

とはいえ、洞窟と点検の現場とでは、違いもあるという。

「洞窟は真っ暗で下が見えないので、ある意味怖くないんですよ。でも橋だと昼間に降りることが多いので、そんなに高くない場所でも怖かったのを覚えています」

「納期が決まっていて、作業時間にタイムリミットがあるのも、緊張感を感じましたね。最初の時期はすごく焦りながら作業していました」

ロープの技術は洞窟探検で習得していたものの、土木の知識は仕事をしながら身につけた。

今は入社4年目。仕事はどうですか。

「試行錯誤して判断するのが楽しいです。事前に写真や図面を見て、準備をしてから現場に臨むのですが、その場に行ってみないとわからないこともたくさんあって。臨機応変に、自分で考えて動き続けることが楽しいです」

今回募集するのは、山田さんと同じように現場で作業を行うスタッフ。新しく入る人にはどんなことが求められるのか。

ふたたび、伊藤さんに話を聞いた。

「今回は工学や力学の知識を持った人に来てほしいです。ロープアクセスの技術は入社後に身につけていけますが、理系の素養はそうもいかないので」

はじめは先輩社員と一緒に作業しながら、仕事を覚える。

知識と技術を身につけたら、ひとりで作業する機会も。

「この仕事に必要なのは、自立すること。まず自分の命を守れないことには何もはじまりません。そして、構造物がどんな状態なのか、自分の目で見て判断する。一通りのことが自分の判断でできるようになったら、あとは自由に働いてほしいなと思っています」

「僕が自由でありたい気持ちが強いので、みんなにもそうあってほしいんです。既成概念や感情にとらわれて、人生を小さくしてしまわないで、どんどん自分が思う方向に進んでいってほしい」

自由で、自立した働き方を実現するために。日本空糸ではフレックスタイム制を導入している。

現場での仕事がない日は、自分で勤務時間を選ぶことができるそうだ。

「僕自身、体調が優れないときに仕事をしたり、毎日同じ時間に会社に行ったりするような働き方が嫌で。個人の事情に合わせながら、パフォーマンスを発揮できる会社にしていきたいんです」

逆に言えば、決められた通りに働きたいという人にとっては厳しい環境かもしれない。

伊藤さんは今後、日本空糸のような仕事や働き方を地域にも展開していきたいと考えている。

「僕たちのしていることはニッチな仕事ですが、覚えれば誰でもできるようになるので挑戦しがいがありますよね。楽しく働けて、社会貢献ができて、お金が稼げる。地域で真似してもらえるような、いいビジネスモデルをつくっていきたいです」

 

そうした環境づくりのために、全体に気を配り、社員のサポートをしているのが番頭の清里さん。

「元請けの建設コンサルタント会社とやりとりをしたり、経理をしたり。現場で作業をすることもあります。子どもを連れて北海道まで行って、現地の保育園に預けながら現場に出る、とか」

「特に意識しているのは、社員みんなが心地よく過ごせること。入ってきたばかりの人の教育を担当したり、苦手な仕事がある人のサポートをしたり。みんなを支えて、応援する役割をしています」

もうひとつ清里さんが大切にしているのは、コミュニケーションの場づくり。毎月1回定例のミーティングを開催し、社員全員で会社の方針について話す機会をつくっている。

「トップダウンで働かされるのではなくて、みんなで会社の未来を決める。それぞれが自立した存在として、意見を出し合いながら、会社としての意思決定をするようにしています」

たとえば、働き方について話し合ったり、お金の使い道を決めたり。この求人を掲載することも、社員で話し合いを重ねて3年越しに決めたそう。

日本空糸で働きはじめてから、家庭内でのコミュニケーションが円滑になったと話してくれたスタッフもいる。

「日本空糸で働くことで、仕事の知識や技術だけじゃなく、人間力を伸ばす機会もつくれるならそれ以上にうれしいことはありません。みんながよりよい人生を歩いていけるような会社であり続けたいなと思っています」

インタビューのあと、伊藤さんと山田さんがロープアクセス技術のデモンストレーションをしてくれた。

続けて、僕も体験させてもらうことに。たしかに上り下りするのに力は使わないし、身につけた器具がしっかり身体とロープを固定してくれるので、すごく安心感があった。身体が宙に浮くと、少しの高さでもわくわくする。

説明中のみなさんは、インタビューのときからより一層いきいきした様子に。普段からこの作業自体を楽しんでいることが伝わってきた。

まずはおもしろそう、という単純な興味からでもいいと思います。その身ひとつで空をゆく。シンプルな生き方がここで実現できるかもしれません。

(2022/2/18 取材 宮本拓海)
※撮影時はマスクを外していただきました。

 

焚き火を囲む合同企業説明会「かこむ仕事百貨」に、日本空糸株式会社も出展します。詳しくはこちらのページをご覧ください。

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