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個性が集まり力になる
建築・家具・布・宿の
数寄者たち

「お金がなんぼ儲かったとか、可視化しやすいじゃないですか。だからみんな経済的な合理性をものさしにしがちなんですけど、それで豊かになれるかどうかは別で。ぼくらは、多様性が生み出す非効率な価値をもっと育んでいきたいと思っているんです」

そう話すのは、SUKIMONO代表の平下さん。

SUKIMONOは、島根県江津(ごうつ)市に拠点を構えるデザイン集団です。

地元の素材を使うことにこだわり、建築や家具、雑貨など、さまざまなものづくりを展開してきました。

創業から10年を迎え、人の暮らしを取り巻くあらゆるものをつくれるチーム体制ができてきた今。新たに自社運営の宿づくりがはじまっています。

今回はこの宿の運営スタッフを中心に、現場監督や大工として働く人も募集します。

平下さんの言う「多様性が生み出す非効率な価値」とは何か。

一緒に考えながら読んでみてください。

 

江津市について事前に調べていると、「東京から一番遠いまち」という情報が出てきた。厳密には、本州内で鉄道を使った移動時間がもっともかかるまち、とのこと。

飛行機を使っても、出雲空港からバスと電車を乗り継いでおよそ2時間半。海岸沿いを走る山陰本線に揺られてのんびり向かう。

最寄りの浅利駅で降りると、SUKIMONOのスタッフの方が車で迎えに来てくれた。その流れのまま会社を案内してもらうことに。

広い敷地内には、倉庫のような数棟の建物が並んでいる。もともと石見焼の窯元だった設えを活かして、オフィスやギャラリーとして利用しているそうだ。

この建物の2階は、キッチン付きのコワーキングスペースとサテライトオフィスを自社で設計・施工中。通路を進んでいくと布製品の工房があって、軒先には染めの下処理のために干された白い布が、風にはためいている。

向かいの別棟は、木工機械の並ぶ家具工場。大音量で好きな音楽を流しつつ作業していた職人さんも、手を止めて「こんにちはー」と挨拶してくれた。

さまざまなものづくりの現場がぎゅぎゅっと集まったテーマパークのようで、なんだかもうすでに楽しい。

一通り案内してもらい、話を聞いたのは代表の平下茂親(しげちか)さん。みんなからはシゲさんと呼ばれている。

地元の江津市で鉄工職人として働いたあと、宮大工の専門学校と大阪芸術大学で設計を学び、アメリカ・ニューヨークへ。デザイン会社で経験を積み、2011年にUターン、翌年にSUKIMONOを立ち上げた。

「ニューヨークって、才能のある人は山ほどおるんですよ。個の能力で目立とうとしても限界がある。一方で、その人だからこそわかる、インターネットでもなかなか辿り着けないような情報には等しく価値を見出してくれる場所でもあって」

「自分の場合それは何かと言ったら、地元の伝統工芸や産業、文化だろうと。そのルーツを掘り下げていくことが、この先グローバルにおいても確実に価値を生んでいくだろうと思って、10年前にこの会社をつくったんです」

たとえば、このあたりで生産されてきた石州瓦は、寒冷地を中心に全国的なシェアがある。ここへ来る電車の窓からも、鮮やかなオレンジの屋根が明るい街並みをつくっているのが見えた。

地域で増えつつある空き家は、リノベーションすれば商店や住宅として生まれ変わる。歴史ある建造物が取り壊されるときには、大黒柱や梁などを譲り受けることも。

それに都市からの遠さでさえも、捉え方次第で価値になる。

そうした価値を、いかに形に落とし込めるか。SUKIMONOはそんな問いと向き合いながら、建築の設計、施工、さらには家具や雑貨づくりへと幅を広げてきた。

「うちはこの地域のものをなるべく多く使うという縛りを設けていて。そうすると、自ずとこの地域らしいものができるんです」

SUKIMONOには、設計士や大工、家具職人、ファブリックデザイナーや現場監督など、多様な人たちが集まっている。

その現場の人たちに対して、細かな指示を出さないというのも平下さんの考え方。

「指示されたものをつくるだけの働き方になったら、お金はもらえても豊かになれない。その時々のジャズセッションみたいな感じで、全体がひとつのメロディーになっていればいいんです」

「すっごい嫌いなのが、バックキャスティング的な考え方ですね」

バックキャスティング的な考え方?

「5年後こうなりたいから今これしてます、みたいな。不安は減るかもしれないけど、それ楽しい?って」

「ビジョンなんかはどうでもいいというか。幸せになりたいな、ぐらいでいいんじゃないですかね。そのための方法論はいくらでも変わっていくし、今この瞬間、モチベーションが上がるやり方で一生懸命やったらいいのかなと思いますね」

進行中の宿づくりのプロジェクトに関しても、平下さんは現場のスタッフに裁量を委ねている。

舞台は1350年以上前、聖徳太子の時代に修行僧が発見したと言われる有福温泉。歴史ある温泉街の一角にたたずむ廃宿をリノベーションして、新たな宿泊滞在拠点をつくろうとしている。

オープン予定は今年の夏。

「廃墟寸前の温泉街でいったら、日本のなかでトップ10に入るんじゃないかな。既存のやり方はもう通用しないので、新しく産業をつくらないといけない。生き残っていくためには、やりながら失敗しながら、常に考え続けなきゃいけない環境だと思いますよ」

今回はまず、この宿を運営していくスタッフを募集したい。

チェックイン・アウトや予約の対応、清掃や設備の維持管理といった業務に加えて、SNSやWebでの発信、イベントの企画運営なども担ってほしいという。

一見仕事が盛りだくさんに見えるけれど、食事提供は朝のみの予定。5部屋それぞれにキッチンを備え付けるので、夜は食材を持ち込んで調理してもらってもいいし、温泉街のなかにあるレストランを案内してもいい。

一棟貸しのような宿泊形態に近いので、オペレーションはそれほど複雑ではないかもしれない。

「うちは、まちづくりが標準装備の会社です。自分たちが幸せになろうと思ったら、『本来行政がやることでしょ?』とか言ってられないんですよ。自分たちのまちは、自分たちでおもしろくしていく。そういうスタンスを楽しめる人がいいですね」

 

どうやってこの宿の価値を高めていくか。

悩んだときは、平下さんのパートナーであり、SUKIMONOを立ち上げ当初から支えてきたファブリックデザイナーの平下悟子さんがいい相談相手になってくれるはず。

「うちは家具も建築も雑貨も、トータルでやっているので、納めるもののなかに布が出てくればわたしがつくる、という感じで。暖簾やソファー、椅子の座面だったり、今度の宿ではルームウェアもつくります」

もともと服づくりを仕事にしていた悟子さん。建築や家具の職人と関わるようになってから、ものづくりの幅が広がり、ぐっと楽しさが増したという。

「この先何をつくっていきたい?って考えても、プロダクトの名前は出てこんくて。いろんな人と掛け合いしながら、ファブリックでも木でも、なんでも生み出せるこの環境に魅力を感じているんです」

「自分が何かアイデアを出したら、必ず掛け合ってくる人がいて、相乗効果が生まれて。完成したときもひとりじゃなくて、みんなでわーって喜べるのがこの会社のいいところだと思うんですよね」

今は自然顔料を使ったオリジナルカラーの展開を考えているところ。従来の藍染や柿渋染に加えて、ターメリックの黄色やログウッドを使った赤のバリエーションも増やしている。

これから入る人も、宿の空間に取り入れる提案ができるかもしれないし、パタンナーやプロダクトデザイナーの経験者が加われば、新しいオリジナル商品をつくっていけるかもしれない。

「布と色にはやっぱり興味がありますね。建築でも、壁紙を決めるときだけ『何色にするの?』とか、つい出ていっちゃう(笑)」

そんな悟子さんの話を横で聞いていて「いや、それがありがたいんですよ」と答えたのが、設計士の花原さん。

「建築単体だと、どうしても色が足りない。でも空間をシンプルにつくっておけば、あとから家具や布で色は入れられます。自分だけで完結せず、あとは任せようと、いい意味で手が引けるのがSUKIMONOというチームのおもしろさなのかなと」

各自がこだわりを持ちながら、別のセクションの意見やアイデアを取り入れていけるのは、お互いへの信頼あってこそ。

昨年の10月に入社したばかりの花原さんは、今まさに担当している宿の設計においても、この会社ならではの新鮮さを感じているという。

「木毛セメント板という、ちょっと変わった材料を天井に使おうとしていて。でも本当にその材料でいいのか、悩んでいたんです。そのことを現場の職人さんに素直に話したら、『じゃあまず1部屋だけやってみる? ダメだったらやめればいいじゃん』って言ってくれて」

「使ったことのない材料だったり、経験のない納まりにも気軽にチャレンジしやすいですね。設計として優柔不断なところもだいぶ見せているけど、本当にいいものをつくりたいっていう想いと、最後は責任持ちますって意思さえ示せれば、それでもいいのかなって思うようになりました」

それぞれの部門同士の距離が近いので、設計担当が現場監督のような役割を担うこともあるし、大工から家具職人へ転身した人もいる。

どのポジションで入社するにしても、そういった垣根のない働き方をおもしろがれる人がいいと思う。

 

最後に話を聞いた岡田さんは、教育畑から昨年4月にSUKIMONOの一員になった方。

総務やショップの担当を経て、今後は宿の責任者になるそうだ。

「わたしは東京出身で、江津に強い愛着があるわけでもないし、接客業の経験もないんです。でも新しいことにチャレンジするのは好きで、宿運営ができるのは単純に楽しそうだなと思いました」

この1年弱の短期間にいろんな仕事を経験されてますけど、大変に感じることはないですか?

「シゲさんは言うことがコロコロ変わるんですよ。それはその都度思うことに素直で、常に自然体でいるからなんですけど。必死に追いつこうとしているあいだに1年が経ちました(笑)」

「それから、『会社はうんこもしっこもせん』ってことをよく言っていて」

どういうことでしょう。

「“会社として”っていう表現がありますけど、あれを嫌うんです。会社はあくまでも人の集まりなんだから、一人ひとりが考えて、話し合って、動かしていくものだって。その言葉は不思議と頭のなかに残っていますね」

ルールをつくったり、ビジョンを掲げたり。何かしら方向づけをすることで、活動を前に進めていこうという会社が一般的には多いと思う。

SUKIMONOは、別のエネルギーで動いている会社だと感じました。

それは何かといったら、一人ひとりの個性をとことん信頼すること。得手不得手や好き嫌い、生まれも育ちもバラバラな人たちが集まるからこそ、新しい何かがつくれるという信念のようなものを、それぞれが抱えている。たまにぶつかり合いながら。

クセのある、おもしろいチームだと思います。

(2022/2/14 取材 中川晃輔)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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