※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
どうせ働くなら、全力で仕事できるほうが気持ち良い。目標を決めて、ありったけの力で向かっていく。そんな生き方に共感できる人におすすめできる仕事です。

その一方で、気候変動や生産者の利益が不平等な背景から、コーヒー産業の存続は危ぶまれている状況なのだそう。
たとえば、先物市場で価格が決まることによって、品質のいい豆を生産しても赤字になってしまったり、農園ごとではなく産地で取引されるため、農園のこだわりが価格に反映されなかったり。
コーヒー産業には、さまざまな課題が存在しています。
それらの課題を解決すべく、オンラインプラットフォームとして世界中のコーヒー生産者とロースターをつないでいるのがTYPICAです。
システム上に登録された両者は、麻袋一袋単位からコーヒー生豆の取引が可能に。従来は資金の面から取引が難しかった小規模な生産者とロースターも、直接やりとりできるようになりました。
また、それぞれの農園ごとに取引されるため、高付加価値な生豆の流通を活性化する役割も果たしています。
今回募集するのは、コーヒー生豆の販路開拓を担うコミュニティマネージャー。あわせて、クリエイティブ・ディレクターやエンジニアなど、さまざまな職種を募集します。
最初からコーヒーの知識はなくても大丈夫。仕事を通して成長していきたい人にとっては、やりがいのある環境だと思います。
六本木一丁目駅を降り、六本木通りから一本外れた道に入ると、雑居ビルや小洒落た飲食店が点々としている。
少し歩くと、年季の入ったベージュ色のビルが見えてきた。TYPICAのオフィスはこの一番下、正面はガラス戸になっている。
真っ白な壁に囲まれた空間に、白を基調とした長いテーブルといくつかの椅子が並んでいる。ほかには、キッチンと焙煎機が置いてあるだけで余分なものがない。シンプルでモダンな雰囲気だ。

一つひとつの言葉が真っすぐで前向きな方。

ただ、それでは心から幸せを感じることができなかったそう。
「方針をガラッと変えて、次の5年間は自分以外の誰かを幸せにするために、非営利の活動に取り組んだんです」
「ただ、慈善活動をすればするほど、今度はお金が足りなくなってくるんですよ。そのときに、自分の経営者としての問題に気づきました。事業の発展と幸福が一貫して実現できるビジネスモデルをつくれていなかったんだって」
お金だけでも、気持ちだけでも幸せになることはできない。
そこで、両方を実現できるような事業を新しく3つ立ち上げることに。さらに、ほかの事業者から声をかけられたら、すべてに協力することにした。
「でも、気づいたら5年経っても何にも進んでないんですよね。相手の会社の都合とか、責任者の事情とか。待っているだけだと世界を変えるような大きなインパクトは生み出せないんだと思って」
「それを目の当たりにしたときに、これからの10年は、世界を変えるために全身全霊で一つのことに集中していこうと決心しました」
当時持っていたいくつかの事業から、専念しようと選んだのはコーヒー事業。それは自分の気持ちと世の中の流れがつながっていると感じるものだった。

「つくり手の想いや暮らし、生産地のこと。僕らはそういった物語を発信することで、彼らのコーヒーがもっと評価されるようにしようと思ったんです」
現在はオンラインのプラットフォームとして、登録された生産者とロースターをつないでいるTYPICA。
事業の立ち上げ当初は、「HOOP」というロースターを運営し、みずからコーヒーを提供することからスタートした。
ビジネスモデルが変わったきっかけを聞くと、キューバで出会ったあるコーヒー農園のことを話してくれた。
農園の名前は、ダニエル・ベラ・フィンカ。
日本語で、ダニエルの美しい庭という意味だ。

彼らのコーヒー豆を自分たちで焙煎して、世界で流通させようと決意する。
ところが二度目のキューバ渡航時、ダニエルさんの農園がハリケーンによって全壊してしまった。
「すぐに彼らの元に向かったら、ダニエルが大雨のなか、遠くでガッツポーズしながら叫んでいるんですよ。『俺らは生きているぞ!誰も死んでないぞ!』って。そして僕らに言うんです。『お前ら、こんなとこまで来てくれてマジでありがとう』って」
30年間大切に育ててきた自分の農園が全壊している。それなのに自分たちのことを温かく受け入れてくれたダニエルさん。

「素晴らしいコーヒーに、生産者や土地の物語。すべて発信しようってなったら、ロースターだけでは実現できないよなって。そこでビジネスモデルを変えることにしました」
これまでのコーヒー業界でも、ダイレクトトレードの動きはあったものの、コンテナ単位18トンの取引が基本とされていたため、小規模生産者やロースターは資金の都合上、参加が難しかった。
後藤さんたちが考えたのは、麻袋一袋単位60kgから取引可能な仕組み。
生産者とロースターがオンラインプラットフォームで直接やりとりできるので、様々な農園の豆を流通させることができ、小さなロースターも参加できる。
結果として買い手を増やし、より正当な価格で豆を購入できるようになった。

誰も信じない?
「初めは誰も実現できるなんて思わないんですよ。だから誰よりも自分を信じて、理想を叶えるために行動しました。『キャンセルも交換も返品も、何か問題があったら受け付ける。まずはとにかく買ってみて』って」
「そうやって、まわりに信じてもらえるようにとにかく行動して、話し合う。そうすると、段々と仲間が集まってきたんです」
後藤さんの話を聞いていると、何事にも妥協しない真っ直ぐな姿勢を感じる。
コミュニティマネージャーとして働く藤井さんも、同じような経験がある方。TYPICAの黎明期から参加している。

「2年前に、代表の二人から『HOOPとは別で新たにTYPICAをはじめる』って話をいただいて。どっちで働きたい?って聞かれたんです」
「コーヒーに関わる仕事をしようと思ったきっかけが、もう一人の共同代表の山田彩音さんで。彼女と一緒に仕事ができたら、よりコーヒーの魅力も深く知れるかなと思って、そのままTYPICAに入ることにしたんです。だから具体的に何をするか、最初はあまり知りませんでした(笑)」
藤井さんが担当したのは、コーヒー豆を取り扱う国内のロースターを開拓すること。
ロースターを調べてリスト化し、電話でアポイントを取っていくのだけれど、バリスタとは大きく異なる仕事内容に、最初は不安を感じていた。
「ほんとこわかったです。大阪の小さいロースターさんで、TYPICAの資料を持って伺ったんですけど、あまりに緊張してお店の近くを一周したこともありました」
経験もないなか、営業担当は一人だけ。とても大変そう。
藤井さんはどう感じていたのだろう。
「もちろん、凹むときもあるんですけど…(笑)。性格なのかもしれないですね。学生のときにソフトボールをやっていて、しんどくても辞めるっていう選択肢は浮かばないんです」
「でも、はじめてコーヒー豆の注文をいただいて、それが日本に到着したときは、本当に感動しました」

産地によってコーヒー豆の収穫時期が異なること、加えて賞味期限があるため、購入できる期間が決まっている。
そのため、購入期間がはじまる1週間前に、サンプルの豆を請求できるオファー期間を設定しているそう。
「まだ体制が整っていない部分もあるので、サンプルの豆は自分たちで小分けに袋に入れたあと、ラベルを貼って発送作業をするんですね」
時期によってはオファー期間が重なり、200個から300個ほどのサンプル豆を詰めて送る。期日が迫っているときは、三日三晩徹夜して終わらせることもあるのだとか。
加えて、サンプル豆をオファーした人の半分ぐらいが豆を買うため、ロースターへのアプローチも大切な仕事。
取り扱うコーヒーの香りや味をより知ってもらおうと、各地でカッピング会を開いたり、生産者とロースターをつなぐオンラインの場を設けたり。日本国内に限らず、海外のロースターへアプローチすることもある。
1から10まで、自分たちで行動して形にしていく。
「TYPICAって、思ったより体育会系なんです。困難があっても、できるできないじゃなくて、できるようにする。全部自分たちでやるので大変なことも多いです。そのぶん、やりがいもあります」
「『自分にはどんな目標があって、どうしたい』とか、『TYPICAでこんなことを身につけたい』とか。自分の軸を持っている人のほうが辛いことも乗り越えていけるんじゃないかな」

今はさまざまな業務を兼任することもあるけれど、今後は必要な役割のメンバーを募り、それぞれが自分の役割に、より集中できるような環境を整えていきたいとのこと。
高い目標を掲げて、成長し続けている会社。大変な仕事です。でもこんな仕事を探している人もいると思いました。
(2021/12/7 取材 杉本丞)
※撮影時は、マスクを外していただきました。