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さっと広げて
ずっと使える
暮らしを楽しくする布

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昔ながらの道具や技術が、かえって新鮮に感じることってあると思います。

藍染や黒染による服の染め直しや、器の金継ぎなど。限られた資源を長く使うための工夫は、地球にやさしい暮らし方のヒントになるのかもしれません。

そんな考え方に共感する人に知ってもらいたいのが、日本で長く愛されてきた織物・和晒(わざらし)でつくられた「さささ和晒ロール」です。

晒とは、綿布を洗浄・加工することで、染めやすく、肌馴染みを良くした布のこと。手ぬぐいや浴衣の素材、と聞くとピンとくる人も多いと思います。

「さささ」は、かつて万能布として親しまれてきた晒の特徴を活かしながら、現代のわたしたちの暮らしの感覚に合う形でデザインしたもの。

食器を拭いたり、食材を包んで水分をとったり。洗えば何度も使えるし、汚れが落ちなくなったら雑巾として使ってもいい。

2020年のリリースから間も無く、持続可能な暮らしに寄り添う道具としてグッドデザイン賞や、台湾発のデザイン賞・Golden Pin Design Award、最近では世界三大デザイン賞のひとつであるiF Design Awardを受賞するなど、国内外から注目を集めています。

今回は、営業や広報のような立場から、「さささ」を世に広めていく仲間を募集します。

 

「さささ」をつくっているのは、大阪・堺にある株式会社武田晒工場。

大阪駅からJRを乗り継ぎ、住宅街を南へ下っていく。最寄りの鳳(おおとり)駅までは30分ほど。駅から工場は少し距離があるため、車で向かうことに。

5分もすると、昔ながらの町工場が集まる地区に入る。外を見ると、「◯◯晒」と書かれた建物がいくつも並んでいる。

「創業してから数十年は、この辺に何十社と晒工場があったんですよ」

事務所に到着して、そう教えてくれたのは代表の武田清孝さん。

「いまはもう全国に9社しかないけれど、そのうち7社が大阪にあるんですよ」

すこし強面な印象があったけれど、話していると笑みがこぼれていく。

清孝さんが4代目社長をつとめる武田晒工場は、1911年創業。

綿から織られた生地を加工し、染めやすくした布を晒と呼ぶそう。

綿糸はでんぷんなどでのり付けされているため、そのままだと染料を弾いてしまう。そこで、染料がより染み込みやすくなるためにのりを抜き、繊維を柔らかくし、発色がよくなるよう漂白する。そうしてできた晒はやがて、手ぬぐいや浴衣、腹帯へと姿を変えていく。

また、晒にも洋晒と和晒があり、武田晒で手がけているのは和晒とよばれる手法。和晒は生地への負担が少なく、洋晒より柔らかい仕上がりになるんだそう。

清孝さんが入社したのは平成3年。家業を継ぐ予定はなかったけれど、先代の体調不良がきっかけで跡を継ぐことに。

「私が入った当初は加工のマニュアルもなくて、口移しで伝え聞いていて。その日の担当者の気分や都合でレシピが違っていたんです」

「できあがった生地を見ると、もうバラバラなんやね。白さが。いかんことやけど、卸先さんも目をつぶってくれていたんです。需要に供給が追いついていない時代やったから」

前職はメーカーで洗濯機の技術開発をしていた清孝さん。

品質を厳しく管理される環境で働いていたこともあり、いずれ経営面での課題になると考え、釜を入れ替えるタイミングで晒加工の自動化に取り組むことに。

「プログラムを考案するにも、マニュアルがないからね。文献調べるために、中央図書館に通い詰め。朝一番で作業があるから、工場には朝4時からいました」

「大変やったけど、技術畑で新製品の開発をずっとやってきたからね。現場に出て、新しいことを考えるのが染み付いてるんやと思うね」

2000年代に入り、国内の繊維需要が減退するなか、清孝さんが考案したのは「天使のころも」という、ベビー服を扱うオリジナルブランド。

「使用する薬品の量をできるだけ抑えて、肌にも環境にもやさしい生地でつくったんですけど、全然売れなかったんです。そもそも『和晒ってなに?』状態だったんですよ」

和晒でできた服は、決して安い価格帯の商品ではない。購入した人からの評判は良かったことを考えると、商品自体の問題というよりは、和晒の認知が低いことが原因だった。

 

「僕らからしたら衝撃やったんです。生まれたときからずっとそばにあって、和晒はいいものやと思って育ってきたので」

そう話すのは、清孝さんの息子で専務の真一さん。

「そもそも世間で晒のイメージってないんですよね。あっても、ドラマとかで怖い人が体に巻いてるくらい。まずは『和晒』って言葉とモノがセットでイメージできるような状態をつくる必要があると感じていました」

大学を卒業してすぐ武田晒へ入社。現場に入りながら技術と経営を学び、最初に任せられたのが、天使のころもに続くオリジナルブランドの開発。そこで生まれたのが「さささ和晒ロール」だった。

それまで晒といえば、折り畳んだ状態で、10m単位で販売されるのが基本だった。

もっと手に取りやすく、生活に寄り添うようなものにできないか、という着想から行き着いたのがロール型の和晒。全長は7mあるものの、重さや厚みは感じない。

「手で簡単に切れるんですよ。よければ1枚、切ってみませんか」

なんと、いいんですか?

恐る恐る、ミシン目に沿って引っ張ると、ざざっと切れていく。なるほど、そんなに力は必要ない。

「慣れると、さっと切れるようになりますよ。晒を使い慣れていない人がターゲットなので、切りやすい=使いやすいことが大事だと考えていて。なので、ミシン目がさささのミソなんです」

切り取った晒は、35cm×35cmと家事にちょうど良いサイズ。

塩素系の漂白剤を使わずに加工された生地を使っているため、食品にも安心して使うことができる。排水の際に流れ出る薬剤の量も少ないので、環境にもやさしい。

「出汁を濾したり、塩抜きした野菜をしぼったり。ちょっと濡らしておにぎりを握るのもおすすめです」

おにぎり!そんな使い方もできるんですか。

「ラップより空気が入るし、米粒も潰れにくいので食感がいいんですよ。そもそも昔はラップ代わりに晒を使っていましたからね」

「ボディタオルとしても使えるし、首に巻けば温かい。洗って干して、クタクタになったらお掃除道具として使ってもらって。一家に一本備えておけば、災害時にも安心です」

台所道具から非常用の備えまで。これだけ用途が広いと、あっという間に人気になりそうな気がします。

「でも、いざお客さんの前に出すとなるとやっぱり怖くって」

怖い?

「天使のころもで、一回あれっ?となっていたので。ミシン目という目新しさこそあるものの、さささって昔からある反巻を短くして手に取りやすくしただけのもの。形態として劇的に変わったわけではないので、受け入れてもらえるか正直不安でした」

転機は、お披露目の場でもあった、とある商談会。主催者からも「楽しみにしていました!」と歓迎され、お客さんからの反応も良く、あっという間に完売。

その後も注文が続き、グッドデザイン賞の受賞も相まって、生産が追いつかない状況が続いている。

「有名なセレクトショップさんから『うちにも置きたい』とご連絡いただくこともあって、自信になりましたね。和晒の認知を広げるためにも、定番品として長く店に置いてもらえるような商品にしていきたいと思っています」

手応えを感じているのは、商談会に出向いている真一さんだけではない。

「さささに関わっている社員はまだ全体の4分の1ほどですが、すごく張り切って働いてくれています。検品の基準は僕らよりも厳しい(笑)。『これ、色味ちょっと違いません?』って、わずかな差にも気づいてくれるんですよ」

「もともと、晒は素材として卸すものなので、最終的な商品を見ても武田晒の名前はどこにもないんですよね。それが、さささの生産を通して商品の先にいるお客さんを感じられるようになった。その手応えを感じられるメンバーが増えると、会社もどんどん良くなる気がしています」

 

和晒を代表する商品になりつつある、さささ和晒ロール。

今回募集する営業は、さらに多くの人に商品を知ってもらえるよう、情報を発信していく役割になる。

さささの企画当初からプロデュースを手がけている、コンサルティングファーム・LABORATORIAN Inc.の小松さんは、新しく入る人とチームを組んで仕事をすることになる人だ。

「これ、担いでみましょうか? 結構重たいんですけど、ここの人たちは軽々と持ち上げるんですよ」

カメラを向けると、晒の束を持ち上げてくれた。清孝さんや真一さんの話を聞いて一緒に驚いたり、笑ったり。雰囲気の良い方。

さささのホルダーとスタンドのデザインから、生産体制の構築、小売業者との折衝など、武田晒工場の一員のような立場でプロジェクトに関わっている。

「現在はそれに加えて、広報や販促などのプロモーション企画も担当しています。さささもリリースから2年経つので、より多くの人に知ってもらうためのチャレンジをしたいと考えているんです」

お客さんとの主な接点は、全国で開催される展示会や百貨店での催事。

まだまだ和晒の知名度は低く、はじめて触れる人も少なくない。まずは直に触れ、話をするなかで、さささの存在を身近に感じてもらうことが大切だ。

出張は多いときで、月1回程度とのこと。また、そのたびに什器の搬出入と設営がある。体力的にハードな一面もあると思う。

「ただ、やはりお客さんと直接話すことはとても大切で。最近は和菓子屋さんから業務用で使いたいとご相談をもらったんです。まだ開発段階なんですけど、今後は業務用も展開していこうと話をしています」

そのほかにも、染物作家さんからの相談を受けて、染料に適したさささ以外の生地を提案することもあった。

新しく入る人のメイン商材はさささではあるものの、将来的にはお客さんの要望にあわせた生地提案ができるよう、知識をつけていくことが求められる。

小松さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

「家事が好きで、日用品、インテリアのデザインにこだわりがあるような方はきっと相性がいいと思います。加えて、和晒自体が昔ながらのサスティナブルな道具なので、エコな生活に関心がある方も歓迎です」

「さささ、そして武田晒のミッションは、晒を日常の一部にすること。晒をより多くの人たちに使ってもらうことで、無駄なものを減らした、環境にやさしい社会に近づくはずです。まずはこの考えに共感してもらえる人と働きたいですね」

最後に、清孝さんにもどんな人と働きたいか聞きました。

「僕らの目標は各都道府県に1店、武田晒の商品がならぶ場所をつくること。全国和晒化計画です(笑)。人生を懸けて、というと大袈裟かもしれないけど、さささを好きになって一生懸命売り込んでくれる、熱意のある人がいいですね」

「もちろん晒のことを知らない人でも大丈夫です。好きこそものの上手なれと言いますから、さささに触れるなかで愛着を持って、一緒にチャレンジしてもらえたらうれしいです」

広げて、触れて、使って、知る。まずは自分が晒を楽しむところから。

その気持ちをのびのびと活かした先に、暮らしと心の豊かさを見出せるように思いました。

(2022/3/14取材 阿部夏海)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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