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土を壁に塗る
そんな、当たり前

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「いくら壁を綺麗に塗っても、道具とか、着ている服とか、歩き方が汚かったりすると、それが壁に現れると思っていて。だから普段から食べ方とか、コップの置き方とか、そういう一つひとつの所作を意識しています」

そう話すのは、左官都倉代表で職人の都倉達弥さん。

出来合いの壁材を塗ることが一般的な左官業界のなかで、左官都倉では施主さんの要望によって材料の配合を決めてから壁を塗っていきます。ときには山から土を採るところから始めることもあるそう。

今回募集するのは、都倉さんのもとで弟子として働く人。

はじめは掃除や材料練り、段取りなどを地道に学ぶ日々。決して甘い道ではないけれど、一つのことを掘り下げていくのが得意な人には、やりがいのある仕事だと思います。

併せて、すぐに現場で働ける左官職人も募集します。

 

最寄り駅は西武池袋線の大泉学園町駅。

駅から賑わいのある商店街を抜けて歩くこと10分、工事中の建物の足場に「町屋大工 都倉」の文字が入ったのぼりを見つけた。

「ここが実家なんですけど、父と兄が大工をやっているので、みんなで建て直しているんですよ」

そう話してくれたのは、左官都倉の代表で職人の都倉達弥さん。

そもそも左官とは、土や漆喰、モルタルなどの材料を、専用のコテを使って壁や天井、床などに塗る仕事。

最近ではDIYブームもあってテレビで目にする機会も増えたけれど、左官職人という職業は正直あまり身近ではない。

達弥さんはどうして左官職人の道を選んだのだろう。

「高校時代はサッカー選手を目指していたんです。全国大会まで行ったんですけど、そこで今でも活躍している超一流の選手を目にしたら、無理!ってなっちゃったんですよね」

「父と兄が大工なので、大工はもういいかなと思って、父に大工の次に必要な職業を聞いたんです。そこで言われたのが左官でした」

お父さんに紹介されたのは、大分の左官職人。達弥さんはそこで弟子として働くことになった。

「親方がなかなか独特で、山から採ってきた土や、藁なんかを使って自分たちで材料を配合していくんです。何百年とか何千年もその地にあるものを使うのが一番風景に馴染むからって」

修行というだけあって、やはり大変なこともあったそう。

「最初の2年半くらいは塗らないで、ひたすら材料をこねる作業をしていたんです。全然塗らせてくれないので、2年目くらいのときは、もういつ壁蹴って辞めようとかよく考えていました(笑)」

そこで辞めなかったのはどうしてですか。

「なにくそ!っていう気持ちがあったのと、なんだかんだ楽しかったんですよね。塗る練習はしていたので、たまに塗らせてもらえたときに上手くできると、任される仕事が少しずつ増えていったのもうれしかったですね」

そこで4年間修業した達弥さん。その後は茶室や蔵の仕事を得意とする左官屋で働いたり、ドイツなど海外へ左官の勉強をしに行ったりと、左官の技術を磨いていった。

「海外に行って思ったのは、向こうの人は材料を使うだけのことが多いんですよ」

材料を使うだけ?

「土があればいっぱい叩いて積んでいくとか。それに対して日本の職人は、土をふるって、目の細かさで選り分けてから、ほかの素材と調合して使えるようにしていく。材料を使うっていうより、素材を活かすという感じなんです」

「最近は土を使う左官は『特殊左官』と呼ばれることもあるくらいなんですけど、本当は逆なんですね。昔は土を使うほうが普通だった。また土壁が当たり前の選択肢のひとつになるようにしていきたいです」

そんな思いを抱いて、2014年に独立。

施主さんのイメージする壁の色や質感、建物の立地や環境などを考慮して、壁を塗っていく。

独立してすぐは壁の仕事はほとんどなく、ブロック塀を積む仕事もしていたそう。塗れてもやっと一部屋を塗らせてもらえるくらいだった。

小さな仕事を地道に続けていくなかで、徐々に土壁を取り入れるお客さんも増えてきた。

「印象的だったのは美術品をコレクションしている施主さんで、最初は美術品が映えるような壁を一部屋だけ依頼されていたんです。土壁だったら湿気を吸ってくれて、美術品の保存という面でも相性がいいので土壁を提案して」

「いろいろ話していくなかで信頼してくれて、『都倉さんがやりたいようにやっていいよ』って、結局家中ほぼすべてを土壁で塗らせてもらいました」

土壁の魅力の一つが調湿作用で、厚さが増すにつれてその機能は高くなっていく。

ほかにも消臭や断熱、防火の効果もあるそう。

「そこの奥さんは匂いに敏感な方なんですけど、土壁にしてからは、ご主人の吸うタバコの匂いが気にならなくなったらしいんです。いろいろ効果はありますけど、一番は体感が違うんですよ。なんかいいなって」

最近では美術館や自治体などから依頼が来ることも。施工のほかにも、毎年ドイツでは左官のワークショップを行っている。

「左官の材料で使う藁を細かく刻んだり加工を専門にする会社や、採掘した土を振るって石を取り除く仕事があるんです。それをやる人も少なくなっているなかで、そういう左官に関わる仕事を守れるように、来年ごろには株式会社にしようと思っています」

弟子として入ってきた人には、素材がどういう工程でつくられているのかを知るため、藁の加工や振るいの仕事の見学などもしてもらいたいとのこと。

ほかには具体的に、どんなことをするのだろう。

「1年目は掃除と片づけ、あとは周りが汚れないように養生するのと材料運び、そして材料練りという感じです。なかでも材料を練るのが一番大事なんですよ」

材料練りは、その日に塗る材料を適切に配合し、均一に混ぜる仕事。

下地などで大量に使うものは大きな機械で一気に混ぜ、仕上げに使うものはムラができないように、手持ちの機械で少量ずつ混ぜていく。

「僕も修業期間の4年間では、本当に練りだけを勉強したっていう感じでしたね。壁を塗るというよりは、材料の配合だったり、素材によっての練り方だったり、あとは人の動きを学びました」

人の動き。

「一人前になったら、手伝いの職人が来たときに場がうまく回るように全体を見てなきゃいけないんですよ。壁を塗る技術はあとからいくらでも磨けるんです」

左官職人と聞いてイメージする仕事ではないけれど、壁を塗るためには必要な役割。

一日の作業が終わるときに、練った材料をぴったり使い切れたらちょっとうれしい。そんな仕事なんだろうな。

「だいたい始めて2,3年で辞めたくなるんですよ。だけど現場ごとの微妙な違いとかをわかるようになるのに10年かかるんです。そこから職人としてできることが増えてきて、より楽しくなっていくと思います」

 

続いて話を聞いたのは、達弥さんの奥さんの真紀子さん。左官都倉では主に総務経理を担当している。

大分出身でお父さんが左官職人なので、もともと左官への馴染みはあったそう。

お子さんが生まれる前までは、達弥さんと一緒に現場に行って掃除や養生をやっていたことも。

「養生だけでもめちゃくちゃ難しいんですよ。窓の周りとかが汚れないようにテープを貼るんですけど、まっすぐ貼れていないと剝がしたときに塗り厚にばらつきが出て、綺麗じゃなくなっちゃうんです」

「達弥さんは感覚的にここ2ミリで養生しろとか言うんですけど、悔しくて自分で測ってから、『ここは3ミリだ』とか言いながらやってました」

弟子として働く人は、どんな人がいいと思いますか。

「ちゃんと『無理です』って言える人がいいんじゃないかな。達弥さんは結構急なお願いを平気でしてくるので、そこに振り回されすぎない人がいいと思います。たとえば、飲みの誘いを断れるとか(笑)」

弟子になる人は、ほとんどの時間を親方である達弥さんと共にすることになるので、理解者の真紀子さんが近くにいるのは安心できる。

現場は基本的に関東が多いものの、3割程度は地方の現場もあるので、フットワークは軽いほうが良さそう。

達弥さんにも聞いてみる。

「僕は人を豊かにすることが好きな人がいいですね。職人って、人のために何かをしてあげることだと思っているので、人のために動ける人」

「たとえば、ほかの人が次に使う道具があったら、使いやすい場所に、使いやすい置き方を考えて置くとか」

そういう小さな気遣いが、施主さんや一緒に働く仲間との関係の豊かさにつながっていくのだと思う。

「永田さんも意識が行き届いていて、所作が綺麗なんですよ」

 

そう紹介されたのは、左官都倉に応援として働きにくる職人の永田さん。

「左官の仕事をはじめてから3年くらい経ったとき、もう辞めようと思っていたんです。そのときたまたま現場の隣の本屋に寄ったら『コンフォルト』っていう左官の雑誌が置いてあって、土壁のことが書いてあったんですよ。なんだこれ!って衝撃を受けました」

それまではビルや商業施設などの大型の現場しか経験がなく、コンクリートの壁にモルタルを塗るような左官がほとんどだった。

「周りにも土壁のことを知ってる人が誰もいなかったので、自分で本を買い漁ったり、講習会を探して行ってみたりして、独学で学んでいました」

勉強を続けるうちに、達弥さんと出会い、その翌日には同じ現場で作業をするようになった。

「左官都倉にいると、目の前の壁をどう綺麗に納めるかっていうことに集中できるのがいいんですよ」

左官の仕事、どんなところが楽しいですか。

「どうしたら上手くできるかなとか、考えて試すことを続けていると、どんどん面白くなってくるんです」

「最近は市販される材料の精度も上がって、素人でも塗れるようなものも増えているんですけど、それに頼りすぎると技術がなくなっちゃう。当たり前のものを、当たり前のままに残していきたいですね」

一見、狭い世界のようだけど、塗れば塗るほど広がる左官の世界。勇気をもって飛び込んでみませんか。

(2022/4/27取材 堀上駿)

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