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野菜をもっとおいしく
食べるために
正々堂々、試行錯誤する3年

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

田舎の良さってなんだろう。

パッと思い浮かぶのは、豊かな自然と美味しい食べ物。とくに農業が盛んな地域であれば、新鮮な野菜を安価に手に入れることができます。

奈良県宇陀郡曽爾村(そにむら)。奈良と三重の県境にある、山間部の村です。ススキの名所である曽爾高原をきっかけに、名前を知っている人もいるかもしれません。

その曽爾高原の麓にあるのが、ファームガーデンという施設。米粉パンや地ビールの工房、野菜の直売所に加えて、村の野菜をふんだんに使った料理を楽しめるレストランも併設されています。

今回募集するのは、このレストランで働くシェフ。

最初の3年間は地域おこし協力隊として関わり、そのまま働き続けることもできるし、その後自分でお店を出したい人も歓迎です。

勤務日数は週4日。余白も活かして、村の野菜料理をアップデートしてくれる人を探しています。

 

曽爾村へは、名古屋から近鉄特急に乗って1時間半。名張駅で降りて、車で30分ほど川沿いの山道を走っていく。

まず向かったのは、村の中心部にある曽爾村役場。地域おこし協力隊を管轄している企画課の間井谷(まいたに)課長に話を聞く。

「曽爾村の一番の観光資源が、曽爾高原です。秋のススキの時期にもっとも観光客が多く、年間で55万人が訪れます」

その麓にあるのが、「ファームガーデン」。20年前につくられた施設で、村と民間が出資してできた一般財団法人曽爾村観光振興公社が運営している。

ファームガーデンの敷地内にはいくつかの建物があって、一番大きい建物が村の野菜や加工品を販売している直売所とレストラン。そのすぐそばに、米粉パンと地ビールの工房がある。

レストランは施設が始まった20年前から営業していて、地域の人たちを中心に運営してきた。

「調理をしてくださっているのは、地元のお母さんたち。試行錯誤しながらがんばってきてくれたんやけど、みなさん段々とお年を召してきて。70歳を超える人が出てきたなかで、新しくシェフに来てもらいたいというのが、今回の募集なんです」

主なお客さんは、曽爾高原を見に来る観光客。60代前後のアクティブシニアが中心で、最近は若いお客さんも増えてきているそう。

「今は村の新鮮な野菜が食べられる野菜レストランとして売り出しているので、それに賛同して一緒にアップデートしてくれるような人に来てもらえるといいのかなと。新たなメニュー開発にも前向きに取り組んでほしいですね」

今回募集するシェフは、地域おこし協力隊として赴任することになる。基本週4日勤務で、3年間は自治体から給与が支払われる。

「たとえば3年間レストランで修行して、農家さんとの関係をつくったうえで、独立して開業する、とかね。自分のキャリアを考えて3年間をうまく使ってもらうのがいいと思っています」

曽爾村は地域おこし協力隊の制度をうまく活用していて、これまで30人の協力隊を受け入れてきた。

トマト農家の後継者として3年間修行し独立した人や、村の体験型ツーリズムに関わる人、村の野菜の売り出し方を企画している人など。さまざまな領域で協力隊やOBOGが活躍しており、定住率は7割と、全国的に見ても高い。

曽爾村の食について知る助けになるのはもちろん、暮らしの相談に乗ってくれる人も多いと思う。

 

役場をあとにして、車で5分ほどの距離にあるファームガーデンへ。

ちょうどお昼前の時間だったので、ランチをいただくことに。頼んだのは、「お野菜ランチ」1750円。

まずは前菜のサラダ。ベビーリーフにカリフラワー、人参、そして里芋も入っている。

どの野菜も曽爾村でつくられたもの。シャキシャキとみずみずしくておいしい。

続いて出てきたのが、メイン料理のほうれん草とブロッコリーのポトフ。ポタージュのような濃厚さで、野菜の甘みがスープによく出ている。

なかには、たまねぎと大根、里芋に人参、そして鶏肉。ごろっとした食べ応えある大きさで、どれもおいしい。添えてある菜の花のほのかな苦味もいい感じ。

付け合わせのパンは、隣のパン工房でつくられた米粉のバゲット。スープに浸して一口…これも間違いないおいしさ。小麦のパンよりもちっとした食感で、食べ応えがある。

デザートのブルーベリーのゼリーもひんやりとしていておいしかった。

ランチを堪能したところで、お店の人に声をかける。奥から出てきてくれたのは、お店の責任者である立花さん。

ランチ、とてもおいしかったです。

「ありがとうございます。4年前くらいから村の野菜を主役にしたメニューにしていて。今の時期はメインのスープがブロッコリーとほうれん草ですが、夏は野菜たっぷりのスープカレー風、秋はパンプキンというふうに、季節ごとに変えています」

生まれが曽爾村だという立花さん。中学までは曽爾で、高校から大学は大阪や京都で過ごした。

「理系の大学院に進学したかったんです。けど、いろいろな事情で進学できなくて。東京で就職して、4年くらい働きました」

「働いてはいたんですが、やっぱりやりたかった研究職ができないのがいやで。ちがう道を探ろうと、退職して一度実家に帰ってきたんです。それが20年前くらいかな」

実家で過ごしているときに誘われたのが、ファームガーデンのラベンダー植え替えのアルバイト。1日で終わる予定が、そのままビール工房の仕事も手伝い、さらにはファームガーデン内に新しくつくられた温泉施設と米粉パン工房の立ち上げにも参加。

地元で働くつもりはなかったけれど、あれよあれよという間に正社員として働くことになった。

「手伝ってたら抜けられなくなっちゃったんですよね(笑)。立ち上げってすごく大変で。基本は村の人がスタッフになるんですが、みんなサービス業のことなんて知らないから、オペレーションを確立させるのがものすごく大変でした」

施設の立ち上げを担当したことで、立花さんは複数の施設のマネージャー的な立ち位置で働くことに。そこにはレストランの運営も含まれていた。

地元の食材にこだわるようになったのは、5年ほど前から。

「お客さんが田舎で何を求めてるのか、マーケティング調査をして。やっぱり野菜なんですよね。それもちょっと食べてもらうというよりは、たくさん野菜を食べてもらえるメニュー構成にしたほうがいいんじゃないかと、4年前から野菜レストランとして営業しています」

メニューはどれも、野菜を主役にした料理。ほとんどが曽爾村産の野菜で、どうしても補えないものは奈良県内でとれたものを使っている。

とくにトマトとほうれん草は、寒暖差の激しい曽爾の気候とマッチしていて、甘みがあっておいしいと評判も高い。

メニューはどうやって考えているんですか?

「スタッフのひとりがすごく料理好きなおばちゃんで、家で料理研究をしてるくらいなんです。だから『この野菜を使った料理、なにかできませんか?』ってお題を出すと、いろいろ試行錯誤してつくってくれる。そうやってメニューを増やしてきました」

メニュー開発も、実際の調理も。レストランの軸を担ってきたおばちゃんスタッフたちだけれど、年齢的にあと5年同じように働けるかが不安になってきた。

加えて、立花さんのなかではもう一つ、新しい人に来てもらいたい理由があるという。

「正直言うと、僕もおばちゃんたちもプロではないんですよね。だから、料理のレベルをもう1ランク上げるなら、プロの料理人に来てもらいたいと思っていて」

プロの料理人と聞くとハードルが高く感じるけれど、たとえば調理師学校で学んだ人や、飲食店のキッチンで働いた経験のある人などでもよいそう。

経験や実績というよりも、野菜を使った新しい引き出しを増やしていけるような人を求めている。

「料理のコンサルに入ってもらうという選択肢もありますけど、そういう人って仕事が終われば離れてしまうから、地域への想いがないんですよね。そうじゃなくて、曽爾村に住んで地元の人と触れ合いながら、一緒にアップデートしていってもらいたいんです」

4年間、野菜レストランを続けてきたおかげで、今は野菜を目当てに曽爾に来てくれる人も増えてきた。

ただ、泊まりがけで来る人が少ないのもあり、営業はランチのみ。単価は最大2000円ほどにとどまっている。

「経験はそこまで問わないですけど、田舎のおばちゃんたちと仲良くできる方がいいですね。週4日勤務なので、週3は自分で畑をする、とかでもいいと思います。あとは、夜は今のところ使われてないので、その時間に自分でお店をやってみる、とかも全然オッケーです」

曽爾村には、元からいる農家さんや協力隊以外にも、外から移住してきて無農薬の有機栽培で野菜をつくっている農家さんもいる。

ここで得られるさまざまな生産者とのつながりは、料理人生のなかでも大きな財産になると思う。

 

ここで、どんな人が料理をつくっているのか、厨房で働いている松本さんに話を聞いた。

立ち上げのときからのスタッフで、途中抜けた期間があるものの、約17年ここで料理をつくり続けている。

もともとお料理するのが好きだったんですか?

「そうそう。食べんのも好きでね。お料理つくるのも大好き。そやから、立花くんが言うてくれたことに対して、いろいろ考えてな。ハンバーグでも、お肉だけやったらあかんからほうれん草を混ぜたハンバーグつくったりして」

「夏になったらバジルを入れたり、大葉を入れたり。そうやって季節ごとのものを使う。今日食べてもらったスープも、秋になったらカボチャを使うんよ。カボチャも種類で味が違ってね。一番おいしいのはロロンっていうカボチャ。形がラグビーボールみたいで、高いねんけどそれを買うてきてもろて。うちでも育てたりして使ってな」

食の話になると、どんどん話が出てくる松本さん。本当に料理が好きなんだろうな。

「つくったものなんでも出すんじゃなくて、必ずみんなに味見をしてもらって、みんながおいしいって言ったものだけを出してる。せやから、一流でもないけど二流でもないね」

「あんまりいろんなもん入れすぎたらね、野菜のおいしさが出やへんから。あとは旬も大事やね。じゃがいもは新じゃがのときに使う。おいしい時期のものを使うっちゅうのが大事なことやと思うね」

新しく入る人も、まずは松本さんと相談しながら新しいメニューをつくっていってほしい。

松本さんはどんな人と一緒に働きたいですか。

「やっぱりお料理が好きな人。若い人は新しい発想を持ってるから、野菜をこうしたらええんちゃうか、ああしたらええんちゃうかって、お互いに言い合えるような人がいいね」

「お皿が帰ってきたら、いつも自分がつくった分は見るんよ、残ってるかどうか。きれいに食べてくれていたら、まあまあいけてるんかなって思うよね。おいしいって言うてもらえるのが、つくる人からしたら一番うれしいよ」

 

0からのスタートではありません。村の人たちがつくりあげてきた1を、どう伸ばしていくのか。

ともに考え、ともに悩み、ともに手を動かす。そんな人を待っています。

(2022/4/19 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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