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人に、食に誘われて
名建築ホテルで会いましょう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

重厚な意匠の外観から、中に入ると吹き抜けの空間。

大きく取られた窓から差し込む光は、シックな色調でまとめられたホールにやわらかな陰影をつくりだす。

1925年。兵庫県・豊岡市を中心に甚大な被害をもたらした震災からの復興のため、中心市街地に多くの鉄筋コンクリート造の洋風建築が建てられました。

「旧兵庫県農工銀行豊岡支店」もそのひとつ。アーチ、レリーフなどの意匠は昭和初期のモダン建築の姿を今に伝えています。

銀行だったこの建物は、6室限定のブティックホテル「TOYOOKA1925」として生まれ変わりました。まちの資源を活かした宿泊施設の開発・運営、イベント企画運営を行う株式会社CYCLEが運営しています。

今回はこのホテルで働くシェフの募集です。CYCLEに所属しつつ、3年は地域おこし協力隊として働き、希望すればそのままCYCLEで正社員として働くこともできます。

生産者を訪ね、地域の食材への理解を深め、メニューを開発し、お客さんにふるまう。

まちのシンボルのようなこの場所を中心に、食に関わる人たちとつながり、食を通して地域の魅力を発信するような仕事です。

まずはTOYOOKA1925やこの地域の人たちの雰囲気を感じてもらえたらと思います。

 

京都駅からは特急で2時間ほど。

1300年の歴史を持つ城崎温泉の手前、豊岡駅に着く。駅からのびるアーケード商店街を歩いていくと、レトロな洋風建築がちらほら。

震災復興時につくられた建物が、今も30軒ほど残っているそう。

散策しながら8分ほど歩いていると、TOYOOKA1925に着く。

国の登録有形文化財に指定される立派な建物に少し緊張しつつ、中へ足を踏み入れる。

「遠路はるばる、ようこそ」と、CYCLEの代表中原さんが笑顔で迎えてくれる。

まちの資源を生かした観光イベントの企画運営や、プロモーションを生業としていた中原さん。

丹波篠山市で活動をする友人と、地域の城下町の街並みを活かしたマルシェを開催したことがきっかけで、「食」に興味をもちはじめた。

「地域に有機農家さんがたくさんいて。出店者を集めるために、そういった方々を訪ねてまわりました。土づくり、自然との向き合い方、生活の仕方一つひとつから、農家さんのこだわりや、もっというと生き様が感じられて、かっこいいなと思ったんです」

「食に全然興味がなかった自分にとっては、この出会いが衝撃的で。自分もこういう人になりたいなと思い、畑や田んぼをしたり、食材もオーガニックのものを選んだりするようになりました」

さらにつくり手のこだわりがつまった農作物を、つくり手の声と一緒に届けたいと思うようになった中原さん。年に1度のマルシェを続けながら、自分でもオーガニック野菜の販売とカフェを経営し始め、地域の食に関わる人とのつながりを深めていった。

「2014年頃、TOYOOKA1925がホテルとして始まったタイミングで、建物の管理会社からプロモーションを手伝う仕事を依頼されて。ただ豊岡は、僕にとって縁もゆかりもない場所でした」

ちょうど、豊岡駅前の商店街を活性化するプロジェクトにも携わったことで、豊岡の生産者や料理人とのつながりができる。

生産者を訪ね料理をするシェフ、畑付きのレストランを経営する人などおいしいものをつくるユニークな人が多かった。

「信頼でき、応援したい仲間が豊岡に増えていったことで、地域に愛着が湧いてきて。みんながいいものをつくり続けられるには、地域の食の魅力を知ってもらい、いろんなお店を巡ってもらう必要がある。そして、その拠点となる宿も欠かせないと思ったんです」

前の管理会社が施設の指定管理を辞めるタイミングで、CYCLEが引き継ぎ、2024年4月からTOYOOKA1925での宿泊事業をスタート。

今は朝食の提供と、カフェ営業、そして結婚式や宴会といったイベントごとの実施をしている。とくに人気なのは、TOYOOKA1925で提供する朝食。豊岡のいろんなつくり手のつながりがメニューにつまっている。

城崎温泉街にある人気のペイストリーのクロワッサン、となり町の久美浜で採れたヨーグルト、近くの築100年の木造商店街「ふれあい公設市場」の一角で焙煎しているコーヒー。旬の野菜は、季節によって仕入れる農家さんも変えている。

「ここは、ローカルな食の宝庫なんです。日本海の新鮮な魚介、特にカニは近隣の地域から冬になると食べにくる人が多いし、神戸牛をはじめとした全国のブランド黒毛和牛のルーツと言われる但馬牛(たじまうし)は品評会での評価も高い。海のものも、山のものも幅広くあり、そこでできたものを活かした飲食店も多くあります」

「生産者、料理人の横のつながりがあるのは、この地域ならではだと思います。食材のことを知りたいとか、料理の相談がしたいとなったら、すぐに訪ねられる」

つながりを持って料理を提供しているけれど、ホテルとしてはまだまだつくり上げていく段階。

新しく入るシェフは、つくり手をまわりながら、結婚式や宴会の新メニューや、現在は提供できていないディナーメニューの開発と提供に力を入れて、自由な発想で食の宝庫を活かしてほしい。

 

次に話を聞いたのは、TOYOOKA1925の食を担当するシェフ兼パティシエの中村さん。家庭の事情で今後豊岡を離れる可能性があり、新しく入る人は中村さんの後任としてTOYOOKA1925の食を引っ張っていくイメージ。

大阪とフランスで製菓をそれぞれ1年間学び、シェフ歴は7年目になる。知り合いからの紹介で、縁あってCYCLEへ入社することに。

CYCLEの正社員としてのシェフは中村さんひとり。宴会の前日や当日など必要に応じて調理補助のアルバイトスタッフに来てもらう。

日々の仕事としては、宿泊者に朝食を提供し、その後はカフェで出すお菓子づくりや月2、3回ある宴会・結婚式の食事メニューを考え、仕込みと発注を行う。15時ごろに終わる日もあれば、宴会がある日は夜遅くまで対応することもある。

「全部を自分で決めるので、プレッシャーはあります。けれど、その分お客さんの反応がいいとすごくうれしくて。そういう様子をみると、なんだか報われた気持ちになります」

「これまで働いてきた環境のなかで、ここが1番お客さんとの距離が近い。キッチンからホールの様子が見えるし、ここで結婚式を挙げる人との打ち合わせに参加することもあります。お客さんが1925で過ごす時間に一緒に関われる感じがあるのはいいなって」

とくに印象に残っているのが、披露宴で餅つきをしたいと相談を受けた新郎新婦。

限られた時間内でおいしい餅を食べられるようにするにはどうしたらいいか。ウェディングを担当する別会社のプランナーと一緒に、手順なども細かく考えた。

「披露宴当日、無事に餅つきを終えて披露宴も終盤というときに、『この会ができたのはこの人たちのおかげです』と、私のことを紹介してくれた。新郎新婦のふたりから花束とメッセージもいただきました」

「こんなに感謝してくれて、特別な瞬間を一緒に分かちあえる。その後も一緒にご飯に行くこともあるくらい、いい関わりになるってほかではないことだなと思います」

CYCLEが運営する前は、オーベルジュとして観光のお客さんに特化した施設だったTOYOOKA1925。文化財としてのイメージも重なり、近隣に住む人のなかには敷居を高く感じている人も多いそう。

地域で大切に守ってきた場所だから、せっかくなら地元の人にもっと気軽にきてほしいと思った中村さんは、今年の4月にアフタヌーンティーのイベントを企画。

「レシピもメニューも全体の構成も、一から企画してつくるのはこれがはじめて。どこから食材を仕入れようとか、あれこれ悩みながら形にしました。私にとって力試しのような企画」

はじめての企画で不安もあったけれど、いざ蓋を開けてみると予約のほとんどが近所の方で埋まり、予定数は完売。好評につき、6月に2回目が開催されるそう。

「4月はイチゴ、次はメロンと抹茶をメインに考えています。この近くで取れる旬の食材を活かすことを考えています。やっぱり旬のものって、味がつまっていて美味しいし、活かし甲斐があります。豊岡は、四季がはっきりしていて、季節を感じながら料理をつくりたい人にとってはいい環境ですね」

「周りにいろんなお店があって、面白い料理人がいます。関わろうと思えば関われるし、いろんなものが吸収できると思います」

 

「ちょっと話を聞いてほしい人がいるんです」と代表の中原さんと車で移動すること、20分。

城崎温泉街にあるビストロ「OFF KINOSAKI」に着く。

紹介してもらったのが、このお店で働くそうたさん。今回求める人物像に近いと感じ、急遽夜の営業時間にお邪魔することに。

「大学の進路を考えたとき、やりたいことが見つからなくて。とりあえず、経済学部に入りました。営業職のインターンにも参加したけれど、何か違うなという感覚があって。しっくりくる何かをずっと探している感覚でした」

転機になったのは、大学2年生のときに行ったイギリス留学。それまでまったく料理はしてこなかったけれど、現地の味に馴染めず、自分で料理をするようになった。始めてみると楽しくて、帰国後もそのまま料理を続けた。

それからしばらくして、知り合いに紹介してもらい農家さんの元でインターンに行く。

「行った先の農家さんが、自分たちが食べるものや暮らしの細部に意識を向けている人たちで。オーガニックでこだわりをもってつくるとこんなに野菜って美味しいんだとか、自分の中に『いいもの』の軸ができるような経験でした。その農家さんたちがかっこよくて、僕はこだわりのあるつくり手の野菜の旨みを、活かした料理をしたいと思ったんです」

実際にそういった料理を提供しているレストランにひたすら飛び込んで行ったそうたさん。

地元の京都・福知山にあるレストランのシェフを訪ね、そのシェフの紹介から長崎・雲仙にある名店「BEARD(ビアード)」同じく雲仙にある在来種野菜の販売をしている「タネト」にも足を運び、インターン生として働いた。

OFF KINOSAKIで働くことになったのも、BEARDの原川シェフに紹介してもらったことがきっかけ。シェフ見習いとして働きはじめる。

「はじめの1年間は洗い物しかできない世界かと思っていたけれど、想像以上にいろんなことをさせてもらって。毎日新しいことばかりで楽しいです」

「それから、全国から著名な料理人や食の関係者が、OFF KINOSAKIやこのエリアにやってきます。それだけ求心力がある人たちが身近にいる環境は、料理人として魅力的だと思います」

 

新鮮な食材が豊富にあるだけでなく、それを活かして日々おいしい料理を提供する料理人も近くにたくさんいるのが、このエリアならではの面白さ。

名建築のホテルを拠点に、目一杯料理に打ち込んでほしいです。

(2025/5/8 取材 荻谷有花)

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