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南牧村は、八ヶ岳の麓にある小さな村。
標高1000メートルを超える高原地帯で、冷涼な気候を活かした高原野菜が有名です。
夏には高原野菜が最盛期を迎え、畑いっぱいに鮮やかな緑が広がります。その背景には、どっしりと構える八ヶ岳。朝は雲海、昼は青空、夕方は赤く染まった山肌が見えることも。空気は澄んでいて、夜は満天の星空が広がります。
そんな自然あふれる南牧村で、村内初のクラフトビール開発を担う人を募集します。

地域おこし協力隊として着任し、村の特産品として、3年後に製品化が目標。
研修先を用意しているので、ビールづくりの経験は必要ありません。
村の人と関係を育みながら、どのようなビールをつくれると良さそうか。ブルワリーを立ち上げることを見据えて、準備していきます。設備資金の支援や資金調達の相談にも村が前向きに対応予定です。
高原野菜やホップ栽培、水質の良さといった、南牧村ならではの原料にも挑戦できます。技術を学ぶ先も、資金面もツテがある状態でスタートできるので、ビールづくりに集中できる環境だと思います。
新宿から特急あずさに乗り、八王子、甲府を越えて、小淵沢駅へ。そこから小海線に乗り換え、北上していく。
標高は1000メートルを越え、車窓から八ヶ岳を望むことができる。

清里高原を抜けて、南牧村へ入る。標高はさらに上がり、日本の普通鉄道路線における最高地点、およそ1,375 メートルを通過。
さらに走ると収穫間近の野菜畑が広がる。心なしか、色も濃く葉も大きい気がする。合計3時間ほどで、佐久海ノ口駅に着いた。
ここが村の中心部。診療所に郵便局、役場といった生活に必要なサービスがコンパクトに集まっている。
役場で迎えてくれたのは、有坂村長。机の上にいるのは、コナン君?

「今年の最新作映画では、野辺山の国立天文台が主要な舞台として登場しているんですよ。公開前からファンの方が訪れてくれて。このあいだのゴールデンウィークは例年の100倍くらい、2万人近い方が村を訪れてくれました」
すごいですね…!
「ほかにも、八ヶ岳にある本沢温泉は日本一高い場所にある露天風呂。大気が澄んでいて、街灯も少ないことから、天文学者が選んだ日本3選星名所にも選ばれています。景観を活かした観光の村としても、映画を機に初めて訪れる人たちがいっぱい来てくれたらなと思っています」
南牧村の人口は、2700人ほど。
レタス、白菜、キャベツなどの高原野菜を中心とした農業と、酪農が盛ん。標高が高いほど大きな豆が育つ花豆の甘納豆や煮豆も、特産品として人気がある。
「ヨーグルトなどの乳製品も力を入れているんですけど、ほとんどが村の外へ加工依頼をしているんですね。できれば村の目玉商品になるような特産品を、村内で生産したいと思いまして。それで、ビールづくりを目指すことにしました」

村の目玉商品を目指すビールづくり。村のなかに専門家がいるわけでもないので、まだその概要は決まっていない。
ただ、有坂村長にもいろいろな思いがある。
ひとつは、福祉に力を入れていきたいということ。
役場の近くに、すみれ会という障がいのある方の就労支援・生活支援を行う共同作業所がある。
普段は、村内トイレや国道の清掃をしたり、野菜を育てて販売したり、花壇の整備をしたり、地域イベントへ参加することも。
「実は、ビールの原料となるホップの栽培地として、この村が適していることがわかりまして。ホップの栽培や、ビールが製品化されたときにはラベル貼りなど軽作業をお願いできたらと考えています。通年で継続的に仕事が発生するので、作業内容の広がりにもつながります」
「それから、自分たちの手で育てたホップがビールになり、製造過程にも加われれば利用者の方のやる気や誇りにもつながると思うんです」

一人ひとりの顔がよく見える小さな村だからこそ、ここに暮らす人たちが心豊かに生きることを大事にしている南牧村。
支える、支えられるの関係ではなく、村全体の人たちが関われるプロジェクトにしていきたい。
新しく入る協力隊は、その中心人物として、一からプロジェクトを立ち上げていくことになる。まだ事業計画は決まっていないため、任期の3年間で市場調査も行い、どのような形でブルワリーをつくるか、製品化を実現できるのかを考えていく。
最終的には、役場の人たちと話し合って決めることになるので、新しく入る人の自由な発想でいろいろと提案していけると良さそう。
事業の可能性として、村長がいくつかのアイディアを出してくれた。
たとえば、今年の6月に、野辺山駅舎をJRから譲り受ける協定を締結。
「地元の人からおしゃれなカフェがほしいといった声も上がっているんですね。駅舎をリニューアルして、カフェを併設したクラフトビール工場をつくれたら、地域の憩いの場にも観光の目玉になるかもしれません」
「ほかにも、村出身で活躍中のデザイナーさんがいらっしゃるので、その方にラベルのデザインをお願いしてみるとか。それから、村の特産品の花豆や、長芋なんかを副原料に入れてビールづくりしても面白いんじゃないかとか。いろいろ夢も膨らみますね」
今回の採用プロジェクトを進めてきた役場の荻原さんに、着任後の協力隊の働き方について聞いてみる。

「オリジナルビールをつくって地域おこしをするんだって自分一人で背負い込むよりも、村の人と一緒に汗をかいて何かをやるほうが、地域の人にも受け入れてもらえると思うし、本人も楽しめるんじゃないかな」
ビールづくりの研修先は、近隣の佐久穂町にある、八千穂ブリューイングが受け入れてくれることに。営業日は金土日の3日間のみ。
ただ、この3日間すべて八千穂ブリューイングで働くかは、採用された人と相談の上、決めていくことになる。
荻原さんは、少なくとも残りの2日間、村の人たちを知るところからはじめていくことをおすすめする。
「たとえば、役場の農業担当の職員についていろんな現場を見てみるとか、観光係と一緒にハイキングコースの整備ですとか」
「それから地元の人が集まるレストランでも接客してもらうなど、地域とのつながりの土台づくりをしてもらって。もちろんすみれ会も。そのうえで具体的にビールづくりを考えていけるといいと思います」
その内容は、役場で決めるのでしょうか?
「協力隊の人が村の何を知りたいのか関心があるのか、相談しながら決めていけたらと思っています」

村がサポートすることとして決まっているのは、研修先のサポート。
ただ、それ以外のこともできることはやっていきたいと考えている。
「ビールができたら、村の飲食店でも取り扱ってもらって。宴会の一杯目は、そのクラフトビールで乾杯しようみたいな。そういう機運ができても、きっと楽しいですよね」
村の中心部から車で30分ほど、八千穂ブリューイングへ。
醸造所に加えて、出来立てをすぐに飲めるタップルームも備えている。芝生の上にはテーブル席も用意されていて気持ちよさそう。

「この場所はもともとガソリンスタンドだったんですよ」
教えてくれたのは、八千穂ブリューイングのオーナーであり、醸造家の高岡さん。
長年に渡ってワインのプロモーション事業を手がけてきた方。平日は都心でワイン事業の仕事をしていて、金土日の3日間で八千穂ブリューイングを営業している。
新しく入る人は、高岡さんの指導のもと、ビールづくりを学んでいく。

「醸造免許をとるには、最低でも年間6000Lが必要なんですね。我々は、500Lのタンクを5個持っていて、それを順番に仕込んでいき、年間で8000〜9000Lほどを醸造しています」
「副原料を入れてつくるのも楽しいですけど、いまは基本的にスタンダードなビールをつくっています」
どうしてでしょうか。
「最初にここでペールエールをつくったとき、今まで都心で使っていたのと同じレシピでつくってみたら、まったく違うビールができたんです」
「すごく爽快で清々しいというか。飲み口がよく、喉通りもいい。麦芽の旨みもホップの香りもよく出てる」
ビールの原材料は、麦芽、ホップ、酵母、水のみ。
レシピはまったく同じなのに何が違うんだろう。
よくよく思い返してみると、違っていたのは、使用する水だった。
「水の清らかさでこんなに違うんだって驚きました。それ以外は何も変えていないですからね。そうであれば、とことん水の良さを表現しようと思って。いまはあまりゴテゴテと装飾をしないように心がけているんです」
「南牧村も同じようにいい水が流れていると思うので、ビールづくりが楽しみですよね」

新しく入る人は、どんな仕事から覚えていくことになりますか。
「はじめは我々がやっていることの真似をしてもらって、体に蓄積してもらいます」
お客さんにもビールづくりの楽しさを体感してもらおうと、定期的に醸造体験を開いている八千穂ブリューイング。お客さんに教えるには醸造の知識が必要になるし、誰かに教えることで知識の定着にもつながるから、ぜひ新しく入る人にも担当してほしい、とのこと。
それから頻度は多くないものの、タップルームでの軽食調理や接客も関わることになるそう。
「運営にまつわることを全部知っておかないと、独立してトラブルがあったときに何にもできない人になっちゃう恐れがあると思うんです。たとえば、うちの機械はコスト面を抑えるために海外製。トラブルがあってもここまで来てくれるわけじゃないから、結局は自分でなんとかしなきゃいけない」
研修期間中にさまざまな経験をし、独立できる力を身につけていく。

「ビールづくりは週に2〜3回通って、1年間やれば十分かなって。カレーや味噌汁つくるのと大体は変わらない。免許は必要だけど、国家資格も必要ないし。特別なスキルや技術や才能がなければできない仕事でもありません」
「ただ、やっぱりビールっていろんな工程があって、毎回やる作業もあれば、ひと月に1回しかやらない作業もある。やればやるほどゴールのない世界だから、そこは面白いと思いますよ」
ホップづくりにも取り組んでおり、最近は、自生している野良ホップを地元の高校生と一緒に採ってきて畑に植え直し、育てようとしている。
「けっこう繊細で、すぐ枯れちゃうんですよね。でも、地元の人たちといろんな関係を築きたかったから、そうやって地元の高校生たちと関われるだけでも楽しいかな。醸造体験もしてもらって、出来上がる途中の甘い汁も飲んでもらうんですよ」
豊かな自然を活かした王道クラフトビールもできれば、地元の高原野菜を副原料にしたビールもできる。ホップから挑戦してもいい。
未定な部分も多いですが、きっかけとなる場所があるのは、安心できる大きな要因だと思います。
八ヶ岳の麓で、みんなで乾杯できる日を一緒につくりませんか。
(2025/06/13 取材 杉本丞)


