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大袈裟に言えば
世界を少し前に進める仕事
木を活かす、森を変える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ものづくりの効率を高めていく過程で、それぞれのセクションは細かく分断されることが多くなりました。

たとえば家具をつくるとき。木こりが木を伐り、乾燥等の処理をして材木屋が販売。運搬業者が運び、メーカーや家具職人が商品の形にして、店舗で消費者の手に渡る。

どんな作業を、誰がどういうふうに進めているのか、見えにくくなっているように思います。

その一連の工程を、もっと見えるようにしたらどうだろう。

森を育てているストーリーに共感して家具を選ぶお客さんがいるかもしれないし、この人が伐った木を使いたいと思う人も出てくるかもしれない。もっと言えば、自分で伐ってみたいという人も。

そんなことができる未来を目指して活動している人たちがいます。

株式会社やまとわは、長野県の伊那市に拠点を置く会社。

職人による木製家具の製作・販売に加え、自分たちで農林業を行ったり、森を知るためのワークショップを開いたり。最近は空間設計にも力を入れていて、国産の木材を使った空間提案など、木にまつわるさまざまな事業を展開しています。

今回募集するのは、木工事業部の家具職人。

主に地元の伊那産の木材を使った家具をつくり、伊那の地域材の価値を高めることに挑戦しています。

合わせて、暮らし事業部のディレクターも募集します。

 

伊那市へは、新宿からバスに乗って3時間ほど。

やまとわの事務所兼作業所があるのは、伊那市駅から車で10分ほど山のほうへ向かった先。

晴れた日は、青い空に南アルプスが美しく映える。

事務所で迎えてくれたのは、創業者のひとりである奥田さん。

2016年に、もう一人の創業者の中村さんとともにやまとわを立ち上げた。

「僕は大学で林学を学んでいたんですけど、日本の森林が抱える課題のスケールがあまりにも大きくて、どうしていいかわからなくなっちゃって。森林の課題解決のために自分が何かする、ということを、一度諦めちゃったんです。文章や写真が好きだったので伝える側を目指そうと、編集やデザインの仕事をしていました」

日本では林業従事者が年々減っていて、木材として使用できる木がたくさんあるにもかかわらず、うまく活用できていない。

代わりに海外で大規模に伐採された木材を輸入しているため、世界の環境破壊にもつながっている、という見方もある。

「中村さんと出会ったのは、デザインの仕事をしているときでした。中村さんは伊那の木を使って15年くらい地道に家具づくりをしていた方で。地域の木を使ったものづくりをすることで、森の現状を変えていきたいんだって話してくれて、すごくグッときたんですよね」

グッときた、というと?

「僕は日本の森の課題に対して、何もできる気がしないってことで、諦めた経験がある。一方で中村さんは、『課題はとてつもなく大きいけれど、まずは目の前にある地域材を使ってものづくりをしてみようよ』って、10年以上続けている。そのことにすごく感動して」

「意気投合して、これから森をどうしようかって話をするなかで、一緒に会社をやってみることにしました。ものづくりをずっとしてきた中村さんと、デザインや編集というクリエイティブな領域に携わっていた僕が一緒になって、森の課題に立ち向かっていこうと。それが会社設立のきっかけです」

地域の森に目がいかないのは、地域材に価値を感じる人が少ないから。

そこで奥田さんたちはまず、その見方を変えていくことから取り組みはじめた。

「林業って、それぞれの仕事のつながりが切れているんですよ。木を伐る人、運搬業者、製材業者、木材屋、工務店。どこもお互いの顔をよく知らないし、目の前にある木は誰が伐ったかなんてわからない。そこを僕らがつなぎ直すことで、価値が生まれるんじゃないかと思ったんです」

「野菜みたいに、この人が伐った木です、あの人が製材してくれた木です、っていうことをちゃんと見せていけば、地域の木の価値も上がる。その第一歩は、自分たちで森をつくることだと思って、農林業をする『農と森事業部』というのを始めました」

ほかにも、クリエイティブの力を活かし、イベント開催などを通して森の課題解決に挑む「森事業部」や、地域材を使ったリノベーションや空間デザインの提案をする「暮らし事業部」など。家具づくりをする「木工事業部」も含めて、全部で4つの部門がある。

やまとわでは、これら4つの事業部の循環をつくることで、森の価値を底上げしていくことを目指している。

たとえば、パイオニアプランツというブランド。通常は木材として使われることが少ないアカマツの軽い材質を活かして、持ち運びしやすい家具をつくった。

「暮らしと森が今は遠いんで。そこがつながった状態にデザインし直したい。森と暮らしがつながっている状態をデザインして、森側から資源やアイデアを届ける。それがやまとわの目指すところですね」

今回はとくに、家具をつくる人と空間デザインを担う人を求めている。どちらも今後拡大していきたい領域なのだそう。

「森や環境のことって、人によっては突拍子もなく聞こえたりすると思うんです。けれど、そこに対して純粋である人がいい、と思っていて」

純粋、ですか。

「簡単に言えば、遠い目標、遠いビジョンに対して、諦めないってことですよね。そんなことやっても変わらないじゃんとか、つくってもどうしようもないとか。そういう発想では変わるものも変えられない」

「難しいのはみんな理解した上でやっているので。難しいけど楽しいね、みたいな感じで取り組んでいるから、わりかし前向きな人がいいかもしれない。ああ、でも前向きは違うかな… 僕が別に前向きじゃないから(笑)」

遠い目標を目指しながら、できることを地道に重ねていくというのは、言葉以上に難しいことだと思います。

「そのバランス感覚ですよね。遠くばっかり見てると嫌になるし、足元ばっかり見ても良くない。日々やることはコツコツなんだけど、目指すところはあの山だな、みたいな。振り返ったら、実は進んでんじゃん! ってことがたまにあるからうれしいわけで」

「学生時代の僕は、遠すぎて道が見えないって諦めてしまったけど、今はやまとわっていうチームで一歩一歩進んでいる実感がある。そうやって頑張る人に対して、肯定的な人が揃っているんじゃないかな」

 

続いて話を聞いたのは、奥田さんとともにやまとわを立ち上げた家具職人の中村さん。

20年以上前から、伊那の木を使った家具をつくり続けている。

「昔から家具づくりが好きで。最初は輸入材を使っていたんですけど、あるとき通いはじめた森林塾で、『日本は国内に木がたくさんあるのに海外の木材をたくさん輸入するから、世界的な森林減少に加担している』っていう話を聞いたんです」

「それで、僕のやっていることって森林破壊だなって思うようになったの。実際にこのあたりの山を見ても、手入れされていないところが多くて、うっそうとしている」

家具屋の自分にできることは、何だろう。考えてたどり着いたのが、地元の木を使って家具をつくることだった。

そこからは、木工のイベントに出て話したり、ワークショップを開いたりといった活動を、15年近く続けてきた。そんななかで奥田さんと出会い、やまとわを立ち上げることになる。

「10年以上経ったあたりから、もやもやしてたんですよね。広がっていく手応えがなかなか感じられなくて。でも20年も続けると、少しずつ変化が表れてくる。だから続けられてるんだと思います」

「会社を始めるときも、20年はがんばろうって。1ミリの積み重ねみたいなのはすごく大事なことなんだろうなと、感じてますね」

家具職人として中村さんが大切にしていることってなんでしょう。

「ダイニングテーブルだったら、そのテーブルの上でみんながご飯を食べる。人生そのものを演出する場所をつくっているわけじゃないですか」

「つまりは、幸せをつくり出す仕事。大袈裟にいえば、世界平和のためにやってる。これをつくってあの人が使ってくれたら、世の中変わるかもしれないなってワクワクする、みたいな。そういう木工家が来てくれたら、一緒に山に入って木を伐ろう、鉋かけようぜ、刃物研ごうぜって、僕がうれしそうに話すと思う(笑)」

今回募集したいのは、家具製作の経験者。

職人の中心となって周りのメンバーと協力しながら、お客さんへの提案やデザイン設計、納期管理や納品、納品後のフォローまで、家具製作に関わる仕事を幅広く手がけることになる。

その上で、中村さんや奥田さんの思いに共感できることが大切になると思う。

 

最後に話を聞いたのは、木工事業部ディレクターの吉田さん。4年半前に入社した。

「ずっと東京で働いていて。出産を機に、子育てするなら自然豊かなところで暮らしたいなって、いろいろ探していたんです。それと同時に、自然に関わるような仕事ができたらいいなと思って」

「そのときに知り合いに紹介してもらったのが、やまとわだったんです。やまとわに出会ったから伊那市に移住した、っていう感じですよね」

伊那市は、近隣の諏訪や塩尻まで車で約1時間。東京へも高速バスで3時間半ほどで行けるため、交通のアクセスはわるくない。まちも田舎すぎず都会すぎない雰囲気で、暮らしやすいそう。

「最初は中村さんについていって、木を伐るところや製材所の作業も見せてもらいました。立木の状態から順に加工していって、こういうふうにいろんな人の手がかかってものづくりは成り立っているんだなって実感しましたね」

昨年は、地域のパン屋さんのリニューアルにも携わった。

「最初は家具だけだったんですけど、せっかくなので全体の雰囲気変えませんか?って提案をして。カウンターとか什器もガラッと変えました」

「お客さんによっては、出来上がっていく様子を写真で共有したりして。はいできましたじゃなくて、その経過も共有していきたいなと思っています」

今回募集する暮らし事業部のディレクターは、家具単体ではなく、空間全体をトータルでコーディネートする役割。建築士の免許を持っていたら、なおありがたいとのこと。

「自分で考えて動ける人がいいですね。少ないメンバーでやっているので、言われたことだけするよりは、積極的に気づいて行動できる人がいいのかなと」

「あとは、やったことがないことにも前向きに楽しんで挑戦できる人だといいなと思います。一緒に大きな目標に向かう仲間なので」

 

森につながる暮らしをつくる。

地道に取り組んできたやまとわだからこそ、描ける未来があると感じました。

(2022/6/15 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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