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ここで、命を食べるとは
好奇心から生まれる料理
足元に気づくホテル

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「海や森。ここにある自然は、いろいろなことを教えてくれます。自然から恵みをいただいていると感じられる人は、ここの空気に馴染めると思います」

MEMU EARTH HOTEL(メムアースホテル)は、北海道の十勝地方、大樹町(たいきちょう)にある宿泊施設です。

広大な自然のなかに点在する建物は、寒さが厳しいこの土地で暮らすということに向き合って、実験的に建てられたもの。建物、そして周辺の自然に触れることで、この土地で育まれてきた風土を体感し、さまざまな発見のある時間を過ごすことができます。

今回はここで、料理を担当するスタッフを募集することになりました。

つくっているのは、命について考える料理。

経験があるに越したことはありませんが、それよりも大切なのは、食材や自然に対する好奇心だと思います。

合わせて、建物の修理や管理を担当する人も募集しています。
  
  

帯広空港から、初夏の十勝を40分ほどドライブ。

遠くに見える日高山脈と並行して南へ向かうと、広々とした草原のなかで草をはむ牛たちの姿が見えてくる。

道沿いにポツンと現れる看板を頼りに、「MEMU EARTH HOTEL」に到着。

倉庫のような建物の扉を開けると、外の牧歌的な風景から一変、洗練された空間が広がる。

席について窓の外に広がる緑を眺めていると、スタッフの方が「人懐っこいリスがいて、寄ってきてくれることがあるんですよ」と教えてくれた。

一息ついたところで、「お待たせしました!今日はよろしくお願いします」と爽やかに登場したのが、代表の野村さん。

「僕は東京生まれの東京育ちです。スポーツ一家だったこともあって、前職はスポーツ新聞の編集や営業をしていました。大きな転機になったのは、結婚して、義父が所有しているこの土地に連れてきてもらったことです」

「草の香りやセミの声。自然のなかで無邪気に遊んでいたころのことを思い出して、すごく不思議な感覚になりました。さらに、ここには人間的なメッセージが込められた建物がある。それらをホテルとして活用することで、地球とつながっている自分の暮らしについて、考えるきっかけがつくれないかと思ったんです」

メムというのは、このあたりの地名「芽武」から来ていて、アイヌの言葉で「泉の湧き出るところ」という意味があるそう。

以前はサラブレットを育成するトレーニングセンターとして使われていた場所。2011年からは、寒冷地の持続可能な住宅のありかたをテーマに学生コンペが行われ、作品として建てられてきた。

広々とした敷地のなかには、360度の自然を見渡せる家、ほとんどの機能が外にある家など、さまざまなコンセプトの建物が点在している。

白い膜に覆われたMême(メーム)は、建築家の隈研吾さんが設計したもの。

アイヌの伝統建築にヒントを得て、膜のあいだに地熱を取り入れることで、効率的に室内を温めているそう。

未経験だった宿泊業に挑戦するにあたり、隈研吾さんをはじめ、さまざまな人とのつながりに助けられたと話す野村さん。

方向性を決めるための大きなヒントになったのは、この土地でずっと暮らしてきた農家さんや酪農家の方々が聞かせてくれた話だった。

「東京では『ないものは買えばいい』って考えていたけれど、この土地の人たちは、なければつくるっていう発想をするんです。生えている植物から、食べられるものを見つけ出す。森に入って木を伐って、必要なものをつくる。自分でつくるから愛着が生まれて、ものを大切にしているんですよね」

「ここでの暮らしかた、生き様みたいなことから、人間として大切だと感じることをたくさん学んでいます。身近な変化に気づくとか、足元にある楽しさを発見するとか。いろいろな視点があることを知ると、普段の暮らしって、もっと豊かになると思うんです」

この土地での気づきを取り入れながら、ホテルとしてスタートしたのが2018年の冬。

訪れた人には、森への探検を案内することもあれば、なにもしない時間を提案することも。

ここで料理を食べることひとつとっても、発見のある時間にしてもらいたい。

「雑草のように見えても、料理の手が加わることで、こんなにもおいしいんだと価値を見いだせることがあります。料理一つひとつに込めたメッセージを、より多くの方に体感していただけるよう、宿泊しない方も立ち寄れるランチやディナーをはじめたいと思っているんです」
  
  

シェフとしてこの場所での食を考えているのが、北海道出身の石川さん。

「もともと食べることが好きで、自然と調理の道に進もうと思うようになりました。父親が台所に立つ姿が珍しくない家だったので、その影響もあるのかもしれませんね」

穏やかな口調のなかに、仕事に対する厳しさも感じさせる石川さん。

専門学校を卒業したあとは、地元・北海道の創作和食の店に就職。いくつかの店舗で経験を積んだ後、東京に移り、フレンチの店で腕を磨いた。

和食からフレンチへ、まったく違うジャンルに進んだんですね。

「一つのジャンルを突き詰めたいというより、いろいろなものを見たいってほうが強いんだと思います。魚のおろしかたひとつでも、和食と洋食ではぜんぜん違ったりするんですよ。下積みでしんどい時期もありましたけど、知らないことがたくさんあるのがおもしろくて、料理を続けてきたんだと思います」

縁あってここに来たのは、2年ほど前のこと。

今はどんな料理をつくっているんですか。

「フレンチのコースがベースにはなっていますが、途中で天ぷらを出すこともあって。ジャンルは特に決めていないんです。なにをつくるか、食材を食べてから考えるようにしていて」

「約9割は北海道のものを使っています。ここにある食材は本当に個性的で、おもしろいんですよ。この広い十勝でしかできない育てかたやつくりかたがあるし、こだわりを持った生産者さんもたくさんいるんです」

たとえば牛肉は、大樹町内で育てている方から仕入れることが多い。アニマル・ウェルフェアの認証を受けていて、環境に配慮しながら育てて売るところまで、自分で行っている方なんだそう。

「半年に1頭くらいしかお肉にしない方で。次この牛が肉になるよって、生きている内に教えてくれるんです。こんな経験、なかなかないですよね」

「育てる環境がすぐ側にあるから、ここでは命を食べているということをリアルに感じます。この場所に馴染む、ここでしか食べられないものってなんだろう。食べることってなんだろうって、ここに来てからずっと考えています」

広々とした土地で草をはむ牛の牛乳。太陽の日差しをたっぷり浴びた野菜。町内で水揚げされる新鮮な魚介。

ブロッコリーをじっくりと味わってほしくて、ボイルしたブロッコリーだけをお皿に置いて提供したことも。

お客さんからは「色の鮮やかさが印象的だった」「こんな味がするんだ」と、発見の声が返ってきたそうだ。

「車を運転しながら、ふと、ふきのとうでカステラってできないかなって思いついて。一緒に働いてるスタッフにつくってもらったこともあります。意外性もあって、お客さまにも喜んでもらえました」

「ここに来て、僕はつくるものが変わりました。なんていうのかな。余計なものを加えず、素材を強く出すようになったというのが近い感覚です」

今、主に調理に携わるスタッフは石川さんを入れて3人。

新しく仲間になるのは、どんな人がいいだろう。

「まだまだ会えていない生産者さんもいるし、山に入ればいろいろな食材が生きています。好奇心があって、やりすぎちゃうくらいの人のほうがおもしろいと思いますけどね」

食に関わるスタッフ以外でも、ここには好奇心旺盛な人が多いそう。

休日になると山に入っていって、凍った湖の上でコーヒーを飲んだり、熊も出るような山奥でテントを張って過ごしたりする人もいる。

「ここでの暮らしを楽しめている人ほど、お客さまにも気づきを案内できるようになる。それがここで働くおもしろさのひとつだと思いますよ」

そう話してくれたのは、サービス全体のマネージャーをしている阿戸(あど)さん。

「私、もともと旅をすることが好きなんです。ファームステイしたり、地元の人の家に泊めてもらったり。そこで暮らしている人の一日のサイクルを体感するのが好きですね」

「文化が違うと、同じものに対しても捉えかたが違ってきますよね。旅をすることで視野も広がりますし、多様性があたり前だという感覚も旅を通じて養ってきた気がします」

阿戸さんは20年間、東京やニューヨーク、ロンドンなど世界中のホテルで働いてきた。

ここに来る前は、屋久島のホテルにいたそう。

「10年くらい前からセラピストの勉強をしています。人の身体に関することを学んでいくと、やっぱり自然や地球との関わりがすごく大きいことを知るんです。人間らしい生活ができる場所を探しているうちに、自然の豊かなところに惹かれるようになりました」

「ここでは私自身、毎日のように発見があって。観光地ではないけれど、すばらしい環境が広がっているんですよね。それをお客さまにどう体感してもらうか、どう過ごしていただくか。選択肢は無限大なんです」

MEMU EARTH HOTELの宿泊費は、4〜6万円ほど。これまでさまざまな経験をしてきた方が、まだ見ぬ体験を求めてやってくることも少なくない。

「事前に連絡したり到着されてからお話をして、ここでの過ごし方をご提案しています。スタッフと一緒に自然に入って探検する方もいれば、じっと風や鳥の声を聞いて過ごす方もいらっしゃいますよ」

阿戸さんが大切にしているのは、お客さまの様子をよく見て、その人にとっての心地よさを察すること。

いくつかプランがあるというより、話をしながら、その方に合った関わり方をしている。

「ここって太陽や月の動きがよくわかるんです。陽の光によって雪の色がどう変化するのか、じっくり見るというのもここでの過ごしかたのひとつです」

「都会でいそがしくしていると、そんな時間をつくったこともないっていう方も多いので。気づいていなかった心地よさ、心が動く瞬間を見つけていただけると、こちらもうれしいですよね」

楽しそうに話す姿から、健やかに働いていることが感じられる阿戸さん。

大変なことはありますか。

「こういう環境なので、お天気によってやることを変えざるを得ないのは大変でもあります。あとは、建物によってそれぞれ素材が違うので、メンテナンスが特殊なんです。それを学ぶのも楽しいことの一つなんですけどね」

修繕スタッフとして働く人には、今ある建物のメンテナンスをしたり、家具を整えたりと、お願いしたいことが山ほどあるんだそう。

広大な敷地のなかでは、宿泊や食のほかに、畑をつくるプロジェクトが進んでいたり、大学生が定期的に訪れて研究していたり。

この場所を掘り起こす探求は、これからも続いていきそうです。

(2022/6/25 取材 中嶋希実)
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