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この駅、降りると何がある?
ガイドブックには載らない
都市的ローカルな宿の可能性

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「子どもで6年っていったら、相当な変化ですよね。生まれたばかりの子が新1年生でしょ?」

柱に刻まれた線を見ながら、シーナと一平を運営してきた3人は目を細める。

シーナと一平は、東京・豊島区にある宿です。

椎名町で営業していたとんかつ屋さん「一平」をリノベーションしたので、シーナと一平。今年の3月18日で6周年を迎えました。

一階にはシェアキッチンがあって、いつもお菓子のいい匂いがする。金土の夜は、不定期でカウンターを活かしたバーに。奥の宿泊スペースへ行くには、ちょっと狭いところもあるので、「後ろ通りますね」なんて一言が自然と交わされる。

旅で訪れた人も、地元の人も、ふらっと訪れて偶然の出会いを楽しんでもらいたい。まちの中と外の結び目でありたい。そんな想いで運営されています。

今回、オープン当初から番頭を務めてきたスタッフのつよぽんさんが卒業するということで、その後任となる人を募集します。

宿泊業の経験は問いません。新卒や第二新卒、外国籍の方も歓迎です。

将来、自分で事業をはじめたい人にとっては、さまざまな経験を積めるおもしろい環境だと思います。

 

池袋駅から、西武池袋線で一駅。はじめて椎名町駅に降り立った。

北口から西に向かってのびる商店街には、昔から続いていそうな居酒屋や焼き鳥屋と並んで、新しそうな店構えのところもちらほらある。ガヤガヤせず、寂れているわけでもなく、ふつうの“生活”を感じるまちだ。

アーケードを超えて少し歩くと、「とんかつ一平支店」の看板が見えてくる。

入ってすぐ目の前がシェアキッチン。扉を開けたとたん、ふわっとお菓子のいい匂いに包まれた。

小上がりは、以前まで畳だったところを最近リノベーションしてソファー席のラウンジに。

左手の壁にはさまざまな柄の布がかかっている。

「ここは最初ミシンカフェからスタートしたんですよ」

そう教えてくれたのは、運営会社であるシーナタウン代表の日神山(ひかみやま)さん。本業のインテリアやショップの設計・デザインと並行して、この西池袋エリアでさまざまな取り組みを仕掛けている方だ。

宿をはじめるきっかけとなったのは、7年前に参加したリノベーションスクール。

空き物件の活用方法を考えて発表するプログラムで、「とんかつ一平」の担当となった日神山さんたちチームが提案したのが、東京の日常を体験するタウンステイの宿だった。

「椎名町は観光地じゃないからいいなと思っていて。昔ながらの商店があって、人の癖だったり、温度感を感じる。本業のほうでは今っぽい商業の設計もやるんですけど、こういうまちの空気とかまちなみって、やっぱりつくれないんですよね」

時代を遡れば、昭和を代表する漫画家たちが若手時代を過ごしたトキワ荘があり、芸術家たちが「池袋モンパルナス」と呼ばれる文化圏を築いていったのも、このエリア。

世界3位の乗降客数を誇る池袋駅の発展を間近に見つつ、多様な人を受け入れながら続いてきたまちの歴史がある。

「めちゃめちゃ宿がやりたいというよりは、地域の中と外の人がつながるきっかけをつくりたかった」と日神山さん。

そんな考え方は、たとえばシーナと一平のパンフレットにも表れている。

「裏面がマップになっているんですけど、白地図なんですよ。銭湯と駅と、学校とお寺ぐらいで、あとは何も書いてない。お客さんの要望を聞いたうえで、その人の主観でおすすめしたほうが、一番満足度が高いと思うんです」

「宿の動線も、『ちょっとごめんなさい、後ろ通ります』っていうやりとりが生まれたり、お客さんが出かける前に一声かけられるように、あえてクロスさせていて。もちろんトラブルもゼロではないけど、ここはそれによって起きる出会いとかおもしろさを大事にしている場所ですね」

宿泊客の8割以上は、外国人観光客。金土日の夜になると、女将のさちこさんによるバー営業「さちこの不器用な夜」がはじまり、地元の常連さんもふらっとやってきて、一緒にカウンターを囲んで談笑するのが日常の風景だった。

それがコロナ禍によって、ぱったりと途絶えてしまった。

長い休業を経て4月にようやく予約の受付を再開できたものの、インバウンド観光が回復するまでは、もう少し時間がかかりそう。そのなかで今、日神山さんたちは、「たびあきない」という新しいプロジェクトをはじめようとしている。

どういうものかというと、「こだわりあるつくり手の偏愛を、宿から池袋西エリアに滲み出して届け、顔が見える接点をつくる“まち滞在型行商”」とのこと。

「今って、オンラインでなんでも手に入るじゃないですか。そのなかで何を選ぶかといったら、縁のあるもの。コロナ禍でも、お金を落として守りたいと思ったのは知り合いの店だったよなと思って。ぼくたちらしく、まちとの接点や縁をつくれないかなと考えています」

たとえば、生産者がシーナと一平を拠点に滞在しながら、こだわりの食材の販売会や、それらを使った料理を振る舞うイベントを開催。

お客さんにとっては、産地のこと、つくり手の想いを知る機会になるし、地元のお店がおいしい食材を仕入れることにもつながるかもしれない。

あるいは、商品開発や販路開拓をしようにも、誰に相談していいかわからなかったという生産者がいれば、デザイナーや売り先になりそうなお店を紹介することもできる。

「これまでも食のイベントは結構やっていて、山形でゲストハウスもされている『こめやかた』さんが杵つき餅の販売会をしたり、お菓子工房のパティシエが徳之島の高校生と一緒に、現地でつくられたコーヒーの葉っぱや花を商品化して販売したり。これぐらいの規模感だからこそ、全体を貸し切ってやりたいように表現できている部分もあると思います」

シーナと一平のほかにも、家庭料理をテーマにお弁当やケータリング、社員食堂などを運営するユニット「アホウドリ」や、ブルワリー・ギャラリー・まちのラジオステーションが一体となったお店「NishiikeMart」など、周辺で複数の拠点を運営しているシーナタウン。(20228月より、アホウドリは「虎とバター株式会社」として独立して運営開始。シーナタウンは家守会社としてバックアップしていく)

今回募集する人には、シーナと一平の運営に携わりつつ、これらの手札を活かしてまちの中と外の人がつながる仕組みづくりを一緒に進めていってほしい。たとえばアホウドリの料理チームと共同でメニュー開発をしたり、NishiikeMartで産地にまつわる展示を開いたりするのもおもしろいと思う。

「将来自分で事業をやりたい、場を持ちたいという人にとっては、いろんな経験が積める環境だと思います。シーナタウンは5人の経営者で立ち上げた会社なので、事業の相談にも乗れると思うし、ぼくらやこのまちをうまく使い倒してくれる人がいいかなと」

 

そんな転換期に合わせて、自身も新たなスタートを切ることになったのが、番頭のつよぽんさん。

立ち上げから6年にわたって関わってきたシーナと一平を離れ、パートナーとともにオーストラリアに引っ越すという。

「宿業務から、シェアキッチンの運営、イベントの企画や告知まで、なんでもやります。コミュニケーションの機会も多いですね。海外から来るお客さんも、東京のローカルを楽しむ宿だと知って、地元の人との会話をおもしろがってくれる方が集まっていた気がします」

日本語も英語もわからないまま、地元の人の輪に混ざって談笑しているイタリア人のお兄さん。長期滞在していて、年越しも一緒にしたイギリス人の青年。美大を目指す高校生。手紙をくれた韓国人の女性。

アメリカ人の人形作家さんが、簡単な人形づくりのワークショップを開いてくれたこともあったし、急に英会話教室がはじまることもあった。

ラウンジに置かれたアルバムを開きながら、いろんなエピソードを聞かせてくれるつよぽんさん。一人ひとりの名前がすっと出てくるからすごい。

「そこは一応、番頭ですから。SNSでつながって、何かとコメントくれる人もいます。人との出会いはやっぱり、ここで働く一番の醍醐味ですよね」

話の端々から、人との関わりを大事にしてきたことが伝わってくる。一方で、どんな人がこの仕事に向いていると思うか尋ねると、ちょっと意外な答えが返ってきた。

「人と関わるのが大好きなんです!誰でもウェルカム!っていう人は、じつは合わないのかなと思っていて。こういう人は苦手なんだわたし、ってわかってる人のほうが合うと思います」

少人数で運営しているので、一人で現場を任される時間も多い。

目の前の人と真摯に向き合うのはいいことだけど、お客さんとの距離感や仕事の進め方など、うまく折り合いをつけながら、自分で考えて動ける人が向いていると思う。

「スキルの面でいうと、ぼくは発信がすごく苦手なんですよ。いろいろ準備して整えてからリリースとかはできるんですけど、日々ぽんぽんぽんってSNSに投稿するとか、できない。そこはできる人がいいのかも」

 

「若い人は呼吸するように投稿してるもんね」

隣で聞いていた女将のさちこさんが続ける。

「わたしもかなりのアナログ派なので。システム周りのことも、ある程度抵抗なく、教えてもらえるような人だとうれしいです」

たとえば予約サイトの価格設定は、これまでつよぽんさんが担当していた。オンラインでできる仕事の一部は、今後もオーストラリアからサポートしてもらえる可能性もあるけれど、できれば新しく入る人も覚えていけるとよさそう。

そのほかでいうと、普段の宿業務はどんなことをするんですか?

「基本は掃除ですね。毎日掃除して、洗濯して、地味〜なセッティングも全部やります。よそのゲストハウスに行くと、気疲れするんです。運営する側の立場でつい考えちゃうから(笑)」

宿としてのベースがしっかりしているからこそ、気持ちよく過ごせて、いい交流が生まれる。イベントなどの特別な日だけでなく、日々空間を整えておくことをみなさん大事にしているみたい。

もともと海外旅行が好きで、それこそ呼吸をするように旅に出ていたさちこさん。

じつは英語がほとんど話せず、日神山さんたちには面接のときから伝えていたものの、働きはじめるまで信じてもらえなかったという。

「謙遜してると思われてたみたいで(笑)。言い訳っぽくてあれですけど、最初はがんばって英語で話そうとしたんです。でも、別人のような感覚になってしまって。今は開き直って、堂々と日本語でしゃべるようにしています」

「そうすると向こうも安心してくれるし、何かあったらアプリも使えるし。大事なのは話したい、わかりたいっていう気持ちなんですよね」

 

まちの中と外をつなぐ。

その方法はオンライン・オフライン含め多角化しているし、新しく見えてくるものもあるだろうけど、まずは顔の見える関係を築いていくことだとあらためて感じました。

興味が湧いたら、一度泊まってみると、この宿やまちのことがよくわかると思います。

8/25(木)の夜には、YouTube Liveでオンライン相談会を開催するそうです。応募にあたって気になることがある方、迷っている方も、まずは気軽に覗いてみてください。

(2022/4/13 取材 2022/8/10 一部追記 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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