求人 NEW

必要なものを、欲しいものに
衣食住の
うつわになる器

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ついつい買ってしまうものって、人それぞれあると思います。ぼくの場合、器はそのひとつです。

置き場所がなくなってきているのはわかっている。けれど、気に入った器は無条件で食卓に迎え入れたくなる。収集癖をくすぐられるようなところもありつつ、日々使う実用的なものでもあるので、自分に言い訳がしやすいのかもしれません。

「必要な物を欲しい物に変えよ」

そんな言葉を掲げる、aiyu(アイユー)という会社があります。近年、焼き物の産地として人気のある長崎県波佐見町に拠点を置く商社です。

テキスタイルの折り目を器に落とし込んだ「ORIME」や、どんなシチュエーションにも馴染む「重宝皿」、人間工学やユニバーサルデザインの観点を取り入れた「motte」など。個性的なオリジナル商品の数々を、どこかで見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回は、商品の企画営業を担当する人と、店舗づくりを担う人を募集します。

企画営業は、器だけにとどまりません。たとえば駅やホテルの内装にタイルを取り入れたり、異業種とのコラボレーションでイベントを企画したり。器が衣食住の食にあたるものだとすれば、衣や住の分野にもどんどん出かけていき、提案の幅を広げていくような仕事です。

店舗スタッフも、お客さんの声をもとに商品企画に参加したり、波佐見の陶器祭りに合わせてお店でのイベントを企画したり、クリエイティブな発想で新しいことに挑戦できる人に来てほしいとのこと。

器にあまり馴染みがない人でも、その経験が思わぬ形で活かせるかもしれません。

 

波佐見町には3つないものがある、とよく言われるそう。海と、駅と、国道。

電車で行くわけにいかないので、長崎空港から車で向かう。

山道を通り、田んぼのなかを北へ走ることおよそ50分。道の両脇に窯元や器の商社がずらりと並ぶまちなみから少し外れたところに、aiyuの看板が見えてきた。

迎えてくれたのは、代表の小柳さん。

「もともとはひいおじいさんが立ち上げた会社で、祖父の代までは窯元だったんです。ここ以外にも2箇所、工場や事務所を構えていて、従業員も300人ほどいたと聞いています」

ただ、高度成長期を過ぎると、次第に器が売れなくなっていった。その皺寄せをもっとも大きく受けるのが、川上のつくり手である窯元。そこでお父さんの代では、窯元から商社へと業態を転換した。

その後、食品の産地偽装問題をきっかけに、ものづくり業界でも産地を明らかにしようという動きが広まる。それまで有田焼の下請け的な位置付けだったこのあたりの焼き物も、「波佐見焼」として売り出していくことに。

焼き物の産地としては400年の歴史がある波佐見町。その培ってきた技術と、いい意味での“型”のなさから、北欧ブームなどの時流に乗った商品を打ち出し、知名度を高めてきた。

「うちはメーカーからのスタートだったこともあって、オリジナルの商品をよくつくってきました。そのなかで、先代である父がたどり着いたのがユニバーサルデザインです」

ユニバーサルデザインとは、子どもやお年寄り、障がいのある人や異文化に育ってきた人など、さまざまな“違い”を抱えた誰もが使いやすいように製品やサービスを提供しようとする考え方のこと。

たとえば、と言って小柳さんが紹介してくれたのが、aiyuを代表する商品のひとつである「eシリーズ」のマグカップ。

「あまり見慣れない形ですよね。通常のマグカップは、取っ手に指をかけて力を抜くと傾いてしまうんですけど、この形状だと支点が変わって軽く感じるんです。握力が弱くても持てますし、底面と取っ手の2点で支えるので倒れにくく、安定します。スタッキングもできるんですよ」

その流れを受け継ぎ、小柳さんが手がけたのが「motte」というシリーズ。

ユニバーサルデザインの商品は、落として割れないようにプラスチックを使ったり、色の展開も少なかったり、ともすると味気ないものになってしまいがち。

福祉の専門家の監修のもと、老若男女が同じテーブルの上で使えるデザイン性にもこだわった。

「波佐見のいいところは、分業制でそれぞれの分野にスペシャリストがいること。型屋さんや生地屋さん、焼き上げる窯元の職人さん。ゼロから形をつくりたいときに、相談に乗ってもらえる人がたくさんいるので、じっくり話しながらこだわったものがつくれるんです」

今回募集したいのは、こうした商品の企画開発を進めていく人。

小柳さんと現会長のお父さん、2人がこれまで担ってきた仕事を一緒に開拓していってほしい。

具体的にはどんなふうに進めていく仕事なのだろう?

「たとえば『ORIME』というシリーズは、私が前職でアパレルの販売をしていたことから、生地の折り目を器に落とし込んだらおもしろいんじゃないかと思ったのがきっかけで。アイデアが浮かんだら、まずは器のメーカーさんやデザイナーさんにそれを伝えるんです」

波佐見焼のメインターゲットは、20〜40代の女性。

その人たちに届けるためには、どんな柄や色の展開が必要か。どういったお店に置いてもらいたいか。発売するタイミングはいつが適切か。打ち合わせを重ねながら、イメージを形にしていく。

「カタログも必要だからいつまでに撮影しようとか、この展示会でお披露目しようとか。だいたい半年後にこれを出したいなって計算で進めることが多いです」

つくりたいものを直感的につくるというよりは、逆算してつくっていくんですね。

「私はそういうタイプでして。逆算しないと不安になるというか。無料でできたらいいんですけど、そういうわけにはいかないからですね。生産計画も営業も、トータルで考えて商品を世に出していくような役割だと思います」

焼き物の知識はもちろん、先々を見通す計画性も求められるし、つくり手やデザイナー、卸先である販売店との密なコミュニケーションも欠かせない。

おもしろそうな仕事だけど、ハードルも高いように感じます。

「そうですよね。焼き物のことがまったくわからない状態で来て、今言ったようなことをやってくださいと言われても、イメージがなかなか湧かないと思います。自分自身、18歳まで波佐見にいて、両親がこういう家業をやっていたのに、まったく興味がなかったんですよ。恥ずかしながら、焼き物は全部ろくろでつくっていると思っていたぐらいで(笑)」

なのではじめのうちは、職種にかかわらず検品や梱包を通して商品に触れたり、職人さんのもとを訪ねて話したりするなかで、波佐見焼への理解を深めてほしいとのこと。

ものづくりの一連の流れが見えて、つくり手との信頼関係もできてくるほど、自分のアイデアを提案しやすくなっていく。

「今でも現場に行くと、毎回のように新しい発見があります。のめり込むほどおもしろくなっていく世界なので、焼き物に関する知識や経験はなくても、熱意を持って取り組める方に来てほしいなと思います」

この数年はOEMの仕事が増えていて、ユニクロやアーバンリサーチといったアパレルブランドの限定商品をつくったり、長崎駅のトイレ標示や待合スペースの内装タイルを手がけたり。

新たに開通する九州新幹線の新大村駅にも、aiyuプロデュースのタイルが使われることになっている。

「お客さんによって、こういうものがほしいという要望が多様化してきていて。テーブルの上だけのお話じゃなくて、空間もあるし、外でもいい。衣食住のさまざまなシーンに対して提案ができれば、ゆくゆくは産地の職人不足の解決にもつながらないかなと思っていてですね。aiyuさんに行ったらいろいろ相談できるよ、みたいになっていけたらいいなと」

コラボレーションの機会は、波佐見町内でも多いという。

小柳さんは、さまざまな業種の理事12名からなる一般社団法人金富良舎(こんぷらしゃ)の一員としても活動するほか、商工会にも所属。

そのつながりから、博多駅のポップアップステージに「はさみストア」の一員として出展し、器のほかにも波佐見の農産物や加工品、シール屋さんとデザイナーでつくったオリジナルシールや、箱屋さんとお菓子屋さんによる箱詰めのクッキーなどを販売。

当時、その売り場で過去最高の売り上げを記録するほどの賑わいを生んだ。

「異業種も含めて、同年代で仲がいいんです。みんなでゴルフしたり、飲み会があったり、一緒にイベントをやったり。自分からどんどん外に出て、そういうコミュニケーションも楽しめる人だと、なおいいですよね」

 

現在のスタッフは、小柳さんを含めて6名。少人数で運営しているので、手の回っていないことも多い。

小柳さんのパートナーで、経理を中心にさまざまな役割を担当している小柳文さんにも話を聞いた。

「SNSの投稿や店舗のディスプレイも兼ねてやっているんですが、全部が中途半端になってしまうところがあって。これから経理の比重がより増えそうなので、広報やお店のことを中心になって考えてくれる人も今回来てほしいなと思っています」

検品や梱包など、裏方では地道な作業も多いし、重い陶器を動かすには体力もいる。企画営業とはまた違ったタフさが店舗スタッフには求められると思う。

お店の運営と並行して、言葉を扱う仕事や撮影経験のある人なら広報を担ってもらうことになるかもしれないし、イベント運営が得意なら、店舗を使った企画も考えてもらいたい。

波佐見では、毎年ゴールデンウィークに陶器まつりを開催しているものの、一昨年と昨年は中止になってしまった。これを受けてaiyuでは昨年、事前予約制のお祭りを独自に開催。訪れた人たちにも好評だったので、今後も店舗を使った器のワークショップやイベントは企画していきたいと考えている。

「不器用でも愛嬌がいいとか、きめ細やかな接客ができるとか。お店に立つ人に関しては、そういった部分がやっぱり大事ですよね。笑顔が素敵で、元気あふれる方」

「あとは、器はもちろん、ファッションやカルチャーにも幅広く興味がある方のほうが楽しいと思います。こうしたい、ああしたいって、いろんな角度からアイデアを持ち込んでくれる方がいたら、できることの幅ももっと広がっていくかなと思うので」

 

器という言葉には、「ふところ」とか「可能性」といった意味もある。

波佐見という産地、そしてaiyuには、そういった意味での器の大きさも感じました。器を器としてつくるだけでなく、衣食住のすべてに関わるものとして再解釈し、新しい形を与えていく。それは人と人のあいだにある壁を取り除いたり、つないだりするツールにもなるかもしれない。

器にはまだまだ可能性がある。そんな気がします。

(2022/2/28 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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