求人 NEW

足元から考える
環境のこと、地域のこと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「生活に必要なもの、求められているものをつくっているし、これからもつくっていきたい。時代や流行に流されず、使ってくれる人に受け入れられるかどうかが大事やと思うんです」

そう話してくれたのは、ヤマヤ取締役の野村さん。

つくる人にも、買う人にも、産地にとっても、いいものづくり。

話を聞いていると、流行を追うだけではなく、ものづくりの最適なかたちを模索することを、大切にされているように感じました。

1921年から奈良県広陵町(こうりょうちょう)で靴下の製造をしているのが、ヤマヤ株式会社。

エコやオーガニックという言葉が一般的になる以前から、オーガニックコットンを使った靴下づくりに取り組んでいます。

そのヤマヤの直営店として2020年にオープンしたのが、東京・清澄白河の「yahae kiyosumi」。

今回は「yahae kiyosumi」の店長候補と販売スタッフ、そして奈良県広陵町にある工場で靴下づくりに携わる人もあわせて募集します。

ファッションや小物が好きだったり、何に対しても前向きに取り組んでいける人にはぴったりの仕事だと思います。

 

清澄白河駅から、歩いて5分ほど。

清澄公園近くの緑が心地よい、清澄長屋の1区画に「yahae kiyosumi」がある。日本仕事百貨のオフィスからも近い、ご近所さん。

大きなガラス扉と窓があり、中に入るとコンクリートのグレーにカラフルな靴下が並ぶ空間。店内には色とりどりの靴下やオーガニックコットンを使用したアンダーウェアなどがすっきりと配置されている。

お店に入るとすぐに声をかけてくれたのは、取締役事業部長の野村さん。今日は工場と本社がある奈良から始発で東京に来てくれたそう。

奈良県は靴下の生産量が日本一。

ヤマヤの本社がある広陵町は、とくに工場も生産数も多い。女性用の靴下と言われるものの多くは広陵町でつくっているそう。

「工場の隣がまた靴下工場だったり、家族の誰かしらが靴下づくりの工程に関わっていたり。靴下のメッカみたいなところで生まれ育って。家業で靴下工場をしていたし、服とか鞄・手袋みたいな服飾雑貨が好きで、そういうのを買うためにバイトを頑張ってましたね」

「大学時代からアルバイトをしていた鞄屋さんに卒業後入社して、東京で3年間くらい働いていました。そのときに、社長だった父親が体調を崩しまして、奈良に帰って会社を引き継ぐことにしたんです」

ヤマヤが30年前から取り組んでいるのが、オーガニックコットンなどの天然素材を使った靴下づくり。

「3足で何円」といった大量生産の靴下がメインだった時代に、これからの靴下産業のあり方を見据えた野村さんのお父さんが始めたチャレンジだ。

靴下など、アパレル産業が及ぼす環境負荷や、安く大量につくることでつくり手が疲弊していく状況は当時から問題になっていた。

そこで注目したのが、オーガニックコットン。綿花の栽培・加工過程での環境負荷が少なく、品質もいい。業界のなかでも先駆けて使用し、商品の差別化にも成功した。

入社し靴下のことを深く知っていくなかで、自社の靴下への意識も変わってきたそう。

「はじめはうちの靴下ってめっちゃいいと思ってたんです。でもイタリアとか海外の一流品と比べると、まだまだだなって感じることがあって」

和装文化の日本では靴下の歴史はまだまだ浅い。デザインや配色に意味が込められた海外の靴下と比べると、日本の靴下は遅れをとっている部分が多いと感じるそう。

野村さんはヤマヤの靴下を、個性や可愛さがある「味のある靴下」だと話す。

「海外の靴下と同じものを目指していくわけじゃなくて。奈良の靴下産業をずっと未来にまでつないでいくためには、どうしたらいいかってことを考えてつくっています。素材を100%オーガニックのコットンに変えていきたいし、廃棄や在庫を減らす仕組みも考えないといけない」

「靴下の未来への思いをベースに商品や働き方を考えていったら、環境にも人にもやさしい靴下工場になれるんじゃないかなと思うんです」

毎日肌に触れるものだからこそ、素材もその背景にあるストーリーも、より良いものを選んでいきたい。

それは、自分の暮らしを豊かにすることにもつながるのだと思う。

 

「いい靴下って、ずっと履いていたいな、と思えたりするものかなと思っていて。そういうことを考えながら、靴下を企画しています」

そう話してくれたのは、靴下のデザインや企画制作を担当している佐藤さん。

「デザインをした靴下は試し履きをするんです。手に取った瞬間、履いた瞬間に心地いいなと感じられるものが出来上がってくると、すごくうれしいですね」

ヤマヤには「Hoffmann」「ORGANIC GARDEN」「yahae」の3つのブランドがある。佐藤さんはこのなかの「Hoffmann」のデザインを担当している。

「Hoffmann」は空想上の人物Hoffmannさんが履いている靴下をイメージしてつくったブランド。ドイツ系アメリカ人で、柔道が趣味、奥さんは日本人、など細かく設定が書かれたコンセプトブックもある。

一方で、「ORGANIC GARDEN」はオーガニックコットンと天然染料を素材にしたブランド。「yahae」は生産過程や素材で環境に配慮したブランド、というふうに、それぞれのブランドに個性とこだわりがつまっている。

「美大を卒業して、広告系の制作会社でグラフィックデザインのアシスタントをしていました。広告業界を目指していましたが、いいと思えない商品をいいものとして広告しなければいけないことに違和感を感じて」

「そこを辞めた後に、ものづくりとかの企画をやってみたいと思って、ハローワークで探した時に見つけたのが、ヤマヤだったんです」

企画ができる、という点で入社を決め、靴下の知識は入社後に学んでいった。今では靴下ソムリエという資格もとったそう。

「販売する1年前から、素材、配色、長さ、編み目の細かさといった靴下の企画を20から30個考えます。合わせる服によって靴下も変わるんで、流行の服とか色も参考にしますね」

「今の店長さんが出産に伴い退職することになって、今は店長のお仕事もさせてもらっています。具体的には、お金の管理やお店で季節のイベントに合わせたポップアップ展開の企画とかですね。もちろんそれに合わせた商品の仕入れなどもおこなっています」

店舗では豊かな生活を提案できるように、靴下以外のものも不定期で販売している。取材で伺ったときには、クラフトコーラや団扇、花火といった、夏が楽しくなりそうなアイテムを販売する企画が進められていた。

「靴下専門店ではありますが、『こんなものもあったら楽しそう』っていうスタッフの意見も聞いて、自分たちがいいと思ったものも置くようにしています」

「バレンタインとか、年間でのイベントに合わせた企画も考えているので、日々の業務に追われるだけじゃなく、そういったことも計画的に進めていける人と一緒に働けたらいいですね」

 

そんな佐藤さんと共にお店を支えているのが、パートの水本さん。主に接客・発注業務を担当している。前職では保育の仕事に就いていた。

「保育の仕事をしていると、基本的に服装は汚れてもいいものを選びがちで。走るし、汚れるしで、靴下も消耗品という認識でした。3足1000円のものを毎回買っていたんですけど、いつも同じところに穴が開いてしまって」

「yahae kiyosumi」の靴下を知ったのは、たまたま子どもがもらって履いていたことから。保育以外の仕事にチャレンジしてみようと考えていたときにお店のことも知り、とんとん拍子で働くことが決まったという。

「ここの靴下を使うようになってから、安いものをすぐに使い潰すより、いい靴下を長く履きたいと思うようになりました。洗うときも裏返して洗うと長持ちするんですよ。そういうことも、学びながら働いています」

糸を十分に使って伸縮性があるため、足のサイズにあっていれば破れることは少ない。洗う時も一手間かけると長持ちするし、そのぶん愛着もわく。

「接客はバイトでしかしてこなかったので、できるか不安もありました。自分がお客さんだたら、スタッフさんにどんなふうに接してほしいか、お客さんを観察して接客するようにしています」

一緒に選んでほしいお客さんもいれば、話かけられることが苦手なお客さんもいる。それぞれの人にあわせた接客をすることが大切だと話す水本さん。

「仕入れだけじゃなく、Instagramの投稿やディスプレイ変更も任せてもらうことがあって。パートの私がやってもいいんだ!って思うことが結構ありました。戸惑うこともあるけれど、やりがいもあって楽しいです」

印象に残っていることを聞いてみると、春に企画したハンカチのイベントのことを話してくれた。

「春って子どもがいたりすると、ちょっとしたプレゼントをもらったり送ったりすることが多いんです。靴下もいいんですけど、ほかにもなにかあった方が選びやすいなって思って。ハンカチは身近でよく使うし、贈り物にもしやすいんじゃないかって、提案しました」

自らも子育て中で、お客さんとの目線が近い、水本さんならではのアイデア。ほかのスタッフとも話し合い、野村さんにも直接メールで提案。

水本さんが主体となってハンカチの仕入れ先も決め、イベントをつくっていった。

「企画をメールで提案するのはすごく緊張しました。返信がなかなか来なくて、催促のためにもう1通送ったりもして(笑)。私が実際に使ってよかったハンカチを紹介できたので、すごく楽しい企画にできたと思います」

店頭での仕事以外にも、パソコンを使っての商品管理や、オンラインショップの発送対応など、裏方の仕事も多い。思っている以上にパソコンソフトを使った仕事もする。

オープンして間もないため、決まりきっていないことも多いそう。とくに新しい店長には、お店を1からつくっていくような姿勢が求められる。

 

最後に、野村さんにどんな人に来てほしいかあらためて聞いてみる。

「靴下ってコーディネートの割合は小さくても、いいスパイスになる、名脇役なアイテムだと思っていて。そういう小物にこだわりを持つ人を増やしたいし、スタッフにはここにお店がある意味を、地域の人も巻き込んで大きくしていってほしい」

「せっかくこの清澄白河にお店があるので、このまちを楽しんでほしいですね。休み時間にご飯に行ったり、仕事終わりにイベントに顔をだしてみたり。ここでの暮らしごと楽しめる人に来てほしいな」

 

話していると「こんな靴下どうかな」とか「こんな靴下が欲しい」とか。代表やスタッフが、肩書きに関係なくフラットに話している雰囲気がとても印象的でした。

お店の、清澄白河の、そして少し離れた奈良の。それぞれの一員として、働いて暮らすなかで柔らかいつながりを紡いでいく。広がりのある仕事だと思いました。

(2022/7/12 取材 荻谷有花)

※撮影時はマスクを外していただきました。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事