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ときにエンジン
ときにクッション
地域の人々を支える黒子たち

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雄大な自然が広がる北海道。

固有種をふくめ、多様な植物や動物が住み、自然のなかで人々の生活が営まれてきました。

一方で、近年は開発と保全のバランスがくずれ、環境問題として表面化することもあります。

持続可能な社会づくりに向けて、環境保全活動や環境教育を推進する拠点として、環境省が全国8か所に設置する「環境パートナーシップオフィス(EPO)」。

ここ北海道でも、環境領域にかかわる人や情報、知恵が集まるハブとして2006年から運営されています。

今回は、「北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道)」で働く職員を募集します。

 

日差しがあたたかく、風が心地よい5月の札幌。

EPO北海道が入居するのは、大通公園のすぐ近くにあるビルの7階だ。

フロアはデスクが一つの島に集まっていて、パソコンの前には、北海道の地図が貼ってある。

「我々が担当するのは、道内179市町村です。月に数日、人によっては半月ほど出張があるので、いつも見える場所に貼っているんです」

そう話すのは、EPO北海道を統括する宇山さん。

海や山、生き物、太陽光エネルギーに風力発電…。

“環境”という言葉からはいろいろなイメージが浮かぶ。EPOはどんな役割を担っているんだろう?

「そうですね。まず、私たちの社会をピラミッドに例えて話してみましょうか」

「ピラミッドの一番下、すべての土台に自然環境があります。そのうえに人間社会やコミュニティがあり、最後に経済活動があるのが、本来の姿だと考えていて。ところが今は、経済や社会が大きくなりすぎて、そのしわ寄せで環境問題が起こっています」

そうした問題を解決するために、環境・社会・経済の営みを調和させていこうという大きな流れが、近年、地球規模で生まれている。

「北海道にも、環境と社会、経済の好循環を目指して、自然との共生や地域資源の活用といった取り組みをしている人々がいます。個々の力では実現できないことも、接点をつくることで前進するかもしれない。そんな取り組みを支えるためのハブとして、有用な知恵やネットワークをシェアし、問いや解決策を一緒に考えるのがEPO北海道です」

EPO北海道は、4つの領域で活動している。

一つ目は、相談対応やヒアリング、ホームページやメールマガジンを通じた情報発信など、人々の活動基盤を「支える」領域。

実際に、宇山さんたちは、企業や役所、学校、研究機関などから多いときで月50件以上の相談を受けているそう。

また、道内各地をめぐり、地域課題やキープレイヤーを見つけることも欠かさない。

「北海道は広いので、横の連携が取りづらいんです。そのぶん、我々がプッシュ型で話を聞くことを大切にしていて。当然オンラインでも会話はできますが、やはり節目では直接話をしたい。いつでも人と人をつなげられるように、という意識はかなり強いですね」

「たとえば研究機関から脱炭素に関する実証実験をしたいと相談があったときに、『あの地域の農業事業者さんが協力してくれそうだ』と考えてマッチングすることもあります。多くのステークホルダーとつながっているので、全体が俯瞰しやすいし、どこに解決策を見いだすか考えやすいんです」

二つ目は、人々が環境政策や地域課題について対話する場をつくる「交わる」領域。

三つ目が、持続可能な社会づくりに向けた人材を育成する「学ぶ」領域。

最後に、具体的なプロジェクトに伴走する「動く」領域。観光協会に対してサスティナブルツーリズムの立ち上げを企画支援するなど、業種業態を問わず、年間数カ所の取り組みをサポートしている。

現在は5名のスタッフで分担して、日々の仕事を進めているそう。

「それぞれの領域にプロフェッショナルがいます。とくに相談対応や伴走支援は、一人前になるまで数年は必要です」

「ただ、前職の経験は問わなくて。我々の仕事に共感してくれる方とぜひ一緒に働きたいです。傾聴の姿勢があって、情報の整理整頓が得意であれば、きっと面白く感じてもらえると思います」

入職後は、相談対応の同席やメールマガジンの配信といった基本業務を担いながら、環境教育や既存プロジェクトの補助をおこなう。仕事や地域への知見を深めていけば、年間の事業計画にも自分の意見や企画を反映することもできるそう。

道内各地をつなぐコーディネーター、環境教育のプロフェッショナル、プロジェクトマネージャー。

EPO北海道に入職した方たちは、本人の希望や適性をふまえてキャリアをつくっている。

「僕自身は、建設業で、全国の土壌汚染の浄化や原子力に関わる技術的な仕事をしていました。地域の方々と議論をする機会もあったんですが、次第に『環境問題が大きくなる前に地域で対話し対処できるような、そんな信頼あるパートナーシップを地域に築くことこそが必要だ』と考えるようになって、ここに転職したんです」

「北海道の自然は、古くから大切にされてきました。人間社会や経済活動が優先されがちな今こそ、人々の視線を環境に向けていく必要があるし、それが我々の仕事だと思っています。同じ想いを持ってくれる方と、ともに働けたらうれしいですね」

 

EPO北海道に勤める方々の出身は、道内と道外がおよそ半数ずつだそう。

コーディネーターの福田さんは北海道出身で、入職7年目。主に対話の場づくりや環境情報の発信を担っている。

「もともと自然や動物に関心があって、大学では水鳥を対象に調査研究していました。EPOでも生物多様性の対話の場づくりを企画できて、うれしかったです」

前職は造園・園芸の会社に勤めていた福田さん。転職活動中にEPO北海道を紹介され、「フィールドワークができるのかな」と興味を持った。

「ふたを開けてみたら、全然違って(笑)。名刺を何枚用意しても足りないくらい多くの人に会う仕事でした。ちょうどSDGsが注目され始めた時期で、産学官から来るSDGsの相談の多さにも驚きました」

今、福田さんは、自治体と市民が環境政策についてともに考えるワークショップや、地域課題に関する意見交換会など、さまざまな対話の場づくりを支援している。

「ファシリテーションがむずかしいケースもあります。たとえば今、北海道は、太陽光パネルが北海道外の企業によってどんどん建設されていて。生物の生息地が埋め立てられていることや、景観が損なわれていること、売電利益が地元に還元されないことが大きな問題になっているんです」

「建設事業者の立場では、太陽光発電は、国の再生可能エネルギーを推し進める流れにマッチしている。でも地域住民の立場では、生物多様性や景観保全、地域資源の循環において負の面がある。一緒に悩みながら、対話のサポートを続けています」

EPO北海道はあくまで中立的な立場で、どちらかに肩入れすることはしない。

対立構造が生まれているなかでも、数十年先をみすえて、全体の最適解に向けた道筋を地道につくっていく。

「問題の根っこには、再生可能エネルギーに比べて、生物多様性の重要性が認知されていない現状があって。EPOでは、そういったテーマを学ぶ場や対話する場をつくっています」

そのなかで、湿原で固有種の保全活動をする方が登壇した回があった。

湿原の自然とそこに棲む固有種、開発から保護に転換してきた数十年の歴史、今広がる太陽光パネルが固有種におよぼす影響…。

その話がメディアなどに取り上げられたことをきっかけに、太陽光パネル建設が進む自治体のなかでも「生物多様性を守るために何かできないか」という声が大きくなっていったそう。

今、その自治体では、脱炭素と生物多様性の観点をふまえ、太陽光発電施設の設置に関する条例をつくる動きが生まれているという。

「状況が日々変わっていくなかで、ふっと風向きが変わる瞬間に立ち会うことがあって。自分がいる意味や、貢献できたかなと感じられる瞬間ですね」

EPO北海道の皆さんは、道内各地の仕事を手がけながらも、出張頻度は個人のライフステージなどに合わせて柔軟に調整している。自分で仕事を調整すれば休みもとりやすいそう。

裏を返せば、責任を持って働くことが求められる環境でもある。

「ある程度の経験を積んだら、事業やプロジェクト単位で任せられることが多いです。周囲に相談はしやすいですが、『自分はどう考えるのか』という意見が求められます。また、間に立つという特性から、調整する力がすごく試されます」

「大変さはあるけれど、多くの方と関われるのがすごくいいなと思っていて。私自身、いろいろな人や活動との出会いを通じて知見や関心が広がっていて、感謝しています」

 

EPO北海道にとって欠かせないのが、フェローの久保田さん。2006年の立ち上げから、北海道内外を飛び回っている。

「関東から北海道大学に進学して、山登りにどっぷり浸かっていました。自然の中で遊ばせてもらい、それを守る必要性を体で感じていたから、卒業後は自然に恩返しする環境分野の公益的な仕事がしたかったんです」

そして環境省の前身・環境庁に技術系の職種で入庁する。

「大気汚染対策を担当する中で、啓発活動として、夜空の美しさを競うコンテストにも携わる機会があり、地方の山間部や海辺でその地域の産業や人がかかわる環境教育や地域づくりの世界に触れたんですね」

「これは面白い、国会や省庁と向き合って過ごすよりも、こうした仕事をしていきたいと考えて転職したんです。ゆくゆくは北海道にも戻りたいという気持ちもありました」

久保田さんは、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進者として、事業者と協力した教育企画の立案や、学校の授業づくりの支援などをおこなっている。

「去年からは、市内の動物園で気候変動教育の開発・実践をめざしています。以前から、環境教育に取り組んでいる動物園で、たくさんの来園者に気候変動や生息地の環境変化を伝えていけないか、中長期的な視点で一緒に考えましょうと声をかけました」

来年度に具体的な形にすることを目指して、有識者をまじえたワークショップの開催などを通じて、検討を進めているところだそう。

「EPOは黒子です。つまり、我々が動物園でプログラムを実施するわけではない。将来的に動物園が来館者にメッセージを伝えられる仕組みを一緒につくろうとしているわけです」

環境領域を仕事にしたいと思ったときの選択肢は、まだそう多くない。地方であればなおさらだ。

そのなかで北海道に拠点を置きながら、国と地域を行き来し、地域の人々をつなぐEPO北海道は、ほかにない立ち位置だと思う。

官公庁や企業、地域など多様な人々と会い、調整しながら課題解決を目指すなかで、仕事を進める力もつきそうだ。

「ここでの経験を活かして独立をする人、長く勤める人、いろいろな人がいます。私は長く勤めたぶん、地域や組織、人の変化に立ち会えました。今、これまでを振り返ると、自分も多少は役に立ってきたんだなと思います」

ときにエンジン、ときに緩衝材となり、人々をつないでいく。一筋縄ではいかない場面もあるけれど、この人たちとなら前を向いて進んでけそうな予感がしました。

北の大地で活動の芽を育て、伴走する仲間を待っています。

(2024/05/13 取材 遠藤真利奈)

全国各地で地域の環境保全活動を支援している地方環境パートナーシップオフEPOそれらを統括しているのが地球環境パートナーシッププラザGEOC」です。なぜEPOが各地域に必要とされているのか。GEOCから見るEPOについて、コラムで紹介しています。

 

6月25日(火)には、GEOCにて出張しごとバーを開催します。この仕事をしてみたいと思った人も、GEOCやEPOの活動に興味があるという人も。

実際に会って、話ができる機会です。お待ちしています。

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