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環境印刷でつなぐ
自然と、企業と、人と

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資源は無限じゃない。

持続可能な開発目標であるSDGsが世のなかに浸透しはじめた今、あらためて噛み締めたい言葉です。

富士凸版印刷は、愛知県名古屋市にある会社。創業は1961年。会社案内やパンフレット、ポスターにチラシなどさまざまな印刷物を自社でデザインし、つくってきました。

数年前からは環境に配慮した印刷環境を整えたり、クライアント向けのブランディングをおこなったり、シルクの化粧品を企画・販売したり。将来に向けて、自分たちの強みを磨いてきました。

今回募集するのは、これらの取り組みをもっと広めていく企画営業。

会社案内一つとっても、どんな人に届けたいのか、どんな会社を目指していきたいのか。単純に依頼を受けるだけでなく、企業のブランディングを一緒に行い、それに沿ったサイト制作・運用まで担うことも多いです。

クライアントにとって何が一番いいのか。関係性をつくり、さまざまな困りごとに伴走していくような役割です。

あわせて、制作部のスタッフも募集します。

 

名古屋駅から電車を乗り換えて北東に5駅、新守山駅で降りる。

改札を出た後は、線路下をくぐって駅の反対側へ。緩やかな傾斜の坂の上、厚い雲の隙間から青空が見える。

歩くこと5分ほど、住宅街に溶け込む富士凸版印刷の事務所兼工場を見つけた。

格子状の入り口に近づくと、作業中のスタッフの方と目が合う。

「こんにちは」と挨拶をして、2階の事務所に案内してもらった。

1階が印刷工場になっている富士凸版印刷のオフィス。階下で稼働している印刷機の音が、少し聞こえてくる。

まず話を聞いたのは、創業者の姪で現代表の山本さん。よく通る声でハキハキ話す方。一緒にいると、自分もシャキッとしようと思えて元気になれる。

「小さい頃から、『お前は跡継ぎだ』と期待されていました。24歳で入社しましたけど、最初はやる気満々ではなく、それが自分の役割というか、義務感からの入社でした。ただやるからにはきちんとしたかったので必死に広告業界や印刷業界のことを学んで、お客さまの要望に応えてきました」

「入社して3年ぐらいしたときかな、創業社長が過労で倒れちゃったんです。工場は稼働できても社外へ営業できる人がいなかったので、どうしようって。営業できなきゃ会社が倒れるわけで、できる、できないに関わらず、やるのは自分しかいなかったんですよね」

その後2代目社長も病気で倒れてしまい、山本さんが代表に就任することに。以降15年間、会社を経営してきた。

「結局、印刷業界の将来を見据えると、他社との差別化が難しい。うちの強みを活かした上で、どう進化していく?みたいな」

「どうするか考えたときに、たまたまお客さまの会社でSDGsの勉強会を開いていることを知って。直感的に富士凸版でも取り入れたほうがいいと思ったんです。紙は森から生まれて有限であることもずっと気になっていたから」

さっそく外部のSDGs研修会に参加した山本さん。『仕事だけSDGsに取り組んでも、プライベートのときにできていなかったから駄目だよ』という、講師の言葉に強く共感した。

「プライベートから身を正さなければ、いい仕事なんかできない。私もできていないときがあるんですけど、究極ここだと思うんですよ。人が見ていないところで自分がどれだけやれるのか?」

「それは人に対しても地球に対しても同じ。その部分を大切にしつつ、SDGsに向けて環境印刷を推進していくことにしたんです」

 

具体的にどんな取り組みをしてきたのか。山本さんと共に会社を切り盛りしてきた専務の高木さんが話を続けてくれる。

「自社の事業や印刷工程をSDGsに当てはめたんですよ。そうすると、できているところと改善すべきところが明確になって」

「印刷の工程で廃棄物を多く出してしまっていたこともそうなんですけど、きちんと工程を踏んで処理しないといけないものが結構あったんです。それを処理の仕方すら考えず、単純に業者さんにお願いしてしまっていた。それを知ったときに、やっぱりこのままでは良くないと」

そんなとき、社員の一人が調べてきたのがグリーンプリンティング認定制度だった。

グリーンプリンティング認定とは、環境に配慮した製品づくりを普及させるために日本印刷産業連合会がつくった制度。

認定を得るための基準は70項目に及び、有害物質の削減や省エネルギー、物質循環・生物多様性の保全、周辺住民への環境配慮など、さまざまな観点から具体的な内容が設定されている。

事業で消費する電力を100%再生エネルギーで賄ったり、大気汚染の原因となる揮発性有機化合物が発生しない植物性由来のインクを使ったり。

基準を満たすための活動を継続していった結果、2021年6月にグリーンプリンティング工場として認定された。

それだけでなく、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益に適い、経済的に継続可能な、適切な森林管理を広めるための国際的な認証制度である、FSCⓇ認証(FSCⓇ-C166965)も取得。

愛知県のなかでも数社程度しか認証されておらず、グリーンプリンティング認定と合わせて取得している会社は、全国でもまだ3%ほどしかない。

また、2015年には、環境にも体にも優しいシルク由来の化粧品ブランド「SILK85」を立ち上げた。

今は自分たちで蚕を育てるところから事業にできるように、桑の木を植えたり、岐阜県まで養蚕の技術指導を受けに行ったりしている。

積極的な投資と日々の積み重ねで、自分たちの強みを磨いてきた富士凸版印刷。最近では、環境に配慮した考えをもつお客さんから直接依頼が来ることも増えてきた。

ここで、再び山本さん。

「究極のオーガニック印刷っていうのかな。私は勝手にそう思ってるんだけど。たとえば、ポスターとか会社案内とかの販促物も全部環境に配慮したものになるわけで、お客さまは“環境に対して意識を持って事業活動してます”っていう企業姿勢のPRになるわけじゃない?」

「それは、直接お客さまの信用にもつながっていくと思っていて。だから単にこの印刷はいくらっていう依頼を受けるんじゃなくて、お客さまはなぜやるのか、どこを目指しているのか。求める営業スタイルは、お客さまと一緒に考えて、だったらこっちにしましょうってファシリテーションしていけること」

 

そう言って山本さんが紹介してくれたのは、営業の一柳さん。3年前から富士凸版印刷で働いている。具体的な営業の仕事について教えてもらった。

「パンフレットをつくるにも、誰に何を伝えたいのか、何のためにつくるのか。目的が分かっていたほうが、受け手にも届きますよね」

「そのためには、自分たちの強みを知っている必要があるけれど、その強みが社内に浸透していない会社さんも多くて。そこに対して、私たちがお手伝いさせてもらっている感じです」

そう言って話してくれたのは、ある水道工事会社から社員手帳の作成依頼をもらったときのこと。

「どんなところが御社の強みですかと聞くと、最初は『ダンプや重機の数が多い。あと、給料が高い』ということを、おっしゃっていたんです。でもお話しするうちに『社員はみんな面倒見がいいし、素直なんだよ』という感じで、社員さんたちの内面の良さを話されるようになって」

「最終的に“人間性の上に技術は成り立つ”っていう言葉がみんなの共通の価値観として出てきて、強く打ち出していこうとなりました」

強みのほかにも見えてきたのは、社員同士で価値観をより共有したい、人材育成に力を注ぎたい、採用に力を入れたい、などの課題。

入り口は社員手帳の作成だったものの、企業の強みと課題を明確にしたことで、社員が価値観を共有でき、採用にもつなげていけるようなWEBサイトの制作と運営をすることになった。

今では、定期的に会社案内や名刺、封筒の依頼など、ほかの印刷物も任せてもらえるようになった。

お客さんの本当の目的はどこにあるのか、一緒に考えていく。

ブランディングと聞くと華やかなイメージを持ちやすいけれど、大事なのは、お客さんの話を聞いて、隠れた意図を汲み取っていくことかもしれない。

「富士凸版にお願いすると“想いを汲み取ってくれるのが早い”みたいに思ってくださるようになって。社員さんの写真などのコンテンツデータをまとめて預かっているので、何か印刷やウェブを頼まれたときに、すぐに対応できるんです」

「さっきも、その水道会社さんから大学生向けの採用パンフレットのご依頼をもらって。価格じゃないところで信頼してもらっているのは、とてもうれしいですよね」

現在は依頼のたびに個別対応しているところも多いけど、今後はよりスムーズに柔軟な対応ができるよう、事業年度単位の契約で仕事を任せてもらえないかと提案している。

「富士凸版の社員でありながら、いろんなお客さまの会社の社員になったつもりで働いています。世のなかには、本当にいいものやサービスをつくって、提供している会社さんがたくさんあって」

「だけどみんなそれぞれ何かしらの課題を持っている。それを解決するために一緒に考えていくことは、私にとってやりがいも大きいんです」

取り扱う商品が環境に良い影響を及ぼすことで、自信を持って営業できる。それに加えて、ひとつの仕事から会社全体に関わるブランディングなど、お客さんと長期的に関係を築いて幅広く働くことができるのは、この仕事の醍醐味だと思う。

 

富士凸版印刷の制作部も、営業と同じように幅広い仕事をしている。教えてくれたのは、制作部スタッフの小嶋さん。

企業から依頼を受けた印刷物のデータ作成を主に担当している。

「大きい印刷会社だと、専門分野ごとに分かれている場合もあるんですよね。そうすると使えるソフトも限られて、知識も限られてしまう」

「うちは人数の関係上、印刷機のこともわかっていないといけないし、電話も取るし、直接お客さまとやり取りすることもあります。以前に比べて役割も明確になってきましたけど、一人で対応する仕事の幅は広いと思います」

1階に工場があるので、自分で制作したものをすぐに確認できるし、意欲があれば印刷技術についても深く学ぶことができる。

「お客さまの業界も、メーカー、教育機関、建設業などと幅広くて。つくるものも、パンフレット、チラシ、サイトもありますし、お客さまの歴史や価値観をこれからの社員さんに向けて伝えていく企業社史などもあります」

「文章に近いものから、デザイン性を求められるものまであるので、新しく入る人の適性を見つつ、支え合っていけたらと思います」

代表の山本さんは、こんなことも言っていました。

「父がアスベスト肺により他界した経緯もあり、これからの事業を考えたとき、未来に豊かな社会をつなげていくためにも、地球生物や環境に負荷をかける事業はしない」

自然も人も共存しながら、より良い未来に向かって働く。

気持ちのいい働き方だと思いました。

(2022/6/9取材 杉本丞)

※撮影時は、マスクを外していただきました。

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