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Clay to Table
器と食から体験を届ける

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

食器の専門店や、産地のイベントなど。器がずらっと並ぶ空間にいると、どんどん想像が膨らんでいきます。

このカップで飲むコーヒーはおいしそうだな。あのプレートにはハンバーグが合いそう。和柄はあまり買ったことがないけれど、焼き魚とかをのせたらいいかもしれない。

今回は、そんなふうに器から料理のことを考えるような人に知ってほしい仕事です。

光洋陶器株式会社は、岐阜県の土岐市に本社工場を置く、陶器のメーカー。主に国内の飲食店やホテルに向けて、プロユースの製品を展開しています。

専門店でもよく使われている「ORIGAMI」というコーヒー器具のブランドなら、その名前を知っている人もいるかもしれません。

今回募集するのは、12月に本社工場でオープン予定のカフェのキッチンホール責任者。基本的にキッチンが中心になりつつ、状況に応じてホールで動くことになります。

立ち上げ時のメニューは外部のレストランと協力してつくっているため、まずは現場のオペレーションをメインに担当することになるそう。

カフェには、陶磁器のショップとワークショップスペースも併設します。器を選ぶのが好きな人は、ぜひ続きを読んでみてください。

 

光洋陶器の本社兼工場がある岐阜県土岐市。名古屋で中央本線に乗り換えて45分ほどで、土岐市駅に到着する。

本社は、駅から車で5分ほど走ったところにある。山側の坂道を登った先にあるので、見晴らしがいい。

正面からはそこまで大きく見えないけれど、奥にも建物は続いていて、かなり広いフロアになっているみたい。

器が並ぶショールームに案内されて待っていると、代表の加藤さんが迎えてくれた。

「このあたりは岐阜の東濃と呼ばれるんですが、国内の陶器の生産地のなかでは一番生産量が多い地域なんです。うちは1964年創業で、もともとは海外向けの製品をOEMでつくっていました」

「だんだんと国内の飲食店やホテルといったプロユースの製品を自社ブランドでつくるようになって、今は全体の7割くらいを占めています」

「そこに厚いカタログがあるでしょう」と見せてもらったカタログは、本当に分厚くて重い。お皿からコップ、カトラリー、輸入しているガラス製品まで、ありとあらゆる食器たちが載っている。

これ一冊あればお店ができそうですね。

「それくらいの総合的なブランドを目指しています。陶器のメーカーって、形をつくるところ、焼くところ、みたいに、分業制していることが多いんです。でもうちは、製造から販売まで一貫しておこなっていて。自分たちで最初から最後までものづくりができるのが特徴ですね」

「その特徴を活かして、8年前からはより特化したマーケットのものづくりもしていこうと、コーヒー専門のブランド『ORIGAMI』をつくりました」

「ORIGAMI」は光洋陶器の関連会社で、販売会社でもある株式会社ケーアイが企画販売しているブランド。

光洋陶器の技術力を活かし、バリスタ向けの器具を何度も試作。数年前にはバリスタの世界大会のチャンピオンが使用していたことで、広く知られるようになった。

ケーアイのことは、日本仕事百貨でも何度か取材していて、毎回いいご縁につながっているそう。

「ケーアイという販売会社を東京に置いたことで、これまで卸会社を通して販売していたものを、自分たちで直接ユーザーに届けることができるようになりました」

「卸を通すことで、より多くの方々に届けることができます。一方で、『ORIGAMI』のような新しいチャレンジをするためには、自分たちでつくって、自分たちでちゃんと伝えることをしていかないといけないな、と思ったんです」

「ORIGAMI」も、バリスタの声を直接聞いたことで生まれた製品。今後さらにユーザーの声を拾いつつ、自社ブランドをよりよいものにしていくためには、本社工場がある土岐にユーザーとつながる場をつくるのがいいんじゃないか。

今回の新事業は、そんな流れから生まれた。

お店の名前は「KOYO BASE」。コンセプトは「Clay to Table」、つまり、器と食を通して、土から食卓までのつながりを体験してもらおうという場所だ。

「農業なら『Farm to table』、コーヒーなら『Seed to Cup』って言ったりするじゃないですか。それと同じように、土から皿がつくられて、食卓の上で食事として完成するところまで、一箇所で体験できる場所がつくれたらと思いました」

「そういった場所って、国内を見渡してもほとんどなくて。お客さんにとってもユニークに感じてもらえるし、働く人にとっても面白い場所になると思います」

器だけでは、体験は生まれない。器に合わせた料理を食べたり、自分自身で器づくりを体験してみたり。体験することで味わえる価値を提供したいと、加藤さんは話す。

「会社としても新しいチャレンジなので、大変ではあるんですけどね。ただ、こうやって日々変化して新しいことに挑戦する社風なので、変わっていくことを肯定的に考えられる人が来てくれたらいいなと思います」

「立ち上げなので、泥臭い大変なことも多くあるはずです。それも含めて、自分のアイデアとか能力を活かせる環境ではあると思いますよ」

 

今回のプロジェクトは、数年前に新しくつくられた企画マーケティング部に加え、他部署からも人材を集めてみんなで準備を進めている。

続いて話を聞いたのは、輸出入に関わっている総合管理室の林さん。昨年の8月に入社した。

「出身が隣の多治見で。土岐は光洋のようなメーカーが多いんですが、多治見は商社が多いんですよ。昔祖父が卸をしていたのもあって、陶器は身近な存在でした」

林さんは大学で外国語を学んでいたこともあり、ホテルに就職。1年ほどカナダへワーキングホリデーに行き、帰国後も語学力を活かせる仕事を探していた。

そのなかで、海外のお客さんも訪れる地元多治見のカフェの仕事を見つけ、8年ほど働いていたそう。

コロナ禍で飲食業界が厳しくなり、海外のお客さんも減少。これまでの学んできた英語を活かすため、カフェを退職することに。仕事を探すなかで、光洋陶器が海外とも輸出入しているという話を聞き、応募したという。

「会社としては、カフェの経験があるというところを評価していただいたようで。1年くらいは輸入のお仕事をさせてもらって、今は前職の経験を活かしながらKOYO BASEの立ち上げに取り組んでいます」

12月のオープンに向けて、今はどんなことをしているんでしょう?

「ちょうどメニューを決めているところです。メニュー開発は名古屋でお店を展開されている方に依頼していて、地元のものを使った体に優しい食をコンセプトに試作を重ねています」

柴漬けをタルタルソースにしたチキン南蛮や、この辺りの地域では「味ご飯」と呼ばれている、いわゆる混ぜご飯など。

写真を見ているだけで、どれもおいしそう。

土岐のものだけにこだわらず、鶏肉は長野寄りの恵那から取り寄せるなど、広域での地産地消を目指している。

席数は40席で、営業時間は11時から17時まで。ORIGAMIを使って淹れたコーヒーやケーキなど、カフェメニューも充実している。

「飲食業の経験は長かったんですが、立ち上げは初めてで。こんなに大変なんだって日々感じています(笑)」

「調理用の什器はもちろん、ちょっとした備品も1から用意しないといけないので、必要なものの多さにびっくりしてます。新しく入る人の経験も活かしてもらって、一緒により良いお店にしていけたらなと思っているところです」

 

最後に話を聞いたのは、昨年の4月に新卒で入社した吉永さん。地元は大阪で、京都の芸術大学に通っていたそう。

「高校生の頃から芸術に興味があって。なかでも陶磁器に興味があったので、大学でも陶磁器を専攻して、自分でデザインしたものをつくっていました」

就職も陶器関連の仕事を探したけれど、地元や大学のある関西圏ではなかなか希望に合う職がなかった。

「それならいっそ振り切って、産地に行ってみようと決めて。メーカーである光洋陶器に応募して採用してもらいました」

「初めはデザイン関係のところに行くのかなと思っていたら、予想外に企画マーケティングの部署に配属されて。カタログをつくったりSNSを更新したりしつつ、KOYO BASEの事業を担当しています」

今のお仕事は予想外だったとのことですが、1年半ほど続けてみてどうですか?

「すごくよかったです。たとえば、器にどう料理を盛り付けたらきれいに見えるかとか。そういうスタイリングも学ばせていただいて、勉強になっています」

「器って、料理やカトラリーを組み合わせることで、見え方がガラッと変わるんです。どういう風景をつくって撮影すればその器の特徴が伝わるのか、考える作業も意外と面白いですね」

オープンまでの準備はもちろん、吉永さんはKOYO BASEで開催するワークショップの内容についても初期のころ関わっていたそう。現在は別のメンバーを中心に、企画が進んでいる。

「器でいうと、小さい子どもにも楽しんでもらえる絵付けを考えています。転写っていう技法で、絵柄が印刷された紙を焼く前のお皿に貼ってなぞると、そのまま絵が写し取れるんですよ」

「これって、陶磁器産業では毎日のようにおこなわれている作業なんですよね。工場見学も企画していますが、実際に自分の手を動かして、ものづくりをしてもらうのがいいんじゃないかなって」

ほかにも、ORIGAMIのドリッパーを使って、バリスタからコーヒーの淹れ方を習うワークショップをしたり、カップごとの香りの違いを楽しむ体験会をしたり。できることはたくさんありそうだ。

「器はいっぱいあるので。春夏秋冬で器を変えることもできるし、お客さんに合わせてお皿を変えることもできます。そういったスタイリングも楽しんでもらえたらいいなと思っていて」

「料理の見た目の印象とかおいしさって、器で変わると思うんです。料理はもちろんですが、器も大切に扱ってくれる人が来てくれるとうれしいです」

本社工場で企画開発もおこなっているので、「こういう器が欲しい」という要望があれば、すぐに製造現場に伝えることができる。食だけでなく、ものづくりという面でも面白い経験が積める環境だと思う。

吉永さんは、関西から土岐に移住してみてどうですか?

「引っ越してきて今もずっと感動していることがあって。朝、家を出るときに扉を開けると、すっごい気持ちいい空気なんです。それがすごく幸せやなって思います」

「もともと私は都会が得意じゃないというか。落ち着かないし、大量生産大量消費みたいな考え方が苦手で。目の前のものがどうつくられてここにあるのか、背景がわかる今の環境は、すごく心地いいですね」

日本一の生産量をほこる陶器の産地で、たくさんの器に囲まれながら食を提供し、器を体験と共に届ける。

新しいものづくりにもつながるこの環境で、チャレンジの一歩を踏み出してみませんか?

(2022/9/6 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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