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焼くだけじゃない
150年続く老舗が提案する
干物の新しい可能性

江戸時代から150余年つづく、熱海にある老舗の干物店、釜鶴ひもの店。

本店と熱海の駅ビルにある販売店舗に加えて、「海幸楽膳釜つる」や、「てんぷら鶴吉(つるきち)」というお食事処も展開しています。

そんな釜鶴が今年12月、干物のさらなる可能性を追求するべく、新しいお店を開きます。

その名も、「Himono Dining かまなり(釜鳴)」。従来のイメージにとらわれないさまざまな干物料理を楽しめるレストランはもちろん、干物の開き体験ができるワークショップスペースやショップ、足湯まで。

熱海ならではの魅力をぎゅっと詰め込んだレストランとなる予定です。

今回募集するのは、レストランのフロアスタッフとキッチンスタッフ。どちらも釜鶴で働いてきた人が加わるので、未経験でも大丈夫です。

観光地として、今、再び人気が高まってきている熱海。

干物を通して、老舗がどんなチャレンジをしていくのか。海のすぐそばで、老舗の新たな一歩とまちのにぎわいを直に感じられる、面白い仕事だと思います。



静岡・熱海。

東京から新幹線に乗ること、45分。お弁当を食べて一息ついていたら、あっという間に熱海駅に到着した。

改札を出て、お土産物が所狭しと並ぶ通りを進んでいく。その途中には、食べ歩きをしながら撮影する人たちの姿が。

手に持っているのは、温泉まんじゅうやジェラート、揚げかまぼこなどなど…。歴史の長い温泉地だから、もう少し年齢層の高い人が多いと思っていたけれど、若い人もたくさんいる印象。

海のほうへ15分ほど歩き、熱海銀座商店街へ。中ほどを過ぎたあたりに、「釜鶴ひもの」という暖簾が見えてきた。

店頭で干されている干物は、小さいエビと初めて見る魚。

口先がすごく長くて、胴体は曲がっている。

「これは、ヤガラという魚です。ここにあるのは小さいサイズで、腕ぐらいの太さまで成長するものもあるんですよ」

そう教えてくれたのは、釜鶴の5代目である代表の二見さん。

挨拶もそこそこに、さっそく店内を案内してもらうことに。定番のアジから、太刀魚や鮎、伊勢海老といった珍しいものまで、たくさんの干物がずらりと並んでいる。

「年間だと、約60種類の干物を取り揃えています。熱海の魅力のひとつは、季節ごとに駿河湾・相模湾の恵みを受けた多種多様な魚が獲れることです」

「毎日、地元の市場で仕入れた魚を干物に加工して販売するので、お店に並ぶ種類は時期によって全然違いますね」

毎朝、二見さん自ら市場に足を運び、魚を実際に目で見て、販売する量や加工できる量を考えながら仕入れていく。

味と安全性にこだわる釜鶴の干物は、ほとんどが鮮魚から加工し、添加物は一切使わない。

「実は、世の中で売られている干物のほとんどは、冷凍した魚を解凍して加工しているんです。冷凍ものだと解凍したときに、栄養や旨味も一緒に流れ出てしまう。おいしさのためには、刺身でも食べられるくらいの鮮魚を使うことがポイントです」

釜鶴の干物を食べたお客さんの中には、「干物の概念が変わった」と感動する人も多いのだとか。

旬を感じる海の恵みを、余すことなくいただく。それが、釜鶴が大切にしていることのひとつだという。

二見さんは、この釜鶴本店の上にある住居で生まれ育った。二見さんが生まれた約40年前、熱海は人々にとって憧れの観光地であり、訪れた観光客の土産物として喜ばれたのが、干物だった。

その後、バブル崩壊の影響などから熱海の宿泊施設は次々と閉業。

観光客も激減し、土産販売を中心としていた干物屋も経営難になるところが多かった。

「たとえば、お刺身なら半身でも十分売れるんですけど、干物って、まるまる一枚でいくらっていう値段設定なんですよね」

「同じアジ一匹でも、お刺身なら1000円以上の価値を生み出せるけれど、干物だと200円とかになってしまう」

干物を販売する以外にも、新しい商売が必要だ。

そう考えた先代が、食事処の「海幸楽膳釜つる」と「てんぷら鶴吉」をオープンした。

9年前に二見さんが跡を継いでからは、アンチョビや燻製商品など、新たな加工食品にもチャレンジしている。

「とくに最近は魚の漁獲量も減ってきているので、魚一匹に対する付加価値をちゃんとつくっていくことが大切なんです」

かつて空き家が多かったという銀座商店街。今はそんなことが想像できないほど、人や車が多く行き交っていて、再び活気を取り戻してきている。

「観光客は増えてきているけれど、現状維持ではなく、老舗の干物屋だからこそもっと新しいチャレンジが必要だと思ったんです」

新しいチャレンジ、ですか。

「とりわけ干物は、『年配の人が食べるもの』というイメージが強くて、若い人たちにはあまり受け入れられにくい。家で焼くとグリルが汚れたり、骨があって食べにくかったりといった理由があるんですよね」

たしかに、自宅で干物を焼いたことはほとんどない気がする。

「干物は下味がついているし、焼くだけで簡単に一品のおかずになるんですよ。しかも余分な水分が抜けているから、塩焼きよりも身が崩れにくい。実は干物は、アヒージョやアクアパッツァなどの料理にも向いている食材なんです」

干物が洋風の料理にアレンジできるなんて、想像したことがなかった。

そんな干物の可能性をもっとたくさんの人に伝えて、干物を身近なものにしていきたい。

そこで立ち上がったのが、従来のイメージにとらわれない新たな干物料理や体験が楽しめる、「Himono Dining かまなり」のプロジェクトだった。

「かまなり」は、釜鶴の元の屋号が「釜鳴屋(かまなりや)」だったことから命名したのだとか。

この企画に関わっているのは、蔵前のDandelion Chocolateをはじめ、さまざまな飲食店や食のブランドをプロデュースしている会社「WAT」。

早速、プロジェクトの計画資料を見せてもらう。

店内の構造図には、レストラン、干物づくりの体験コーナー、足湯、テイクアウトスペースなどが記されていて、メニューには干物プレートや干物カレーといった気になるものも。

「干物を少しアレンジすればこんなふうに食べられるんだ、と干物の新しい可能性を伝えていきたいですね。テイクアウト商品として、干物を使ったバーガーなども用意する予定です」

干物バーガーをビーチで食べる。海を見ながら海の恵みをいただくなんて、なんだか贅沢。

営業時間は、現在の計画では朝の8時から16時。開店時間が早いんですね。

「そうなんです。熱海の朝を変えたいという願いもあって。熱海ってもとから宿の中で食事を済ませる文化が強くて、まちの中で朝食を食べられるお店が少ないんですよ」

「たとえば、朝早く起きてビーチで散歩やヨガをしたあとに、『Himono Dining かまなり』で干物モーニングを食べる。足湯にも浸かってゆったりくつろいだあと、ちょうど開き始めた商店街のお店に、ふらっと立ち寄る。そんなふうにまち全体をつなげる役目も担っていきたいんです」

干物を通して、熱海のまち全体を活性化する。二見さんはそこまでイメージしているそう。

「干物づくりのワークショップはうちの強みを活かして、旬の魚で体験できるようにします。今日はサバだったけど、次に来たらカワハギができた!みたいに、来るたびに違う魚を開けたら、きっとお客さまに楽しんでもらえると思うんです」

あらゆる干物づくりにチャレンジしてきたことや、製造から一貫して自社で取り組んできた釜鶴の力が、今回のプロジェクトでも発揮される。

今回募集しているのは、お客さんと直接関わるフロアスタッフと、料理をつくるキッチンスタッフ。

「魚や干物が苦手でも構いません。明るく元気があれば大丈夫です。釜鶴の歴史や、老舗のこれからの挑戦に興味を持って、一緒に前向きに働いていきたいという人だったら大歓迎ですね」



次に向かったのは、本店から歩いて1分のところにある海岸支店。ここのお店が改装されて「Himono Dining かまなり」になる。

海も銀座商店街もすぐそばで、車通りが多い国道に面している。海とまちをつなぐちょうどいい場所だ。

店頭では干物を焼きながらお酒を楽しむお客さんの姿が。にこやかにお客さんと話していたのが、「Himono Dining かまなり」のオープニングスタッフとなる石垣さん。

「新しいチャレンジになるので、不安もあります。新しく入るみなさんと一緒に勉強していきたいですね」

石垣さんが釜鶴に入社したのは7年前。熱海で生まれ育ち、以前から釜鶴のことは知っていた。

「釜鶴=高級というイメージで。だって干物ってスーパーなら100円とかで買えるけど、釜鶴だと500円くらいするんですよ。でも、入社してから素材やつくり方へのこだわりを知って、これなら相応の値段がつくなって感じましたね」

釜鶴で働きはじめてから、他店の干物をよく調べるように。成分表示を見てみると、着色料や保存料などの添加物が入っていたり、海外産の魚が使われていたりと、釜鶴の干物がスタンダードではないことに驚いたそう。

「やっぱり地元のものを使って、自社で仕入れから製造までしているってすごいことなんだって思いますね。無添加の干物なんて滅多にないですよ」

釜鶴で干物をつくっている職人は、全部で5人。アジだけなら1日で4000枚ほど製造できるという。

日によって魚の種類も量も変わる干物づくりは、職人たちが培ってきた技術の賜物。

イカのクチという珍しい干物を美味しそうに食べている、若いカップルのお客さん。一口食べて、二人でうれしそうに顔を見合わせていた。

取材中、石垣さんはお客さんに呼ばれると「はーい!」と返事をして、元気よくお客さんの元へ駆け寄っていく。石垣さんがほかのお客さんに対応しているときは、二見さんがすぐにフォローに回る。

お互いを思いやって、一緒に前を向いて干物という食文化の良さをつないでいこうと思える人なら、きっと楽しめる職場です。

老舗が拓く、干物の新しい可能性。

興味のある人はぜひ一度、熱海へ足を運んでみてください。

(2022/8/16取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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