求人 NEW

古くて新しい
老舗の黒豆屋さんが
はじめる宿

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

大粒でもっちりとやわらかく、やさしい甘さがある丹波篠山(たんばささやま)の黒豆。

400年以上前から兵庫県・丹波篠山の土地で大事に受け継がれてきました。

この黒豆を残していきたい。老舗の黒豆屋さんのそんな想いからはじまった取り組みが、まち全体の活性化にもつながっています。

小田垣商店は、丹波の黒豆を専門に取り扱ってきた会社。国内でもめずらしい黒豆の卸店として、およそ160年前から黒豆を販売してきました。

丹波の黒豆のおいしさと物語、そして土地の文化を、日本と世界の人に伝えて未来へつなげたい。そんな想いから、2021年、カフェを併設したショップを改装オープン。2025年の春には、新たに宿を開業します。

今回募集するのは、その宿のコンシェルジュ。あわせて商品開発・店舗開発、カフェのパティシエ、ショップスタッフも募集します。

黒豆の専門って面白そうだと感じる人も、丹波篠山のまちに興味がある人も。ピンとくるものがあったら読み進めてみてください。

 

東京駅から新大阪駅まで新幹線で約2時間半。尼崎駅で電車を乗り継ぎ、北へ進んでいく。車だと、京都や大阪、神戸からそれぞれ1時間ほどで到着するそう。

1時間半ほどで篠山口駅に到着。改札を出ると、遠くになだらかな山々が。雪がうっすら残っている。

駅から、車で10分ほどの場所にある小田垣商店へ。

お店の一歩手前の「河原町通り」には、国の重要伝統的建造物郡保存地区に選定された町家が並んでいる。

600メートル続くこの通りには、電柱がなく、宿や民芸館などが佇んでいて、時代劇の舞台に迷い込んだ気持ちになる。

少しだけ散策して、カフェが併設された小田垣商店の本店へ。

2021年に改装オープンしたこの店。中に入ると、奥行きのある町家づくりで、外から見るより広く感じる。

ショップでは、常連さんのような方もいれば、海外のお客さんも買い物をしている。

この日はお休みだったカフェスペースの一角で、代表の小田垣昇さんに話を聞く。

小田垣商店のはじまりは、290年前。

もともとは鋳物商(いものしょう)で、刀やスズ製品をつくってお城に納めることを生業としていたものの、江戸時代の末期から商売がだんだんと厳しくなってきた。

「明治時代からは、近隣の農家さんに野菜の種を販売する種物商に転業しました。先代の考えとしては、種はすべての根幹、これからは種が大切になってくると思っていたんだそうです」

そんなとき、丹波篠山では室町時代以前から黒豆が栽培されていることを知った。

「こんなにすばらしいものが知られていないのはもったいないと思ったようで。収穫できた黒豆はすべて買い取るから、一度つくってみてほしい、と農家さんにお願いしたんです。それが当店の黒豆屋としてのはじまりだと聞いています」

以来、およそ160年にわたって、丹波の黒豆「丹波黒(たんばぐろ)」に特化して商売を続けてきた小田垣商店。

昨年、店舗を改装してカフェ兼ショップをオープン。改装前と比べ、20、30代の女性を中心に、4倍以上お客さんが増えたそう。

「最近はわざわざ小田垣商店をめがけて篠山に来てくれる人も多いんです。うれしいですね。ここが、黒豆の発信拠点になればいいなと思っています」

本店がある敷地には、カフェ兼ショップ含め全部で10棟の建物があり、国の有形文化財に登録されている。

10棟すべてに共通するコンセプトは、「古くて新しい」こと。

すでに7棟はリノベーション済み。自社運営しているギャラリーや体験型キッチンなどにも使用されている。

「我々の目的は、黒豆を未来につないでいくこと。国の有形文化財に登録されている建物は、地域にとっても大切なものです。それらを残していくことで、地域社会に貢献していきたいんです」

「芸術家の方に改修をしてもらって、古いものは残しながら、新しく芸術的な価値を加えて建てました」

2025年の春には、新たに宿がオープンする予定だ。新しく入る人は、この宿のコンシェルジュとして働くことになる。

「この地域に来る人はほとんどが日帰りなんです。宿をつくることで、滞在時間が伸びたり、これまで来なかった新しいお客さまの層が増えたり。より魅力が伝わるんじゃないかと思っています」

 

「最近、若い世代の和食離れも進んで、煮豆を召し上がる方も減ってきている。そういうなかでも、黒豆を未来につないで、生産者が安心して黒豆をつくれる環境を残していきたいと思っています」

次に話を聞いたのは、入社7年目の山田さん。普段は、商品開発や企画、営業など幅広く担当。宿に関する業務は、山田さんから教わることになる。

「この壁って、実は和紙を使ってつくられているんです。昭和のころには壁を抜いていたんですけど、建てられた当時のように戻して。耐震性もいいんです」

壁の和紙は、京都の黒谷和紙と言われる800年もの歴史があるもの。カフェの食器も、地元の作家さんの特注品を使用している。

これまでは、黒豆の収穫時期である、秋からお正月の冬ごろを目掛けて来る人が多かった。

改装オープンした結果、建物に興味のある人や作家さんのファンなど、これまで小田垣商店のことを知らなかったお客さんも足を運んでくれるようになった。

「カフェがオープンしてから一番驚いたことは、他県の車のナンバーを見かけることが多くなったことです。千葉とか北海道とか、全国いろんなところからお客さんが来てくれています」

「社長も言っていたように、新しい宿も『古くて新しい』ということを大切にしています」

せっかくなので、改装中の宿の棟を見学させてもらうことに。宿のある棟はカフェから中庭を挟んだところ。

枯山水や苔が綺麗に整えられていて、思わず深呼吸したくなる。

宿は2階建て。1日1組限定にする予定だそう。クリーニングや清掃は外部に任せるため、コンシェルジュとして、お客さんとの会話やおもてなしに集中できそうだ。

「まだまだ検討中の部分が多いです。宿ができるのは2025年なので、これから入っていただく方とも、オペレーションなどを一緒に考えていきたいですね」

「みんなでアイデアを出し合っていて。最終的には、社長が判断して形になるんですけど、社長はフラットにみんなの意見を吸い上げてくれるんです。なので、思いつくことがあれば、どんどん言ってほしいですね」

取材中も休業日のカフェの一角で、スタッフの方が楽しそうに新商品の試食をしている姿が。

オープンまでの期間は、カフェを手伝ったり商品開発に携わったりしてほしい。入社してすぐは、まちを案内してくれる機会も設けてくれるそう。どんなまちで、どんなお客さんが来るのか、知る機会になるし、宿の接客でも活きるはず。

宿のオープン後も、空いている時間はまちを巡ったり、引き続きショップやカフェを手伝ったり。自分の興味があることには積極的に取り組んでいくことができる。

 

「今朝は、新しいメニューとして、赤飯とちまきをつくったんですけど、ちょっと失敗して悔しい気持ちです(笑)」

「カフェでつくった料理を、宿の朝食でお出しするのもいいなって話しているところです」

そう話すのは、小田垣商店のカフェ兼ショップの店長を務めている中野さん。生まれも育ちも丹波篠山で、入社して18年目。お店のことは、中野さんから教わる機会が多くなる。

小田垣商店のショップ兼カフェで働く人は、接客コンシェルジュと呼ばれている。

今回、宿のコンシェルジュとして来る人も、同じコンシェルジュとして中野さんやほかのスタッフの接客様子が参考になると思う。

コンシルジュとして、気をつけていることはありますか。

「そうですね。目線を合わせることでしょうか」

以前、航空会社から出向で来ていた人に接客をコーチしてもらったことがあり、目線を合わせることの大切さに改めて気づいたという中野さん。

「小田垣商店で長く勤めてきましたが、カフェのような飲食業は会社としても初めてで。お客さまと話す口調だったり、視線だったり、立ち振る舞いとか、気をつけることがたくさんあって」

「お客さまの先の先ぐらいまで読んでいて。それって心地いい接客なんですよね。そんなところは積極的に取り入れました。まだまだ日々勉強中です(笑)」

そう笑う中野さん。お客さんへの対応だけでなく、ここで働くスタッフへの思いやりも忘れない。

「できるだけサポートしたいなって。たとえば、ご近所さんやお得意さんへ一緒に挨拶に行ったりとか、まちを案内したり。いつでも相談に乗れるような存在でありたいと思っています」

「最初は何もわからなくても、徐々に覚えてもらえばいいと思います。わたしもできるだけサポートしようと考えています」

オープンまで時間もあるため、未確定なことも多い。けれど、ここで働くみなさんは丁寧に話を聞いてくれるし、受け止めてくれる。そんな安心感がある。

「ここにいると、四季を感じるんです」と、中野さん。

春は苗を売り、夏はデカンショ祭りといった盆踊りにスタッフみんなで参加する。秋冬は黒豆の季節で、たくさんのお客さんが訪れる。

店内には、昇さんの父、博三さんが庭に植えていた梅を飾るなど、季節によって店内にも四季を取り入れているそう。

「心地いいというか、メリハリがあるんですよね。だから18年も続けられたんかなって思います」

 

黒豆もそれを伝える場所も、そして働いている人も。

同じ場所にいるけれど、本質を大切にしながら進化し続けているように感じました。

だから「古くて新しい」空間が受け継がれていくのだと思います。

(2024/02/01 取材 大津恵理子)

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