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世代を超えて
家族が集まる
もうひとつの家づくり

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日本仕事百貨のオフィスがある清澄白河は、お寺が多いエリアです。

そしてお寺がたくさんあるということは、そのぶん墓地もたくさんある、ということ。

今回の取材をきっかけにお墓に興味が湧いて、休憩時間の散歩中にお寺をのぞいてお墓の違いを見つけています。

森田石材店は、兵庫の丹波篠山で3つの店舗を運営する石材を扱う会社。

墓石を中心に神社の鳥居や石造りの階段など、石の加工や現場での施工を幅広く行っています。

今回は、森田石材店で営業職と墓石の加工・施工を担う職人を募集します。

創業100年を超える老舗でありながら、地域から「森田さん」という愛称で呼ばれる森田石材店。

お墓の面白さ、お墓に関わる仕事についてぜひ知ってほしいです。



東京から新幹線に乗って新大阪へ。そこから篠山口駅までは、特急こうのとりで約1時間。

迎えに来てくれた車に乗り、約5分で森田石材店の「たんば篠山店」に到着。

駐車場から遠くを見渡すと、四方は山々に囲まれている。緑豊かな場所。

お店のほうに目をやると、ずらりと立ち並ぶ墓石が。

こんなにお墓を見るのは初めてで、なんだか興味深い。色も形もさまざまで、一つひとつ丁寧に説明が書かれている。

時折お墓に足を止めながら、お店へ。

明るく出迎えてくれたのが、店長の園中(そのなか)さん。営業部の部門長も兼任している方。

もともと神戸にあるガスの指定工事会社に勤めていたけれど、突然会社が倒産。仕事を探していたところ、森田石材店と出会って約20年前に入社した。

「入社したてのときは、この辺りが土葬文化だったと知って驚いたんですよ」

今から30〜40年ほど前までは、土葬が多かったという篠山。亡くなった人を埋めた場所で祀るお墓と、参拝用のお墓の2つがある家庭が多く、そういった仕組みを「両墓制(りょうぼせい)」と呼ぶそう。

「お骨を埋葬することがなかったので、昔のお墓にはお骨を納める場所がないことがあるんです」

現在は火葬が中心となり、お骨をお墓に入れたいというお客さんが多い。そのため、お墓のリフォームを勧めることも多いのだとか。

とはいえ、お墓の営業ってどんなふうにしているんだろう。

「2つありますね。直接お店に来てくださるお客さまへの営業と、もうひとつは『お悔やみ営業』です」

お悔やみ営業、ですか?

「この辺りは、地域で亡くなられた方の名前や住所などが新聞に掲載されるので、それを見ておうちに伺うんです」

お悔やみ営業では、弔いの気持ちを伝えたあと、「なにかお困りごとはありませんか」とご家族に尋ねる。

会話をするうちに、お客さんからお骨をどうするか、お墓を建てるにはどうしたらいいかなど、あらゆる悩みが出てくる。何度もお客さんのもとに足を運び、相談に乗りながら信頼関係を築いていく。

たとえば、ある家で家族写真を見つけたときのこと。

話を聞いてみると、最後に家族旅行した和歌山の「千畳敷」での写真だとわかった。

その思い出を感じてもらえるよう、千畳敷のような仕上げ方を提案。お墓参りに訪れるたび、大切な記憶を思い出せるお墓となり、家族も喜んでくれたという。

「お墓ってなかなか買う機会がないから、なにを基準に考えれば良いのか、わからない方も多いんです」

たしかに、お墓といえば中央に「◯◯家之墓」と彫られた縦型の墓石がある、という漠然としたイメージ。

「そういったお墓は『和型』と呼ばれるもので、一番多く選ばれますね。和型のなかにも地域ごとに形や色に違いがあって、この辺りだと『神戸型』が多いんです」

そのほかにも『大阪型』や『京都型』など、お墓の形や線香を立てる場所、花立ての形などによって、いろいろな型があるそう。ちなみに、左が大阪型で、右が神戸型だ。

和型以外にも、高さが低く横に長い洋型や、自由な形のデザイン型など、お墓のバリエーションは想像以上に広い。

営業では、お墓の形や使われる石の種類、手入れのしやすさなど、お客さんの要望に合わせて説明していく。

園中さんも、入社前は葬祭に関わることはほとんど知らなかったそうで、知識は入ってから身につければ大丈夫とのこと。

「おじいちゃん世代から孫世代まで、ひとつのお墓を通して世代を渡ってお付き合いできることが、この仕事の面白さだと思います」

 

森田石材店は、全部で3店舗ある。

つづいて本店に移動して、森田石材店を率いる3代目代表の森田さんに話を聞く。

「うちが信頼してもらえる理由のひとつは、約束を絶対に守ることだと思います」

「我々の業界は、お客さまと家族ぐるみで関わっている会社が多くて。お客さまの話では、連絡をしても『今忙しいから、また寄るわ』って言われて、結局来ないんです、みたいな話もよく聞きます。うちではそんなことは絶対にしない」

森田石材店では、問い合わせがあったらすぐに電話を取り、アポ取りまですることを徹底している。

職人もほとんど自社の社員で、墓地での作業中も挨拶も欠かさないよう指導しているそう。

当たり前のことを丁寧に積み重ねてきたことが、今の信頼につながっているんだと思う。

30年ほど前、バブルが弾けたころに入社した森田さん。そのころ墓石業界は右肩上がりで、森田さんが中心となって社員を増やしたり、営業部や総務部をつくったりなど、社内制度を整えていった。

ところが、2003年をピークにお墓の需要が減少。新たに葬祭事業にもチャレンジするなかで、17年前にお父さんから会社を引き継いだ。

最近では、お墓をなくす「墓じまい」という言葉が広まったり、お墓を建てずにロッカーのような納骨堂で供養をしたりする人も増えてきた。

あらためて、石でつくるお墓の良さって、どんなところだと思いますか?

「どの方のお墓でも、場所さえ知っていればいつでも行けるところかな。あと、お骨が集まっている場所だから、家族が集まるもうひとつの家、みたいになるのも良さだと思いますね」

もうひとつの家、ですか。

「ご先祖さまは会いに来てくれるだけでうれしいと思うんですよ。だからお墓に行く理由はなんでもよくて。誰にも聞いてもらえない日頃の悩みを話しに行くとかね。なんでもいいんじゃないかな」

「そう言いながら、僕も人並みしか自分の家のお墓には行かないんですけどね。人様のお墓はよく行くのに(笑)」

お客さんのなかには、お墓が完成すると、「これでお父さんにゆっくり休んでもらえる」と涙ながらに喜ぶ人もいるのだとか。

そして森田石材店では墓石に加えて、神社や仏閣などに使われる石材の仕事に関わることもできる。

「明治・大正時代につくられて、経年劣化が進んでいる神社や仏閣って結構多いんです。これからもそういった修繕工事は増えるし、幅広く石材に携われることもうちの面白いところだと思いますね」



「石でつくったものって、壊さない限り絶対に残りますやん。それがええなぁって思ってるんです」

そう話すのは、職人たちを取りまとめる技術部の部門長を務める杉浦さん。

「うちのお袋も森田石材店で働いていて、自分も高校時代にバイトしていたんですよ」

高校卒業後は別の仕事をしていたけれど、森田石材店での仕事が忘れられず、退職して再び入社したそう。

これまでに一番印象に残っている仕事を聞いてみると、近所にある寺院の石垣づくりの話をしてくれた。

高さ3m、長さ20mくらいある既存の石垣を一度壊し、職人たちで新たに石を積み直していく。

「初めて『谷積み』に挑戦した仕事で、すごく印象に残っていて」

谷積みは石を斜めにしながら積んでいく、難易度の高い工法のこと。それまで森田石材店では「布積み」と呼ばれる、石垣が横方向に真っ直ぐ並ぶように積む工法を採用していた。

「谷積みをやってみたいって社長も言ってたけど、むずかしいからできひんやろって、みんな思ってたんですよ。そやけど、したいな、したいなって思って。自分で谷積みが得意な職人さんを呼んで教えてもらうことにしたんです」

左が谷積みで、右が布積み。現場で谷積みの職人さんに実演してもらい、ほかの職人と谷積みを習得。無事に石垣が完成したときは、達成感も大きかった。

「昔は新しいお墓をつくることが多かったけれど、最近は墓じまいも増えてきていて。仕事内容もだいぶ変わってきてますね」

お墓をつくる機会が減った一方で、永代供養や樹木葬用の墓石の依頼が増えてきているという。



最後に話を聞いたのは、技術部の高見さん。17年ほど働いている方。

「どんな仕事をしているのか、入る前はよくわかっていなくて。入ってから『こういう仕事してるんや』ってわかり始めた感じですね」

森田石材店とは、住んでいた集落でお墓を移動したときに出会った。

暗い山の中に17基ほどあったお墓を、日当たりがよく、参りやすいところに移動する工事を担当したのが、森田石材店だったそう。

現在は、技術部の班長とリーダーを兼務し、現場で墓石の施工もしている。

墓石の加工と同時進行で始まる施工は、なにもない土地に基礎の土台をつくることから始まる。

「土台となるコンクリートを流し入れるために、まずは地面を油圧ショベルで掘るんですけど、今日は機械が入れない場所やったんですよ。地面をひたすらスコップで掘りつづけて。まぁ、しんどかったですね(笑)」

整地した場所に機械でコンクリートを入れて、固まるまで待つこと1週間。

そのあと、お墓の区画を示す巻石(まきいし)を配置して、墓石を据えるまでが施工の大まかな仕事。

また、工場で石を削り、お骨を納める場所をつくる作業などもある。とくに両墓制の参拝用のお墓では、その加工が必要になるそう。

実際に作業しているところを見せてもらうと、機械が石を削る甲高い音が耳に響き渡る。

勢いのある作業音に対して、削れていく石はわずか。時間がかかる作業だ。

墓石をカットしたり、墓石の表面を削ってツヤを出したり、文字を彫ったり。工場ではあらゆる加工をしていた。

新しく入る人は、まず現場に行ってコンクリートを練ったり、施工に使うものを運んだりすることから始まる。

それと並行して、石や重機を運ぶトラックの免許や、墓石などを設置するためのクレーンを扱う資格の取得も目指す。

「トラックに荷物を積むためのロープの縛り方や、クレーン操作などは慣れるまで大変かもしれません。施工や加工に使う道具もたくさんあるから、覚えることも多いと思います」

「工場や現場では、大きな音が出るなかで声を掛け合うことが大切。しっかりと声が出せる、元気な人が向いていると思います」



時を超えて、家族を見守りつづけるお墓。

石でつくる新しい家、そしてそこに関わる人たちと、ずっと長く関わっていける仕事だと思います。

大阪、京都、神戸、どこからもアクセスしやすい丹波篠山。気になったら一度、森田石材店の展示場へ行ってお墓を見に行ってみてください。

(2022/10/21 取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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