求人 NEW

このまちで見つける
自由な農と暮らし

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

植物にまつわる事業の起業、鵜飼の船頭、マルシェへの出店、農業研修、竹ハウスの製作。

どれも、愛媛県大洲(おおず)市の協力隊のふたりの取り組みです。

ここまで協力隊が個性を発揮して活動している地域は、めずらしいように思います。

今回は、農を切り口に、地域のためのさまざまな取り組みに挑戦していく協力隊を募集します。

新規就農の促進や6次産業化、グリーンツーリズムの活性化を目指すというミッションはあるものの、その手段は隊員に委ねられています。

すでにふたりの先輩隊員も着任し、さまざまな活動に挑戦中です。自分だったら、どんな仕事や暮らしができそうか、想像を膨らませながら読んでみてください。

 

愛媛県JR松山駅から、電車に乗って県西南部の大洲市へ。

およそ30分、山間の景色を眺めていたら、あっという間に集合場所のJR伊予大洲駅に着いた。

改札を抜けると、地域おこし協力隊のおふたりを含めた大洲市役所の皆さんが出迎えてくれた。

市内を車で案内してもらいながら、話を聞いていく。

まずは、大洲市役所農林水産課の久世(くせ)さん。

今回入る人は農林水産課に所属することになるので、関わる機会は多い。頼れる兄貴という感じで、時折冗談を織り交ぜながら丁寧に話してくれる。

大洲市は、中心部をのぞく多くが中山間地域。瀬戸内海からは一級河川の肱川(ひじかわ)が流れ、川沿いを中心にさまざまな文化が残っている。

また、豊かな水によって育まれた土壌では、昔から農業が盛ん。柑橘類のほか、スイカ、キウイ、栗、白菜、しいたけなど、40品目以上の農産物が生産されているそう。

「ただ、これといった特産物があるわけではないのと、後継者不足という課題があって、農業に従事する人がすごく減っていて。まちとして、新規就農者を増やす取り組みを考えてきました」

「最近は、単純に就農してひとつの農作物を育てるよりも、少量多品目を育てて市場に出さず自分で売りたいとか、加工食品をつくりたいとか。農業と関わって何かしたいというニーズも増えていて。それらに応えられるようなスタイルを、大洲市でも考える必要が出てきました」

そのための活動のひとつとして、昨年より農林水産課での地域おこし協力隊の制度の活用をスタート。

ミッションは、「新たな農業の価値をつくって、新規就農の促進や6次産業化の活性化を目指していく」こと。

「農業従事者にとどまらず、まちの人口も減っていくなかで、自分らしい生き方をしている人、そして大洲のことが好きな人を増やすことが、いいまちの基準になると思っていて」

県内の協力隊担当職員の集まりなども通じて、まちにとって、そして地域おこし協力隊にとってどんな体制がいいのか、考えを深めてきた。

久世さん自身、農林水産課の前は、地域おこし協力隊の受け入れや、愛媛県庁の東京事務所に出向して県のPRなどを担当してきた経験もあり、外の視点を活かした計画も立てている。

たとえば、1年目は地域に馴染むための期間。久世さんたちと一緒に地域の人と関係性をつくったり、まちでの暮らしについて教えてもらったり、農家さんの元で研修させてもらったり。

食べものの加工を教わるなど、地域に入りつつ仕事にできそうなことを探していく。

2年目は、それらを具体的に試していく期間。イベント開催や、農作物の試験的生産、地域で採れた野菜や果物を加工してマルシェで販売するなど、幅広く挑戦していく。

たくさんの案を出しては試し、任期後の収入源になりそうなものを3年目でブラッシュアップ。

隊員のやりたいことに対して、研修の情報や地域の人を紹介するなど、サポート体制も充実している。仕事のアイディアや暮らしの困りごとがあったら、まずは久世さんに相談してみるのがいいと思う。

「任期が終わったら、自分で稼いでいかないといけないんで、仕事以外に使える時間が少なくなると思うんです。就農だけで食べていくってなかなかむずかしい」

「協力隊のうちに知り合いを増やすとか、地域に入っていくとか。地域の課題解決につながる仕事ってなんだろうとか。そういったチャレンジをしてもらいたいなと思っています」

 

大枠は決まりつつも、かなり自由度の高いミッションに思える今回の募集。

農業部門の協力隊員一期生として働いてきた中村さんにも話を聞く。

「生まれも育ちも東京で、小さい頃から植物が好きでした。植物に関わる仕事に就きたいなと思って、新卒で庭師になって」

造園の仕事をしていた中村さん。ときには、海外で庭をつくったこともあるという。

「中国の貧困地域で仕事をしたときに、現地の人と一緒に住み込みで働いたんですけど、みんなすごく笑顔で仕事をしていて。逆に僕はすごく疲れてるなって」

「庭はつくってるけど、自分の生活には植物がなかったりする。もうちょっと自分のライフスタイルとか、植物を通して暮らしを豊かにすることを勉強したいと思うようになりました」

そこで学ぼうと考えたのが、パーマカルチャー。循環型の農業をもとに、人と自然がともに豊かになるような関係性を築いていくためのデザイン手法だ。

中村さんはパーマカルチャーを学ぶため、会社を辞めてニュージーランドやインド、タイに渡った。

帰国後、有機農業に関わる仕事を経て、自由に働きたいと思うなかで、大洲市の地域おこし協力隊の募集を見つける。

「僕がやりたいことって、植物を中心にいろいろなものを組み合わせて生活を豊かにすることだったので、造園とか農業とかカテゴライズしてしまうと、すごく動きづらくなるなって思って」

「ほかの地域だと、この作物だけをつくってくださいって制限がある場合が多かったんですけど、大洲市はグリーンツーリズムをしてもいいし、パン屋になってもいいって書いてあって。ここだったら自分も役に立てるかもしれないと思って、応募することにしました」

昨年の9月に着任した中村さん。

就農を促進する環境づくりとして、使われていないビニールハウスを農家さんから借り受けるため、試験的に使えるように整備するなど、取り組みを続けてきた。

さらに、これまでの経験やスキルを活かした活動もしている。

たとえば、竹林放棄地が多いという課題から、竹を使って植物を育てられるハウスを建てたり、役目を終えた畑の境木を利用して、地域の景観を楽しめるブランコをつくったり。

また今回の募集では、任期終了後の収入源を今のうちからつくってほしいという考えで、活動時間外の副業が認められている。

中村さんは、大洲市の植物を使った花屋「THUGIKI」を起業した。

「大洲に自生している植物を使って何かできないかなって考えていて。大洲市って盆地で湿気が溜まりやすいので苔の種類が多いし、海も川も山もあって植生が豊かなんです」

「でも、地域の人たちにとってはそれが当たり前すぎて、価値を感じられていないのがすごくもったいないなって思って」

たまたま古民家の掃除を手伝う機会があったとき、年季の入った食器が出てきたそう。

盆栽士の資格を持っていた中村さんは、大洲の植物とこれらの食器を組み合わせて生活に馴染むような盆栽をつくれたら、地域の資源を新しい魅力にできるのではないか、と考えた。

試験的につくったものを知り合いのお店に置いてもらい、まわりの人にも意見を聞いたところ、いい反応が。収益が見込めそうだったことから、起業することにした。

そのほかにも、狩猟免許の取得に鵜飼の船頭デビュー、ほかの隊員や地域の若手農家さんとマルシェに出店するなど、副収入になりそうな種を次々と実践している中村さん。

「自分が好きなことを提案して形にできるのはすごく楽しいですね。久世さんは、とりあえずやってみようっていう感じなので、挑戦しやすい環境だと思います」

 

「わたし、面接のときに言いました。農業の知識も植物の知識もないし、中村さんみたいなこと絶対できないですよって。そしたら、『中村さんが特殊なだけで大丈夫です』って言われて。あ、よかったと思って面接した記憶があります(笑)」

そう話してくれたのは、柔らかい笑顔が印象的な山本さん。

二期生隊員として今年の5月に着任したばかり。農のある生活をしたいと、旦那さんと移住してきた。

「もともと、人生の目標が海外の日本大使館で働くことだったんですよ。実際にドイツの大使館で働けることになって。ただ、半年でコロナ禍になってしまって」

「自分で食べるものぐらい自分でつくれないようじゃ、この先の世界で生きていけないかもって痛感して、農のある生活をしたいと思うようになったんです」

協力隊として大洲市に移住してからは、大洲市誌を読んだり図書館に通ったり。市内のさまざまな地域を訪問して住民と話すことで、地域のことを知っていった。

海外での経験も踏まえて、山本さんが収入のひとつの軸として考えているのは、グリーンツーリズム。

最近、農泊に活用できそうな物件が見つかったとのことで、具体的に計画を進めているところ。

ほかの地域の施設に研修に行って、どのように体験をプログラムしていくか学ぶこともあるし、今後は、大洲市の事業である修学旅行生の受け入れを手伝いながらノウハウを吸収していく予定だ。

旦那さんが新規就農に向けて地域農家さんのもとで研修しているので、将来的には収穫体験も含めて、採れた野菜を宿で提供できるかもしれない。

ほかにも知り合いの畑を手伝ったり、採れた野菜をマルシェで販売したり。地域の方から蒟蒻づくりを教わるなど、中村さん同様に退任後の仕事を模索している。

「農業は自分一人でできるわけではないので、あんまり自分が自分がってしていない人がいいのかなって。おばあちゃん世代から、高校生や小さいお子さんまで、関わる年齢層も広いので、興味を持っていろんな人から吸収しようって思えると楽しいと思いますね」

「わたしは農家民宿をやろうと思っているけれど、最終的にできなかったとしてもたぶん大丈夫なんです。地域の人と関係をつくりながら、自分のできることを軸に、グリーンツーリズムとかを実践できればいいのかなって」

地域の課題に合わせて仕事をつくろうとしているふたり。

楽しそうに活動している様子が印象的だったけれど、もちろんたいへんなこともあります。

地域の集まりや手伝いなどの付き合いは大切にしないといけないし、任期後の生計を立てるためにシビアにお金と向き合う必要もある。

楽しさも厳しさも理解した上で、自分ならどんなことができるだろう。

新しいお店を始めるのもいいと思うし、農業をやりながらできる副業を探してみるのもいい。まずは地域を知ることで、自分がやりたいこととできることを見つけていく。

この場所なら、自分らしい農のある生活を実現できると思いました。

(2022/12/05 取材 杉本丞)

※撮影時はマスクを外していただきました。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事