求人 NEW

人と人をつなぐ
水産業の
未来を見据えて

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「革命なんです、水産業の在り方を持続可能な形にしていくというのは。もちろん、現場の方がこれまで積み上げてきたもののおかげで今の水産業がありますし、やり方を変えるのは大変だということは分かっています。でも、分かったうえで、それでも浜の未来のために、一緒に必要なものを考えてちょっとずつ変えていきましょうって伴走していく、そんな仕事です」

一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンは、水産業に関わる“フィッシャーマン”を増やす活動をしている団体です。

拠点となるのは、宮城県石巻市。

もともとは、東日本大震災がきっかけで浮き彫りになった漁業の後継者不足の課題を解決するため、地元の漁師や魚屋が中心となって立ち上げました。

設立から9年が経ち、漁師の担い手を増やすだけでなく、持続可能な漁業を目指して、水産加工会社の在り方を考えたり、海洋環境保全に着手したりしています。

今回は、人と人をつなぐ二つのコーディネーターを募集します。

一つは、漁師と漁師になりたい人をつなぐ漁業担当コーディネーター。

もう一つは、水産加工会社とその会社の在り方をともに考えてくれる人をマッチングする水産加工担当コーディネーターです。

どちらも、海の知識や人材マッチングの経験はなくてもよいそう。

人が好きで、本質的な仕事がしたいという思いがあるなら、フィッシャーマン・ジャパンのみなさんのもとで学んでいけると思います。

 

石巻を訪れたのは、師走の終わり。

東北ということでもっと雪が降っているかと思ったけど、最寄りのJR石巻駅を降りると、気持ちのいい青空が広がっていた。

10分ほど歩くと、フィッシャーマン・ジャパンのオフィスが見えてくる。

迎えてくれたのは、漁村活性統括の島本さん。「上がってください」と気さくに声をかけてくれた。

島本さんはフィッシャーマン・ジャパン設立メンバーの一人。千葉県出身で、東日本大震災後のボランティアで石巻に来たのがきっかけだったそう。

「当時は瓦礫だらけで、ここでやり直さなくてもいいのに、って思うくらいでした。だけど周りの大人たちが『自分の生まれ育った場所を守って生きていく』っていうかっこいい人たちばかりで」

「そういう大人たちのなかで過ごしたいと思ったし、自分にできることがあるならもう少し関わりたいなっていう気持ちになったんです」

ボランティア活動を続け、徐々にライフラインが整ってくると、みんなの意識が経済的な復興に向くように。

フィッシャーマン・ジャパンの代表である漁師の阿部さんやその仲間うちでも、水産業の話が出はじめた。

「震災前から右肩下がりだった産業です。元に戻すだけじゃなくて、もともとあった課題を解決する動きをしていかないと次の世代につながらないよね、っていう話になって。であれば、漁師たちの団体をつくって、みずから動こうと」

「今まで『きつい・汚い・危険』と言われていた漁業を、『かっこよくて・稼げて・革新的』な新3K産業にするという理念のもと、2014年に一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンが立ち上がりました」

漁師の担い手育成と、チーム内での6次産業化を軸に始めた活動は、人を介して徐々に広がり、水産加工会社への人材マッチングや海洋環境保全にまで発展した。

そのなかでも、島本さんが当初から担当しているのが、漁師の担い手事業だ。

漁師さんと一緒に求人情報をつくり、その情報を発信。問い合わせや応募があった際の対応や、マッチング後の就業サポートまでおこなっている。

「もともと漁師さんって、漁業権とか組合員資格の関係もあって、世襲でやってきている人がほとんどの仕事なんですよね。そこに新規参入できるような入り口をつくっているんです」

家族経営が多い漁師さんたちにとって、人を雇うために必要な住まいのことや経費のこと、従業員の就業時間や賃金など、初めて考えることばかり。

一方で、漁師になりたい人にとっても、魚種・漁法のことや漁業権のこと、船を持つのにかかる費用など、世の中に情報が出ていなくて知らないことが多い。

「漁師さんと漁師になりたい人の間に立つ、通訳的な役割なのかもしれません。きちんと情報をお伝えしつつ、目の前の人が向かいたい方向へ伴走することが必要かなって思います」

これまで宮城県内では60人の若い漁師さんを受け入れ、そのうち半数以上が今も漁師の仕事を続けている。

9年かけて培ってきたノウハウは全国の漁業地域からも求められるようになり、島本さんは三重県の南伊勢町と石巻の2拠点で仕事をするようになった。

「活動するなかで見えてきた課題もあって、これからはただ人を増やすだけじゃなく、もう一歩先を見ないとなって。浜の持つ可能性から適切な漁師の数を考え、浜をどう残していくかを思い描きながらマッチングしていく段階だなと思っています」

 

もう一つのコーディネーター、水産加工会社への人材マッチングを担当する松本さんにも話を聞いてみる。

松本さんはヤフー株式会社の社員で、7年前、ヤフーが創立した復興支援の支社・石巻ベースにやってきたことから、フィッシャーマン・ジャパンの運営にも関わるようになった。

「もともと大学時代からNPOのボランティアとか地域おこしとかをずっとやっていて。ヤフーに入社するときも、社会貢献のチームで支援がしたくて入ったんです」

数々の活動エピソードを持つ松本さんは、とてもパッションのある方。ヤフー石巻ベースは2021年に撤退したものの、松本さんは石巻に生活拠点を置き、フルリモートでヤフーの仕事をしながら活動を続けている。

「石巻に来た当初、ヤフーからは、課題解決できるならどんな形でもいい、と言われていました。自分なりに動きながら根本的にこの町をよくすることを考えたとき、やっぱり水産業だな、と」

「地域の資源として湧き出るものを活用することは無理がないし、水産業に関わる人も多く、町の人にとっても誇りだったりする。水産に注力することで、テコが効くと思いました」

当時フィッシャーマン・ジャパンは漁師に特化した団体として知られており、水産加工会社との接点は浅かった。

もっと深く関わっていきたいと思っていたとき、きっかけとなる出来事が起こる。

「若い世代に水産業を知ってもらう活動の一環で、水産加工会社に学生インターンをコーディネートしていたんですけど、その学生から相談を受けて」

「話によると、社長が商品開発を提起して自分が来たけれど、社員さんはまったくその気がない。商品開発よりも、社内の現状のほうが問題だと感じるのですが、どうしたらいいですか、と」

そこで松本さんは、「素直に伝えてみよう」と声かけをして、一緒に「会社のあるべき姿」という提案書をつくるも、あっさり却下されてしまった。

「後日、地域の人たちを集めたインターンの成果報告会で、彼女は一部始終をまとめて発表しました。そのなかに水産加工会社の方が何人かいて、『うちの会社でも、素直な意見を言ってくれる人がほしい。あれをやりたい』と、声をかけてきてくれて」

「自社の在り方を変えなければと思っている人たちがいたんです。僕らとしても、外から来た本気の人をサポートすることで、結果的に会社が動くということを目の当たりにして。本格的に水産加工会社さんに関わるようになりました」

水産加工担当コーディネーターは、経営者の悩みごとを聞きながら解決策を考え、それに合う人材を、新卒採用や兼業副業、インターンシップなどさまざまな形でコーディネートする。

どうやって人材を見極めているんでしょう?

「会社が良くなろうと動き出す状況づくりに重点を置いているので、結果を出せる能力の高い方というよりも、その会社に真摯に向き合ってくれる、スタンスの合う方を見極めている感じです」

「僕らには、水産業を持続可能なものにする、という目指したい未来がはっきりある。一つの産業を通して、町全体として良くなっていく方法を考えて、今の段階で必要なことをやっていく。そこにみんな乗ってくれと話しに行っている感じはありますね」

まるで革命のよう。

けれど、自分だったら松本さんと同じように物事を広く捉えられるか、少し不安もあります。

「より本質的な形で課題を解決したいという気持ちがあれば、今できなくても大丈夫です。エンジンは持っている状態だから、物事を捉える力は、あとから身につければいい。本当に大事なことを念頭に置いて動ける人なら、その人らしく活躍できる舞台はいっぱいあると思います」

 

入社して2年目になる渡部さんは、まさに未経験から想いをもって飛び込んできた方。

「出身は秋田です。学生時代は都市計画のことを学んでいたんですが、フィールドワークで石巻に来たら、水産業に興味が湧いてしまって」

たまたま松本さんに出会い、フィッシャーマン・ジャパンが管理しているシェアハウスに住んでインターンをしていたそう。

「やっぱり、食生活にしても国防の意味においても、漁業はなくならないと思うんです。せっかくなら低空飛行させるんじゃなくて、ちゃんと儲かる仕事だよね、っていう状態になっている未来がいいなと思って。ここで活動することを選びました」

渡部さんは、島本さんと同じ漁業担当コーディネーターだ。

働いてみて、どうですか?

「単純ですけど、漁師さんたちの困りごとになんとか応えられたかな、という瞬間はやっぱり、ああ、よかったって思います。海のことをやりたいって来た子をつないで、自然相手のイレギュラーさがおもしろい、って話を聞いたりすると、よかったなーって」

「一方で、自分たちが動いていることは未来にどう関わっているだろうかとか、今ある課題に対して本当に効果のある選択なのかということは、たまに考えちゃったりします」

たしかに、未来につながる仕事だけれど、だからこそすぐに答えが出ないこともある。

すると、「信念も大事だと思います」と島本さん。

「やっぱり、業界の在り方を変えるということは、今までにないやり方に挑戦することでもあります。そんなのできない、って言われることもあるんですけど、ダメって言われるのは分かってて言ってるから、ダメでいいんです(笑)。自分たちが理想をしっかり持って、こっちがダメならこれはどうだろう、って根気強くやらないといけないです」

掲げる旗は大きくても、日々の活動はほんとうにコツコツした対話の積み重ねになると思う。

みなさんと同じ未来が見えたなら、一緒に活動してみませんか。

まずはお試しでインターンもありだそうです。事務所近くのシェアハウスはスタッフやインターン生が集い、松本さんも日付が変わるまでお話ししているそうですよ。

(2022/12/26 取材 倉島友香)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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