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すべて自分でやるからこそ
得られるもの
発展途上のキウイフルーツ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ビタミンCをはじめ、栄養価が高いことで知られるキウイフルーツ。

原産国は中国。その後ニュージランドに渡り、品種改良され、現在の形になりました。日本にはじめて来たのは昭和40年ごろと、ほかのフルーツに比べて栽培の歴史が浅く、品種数や一つひとつのブランド力もまだまだ発展途上。

親指ほどの大きさのキウイや細長いキウイ、果肉が赤いキウイなど、見たこともないような新たな品種も続々と開発されています。

農業に興味はあるけれど、どんな農作物を育てていきたいか迷っている人、キウイフルーツはいかがでしょうか。

舞台は、香川県善通寺市。

キウイフルーツの新規就農を目指す研修生を募集します。

所属するのは、公益財団法人善通寺市農地管理公社。農家の高齢化や農地の荒廃・遊休化などの課題に対応するために設立された団体です。

新しく入る人はここに籍を置き、地域の先輩農家さんのもとで、3年間の研修を受け、独立を目指します。

最短距離で就農を目指したい人や、自分なりのキウイ農業を実現したい人におすすめです。

 

年が明けて最初の金曜日。

羽田空港から飛行機に乗って高松空港へ。空港からはレンタカーを借りて、西へ車を走らせる。

まちなかを走っていると、ボンボンと山が現れる。形が少し変わっていて、もっこりと丸みを帯びた円錐形が多い。見慣れない景色に少し戸惑うけれど、まちに溶け込んでいるようにも思えて不思議な気持ちになる。

1時間半ほど運転したところで、目的地である善通寺市のキウイ農園に着いた。

農園は山の傾斜につくられていて、隣に大きな市の公園がある。

つい最近収穫作業が終わったばかりとのことで、キウイの棚はものさびしい様子。この時期は、次の収穫に向けて剪定作業をしているのだそう。

農園の説明を受けた後、公園内にある施設の会議室で、まずはキウイ農家の森崎さんに話を聞いた。

「わたしの家はですね、もともとみかん農家を営んでいたんですが、高校を卒業した昭和45年、全国でみかん栽培が盛んになってみかんの価格が大暴落してしまった。1キロ40円ぐらいですよ」

「それで、みかんでは生活ができなくなってしまった。そこで、いろいろ考えて多くの農家が栽培を始めたのがキウイだったんです」

温暖な気候で水はけがよく、乾燥した環境を好むみかん。キウイフルーツの栽培も、みかんと似た環境が適していたことから転換しやすかったという。

「転換して最初の10年間で、キウイに変えた農家も半分ぐらいやめました。栽培がうまくいかず、これは失敗やなあいうことで。ただそこから10年ぐらいかけて品種改良をおこなった。それが『香緑(こうりょく)』という品種で、香川県のブランドとして売り出したわけです」

それまで日本に定着していたのは、貯蔵性が高く長距離の輸送にも耐えることができるヘイワードという海外の品種。大量生産しやすく、市場にも多く出回っていた。

一方の香緑は、酸味が少なく、より甘さが際立つキウイフルーツ。さらに15年ほど後には、さぬきゴールドと呼ばれる品種の開発にも成功。黄金色の果肉と世界でも最大級の大きさ、そして甘さが特徴だ。

「ブランド品として育てているキウイには、一つひとつすべて袋をかけます。傷がついたり、毛が抜けたりしないように。そこまでしているから、1個あたりの価格がぜんぜん違うし、ブランドとして成功しているんです」

昨年のキウイの収穫量は、1位が福岡県、ついで愛媛県、和歌山県。

香川県は10位前後と収穫量では目立っていないものの、糖度や美味しさを追究した独自の品種を確立することで、その地位を築き上げてきた。また、香川県内でしか栽培が許可されていない品種もあるとのこと。

「今、香川県にはキウイ部会が3つあるんですが、善通寺地区部会の認定生産者は32軒。それで、キウイの収穫量が100tちょっとぐらいあります。ただ、これがもうぎりぎりの線、100tを切ればブランドの認知を広げていくのはむずかしいと思っています」

全国的に農業の担い手が不足している状況で、善通寺市もまさにその問題に直面している。

これまで先代たちが築きあげてきたキウイフルーツたちも、後継者がいなければ守っていくことはできない。

また、キウイ畑は山の斜面を利用してつくられることが多いため、耕作放棄地の状態が続いてしまうと、山から流れてくる水をうまく貯水できず、水害などにつながる可能性もある。

それらの問題を解決するためにも、広く門戸を開いてキウイの栽培に従事してくれる人を求めているところだ。

 

率先して新規就農者の受け入れや支援をしてきたのが、善通寺市農地管理公社。事務局長の高畑さんにも話を聞いた。

「地域に後継者がいないのであれば、新規就農者を増やすしかないと。農業に興味のある志の高い人に県内外問わず来てもらい、こちらで育てて、善通寺市で就農してもらおうというのが発端でこの事業が始まりました」

市内の農地の保全や管理などの耕作放棄地対策をおこなっている農地管理公社。

今回新しく入る人は、組織とつながりのある先輩農家さんのもとで、3年間の研修を受ける。

研修生という形を設けているのは、どうしてでしょうか。

「農業に興味はあっても、農地を借りて、技術を習得して販売までするのは、非常にハードルが高く、断念している人が結構おる。もちろん、ここの研修生よりもどこかの大きな農園に就職したほうが、給料は多いと思います。ただ、遠回りすると思うんです」

遠回り?

「ずっと同じことばかりやらされたり、研修期間が短かったり。よっぽどの人じゃない限り、独り立ちは無理でしょう。わたくしどもの目的は、新規就農なんです。そこを絶対に成功させないかん。だからこそ、3年間預からせてもらう形じゃないと実現できないというわけなんです」

 

農業未経験から、どのように独立していくのか。

善通寺市内でキウイ農園を営む深井さんと山田さんは、まさに未経験から研修を受けて独立した方たち。

新しく入る人も、きっと参考になると思う。

ふたりは大阪出身で、高校時代の同級生。

卒業後の進路は別々だったものの、ずっと連絡を取り合う仲だった。お互い仕事に違和感を感じていたときに再会し、10年以上前にキウイ農家になるべく善通寺市に移住した。

現在は3.5haの農地で、パートタイムのスタッフと一緒にキウイをつくっている。

研修時代はどんなことを学んでいたのか、山田さんに教えてもらう。

「1年目は手元の作業をまず覚えるだけなんですよ。剪定から受粉作業、収穫まで。2年目になって、栽培のサイクルとか作業の必要性とかがわかってきて」

「3年目は1、2年目に経験したことの復習にもなりますし、あとは販売の仕方とか、自然災害の対応とか。必ずトラブルは起きるんで、研修のうちに体験しておくと身になりますね」

実際に、台風で枝が折れたことや、雨が続いて危うくすべての実がダメになりかけたこともあった。

研修を終えて独立した後、栽培はすべて自分たちで行なっていたものの、キウイの販売は先輩農家さんに任せていたそう。

ところが7年ほど経ったころ、育てていたキウイの木が病気にかかってしまい、収穫量が激減してしまう。

野菜を育てたりバイトをしたりしながら、なんとか食いしのいでいたふたり。

「まわりに相談してもキウイの収穫量を増やすしかないって言われてしまって。そうは言っても苗木から収穫できるまでに数年かかるんで、とにかく不安で仕方ない。僕も深井も暗く考えがちなんですよ」

「ほんとに、生きるか死ぬかみたいなギリギリのところにおって。でもあるとき、儲けようとするからつらくなっているんじゃないかって気づいて。それで、儲けようって考えることをやめて、キウイを楽しむように心がけていこうぜって話になったんです」

やりたかったけど、やってこなかったことをやってみよう。

自分たちでつくったキウイの加工品をキッチンカーで販売したり、クラウドファウンディングを使って販路を開拓したり、ふたりでアイディアを出し合い、形にしていった。

「たとえば、『さぬきキウイっこ』っていう、すごく小さくて可愛いがられてる一口サイズの品種があるんですけど、栄養の偏りによってどうしても大きいキウイができる。これがすごく美味しいんですよね」

「それで、市場やお付き合いのあった業者さんに直接販売をお願いしてみたんです。ただ、中途半端に大きいと品種の特徴が失われて可愛くないという理由から受け入れてもらえなくて」

まわりの同意が得られないのであれば、自分たちで直接お客さんに問いかけてみよう。

そこで、クラウドファンディングを使って自分たちの言葉で魅力を伝え、特大のさぬきキウイっこを販売してみることに。

準備していたのは、100セットほど。特別宣伝に力を入れたわけではなかったけれど、初年度はスタートして2日で完売。昨年は、数時間で完売したという。

「僕らのやってることは間違いじゃないんだって、そのときはやってよかったなと思いましたね」

今後も新たな挑戦をしていきたいと山田さん。たとえば、キッチンカーで販売しはじめたキウイの紅茶は、お客さんの反応もよかったため、商品化できないか検討している。

「あとは、たとえばメタバースのなかにうちのキウイ畑があって、そこでキウイ狩りを体験してもらう。そしたら、うちからキウイを発送するとか」

「キウイを軸に、いろんなことに携わっていけそうな気がしていて。でもそれってキウイの実がないと何もできないんで、まずは生産するのが大事ですけどね」

最後に、どんな人に来てほしいか聞いてみる。

まずは深井さん。

「苗から実が採れるまで育てて、お客さんに食べてもらって美味しいって言ってもらう。それはやっぱりうれしいですよね。ここにしかないキウイを育てられるっていうのも、やりがいとしては大きいと思います」

「それでも苦労はあるし、大変なことはあるので。トラブルが起きても、こうしてみようっていろいろ対策を考えて、楽しめる人がいいと思います」

続けて山田さん。

「『今までの農業をそのまま引き継いでやるのでは、新規就農者として失敗やと思う。今までにない農業をやってこそ、新規就農者としての成功や』ってある人が言っていて、まさにそうやなと」

「自分で新しい農業をつくってやるってぐらいの気持ちでやっていってほしいなと思いますね。言われた通りに栽培して出荷するだけなら、もったいないと思うので」

 

市場が熟しきっていないキウイの世界。ふたりが話してくれたようにまだまだできることはたくさんありそうです。

ここでしかできないキウイの栽培。真剣に楽しく働きながら、農業を生業にしてみませんか。

(2022/01/06 取材 杉本丞)

※撮影時は、マスクを外していただきました。

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