求人 NEW

おいしさとこだわりを
一つひとつにたっぷり込めて

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

目で見て、香りを嗅いで、口に入れて味わう。

「おいしい」と感じる瞬間、いろんな感覚が働きます。

それに加えて、つくり手のこだわりを知ったり、店員さんとの心地よいコミュニケーションがあったりすると、おいしさはさらにふくらんでいく。

甘味みつやの白玉を食べて、そんなことを思いました。

生産者直売のれん会は、浅草の甘味みつや、門前仲町のおさつ家といった自社ブランドの甘味処の運営や、「とろけるくりーむパン」で有名な八天堂など、地方の食品製造の支援業に取り組んでいる会社です。

今回募集するのは、新しくできる工房で商品を製造する人と、おさつ家などの店舗運営を担う人。

記事で紹介する人たちは飲食業界未経験ながらも、製造や商品開発に幅広く携わっているそう。

白玉、大学芋、わらび餅など和の甘味、そしてなによりも食が好きという想いがある人なら、きっと楽しく働ける仕事だと思います。



東京・浅草。

取材までに少し時間があったので、周辺を散歩しようと駅から人の流れについていく。新年が明けてすぐということもあってか、雷門の周辺はたくさんの人で賑わっていた。

活気づく仲見世通りを浅草寺の方向へ進みながら、途中で脇道へ入る。観音通りと呼ばれる道沿いに甘味みつやを見つけた。

今日は定休日。外から中の様子を覗いていると、迎えてくれたのが大久保さん。

みつやなど、のれん会の店舗運営や商品開発などを一通り担っている方。

みつやを運営する生産者直売のれん会は、食品支援業から始まった。

たとえば、広島の八天堂など、地方でつくられているおいしいものをのれん会が首都圏で販売することで、生産者をサポートしていこうという取り組み。

「偶然、のれん会が特集されていたテレビ番組を見て、おもしろそうな会社だなと思ったんです」

広告制作やペットショップのバイヤー、商業施設の不動産コンサルなど、あらゆる業種を経験してきた大久保さん。

8年前、テレビを見てピンときたのれん会に入社した。

はじめはコンサルタントとして、地方の特産物を使った商品開発や販売促進、東日本大震災で被災した缶詰工場などの復興支援を担当。

その後は、フードフェスや音楽フェスに設けられるフードの責任者として、メニュー開発にも取り組んでいった。

ところが、コロナ禍の影響でイベントが軒並み中止となる。大久保さんは、メニュー開発をしていた経験から、おさつ家を中心に働いていくことに。

おさつ家の一番の人気は、外はカリッと、中はしっとりとした食感の「みやび」という大学芋。

「一口サイズに切られた5キロの芋を籠に入れて、11分間揚げていくんですが、均等に揚げるのがすごくむずかしいんです」

一つひとつの芋が一定の温度で揚がるよう、左手で籠を揺らしながら、右手では菜箸で芋同士がくっつかないように動かし続ける。

同じ食感やおいしさを味わえるようにするには、つくり手のこまやかな感覚が重要になる。

大学芋やスイートポテトなど、手間暇かけたおさつ家の商品にはリピーターが多い。

「商品はどれもすごくおいしいけど、夏になると売れなくて。芋ってホクホクしているイメージだから、寒い時期に好まれるんですよね」

そこで、夏向けの商品として誕生したのが、みつにこだわったかき氷。2017年に、かき氷をメイン商品にした甘味みつやを浅草にオープンした。

「オープンしたのが8月下旬で。知名度はないし気温は下がる一方で、かき氷が全然売れなかったんです」

せっかくつくったこだわりのみつを、一年を通して活かせる甘味はないだろうか。そう考えて生まれたのが、白玉だった。

「和の甘味って黒みつがすごく大切で。一般的な黒みつは水飴が入っていて、甘さが強く、とろっとしたものが多い。その甘さやとろっとした食感が苦手な人でも、おいしいと感じられるような黒みつをつくりたいと思ったんです」

大久保さんは日本で製造されている黒糖をすべて仕入れ、食べ比べてみることに。

「黒糖は沖縄と鹿児島が主な生産地なんですが、土壌や栽培方法によって味が全然違うことがわかって」

研究を重ねてたどり着いたのは、波照間島(はてるまじま)の黒糖に和三盆を混ぜる手法。

「よかったら実際に召し上がってみてください」と、出してくれたのは一番人気の「黒みつきな粉」。

白玉がお花の形みたい。その可愛さに、ついカメラに手が伸びる。

撮影を終え、早速黒みつを白玉にかけてみる。黒みつは思っていたよりさらりとしていて、すーっと白玉にかかっていく。

大きな白玉一粒を、贅沢に頬張る。黒みつは甘さ控えめで、きな粉の風味がふわっと香る。黒みつが主張しすぎないから、白玉を噛むごとにそれぞれの味をしっかりと楽しめる。

すごくおいしいです。

「まだこの黒みつも完成形だとは思っていなくて。今年はほかの黒糖とブレンドして、さらにコクを感じられるようにしていこうと思っているんです。会社もやってみたいことを後押ししてくれるので、とてもありがたいですね」

のれん会も新しいチャレンジにどんどん取り組んでいる。

たとえば、昨年12月に浅草の伝法院通りにオープンした、わらび餅専門店のかねすえ。

池袋など都内でも人気店となっているかねすえを、フランチャイズで運営している。

みつやなどと違い、食材や製造方法などはかねすえのやり方を踏襲。一方で、商品の魅力をどう伝えていくかは、運営サイドに任されている。

どうやって伝えるか、これから新しく入る人と一緒に考えていきたい、とのこと。

「どのお店も基本的には店内で製造もしているのですが、ありがたいことにだんだんとキャパオーバーになってきていて」



そこで、今年の春に新たにできるのが工房。

「白玉に加えて、新しくできるカフェで提供するスープや焼き菓子、夏にオープンするサンドイッチ店で販売する商品など、幅広くつくる予定です」

そう教えてくれたのは、先ほどまで厨房で白玉を丸めていた田中さん。

入社8年目で、みつやの本店と仲見世店に加え、おさつ家とかねすえの4店舗の責任者をしている。

今年の春に独立して自身の甘味屋を持つ予定だけど、その後もみつやなどには引き続き関わっていくそう。

「うちはどの店舗も、製造や接客に決まりごとがないんです。正解がない分、より良いものをお客さまに提供するにはどうしたらいいか、自分で考えて行動することが大切ですね」

たとえば、白玉。日々行列ができるというみつやの白玉は、毎朝一つずつ手づくりしているこだわりの一品。

「はじめに白玉粉に水を入れるんですが、その水分量がむずかしい。多すぎても少なすぎてもダメだし、雨が降ったとか乾燥しているとか、天候によっても出来栄えが変わってくるんですよ」

これまで基本のレシピはあっても、最終的にはつくり手の感覚を頼りにつくられてきた白玉。

あるとき、月に1回おこなっている社員とスタッフが集まるミーティングで、白玉に加える水分についてじっくりと話し合ったそう。

「一番影響するのは季節なんですが、加える水の水温など、それぞれの経験を持ち寄って話し合いました」

とはいえ、これから工房ができたら、白玉のつくり手も増える。

現在は、新しく入る人がスムーズに白玉づくりに取り組めるよう、社員みんなで日々の温度や湿度、そして手の感覚などを記録しつつ、季節ごとに目安となる水分量を数値化している最中なのだとか。

「レシピ通りにつくっても、絶対に同じものはできない。だから、白玉の状態を常に感じることが大切で。数字と感覚のハイブリッドという感じですね」

「ずっとつくっていると、たまにすごくいいのができる瞬間があるんですよ。『おー!できたできた!』ってうれしくなる。そういうのがあるから、やめられないですね」

すでにファンの多いみつやの白玉や、新たにできるカフェやサンドイッチ店のメニューをつくっていく工房。

加えて、のれん会のつながりから生まれた、地方の特産品を活かした商品もつくっていくそうで、工房の可能性はさらに広がっていく気がする。

工房で働く人には、より美味しくつくるための工夫や簡略化できる工程など、製造中に見つけた改善点をどんどん提案していってほしい。

「工房はこれからという段階ですし、店舗スタッフでも新商品の開発に関わることもある。0から1をつくり出すのが好きな人と一緒に働きたいですね」



最後に話を聞いたのは、テイクアウト専門の浅草寺みつや仲見世通り店で店長を務めている宮田さん。

人気商品の「白玉手箱」の製造と販売、そしてアルバイトの育成を担っている。

「浅草が地元なので、働く前からみつやのことは知っていました。ただ、あまりにもいつも並んでいるから、食べに来たことはなかったんです(笑)」

あるとき、実家の2軒隣にある建物で、のれん会がアンティーク家具のお店を開くことに。そこは、かつて父親が経営していた学習塾があった建物だった。

もともとのれん会のファンだった父親は、その事業の幅広さに感動。宮田さんに「みつやで働いたらどうか」と提案したそう。

これまで、もんじゃ焼き店やテーマパークなど、賑やかな場所で接客することが大好きだった宮田さん。

「正反対の落ち着いた空間で働くことに、最初は迷いました。でもみつやの行列を見ていたから、きっとすごい会社なんだろうなと思って。それで入社を決めました」

アルバイトとしてみつやで接客を経験したのち、半年後に社員となった宮田さん。今は仲見世店で白玉の製造と販売を担っている。

「白玉の製造は、本当にむずかしくて」

店舗スタッフは製造と販売をどちらも担う。きっと大変さはあるけれど、製造のこともわかっているからこそ、自信を持って商品を勧めることができる。

「本店だと、お客さんの反応を直に見ることができる。仲見世店だと、テイクアウトなので食べるところは見られないけれど、お客さまとじっくりと会話しながら商品の良さをお伝えできる。それぞれに違った楽しさがありますね」

手土産なのか、自宅で家族と食べるのか。お客さんとの会話から食べるシーンを思い浮かべつつ、商品をおすすめしていくそう。

「浅草は観光客の方も多いんですけど、浅草が好きで毎月訪れるという方もいらっしゃって。浅草巡りのひとつにうちを入れてくださっているお話を聞くと、うれしくなりますね」

「今まで食べたことのある白玉を、四季や旬を感じながらあらためて食べて『こんなにおいしいんだ』って。自分が初めて食べたときの感動を、これからもたくさんのお客さまに味わってほしいなと思います」



取材後、伝法院通りにあるかねすえに立ち寄ってみました。

今はまだオープンして10日ほど。次に来たときには、わらび餅を求めてたくさんのお客さんが列をつくっているかもしれません。

本当においしいものを届けたい。

その気持ちが、みつへのこだわりや、一つひとつの商品を丁寧につくっているところにあらわれているように感じました。

自分の仕事を、胸を張って好きだと言える。そんな場所だと思います。

(2023/1/6 取材 小河彩菜)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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