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バラと木々と、土地に根づいた草花と。
季節ごとに表情を変えるイングリッシュガーデンのそばで、紅茶とお菓子を楽しめるティールームが、この春、オープンします。
舞台となるのは、滋賀・米原にある観光庭園、ローザンベリー多和田。
13,000㎡におよぶイングリッシュガーデンは、国内でも類を見ない大きさを誇ります。2011年のオープン以来、豊かな自然と英国文化を楽しめる場所として人気を集めてきました。
今回は、2つの職種でスタッフを募集します。
ひとつは、新しくできる「TEA PASTRIES(ティーペイストリーズ)」でティールームを運営しつつ、販売企画や商品開発に取り組むスタッフ。もうひとつは、ローザンベリー多和田全体のPR・企画担当です。
TEA PASTRIESスタッフは、現段階でお菓子や紅茶に詳しくなくても、未経験でも大丈夫。いつか自分でカフェを開きたい、商品開発をしてみたい、という目標がある人ならよりよいと思います。
もうひとつのPR企画担当は、初めて施設を訪れる人にも、長年のファンにも楽しんでもらえるよう、プロモーションや企画を考えていく役割。こちらは職種の経験があると好ましいです。
どちらの仕事も「やってみたい」という気持ちがあれば、自らの発想をどんどん形にしていける環境です。
米原へは、名古屋から新幹線で30分、新大阪から35分ほどの距離にある。金沢方面や京都方面にも向かえる、交通の要所だ。
この日は雪模様。車に乗り換え、白くなった街並みを眺めながら、山手に向かっていく。
20分ほどして、ローザンベリー多和田に到着。入場口から少し歩いた事務所に入ると、「寒くないですか?」「お茶持ってきますね」と、スタッフの方が声をかけてくれた。
案内され、社長室へ。ニコニコしながら迎えてくれたのは、社長の大澤健さん。
ローザンベリー多和田は、健さんの義母であるオーナーの惠理子さんが、採石場跡だったこの土地を開拓したことから始まった。
いつか自分の庭をつくりたい。惠理子さんの理想は、自然やもとある風景を活かした英国式の庭。
「もともとうちは、採石業務がメインの土木建築の会社だったんです。そのノウハウも活かしながら、2003年から地道に開拓を続けて」
雑草に覆われた採石場跡は、8年の歳月をかけ、緑豊かな庭に。
バラを中心に、サクラやヒマラヤスギなど元々植っていた木や、シャガなどの多年草、身の回りで見かける山野草も入り混じっていて、和のテイストを感じられるのが特徴。
オープン以来、季節ごとに表情を変える庭を楽しみに、足繁く通うファンも多い。お客さんが園内でくつろげる場所をつくろうと、カフェ事業も始めた。
いまでは園内に食事を楽しめるカフェ・レストランが3箇所。BBQコーナーでは、園内で育てられた農作物の収穫体験もできる。
「おいしくて体にいいものを食べてほしいという気持ちがメインにあって。自分の畑でつくった野菜なら、味もわかるし、安全。自信をもっておすすめできるじゃないですか」
できる限り農薬は使わず、園内の料理で使う野菜は自分たちの畑で賄えるように。足りないものは、地域から調達もしつつ、旬を味わえるように。
カフェメニューやお土産のお菓子も、開業当初から、専属のパティシエたちの手づくりにこだわってきた。
2019年には、英国発のクレイアニメ「ひつじのショーン」の世界を再現したエリアを世界で初めて開設。2020年には冬のイルミネーションを開始し、年間の来場者数は20万人に。一年を通じて遊びに来たくなるような施設づくりを進めている。
新しく始めるTEA PASTRIESは、閑散期の冬にも目玉となる取り組み。
英国で200年以上の歴史のある、Farrer’s(ファーラーズ)というティーハウスと日本で初めて提携するほか、わざわざ来たくなるような仕掛けづくりを考えているそう。
「昨年の夏から百貨店の催事にも出店して、ここで提供するお菓子を販売しています。立地もあって、待っているだけでは新しいお客さまにはなかなか来てもらえない。こんな場所があるんですよと、僕たちから発信していこうと始めた取り組みで」
「催事の熱気ってすごいんです。英国や紅茶好きな方が、『日本でそんな本格的なティータイムが楽しめるの?』と、足を運んでくださることも増えつつあります」
ティールームの建物は最近完成したばかりとのこと。
どんな空間なんだろう。事務所から出て少し歩いたところに、全面ガラス張りの建物を見つけた。
中はカウンターキッチンのみのシンプルなつくり。壁もカウンターもコンクリート製だけれど、不思議とあたたかみを感じる。
カウンターは奥行きがあり、ほどよい距離感でゆったり過ごせそうだ。
店内を観察していると現れたのは、飲食部門の責任者でパティシエの堀さん。気さくで、のんびりとした口調のなかに芯の強さも感じられる方。
「カウンターは広めにつくったんです。お客さまにただ紅茶とお菓子を渡すんじゃなくて、淹れ方を見てもらったり、『このお茶とお菓子、いい組み合わせですね!』とか、会話しながら接客ができるといいなって」
そう話しながら、紅茶を淹れてくれる。
「これ、94度のお湯が無限に出てくる機械なんです。格好いいでしょ(笑)?」
「紅茶って温度が大事で、100度くらいのお湯で抽出するのが一番だけど、全員が同じように淹れるのはむずかしい。これだとお客さまの顔を見ながら、誰でもちょっとおいしい紅茶を淹れられるんですよ」
いただいたのは、Farrer’sのレイクランドスペシャル。さっぱりとした味で、すーっと体に染み入ってくる。
「飲み飽きない味っていうのが一番の特徴で。ティータイムするなら、一個のお菓子で2杯くらい飲みたいじゃないですか。味が濃すぎるとそうもいかない。おしゃべりを楽しみながら長く楽しみたい、って意味ではすごくいいと思います」
伊吹牛乳が合うんですよ、と勧められて、入れてみる。たしかに、ミルクティーにしても飲み飽きない味でおいしい。
紅茶というと種類も多いし、どう楽しめばいいか、戸惑う気持ちもあったけれど、こうして勧めてもらえると楽しいですね。
「イギリスのティータイムってびっくりするくらい適当で(笑)。たっぷりのポットの隣に追加のお湯と牛乳がぼんって置かれて、会話も紅茶も、自由に楽しんでね!って感じ。みんな屋外で楽しそうにお菓子を食べながら、心ゆくまで紅茶を楽しんでる」
「そんな風景をここでもつくれたらと思うんです。本物を楽しんでもらえるように味にはこだわるけれど、飲み方や食べ方はお客さま自身に自由に楽しんでもらえたらなと」
以前は、同じ滋賀県でウエディングケーキをつくるパティシエをしていた堀さん。
「ひたすらものをつくるよりも、いろんな事業を進めていくほうが好き」とのことで、ローザンベリーではカフェ・レストランのプロデュースを一手に引き受けている。
TEA PASTRIESでは、お菓子のレシピ開発のほか、ギフト商品の考案、催事への出展など、幅広く業務を担当している。今回募集するスタッフは、堀さんの業務を一部引き継いでいくことになる。
「『この仕事、やってみたいです』って、好きなものから始めてくれたらうれしい。やりたいなら経験がなくたっていいと思うし、内容の確認はするけれど、その成果について僕がとやかく言うことはないです。判断するのはお客さまなので」
たとえば将来、カフェをやってみたい人は運営の経験もできるし、紅茶やお菓子以外でも、なにかものを売りたいと考えている人なら、催事や企画の仕事も経験できるいい機会になると思う。
一緒に働いているパティシエは、堀さんの前職からついてきた方が多い。堀さんがずっと現場にいることは少ないだろうけれど、仕事の進め方など、堀さんから吸収できることも大いにある気がする。
「紅茶の淹れ方は、僕もプロフェッショナルではないので。一緒に高めていければいいかなと思います。やりたいことが楽しくやれていれば、全然それでいいと思うんです」
「なにをしたいか、見失っちゃうこともあるかもしれない。僕は、どんな人でも輝ける場所を見つけるのはわりと得意なので。気軽に飛びこんできてもらえればと思います」
最後に話を聞いたのは、ローザンベリー多和田のPR企画を担当している大澤直美さん。
ほか数名のメンバーと協力しながら、SNSでの広報やイベントの企画、商品企画も担当している。新しく加わる人には、一番身近な先輩になると思う。
「庭づくりも畑もイルミネーションも、やれることはなんでもやろう、という雰囲気が会社全体にあるので。色々な仕事をみんなで手分けして担当しています。なので『どんな仕事してるんですか?』と聞かれると、困っちゃうんです(笑)」
一昨年から始まったイルミネーションも、開催の2ヶ月ほど前に決まった企画だったそう。誰も経験がないなか、スタッフ総出で企画から運営までおこなった。
米原駅からのマイクロバスの運転手は社長が担当。車内では長年通ってくれているお客さんが、初めて訪れるお客さんに園の説明をする場面もあった。
「ローザンあるあるなんですよね。ガーデンが好きで、何度も足を運んでくださるお客さまがたくさんいて。通ううちに園の見どころも覚えてくださって、色々な人におすすめしてくださっているんです」
「やっぱり一番大切にしたいのは、昔から通い続けてくださっているお客さま。PRをするうえで、新しい方に私たちのことを知ってもらうことは大事なんですけど、その人たちが『ローザンベリーっぽくないな』と思う発信は避けたいと思っています」
ローザンベリーっぽさって、どんなものでしょう?
「むずかしいですね…。上品さ、ですかね。下品にはしたくない」
「SNSへの投稿でも宣伝っぽい投稿が続いたらフォロワーさんが少し減ってしまう感覚があるんです。品よく、日常を届けつつ、新しい方にも興味を持ってもらえる伝え方ってなんだろうと、日々試行錯誤しているところです」
新しく加わる人の視点は、ローザンベリーを知らない人と、中の人をつなぐ存在になるはず。みずから施設を知るなかで、どんなところが魅力として映りそうか、意見を出していけるといいと思う。
「施設自体もまだまだ開拓できていないところが多くて、新しいものをつくり続けている途中です。思い描くものがあればどんどん実現させてくれる会社だと思うので、そんなスピード感も楽しめる人に来てもらえるとうれしいですね」
施設内に流れるゆったりとした空気とは対照的に、スタッフのみなさんの、経験のないことにも軽やかに挑戦していく姿勢が印象に残る取材でした。
気になったら、ぜひ施設を訪れてください。広々とした空と緑に囲まれたら、アイデアが湧いてくるかもしれません。
(2023/1/31 取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。