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米百俵の精神で
人、企業をつなぐ
まちのコーディネーター

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日本三大花火大会のひとつ、長岡まつり大花火大会で有名な長岡市は、日本海側で随一のものづくりのまちでもあります。

明治時代に発掘された油田をきっかけに、掘削機械の製造から始まった長岡のものづくり。

現在も工作機械の製造や、鋳造業、金属加工技術など、高度な技術力を持った中小企業が市内に集まっています。

そんな長岡市には、昔から「米百俵の精神」が根付いているといわれています。

幕末、戊辰戦争で新政府軍に敗れ、焼け野原となった長岡。

長岡藩士の小林虎三郎は、「国がおこるのも、まちが栄えるのも、ことごとく人にある。食えないからこそ、学校を建て、人物を養成するのだ」といい、救援米の米百俵を食糧にせず売ってお金にして、それを元手に国漢学校を建立。まちの人材を育てていきました。

人づくりがまちづくりにつながる。

米百俵の精神のもとつくられた国漢学校の跡地に、今年の夏、若者や企業など幅広い人々が集まって長岡の未来をつくっていく場、「米百俵プレイス ミライエ長岡」が誕生します。

今回は、ミライエ長岡で、まちの人たちをつないで産学連携をサポートしていく、地域おこし協力隊を募集します。



東京から上越新幹線に乗車。新幹線が走るほど、車窓から見える山々の雪の面積が広くなる。

およそ一時間半で、長岡駅に到着。雪が積もっていないことに安心しつつ、東京とは違う寒さに、ついポケットに手を突っ込んでしまう。

大通りの商店街を眺めながら5分ほど進み、到着したのが「ながおか市民センター」。その地下1階にある、NaDeC BASE(ナデックベース)。

「ナデックベースは、コワーキングスペースやイベントスペース、ものづくり工房の機能を備えた施設です」

そう教えてくれたのは、長岡市役所商工部産業イノベーション課の角屋(すみや)さん。

フロアを見渡すと、机でパソコン作業をしている人や半個室の部屋でミーティング中の人がいて、奥には3Dプリンターや工具などが置かれた工房がある。

「長岡は工業製品をつくる工場が多いのですが、加えて、長岡工業高等専門学校、長岡技術科学大学、長岡造形大学といったものづくりを学べる学校や、長岡大学と長岡崇徳大学などさまざまな教育機関が集まっているのも特徴なんです」

「高い技術を持った企業が多いのですが、もともと部品の製造を手掛けている企業が多くて、最終製品を目にする機会が少ない。また、企業の高い技術がまちの人にあまり知られていないので、長岡で学んだ学生が卒業と同時にまちを出てしまうことが長年の大きな課題で」

長岡で学び、働く若者を増やしたい。

そんな想いから、長岡市と5つの教育機関、長岡商工会議所が協力し、人材育成と産業振興、地域の人の交流や協働を促すプロジェクトが2017年に始まった。

翌年、産学官が連携してイノベーションを起こす実験の拠点としてオープンしたのが、ナデックベース。

ナデックベースを起点に、地域の現状や持っている資源から新しい産業の可能性を探り、産業振興につながる新事業立ち上げのサポートや、コミュニティの形成を担っていくのがナデックベースのコーディネーターの役割。

たとえば、と教えてくれたのは、コーディネーターが地元の漁師さんに課題をヒアリングしたことから始まった未利用魚の活用プロジェクト。

水揚げしても規格外で売ることができず、捨てられてしまう魚の存在を知り、なにか活用できないかと考えたのがきっかけだった。

「まずは未利用魚を知ってもらおうと、コーディネーターが長岡高専の学生に話を持ち掛けました。すると、高専の留学生が、エソなどの未利用魚と調味料をセットにして、母国の料理レシピと合わせて販売することを提案してくれて」

その企画は、地方創生のアイディアコンテストで表彰を受けたそう。昨年からは、市内の飲食店や加工業者と連携したプロジェクトも立ち上げた。

使われることのないさまざまな種類の魚を数日間煮詰めた出汁を使った「炊き込みご飯の素」や、イクラを抜いたあと捨てられることが多い「ブナ鮭」を餡にした「蒸しまんじゅう」など、どれも地域の人から好評だったという。

「また長岡市は、国内トップクラスの米の産地でもあります。米菓などの食品製造業や発酵・醸造業に加えて、仏壇やアパレルなどのものづくりも盛んなので、イノベーションの可能性はまだまだありますね」

「未来をつくるのは若者のエネルギーだと思っています。ナデックベースを起点に、若い方の自由な発想と企業の持つ専門性・技術でコラボレーションを生み出せるよう、市も全力で取り組みたいと考えています」

実験期間として設けられた5年を終えたナデックベースは、今年7月、「米百俵プレイス ミライエ長岡」に移転する。

ナデックベースのほかに、ブックディレクターと市民で考えた新しい図書館や、子ども向けの学びなど、さまざまな機能を持つ施設になる予定。

「コロナ禍の影響もあって厳しい時期もありましたが、ナデックベースの利用者もやっと増えてきていて。産学連携はまだまだこれからというところですが、協力隊のみなさんと一緒に、まちの魅力を形にしていくチームをつくっていきたいですね」

国漢学校は、武士や商人など身分に関係なく通えた学校。ミライエも多様な人が集まってイノベーションが起こる場所にしていきたい、と角屋さんは話す。



続いて話を聞いたのは、ナデックベースのコーディネーターを務める上田さん。

ナデックベースの運営管理や、学生を中心としたコミュニティづくりを担っている。

前職は地元新潟で施工管理の仕事をしていた。あるとき、学生時代の恩師から紹介されたのがナデックベースのコーディネーターだった。

「学生のときからナデックベースはあったらしいんですが、なにも知らなくて。一体なにをする場所なんだろう、という感じでした」

人と関わることが好きだったこともあって、コーディネーターに興味が湧いた上田さん。前職を退職して、2021年から着任することになった。

「まずは学生も気兼ねなく訪れて、自分もなにかチャレンジができるかもしれない場所だと感じてもらうことが大切だと思って」

訪れた人が安心できるよう、受付をわかりやすい位置に変えたり、照明を暖色にして温かな雰囲気を演出したり。

施設内の工夫と並行して取り組んだのは、インスタグラムでの情報発信。

施設の使い方やナデックベースで開催されたイベントレポートなど、開館日は毎日投稿するように。

すると、インスタグラムのフォロワーは着任当初の4倍以上に増加。その甲斐あって、学生や民間企業の利用者も増えてきている。

そして上田さんがかかわる学生コミュニティでは、これまでにさまざまなイベントを実施してきた。

「雑談から企画が生まれることが多いですね。たとえば、何気ない会話から生まれた企画とかだと、より熱意も入りやすいのかなと思って」

たとえば、と教えてくれたのが、日本酒女子プロジェクト。

あるとき、学生の一人から「なにかイベントをやりたい」と声をかけられた上田さん。

話していくうちに、「新潟出身でない自分からすると、長岡には久保田など美味しい日本酒があるのに、若い人はその良さに気づいていないんじゃないか」と、感じていることがわかった。

「それなら、日本酒好きを増やすイベントをやろう! ということになって。ちょうど長岡にはHAKKO tripという発酵をテーマにしたイベントがあるので、企画書をその子と一緒に練りながら、参加を申し込みました」

酒造会社と協力してオリジナルカクテルをつくり、イベントで提供。

加えて、屋台の内装デザインや販売担当などをインスタグラムで募集し、市内から集まった学生7名のマネジメントも上田さんがおこなった。

学生たちのがんばりもあって、イベントは大成功。

その後、長岡の酒蔵をもっと詳しく知りたいと日本酒バーでバイトを始めた学生がいたり、「あの酒蔵のお酒、買ってみました」と報告に来る学生がいたり。

活動は着実にまちの人たちへ良い影響を与えている。

「コーディネーターの仕事を通して、個人のニーズからイベントをつくったり、学生を集めたりすることが、得意なんだって気づきました。最近は学生を集めるための効果的な手法について、いろんな人から相談されることも増えてきて。それは自信になっていますね」

上田さんは、3年間の協力隊の任期を終えたあとにやりたいことが見えてきたという。

「パブリックスペースがあるゲストハウスをつくって、訪れたお客さんと話しながら『長岡に来たならこの人に会うと楽しいよ』とか『ここの朝食がおいしいよ』とか。まち全体を巻き込みながら、長岡の魅力を感じられる場所をつくりたいんです」

長岡の魅力ってどんなところですか?

「…いっぱいあるなぁ(笑)。まちの人が親切なところとご飯がおいしいところ。あと、少し車を走らせれば海も山もあって、リフレッシュしやすいところですね」

「移住って不安なことも多いかもしれませんが、長岡の人にいろいろ会ってみたかったら、私の車でどこでも連れていきますよ」

新しく入る人も、上田さんと一緒にまちのことを知っていけたら、長岡のいろんな魅力に気づけると思う。



「長岡は住み心地いいですよ。雪は大変ですけど、趣のあるカフェや観光スポットも多くて、楽しく過ごせると思います」

そう話すのは、昨年着任したコーディネーターの辻さん。3日後から産休に入られるとのことで、新しく入る人は育休が明けたら一緒に働くことになる。

ここで、ものづくり工房を案内してもらうことに。初めて見るレーザーカッターと3Dプリンターは、思っていたよりも大きい。

これまで、レーザーカッターを使ったランタンづくりや、小学生を対象にした、ロボコンを目指す学生とのロボット操縦体験など、さまざまなワークショップを開催し、まちの人がものづくりに触れる機会をつくってきた。

ほかにも、「汽創域(きそういき)」というイベントも辻さんのアイデアからはじまったもの。ものづくりを専門にしている人が自作したものを紹介し合い、交流するという内容だ。

「パソコンのキーボードの押し具合をカスタマイズするために、わざわざキャップを自作していた方がいたのが印象的でした。インスタグラムでイベントレポートを投稿したら、次の回に千葉から来てくださった方もいて」

「ものづくりに対するマニアックな心を受け入れあえる。そんな心理的安全性が高い場になっているのかなと思います」

辻さんは、ゆくゆくはものづくりの施設が、図書館のように市民の人に開かれた場所になってほしいと願っている。

「ミライエは工房も大きくなって、さらに新しいレーザー加工機も入る予定です。もっと多くの人が交わって、長岡のものづくりが広がっていくのが楽しみですね」



まちの人々、そして長岡の産業と自分の興味がどうつながっていくのか。可能性はまだまだたくさんあるように感じます。

長岡の人たちと一緒に、人と人のつながりが生むイノベーションから、まちの未来をつくっていく仕事です。

気になった人は、ぜひ一度長岡を訪れてみてください。

(2023/2/13 取材 小河彩菜)

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