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仕事で出会う人たちが、自分のことを名前で呼んでくれるとき。
「会社の人」からひとりの人間になったように感じられて、うれしい。
そんな関係になると、「あなたにお願いしたいんだ」と、直接仕事の相談をもらえることもある。そんな一言も、また頑張ろうと思えるエネルギーになっていく。
そんな仕事をしていきたいと思う人に、知ってほしい会社があります。
株式会社てらすは、兵庫県宝塚市にある建設会社。公共施設やマンションなどの新築設計工事から個人宅のリフォームまで、建物に関わるあらゆる相談に応えてきました。
どんな小さなことでも相談しやすいようにと、中学生の職業体験を積極的に受け入れたり、木工の体験教室を企画したり、地域に開かれた会社づくりを進めています。
今回は、施工管理と設計職を募集します。建築に興味がある人であれば、どちらも経験は問いません。
建築をキーワードに、いろんなことに挑戦していける環境だと思います。
てらすの事務所の最寄り駅は、神戸駅から電車で45分ほどの中山寺。駅の近くには住宅街が広がっていて、山や川、田んぼも近くにあり、穏やかな雰囲気。
バスに乗ること10分。
最寄りの停留所から歩くこと数分、てらすの事務所が見えてくる。
中に入り、2階のオフィスへ上がろうとすると、「遠かったやろ?わざわざありがとう!」と大きな声が。
声の主は代表の寺本さん。誰よりも明るく、最初からあだ名で呼んでくれるほど陽気な方だ。
導かれるままに社長室へ。
1964年に創業し、建設業を営んできたてらす。寺本さんは7年前に3代目社長として、経営のバトンを受け継いだ。
「建築業界には、リフォームよりも大きい建物をつくるほうがいいって考え方があって。動くお金が大きいからね。でもそれはこちらの都合であって、お客さんにはなんの関係もない。金額の大小じゃなく、お客さんの要望をきちんと聞いて、解決方法を提案できる会社でありたいと思ったんです」
イメージは、三河屋のサブちゃん。
目の前のお客さんの悩みごとに応えて信頼関係を築いていけば、常連さんもついてくる。
一昨年の4月には設計部門も立ち上げ、建築のことであればなんでも相談に乗れる体制をつくりあげた。
「でも、地域密着ってすごくむずかしくて。僕らみたいに小さな企業って、地域の会社って言うわりには、『てらすの○○さん』って名前と顔が知られてる社員って少ない。それじゃ地域密着って言えんなって」
そこで始めたのが、会社として地域に飛び出す活動。たとえば地域にひらいた木工教室「もっこう部」の開催やマルシェへの参加、中学校の職業体験の受け入れなど。
「名前を覚えてもらえれば、なにか建物に関する困りごとが生まれたときにもきっと声をかけてもらえる。10年とか20年とか、めっちゃ時間はかかるけどね。先代や昔からいる社員とは激しいバトルもあったけど、ここは譲れないって強く進めてきて」
地域の人からは、「この前の◯◯さんのワークショップ、子どもが喜んでくれてたよ」など、社員を名前で呼んでもらえることが増えてきたのだとか。
「そんな感想をいっぱいもらってるんよ。お客さんの役に立って、地域に貢献していけば、自分の居場所もできる。そうすれば、人生輝かしいものになると思うんですよね」
「うちは建設会社やけど、気持ちはまちづくりの会社。建物をつくるのにも、関わる人たちの関係性やその人たちの想いを知らなあかんと思う。だから、建築だけじゃなく、仕事を通じて地域に貢献したいっていう人にも来てほしいね」
今回募集するのは、施工管理と設計。地域活動への参加などには横断的に関わるものの、まずは本業にしっかり取り組むことから始めていく。
日々どんなふうに働いているのだろう。
施工管理の仕事について教えてくれたのは、入社3年目の泉崎さん。
施工管理の仕事に就いたのは、工業高校時代にある先生から聞いた言葉がきっかけだった。
「その先生は監督業のことを『現場で働く人たちの命を守る仕事』って、表現していて」
命を守る仕事。
「進行管理もするけれど、危険なところには危険ですよって表示をしたり、不要なものは置かないようにしたり。たしかに、ちょっとした工夫を重ねて、働く人たちが災害に遭わないようにするための仕事なんですよね」
「その言葉を聞いたときに自分のなかで何かが動いた気がして。縁があって、てらすを紹介してもらって、この仕事に就きました」
主に、公共施設などの大型案件を担当している泉崎さん。工期は年単位になることも多いなかで、ほとんど毎日現場に足を運んでいるのだとか。
「図面そのままで工事が完了する、ってことはほとんどないですね。とくに僕は新築より改修を担当することが多いので、現地で見てみないとわからないことが多い。図面では壁の下地に鉄って書かれてるけれど、実際は木でつくられてるとか、天井の高さが違うとか」
図面と現場のズレはなるべく早めにキャッチして、きちんと納まるように職人さんと連携していく。ときに、みずから手を動かすこともあるそう。
一方で、個人向け案件の担当者の場合、なるべく早めに解決できるようにと、簡単な改修はその場で社員が担当することもある。
そのうち、お客さんから名前を覚えてもらって、「今度はここ、お願い!」と電話で直接依頼が舞い込むことも多い。
「その点、公共施設の担当は、その工事一回だけの関係になることがほとんど。それがこの夏、担当した施設の方からお電話をいただいて。『泉崎さん、不具合が出てるんですけど』って、初めて名前を呼んでいただいたんです」
「うれしかったですね。電話をいただいてその場でパッと動けたのも良かったかもしれない。そのあとも何度か連絡いただいているので。会社の良さでもあると思うんですけど、フットワークの軽さは信頼につながっていくのかなと思います」
次に話を聞いたのは、入社2年目で設計の玉井さん。設計部の立ち上げから間もない時期に加わった。
「生まれも育ちも宝塚なので、自分が育ったまちで働いてみるのもいいなと思って。それと、いつか建築士の資格を取るときに、リフォームも新築もやっていて、設計から施工まで一手に引き受けているてらすの幅広さが強みになると思ったんです」
入社してからの印象を聞くと、「めっちゃ昔ながらの会社やなと思いました」と、玉井さん。
「見た目はおしゃれな感じじゃないですけど、みなさんすごく明るいし、なんていうか人があったかいんですよね。今はお休み中ですけど社員旅行もあるし、会社が家族っていう、昔ながらのいい雰囲気もあって。…まぁ、社長はすごく癖のある人だとは思いました(笑)」
「っていうのも、たしか面接を受けた日の前日が私の誕生日やったんですね。履歴書を見て『昨日誕生日?!おめでとう!』と言われて」
ちょっと待ってて!の一言とともに、戻ってきた寺本さんの手にはくす玉が。
「紐引いてくれ!って言われて、引くんですけど、割れたら『おめでとう』って出てきました(笑)。たまたま近い日に誕生日の社員さんがいたみたいで、それを再利用して祝ってくれたんですね」
「社長の圧、すごいなって感じるときはあるけれど、人間としてあたたかい人だなって。ふだんもそうですけど、高圧的って感じじゃなくて、先輩みたいな雰囲気なんですよね。だからいやな感じとかはなかったです」
設計部は、玉井さんを含め若手が2人、ベテランが2人という構成。
「ベテランお二人も、自分にわかることはなんでも教えてあげようっていうスタンスで、どんどん任せてもらっています。店舗のレイアウト考えてみる?とか、家具の設計してみて、とか」
印象に残っている仕事を聞くと、社内コンペで勝ち取った自社物件のアパートのリノベーションについて教えてくれた。
テーマは、北欧。ヌックという、収納棚を利用した、狭いながらもくつろぐことのできるスペースをメインに、部屋全体をデザインした。
「ただ、予算度外視でデザインしたので。賃貸物件ということもあって、施工管理の担当から、『かわいそうやけど、ザクザク切るね』って、あちこち変更だらけになりました(笑)」
「賃貸ってなるべくお金をかけたくないって方も多いので。設計をしていると、どうしてもこだわりが強くなってしまうけれど、お客さまのためにつくるのであれば、予算内で納めるために歩み寄ることも大切、と勉強になりました」
本業に加え、地域住民向けの木工教室「もっこう部」も担当している玉井さん。そちらの活動については、いかがですか?
「子どもが好きだから楽しいし、地域貢献は必要なことだと思っています。ただ、これが将来的に会社のためにどうつながっていくのか、疑問に思うときもあります」
正直な気持ちを話してくれた玉井さん。
それを受けて、地域活動の現状について教えてくれたのは入社7年目の朝日さん。施工管理と人事を兼任している。
社長と社員のつなぎ役でもあり、頼れるお兄さんという感じ。
「社長の想いはすごくわかるんですよ。ただ、少し突っ走るところがあるというか、社員との間には温度差があるような気がして。その差をできる限り近づけていきたいなと思っていますね」
たとえば、現場のスケジュールがあまり考慮されないまま職業体験を受け入れてしまうこともあり、いそがしさが先行して、社員の気持ちがついていかないこともあるという。
「僕は人事やから、長いこと社長の想いも聞いていて、目的も腑に落ちているけれど、よくわからないまま任せられている社員もいると思うんですよね」
そんな現状を変えようと、ここ数ヶ月で、あらためて寺本さんに地域活動の目的を言葉にしてもらったり、現場の業務量とのバランスをとるよう進言したり。朝日さんたち中堅社員が架け橋となって、全員が気持ちよく同じ方向を向けるような体制を整え始めたところ。
これまでの話を聞いていると、「名前を覚えてもらうのがうれしいんです」というところが、社員のみなさんにも通じているように思う。だからこそ、声がかかればフットワーク軽く動くし、仕事を引き受けていく。
「いそがしい」というのも、その姿勢があるからこそなのかもしれない。
地域活動という、会社の未来に向かって始めた取り組み。朝日さんのように、不安もちゃんと掬い上げて一緒に走ってくれる人がいれば、きっといい方向に向かっていけると思う。
朝日さんはどんな人と一緒に働きたいですか?
「建築が好きで、素直な気持ちと熱意があれば、経験の有無は関係ないと思います。業界が初めての人も、わからないことだらけだと思うんですけど、わからないなりに自分で調べたり、人に尋ねてみたり、みずから動く人だとぐんぐん伸びていけると思います」
「教えてくれる人はたくさんいるので。安心して飛び込んできてほしいです」
ここで一緒に走ってみたい。そう感じたら、ぜひ一度、話をしてみてください。
(2022/12/15 取材 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。