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住む人、はたらく人の
ホームになるキッチン

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

プレートの真ん中には豚キムチ、副菜に里芋とオクラ。ふりかけ付きの雑穀米に、豚汁。

冷凍食品や化学調味料を一切使わずに、プロの手によってつくられるこのメニュー。実は、500円で食べることができます。

提供しているのは、「トーコーキッチン」。

不動産管理業を営む東郊住宅社が運営をしています。

食堂は神奈川・淵野辺にあって、管理物件の入居者とその同行者が利用できます。

朝食は、卵料理と副菜2つにご飯と豚汁のセットでたったの100円。昼夜のメニューも、本格的な料理を500円から食べることができます。

和食はもちろん、イタリアンやフレンチ、中華やアジア料理など。楽しんで食べてもらえるように、日替わりメニューは毎日違う料理を提供していて、年末年始の4日間以外は年中無休。

そんな至れり尽くせりのトーコーキッチンで働くキッチンスタッフを募集します。

仕込みや調理などのキッチン業務に、利用者とのコミュニケーション、SNSでの発信など、店舗運営にまつわるすべての仕事に携わります。

料理のレシピはすでにあるので未経験からはじめることもできますが、本格的な料理を提供しているので、技術を習得する意欲が大切です。また、平日は150名ほどの料理をつくるので、体力も求められます。

目の前の人に喜んでもらうのが好きな人や、将来自分でお店を持つために経験を積みたい人にとっては、充実した日々になると思います。

 

向かったのは、神奈川県相模原市にある淵野辺。

都内への通勤者が多く住むベッドタウンで、新宿や横浜からは電車で1時間ほど。

少し足を伸ばせば川や湖に触れることができるし、公園やスーパー、ファミレスもあって、子育てしやすい環境が整っている。

淵野辺駅に着いたのは、正午のちょっと前。北口を抜けて2分ほど歩くと、青いタイルが特徴的な建物が見えてきた。

ここがトーコーキッチンか。

入り口に近づくと、ここを運営している東郊住宅社代表の池田さんが気づいて扉を開けてくれた。

食堂の中は、学生がひとりで黙々とご飯を食べていたり、友だち同士で食べていたり。職場の同僚と思われる人たちも楽しそうにランチをとっている。

あの人たちも入居者なのかな。

「あちらは入居者さんではなく、大学の購買部で働かれている人たちです。学生さんが不動産の相談をしにいったときに、うちをご紹介してくれることもあって」

「基本は入居者さんだけにカードキーをお渡ししているんですけど、うちの入居者さんが安心・安全な生活を続けるために協力してくれている人たちにも、鍵をお渡ししているんです」

ほかにも銀行や、管理物件の電気・ガスを担当している会社、テナントで入っている企業の方も利用できるようにしているという。

ひと通り案内してもらったところで、空いている席に座り、あらためて話を聞く。

「淵野辺のまわりって大学が3つもあって、うちで管理している物件の入居者さんも学生さんが多いんです。地方から出てこられたりすると、親御さんってやっぱり食事の心配をされているなと感じて」

不動産屋として何かできることはないかと考えたとき、入居者サービスの一環として、安くておいしく、栄養価のある料理を食べられる食堂をつくることに。

今回訪れてみて印象的だったのが、「おいしかった?」と話しかける池田さんの姿。

オープンして8年目になるけれど、いまでも毎日2〜3回ほど足を運び、利用者さんとの交流を大切にしているそう。

この場所にいる池田さんは、不動産業の社長というよりも、親戚のおじさんのような。適度な距離感で見守る温かさを感じる。

入居者だけが利用できる場所と聞いていたので、はじめはクローズドな空間なのかなと思っていたけれど、もっと広がりがありそう。

池田さんの過去へも遡って、もう少し詳しく聞いてみる。

「学生時代はバックパッカーで海外をひとり旅することも多くて。行く先々で、必ず行きつけの店をつくっていたんですね」

教えてくれたのは、大学2年生のときに訪れた南仏での体験。

フランス語が喋れなかった池田さんは、毎日同じパン屋で同じパンを頼んでいた。

はじめは買って終わりの関係だったものの、通ううちに「ジャムパンもあるよ」「これもおいしいよ」など、お店の人がいろいろと教えてくれるようになったという。

「コミュニケーションを深めることで、縁もゆかりもなかったところに自分の居場所ができていく。その体験、感覚が、僕にとってはかけがえのないものになっていて」

ベトナム北部を旅していたときには、通っていたお店のお母さんに気に入られ、「うちの娘をお嫁にどうか?」と言われたこともあった。

「もう一度行きたい場所って、おいしいものがあったか、人との思い出があるところ。トーコーキッチンもそんな場所にしたいと思って、日々運営しているんです」

トーコーキッチンを運営する東郊住宅社は、池田さんのお父さんが創業した会社。

「貸す人と借りる人は、平等で公平で透明な契約を結ぶべき」という考えのもと、礼金0・敷金0・退室時の修繕義務なしの契約をすすめたり、入居者のよりよい生活を考えて24時間緊急対応サービスを続けてきたり。

その意志を引き継ぎつつ、池田さんがつくりあげたのがこのトーコーキッチンだった。

「不動産屋って、入居者の生活をより楽しくする機会を持ってる稀有な仕事だと思うんです。だからそれを存分に活かしていきたい。不動産業ってエンタメ業だと思うから」

不動産業は、エンターテインメント。

「まずはお客さまに楽しんでもらう、喜んでもらう。うちで言うと入居者さんですよね。その人たちにこのまちでの生活を楽しんでもらうことで、東郊住宅の管理物件に入りたいと思う人が増える」

「そうなると入居率があがって、大家さんの収益も最も高い状態を維持できる。僕たち管理会社は、大家さんの家賃収入の一部を報酬としていただいているので、最終的に自分たちの収益もあがるんです」

 

トーコーキッチンを目当てに物件を契約する人も多く、管理物件の入居率は、なんと99%。部屋が足りないのが悩みになるぐらい、多くの人に求められている。

利用する側としてはこのうえない場所だと思うけれど、働く人の視点ではどうだろう。

キッチンスタッフの松本さんにも話を聞いた。

もともと建築設計事務所で働いていた松本さん。お父さんの介護のために職を変えるとき、たまたま見つけたのがトーコーキッチンの立ち上げスタッフの仕事だった。

当時は先輩の料理人もいたため、一から修行して技術を磨いてきた。

「思っていた以上に大変だったっていうのが感想で」

たとえばどんなところでしょう。

「このお店って準備中の時間帯がないんですね。いつでもご飯が食べれることが魅力の一つなので。そうなると、お客さんと対話しながら仕込みや調理をしていくので、常に臨機応変な対応が求められるんです」

「厨房も限られたスペースですし、暇だからって明日明後日のものまで用意しておくと劣化してしまう。気をつけるポイントがいろいろとあります」

年々利用者さんは増えていて、一日150人ほどが利用するトーコーキッチン。

営業時間は8時から20時まで。最大で20名座れる店内は、朝8時台と10時〜11時がピークの時間帯で、100人もの人が利用する。

つくる量も多いし、オペレーションを回すためにテキパキ動かなければならない。力仕事もあるので体力も必要だし、料理の種類もかなり多いので、吸収し続ける姿勢も求められる。

「大変なことは多いんですけど、帰省から戻ってきた学生さんがお土産を持ってきてくれたり、退去する日に『4年間お世話になりました』ってわざわざ言いにきてくれたり」

「仕事していてこれだけ感謝されることもないと思うので、それはうれしいですね」

話していると、いろんなエピソードを思い出して教えてくれる松本さん。続けてこんな話もしてくれた。

「毎日来て、ご飯とケーキを食べていく学生さんがいるんですけど、一言も交わしたことがないんです。でも、もぐもぐ楽しそうに食べてて、綺麗に食べて帰るんですよ」

「それだけですごく幸せを感じますよ。このお店を自分の居場所としてつかってくれてるんだなって。そういう人たちはほかにもたくさんいて、それはもう一番のやりがいですよね」

つくった料理をおいしそうに食べている姿が見れるだけで、また頑張れる。

そんなふうに適度な距離感で見守りつつ、日々どうしたら喜んでもらえるか、楽しんでもらえるか、考えて動ける人だといいんだろうな。

食堂内には、利用者さんに楽しんでもらうための工夫がいくつもあって、たとえば食券の代わりに動物の人形を選んでもらったり、代表の池田さんが奥さまにつくっているハヤシライスをメニューに入れていたり。

まだまだ工夫や挑戦できることもあるので、新しく入る人もやってみたいことがあったら積極的に手をあげてほしいとのこと。

 

自分の得意を活かして働いているのが、キッチンスタッフの木山さん。

調理と製菓の専門学校を卒業した後、お菓子屋さんや飲食店で勤務。勤め先の閉店をきっかけに新しく仕事を探していたとき、トーコーキッチンの求人を見つけた。

「わたしはパティシエを目指しているんですけど、調理もまだ続けていたかったのと、将来自分のお店を持つうえでホールとかレジとか、お店の運営に関わることを経験したいなと思っていたので、応募したんです」

働いてみてどうですか?

「はじめは、コンセプトの説明とかお客さんに話しかけることがむずかしいと感じることもありました」

「それでも、先輩たちの真似をして常連さんに『今日の服装はいいですね』とか、『ちょっと天気が崩れそうですけど、傘持ってますか?』とか。だんだん上手く伝えられるようになってきてるかなって思います」

皿洗いや掃除からはじめ、仕込みなどの仕事を覚えていった木山さん。製菓づくりの経験を活かして、紅茶のシフォンケーキなどのデザートづくりにも入社当初から挑戦してきた。

「体力的には慣れればなんとかなるので、人と関わるのが楽しいと思える人が向いてるんじゃないかな」

入居者サービスとして運営されている食堂なので、トーコーキッチンで働く人はお店の数字にとらわれることなく、自分の役割に専念して取り組むことができます。

力強くまっすぐ進んでいきたい。そんな想いで臨むことができるなら、この場所は応えてくれると思いました。

(2023/02/17 取材 杉本丞)

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