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目に見えないものを売る
まずやってみて
感じられる価値

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「好きな素材、好きな形で、好きな言葉を彫る。お墓って、自分自身の表明なんですよね。形はあるけれど、我々が売っているのは、そこに宿る目に見えないもの。ご自身の想いや価値観を形にするお手伝いをしているだけなんです」

そう話すのは、山崎石材店代表の山崎さん。山崎石材店は、江戸時代から270年以上続く、石材の老舗企業です。

茨城県を拠点に、お墓を提案するコーディネーターを募集します。

ニッチな業界なので、興味を持ったことのある人は多くないかもしれません。

わたし自身も、あまり馴染みのなかった世界。でも山崎さんと話すうちに、簡単には掴みきれないその在りように惹きつけられました。

目に見えないものを売るってどういうことだろう。

読み進めるうちに、きっと感じ取れるものがあると思います。

 

秋葉原からつくばエクスプレスの快速に乗り、約30分の守谷駅。

車移動がメインのベッドタウンとあって、広い道路の周囲には、一軒家を中心とした住宅街が広がっている。

公園やスーパーマーケットの横を通り抜け、15分ほど歩いたところで、1200年続く永泉寺の長い参道が見えてきた。

この敷地の一角にあるのが、今回の目的地「守谷さくら廟」。永泉寺が所有し、山崎石材店が運営している霊園だ。

事務所におじゃますると、スタッフのみなさんが出迎えてくれた。まずお話を聞いたのは、13代目代表の山崎さん。

ホームページによると、なんと創業270年以上。どんなかたちではじまった会社なんですか?

「それが、わからないんですよ。記録に残っている初代の命日が1747年で、そこから数えて今年で275年って計算なので、実際の歴史はもっと長いでしょうね」

「石の仕事はすべての代でやっていて、そのほかに旅館業を営んでいた時代もあるみたいです。私のひいおじいちゃんは東京に出て商売をしていたんですけど、縁あってこっちに帰ってきて、今の本店がある常総市に根づきました」

山崎さん自身は、都内にあるNPO法人での勤務を経て入社。石材職人として10年ほど働き、2011年に跡を継いだ。

常総市にある本店に加え、つくばみらい市の工場兼墓石展示場、県内に4ヶ所ある霊園の、計6ヶ所の拠点を持っている。

工場には石材加工の機械が揃っているものの、加工や墓石の組み建ては社外の職人さんに委託。営業的な役割を、山崎さん含む社員3人で担っている。

墓石の素材やデザインを一から決めて希望の土地に建てるオーダーメイドと、山崎石材店が運営する霊園内のプランから選ぶセミーオーダー。

お客さんのニーズにあわせた提案ができるのが特徴だという。

「私はお墓って、自分自身だと思っているんです」

自分自身。

「ご先祖さんって、30代遡ると全部で10億人にもなるそうで、一人でも欠けていたら今の自分はいない。自分のもととなる人たちが入っているんだから、自分自身とも言えると思いません? まあ、そう聞いてピンとくる人は少ないと思いますけど」

「そのつながりって目に見えなくて当然じゃないですか。一般の我々には、命のつながりの素晴らしさは想像の域を超えている。だからお墓っていう形あるものをつくって、そういうものと通じるんですよ」

お墓は目に見えるものの、そこに込められた目に見えない意味合いは、はかり知れない。

山崎石材店のお客さんの約7割は、生前にお墓を購入する人たちだという。

「還る場所がわかっていると安心すると思います。でも、お墓を買った経験のある人ってほぼいなくて、誰かの意見を参考にすることができない。だからうちでは、これまで購入したお客さまのデータをすごく大事にしていて」

過去の事例はすべてデータベース化しているので、いつでも検索し、お客さんと共有することができる。

「こんな背景の方がいましたよ、材料は赤石でしたよ、ワンちゃんの足跡を掘ることもできますよって。過去のお客さまが何で悩んで、最終的にどんなものを選んだかを参考に、あなたの場合はどうですか?って考えてもらう。そのための材料を提供していきます」

「何より大切なのは、納得感。何億円のお墓でも、セミオーダーの霊園でも、海洋散骨でも、その人が納得していればいい。そのためにいろいろ検討したり、デザインを考えたり、細かな意思決定のプロセスを積み重ねていきます。答えはすべてお客さま自身のなかにあるから、こっちが積極的に提案したものでは意味がないんです」

200種類近い石材やデザインの幅広さなど、オーダーメイドの墓石にはかなり多くの選択肢があり、提案の難易度が高い。そのため、現在は山崎さんが主に担当している。

一方、ここ数年力を入れている霊園では、石材を21種類、お墓の種類を4パターンに絞っているため、案内がしやすい。入社1ヶ月ほどで活躍できると思う、と山崎さんは言う。

守谷さくら廟は、永代供養の樹木葬。シンボルとなる桜の木のまわりに眠るかたちで、宗教宗旨宗派問わず、どのような信仰の人でも入ることができる。

13回忌後には永泉寺境内の永代供養墓に移り、その後はお寺が未来永劫供養していく。後の世代の負担を気にする必要のない永代供養つきのお墓のニーズは、近年高まっているそう。

「一つひとつの仕事の意味を最初から理解したいって思う人は、あまり合わないと思っていて。社長だって、自分たちの仕事に一体どんな価値があるのか、はっきりわかっていないんですよ。でも、それを感じられるようなストーリーっていうのはいくつかあって」

たとえば、ご主人を病気で亡くしてお墓をつくりにきた女性。急な容体の悪化だったため、お葬式やお墓のことはまったく考えていなかったけれど、チラシを見て問い合わせてくれた。

ご夫婦ふたりとも地元出身ではなかったので、付き合いのあるお寺はなく、火葬をしただけで、お葬式も執り行っていなかった。

山崎さんの発案で、お墓が完成したタイミングで、お葬式をすることに。お骨を本堂にあげて、お経を読んでいたとき、亡くなって半年で初めて涙が出たと、後々教えてくれたという。

「お墓をつくったことでお寺さんとの縁が結ばれた。奥さんにとっては悲しいことだったけれど、やっとお別れができて、ご主人がいない世界とつながれたのがお葬式のタイミングだったらしくて」

「それを聞いたときに、この霊園をつくってよかったな、価値があったなと思いました。考えて思った通りになることもあれば、そうじゃないこともあるので、目の前にある仕事を積み重ねていけることが大事だと思います」

きっと、日々積み重ねていった先に、少しずつ見えてくるものがあるんだと思う。シンプルに興味があるからという理由で、先入観なく入れる人のほうが合っているのかもしれない。

新しく入る人は、まず霊園でのコーディネーターとしての仕事から。将来的に、オーダーメイドのお墓の提案や新規事業開発へとステップアップしていくイメージだそう。

 

一緒に働くスタッフのおふたりにも話を聞く。まずは、入社して1年半の岡さん。今は、朝のミーティングで決まったDMの発送に、早速取り組んでいるところだそう。

前職はサービス業。コロナ禍をきっかけにお店が閉まるなど制限が増え、転職を考えていたときに山崎石材店の求人を見つけた。

「経験が活かせそうな営業の仕事を探していて。お墓にもそんなに抵抗感はなく、仕事内容を見て自然とやってみたいなと思いました」

毎日、まずはここから車で15分ほどの工場に出社。届いた荷物の整理や、職人さんとの打ち合わせなどを経て、それぞれがその日の仕事場へ向かう。

何もなければ、営業拠点のような位置付けの守谷さくら廟へ。ほかの霊園で見学や打ち合わせ予約があれば、そちらへ足を運ぶ。

「お墓の販売は、まず1時間程度のヒアリングからはじまります。なぜお墓が必要なのか、関わりのある寺院はあるか、何を信仰しているか…。カウンセリングシートを使いながら話を聞いていきます」

最初から明確に希望のあるお客さんよりも、漠然とお墓が必要になったから来たという方のほうが多い。背景をじっくり聞いた上で、どのプランが合いそうか、一緒に考えていく。

話を聞くうちに、ほかのところのお墓がいいのでは、という結論に至ることもあるという。

「初対面だと話しづらいこともあると思うので、こちらから質問をしてなるべく早く打ち解けられるよう心がけていて。表面上のお話ではなくて、お客さまが言葉の奥に考えていることを話してくれるように意識しています」

 

もう一人のスタッフである小林さんは、働いてもうすぐ2年になる。

以前は保護猫のシェルターやアニマルカフェなど、動物に関わる仕事をしていた。茨城県に引っ越すことになり、転職活動中にここを見つけたそう。

「実家がよくお墓参りに行く家だったので馴染みがあって、興味を持ったのがきっかけです。自分が入社したときは、社長と社長の奥さんのふたりだけで、半年くらい後に岡さんが入ってきました」

先輩社員がいなかったこと、不安に感じませんでしたか?

「あまり心配はなかったですね。社長が先輩みたいな感じで直接教われるし、別の場所で働いていても、チャットで質問するとすぐに返ってくるので、孤独感はありませんでした」

「それに、仕事はいろんなパートナーの方と一緒にやっていきます。工場には職人さんが出入りしているし、週に一度は石の仕入れ会社さんがここに来て、お客さまの専門的な質問に答えてくれる。墓石のデザイナーさんとも頻繁にやりとりしています」

成約後、まず取り掛かるのがデザインの打ち合わせ。

飼っていたペットのイラストや将棋の駒、故人が好きだったお酒。自らデザインする人や、7、8回とデザインの修正を重ねる人もいるという。

「実際に彫刻すると線の太さが変わったりするので、お客さんのイメージと大きなずれが生まれないように、丁寧にコミュニケーションしています。建てた後にアンケートをお願いするんですけど、『接客がよかった』『信頼できた』っていう声があると、やっぱりうれしいですね」

「人生でひとつだけの買いものなので、気に入ったものを建てていただくために、お客さまの気持ちに寄り添いたいと思っています」

石材店ならではの仕事が、月に数回の納骨への立ち合い。

過去に建てたお墓で納骨が必要になった際、現場に出向いて、納骨室の蓋を開けるという。

「思っていた以上に蓋は重いし、蓋を固定しているものを外すにもコツが必要で。慣れるまでは結構苦労しましたね」

岡さんと小林さんはクレーンやフォークリフトの免許を入社後に取得していて、現場作業をサポートすることもできるそう。新しく入る人も、将来的には同じように活躍できるといい。

ここでの仕事は、淡々と取り組んでいくものが多いと思います。

それでも単調な印象を受けなかったのは、デジタル化のような新しい取り組みを進めていたり、みなさんが工夫して仕事に取り組んでいることが伝わってきたから。

そんな毎日を積み重ねていった先に、この仕事をする自分なりの意味が見つかるのかもしれません。

(2022/12/12取材 増田早紀)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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