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日本中から
相談がやってくる紙箱屋

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

しっとりした重量感のある箔押しの箱、小さなお菓子を入れる軽い紙箱。

商品を包む脇役ながら、中身を取り出したあともとっておきたくなる。

そんな箱づくりをしているのが、札幌の紙箱メーカー、モリタ株式会社です。

特殊な技術と洗練されたデザインで知られるこの会社には、日々全国から「こんな箱がほしい」という相談が寄せられます。

その声に応えて、クライアントの求める箱を届けるのが、今回募集する箱プランナーです。

クライアントのニーズに耳を傾け、デザインと設計に落とし込む企画提案から、製造の進捗管理を経て、納品まで見届けるこの仕事。

特別なスキルや経験は問いません。ものづくりが好きな方に知ってほしい仕事です。

 

札幌の中心地・大通駅で地下鉄に乗り、3駅先の東札幌駅へ。

駅から15分ほど歩くと、静かな住宅街のなかに工場がちらほら見えてくる。その一角に、モリタの工場兼事務所を見つけた。

建物の中では、ときおり「ドン、ドン」と大きな音が響いている。あとで聞くと、厚紙を重ねて機械で裁断している音なのだそう。

工場は1階から3階にまたがっていて、その一角に事務所がある。

応接室に入ると、棚一面に並べられた紙箱が目に飛び込んできた。

イラストやロゴがプリントされた紙箱、高級感のあるギフトボックス。どれも眺めているだけで楽しい。

「この棚にあるほとんどが、うちでつくった箱です。この箱はミスターチーズケーキさん、あそこに見えるのは日本酒やジンなどのお酒用。サッカーの天皇杯のメダルケースもつくらせてもらっていて。触ってみますか?」

にこやかに教えてくれたのは、代表の近藤さん。

こんなにたくさんの箱をつくっているんですね。

「昨年度は約400社とお仕事しました。10年前のおよそ倍です。北海道のお客さんが多いですが、ほかの地域の仕事も年々増えています」

モリタは、今年5月に創業91年を迎える紙箱メーカー。

義父である先代に請われて、「箱の『ハ』の字も知らなかった」近藤さんが商社から転職してきたのは2007年のこと。当時はデフレのまっただなかで、モリタのメイン商材である贈答用の箱の需要がどんどん減り、売上も低迷していたころだった。

「先代からは、営業として新たなものづくりを見いだしてほしいと頼まれました。差別化するにもうちの会社は業界でも決して大きい規模ではない。大量生産による価格勝負はできません」

「直感的に、差別化するならものづくりの品質、デザインだと思ったんです」

うちにしかできない箱をつくりたい。

そう考えて日本中を調査して回るなかで、Vカットという加工技術を見つける。

「Vカットは、木箱に使われる技術を紙箱に応用したものです。通常の紙箱の紙は厚くても0.5ミリくらいなんですが、Vカットの箱は2ミリほどとかなり厚い。その厚紙をVの字の刃で切り込みを入れて直角に折れるように加工すると…」

すごい、ぴったりフィットします。

「そう。本体とふたが気持ちよくおさまって、高級感のある独特のたたずまいになるんです」

さっそく翌年、モリタはVカット用の特別な機械を導入する。

とはいえ、当時のVカットの箱の需要は主に贈答用で、これまでにない価値をつけなければ選んではもらえない。そこで力を貸してくれたのが、札幌のクリエイターたちだった。

実は近藤さん、入社を機に「デザインを学びたい」と、グラフィックデザインの専門学校に夜間部学生として通い始めていた。話を聞いた担任の先生が、何人ものデザイナーやコピーライターと引き合わせてくれる。

「当時リリースに向けて動いていたのが、牛乳パックの再生紙を使った箱でした。どうアピールするか悩んでいるとデザイナーの方たちに話したら、すごく乗ってくれて。一緒にブランディングプロジェクトを立ち上げたんです」

そうしてリリースされたのが「ミルクラフト®」。

再生紙ならではの風合いが特長で、ポピュラーな組立箱にもVカット箱にも採用できる紙は、今でもモリタの看板商品のひとつ。

「このお仕事を通して、札幌にはすぐれたデザイナーやコピーライターが集積していることを知りました。北海道は食に恵まれた地域性もあって、とくにローカルデザインでは全国的に見てもトップクラスだと思っています」

以来、札幌を中心にした北海道のクリエイターとの箱づくりが、モリタの強みになる。

今は北海道から沖縄まで、日本中から相談が寄せられている。なかにはデザインから依頼される案件もあり、その場合はつながりのあるデザイナーに声をかけて一緒につくりあげていく。

モリタは制作全体を統括していて、今回募集する「箱プランナー」と呼ばれるスタッフたちが、受注からディレクション、納品までを取り仕切っている 。

「お問合せ時点で、この形、このサイズの箱をつくってほしいと言われることは多いです。でもお客さんの言う要件をそのまま実現することだけに集中しても、パッケージの本来の役割である『ものを売る』効果が発揮されないこともあると考えていて」

「うちは箱のプロとして、売ることまで考えた提案を出したい。だから最初によく話を聞くんです」

何を入れる箱なのか、売価はいくらか。売り場はデパート、道の駅、ECサイト?

同じ製品でも、どう売りたいか、どう見せたいかによって、あるべき箱の姿も変わっていく。

たとえば北海道の積丹(しゃこたん)でつくられるクラフトジンの箱の相談を受けたとき。クライアントからは最初、お酒を上から取り出す円筒状の箱をリクエストされたそう。

クライアントが話してくれたのは、町内の豊かな自然から生まれたクラフトジンと、凜としたブランドイメージ。

それらを箱で表現するためにモリタが提案したのは、「開く」形状。積丹の冬を表すパール紙の箱をあけると、この町の海をイメージした青が目に飛び込んでくるデザインに仕上がった。

箱の主役はあくまで中身。どうしたら売れるか、一番外見にあたる箱の観点から考えて提案するのが箱プランナーの役割だ。

その課題解決の力は、今や数百のクライアントから頼りにされている。

「シンプルに、箱ができあがって世に出たときがうれしくて。ものをつくりだすのが好きなんですね。どんな方が来てくれるとよいかいろいろ考えたんですが、その気持ちを持っている方、ということに尽きるかな」

 

「社長は紙もデザインも好きなアイデアマン。僕はけっこう真逆かもしれないですね」

そう話すのは常務の守田さん。今回募集する人の上司にあたる方で、気さくなお兄さんという感じ。

「うちの祖父が前の会長なんです。『大人になったら箱屋になりたい』と幼稚園の卒園式で発表したら、おじいちゃんがすごく喜んでいて(笑)。自然と将来は箱屋になるんだと思っていました」

大学卒業後、段ボール製造会社で製造管理として6年ほど勤め、モリタに転職。2年ほど工場で製造を担当したのち、今は箱プランナーとして営業部をとりまとめている。

守田さんから見て、この会社の特徴はなんでしょう?

「お客さんの期待値が高いことでしょうか。 うちは基本的に問合せから仕事が始まるんですが、珍しい箱、見たことのない箱、格好いい箱を提案してくれるんじゃないかと期待されていることをすごく感じます。難しい箱のご依頼でも、『モリタさんならできるでしょ』と言われますね」

「その期待に100パーセント応えられるよう頑張るのが箱プランナーです。ただ、想定どおりに進まないことも多くて。その調整や穴埋めを地道に重ねていくのも、重要な仕事です」

ヒアリングでニーズをくみあげて、デザインや設計に落とし込む。材料の手配や工場への指示出しをおこない、製造が始まれば予定どおりに進捗しているか工場にこまめに確認。問題なく納品されたことを見届けて、一つの箱づくりが完了する。

これらの工程をすべて見渡し、困りごとがあれば解決していくのが箱プランナーの仕事。

期待値が高いぶん、難しい仕事も多くやってくる。

とくに需要が多いVカットは難易度が高く、見た目の美しさと箱の強度を両立する組立作業、ずれのない箔押しなど、手作業によるところも多い。

ときには、クライアントの要望に一度で応えられず、クレームを受けることもある。

「工場から『強度を保つために、これだけは接着剤のはみ出しを許容してほしい』と話があれば、お客さんにご納得いただけるように説明します。お客さんから『一日でも早くほしい』と言われれば、直近必要な分だけでも先につくれないか工場にお願いしてみる。お客さんと工場の間に立つので、言いにくいことを言わなければならない場面もあります」

「だからこそ日々のコミュニケーションが大切で。僕は工場で働いていた期間も長かったので、工場のみんながどんな気持ちで働いているかもわかるし、彼らが大切にしていることを自分も大切にしたい。『無理言ってごめん、僕も頑張るからそっちももう少し頑張って』と言える関係なんですよね」

一筋縄ではいかない仕事。だからこそ、「なんとかする力」が身についていくし、経験を重ねるほど対応できる範囲も広がっていく。

守田さんにとっての仕事の面白さは、どこにあるんだろう。

「うーん… 自分は紙やデザインに対して特別なモチベーションがあるわけじゃなくて。仕事が思い描いた形でスムーズに進んでいくのが好きというか、快感なんです」

「決まった型どおりに堅実に進めるのも、難しい箱をどうしたらつくれるか考えるのも、スッとはまると気持ちがいい。紙や箱が大好きな社員もいれば、僕みたいな感覚の人間もいる。それがうちのよさだと思います」

 

製造部の宮田さんは、まさに紙好きのお一人。

「社長とは専門学校の同級生でした。紙を毎日触れるこの仕事は、もう天職です」

箱プランナーは、入社して最初の数ヶ月は工場で箱づくりの基礎を習得する。

作業内容はもちろん、わかりやすい製造指示の出し方や、製造部がどんな考えでものをつくっているかを知ることができる大切な期間だ。

「私たち製造部は、箱プランナーが共有してくれる情報を頼りに仕事をしています。どんなお客さんかわかればモチベーションになるし、『化粧品用ならいつもより品質要注意だね』とか、気をつけるべきポイントもわかります。裏を返せば、ミスが起こるときは情報が不足しているときでもあって。お互いに、大丈夫かな? と気にかけられる方がありがたいですね」

もともと大の紙好きだったという宮田さん。2年前には自分の箱ブランドを立ち上げた。

「会社でつくる箱もシンプルですてきなんですけど、個人的にはもっとかわいい箱をつくりたくて(笑)。ブランドを立ち上げたいと社長に相談したら、面白そうだと言ってくれて、会社全体で副業ができるようになりました。今は土日に機材を貸してもらって、自分で揃えた紙でお道具箱をつくって販売しています」

「モリタはどんどん新しいことをやるし、試行錯誤も自分なりに楽しんでいく社風です。変化を楽しんでくれる方が来てくれるといいですね。

 

いい箱は人を喜ばせる。

お客さんもつくり手も、自慢できる箱をつくる。

モリタの信条は、そんな言葉で表現されてきました。

この会社の「いい箱づくり」を、ともに担う仲間を待っています。

(2023/4/5 取材 遠藤真利奈)

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