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「魂を削って、自分たちにしかできないものづくりをして、目の前の人を幸せにする。とことんやれば遊ぶ以上に楽しいし、それが生きがいになるんです」
そう話すのは、ティープラスター代表の水口(みなくち)さん。
ティープラスターは、店舗、オフィス、住宅などの空間づくりをしている会社。
クライアントとの最初の打ち合わせから、設計施工、空間を彩る家具の製作まで。空間をつくるための工程のほとんどを、一貫して自分たちで手がけています。
一人ひとりがいろんな役割を担いながら、みんなで協力しあって、ひとつの空間をつくっていくティープラスター。
今回は、空間づくりに携わるスタッフを募集します。領域を限定することなく、さまざまな仕事に挑戦していける環境です。
元町・中華街駅で降り立ち、バスに乗車。
坂の多い道中には、キリスト系の学校や教会など、横浜らしい異国情緒を感じる雰囲気が漂っていて、窓からの景色も楽しめる。
バスに揺られること、およそ20分。高台の住宅街に現れた、大きな倉庫のような建物がティープラスターの本社。
中に入って、「こんにちは」と挨拶をする。
迎えてくれたのは代表の水口さん。
古着やバイクが好きで、もともとは整備士をしていた。その後、空間づくりに関心を持ち、左官職人として修行を重ねたそう。
まずは中を案内してもらうことに。
地上3階、地下1階の建物には、道具や部材、家具がところせましと並んでいる。
お客さんがこの場所を訪れて、家具や材料を見たり触れたりしながら、空間づくりにどんなものを使っていくのか相談することも多いそう。
「空間も家具も、愛せるものをできるだけ長く使ってもらいたい。木や鉄、左官の材料は本物の素材。使い続けていくなかで手入れは必要になりますけど、時間が経てば経つほど味が出てくる。それが本物のよさですね」
最初は左官工事から始まり、内装、家具製作と、だんだんと仕事の幅が広がってきたティープラスター。
依頼のほとんどは人づての紹介。デザインから任せてもらうことも多いという。
「空間をつくったら依頼主さんはもちろん、そこに来る人にも喜んでもらえて。それがすごくやりがいだし、なんていうか心が満たされるんです」
「でも、普通にやっていてもそこには行けない。プロはプロでも、圧倒的なプロである必要があって」
圧倒的なプロ?
「かっこいい空間には、情熱や努力の代償があるんですよ。それだけエネルギーを注いでものづくりをするから、依頼をもらっても本当に僕らが関わるべきなのかはすごく見極めるし、そのぶん、やると決めたらとことんやる」
長年ものづくりに情熱を注いできた水口さん。以前に比べて、スタッフに任せる部分も増えてきた。
「それだけいい人材が増えてきたし、得意なことを得意な人ができるチームがいいと思っていて」
「ものづくりの仕事ってほぼルーティンがなくて、毎回がトライ案件なんですよ。現場に行ったら想定と違うこともめちゃくちゃある。そんな状況も楽しみながら、チームで助け合うのも大事なんです」
現在働いているスタッフは、未経験から始めた人も多い。
ティープラスターでは、入社後まずは、実際の施工現場であらゆる仕事を経験していく。
「いきなりうまくやろうというのは無理。はじめは全然できなくても進まなくてもいいから、とにかく量とエネルギーと時間をかけること。そうすると、自然と日頃の動きにも無駄がなくなって、質につながっていくんです」
壁を塗ったとき、あと4cm脚立を右に置けば効率よく塗れた、今の一振りはいらなかった。そんな小さな日々の積み重ねが重要だという。
「案外、不器用と思っている人のほうが、時間をかけるとうまく作業できるようになったり。自分もポンコツだったから、新人がポンコツで入ってきても、こいつはできるだろうなって信じられるんです」
「スタッフを超かっこいい人間にしたいんですよ。そのために厳しくするし、今一番苦しむだろうなって仕事をぶつける。自分の限界を超えたときに成長があると思っているんで」
そう言えるのは、水口さんも経験してきたからなんだと感じる。
「先輩たちが作業するのを見ていると、簡単そうなんですよ。でも、いざ自分でやってみると全然できない。すごく悔しくて、歯痒かったですね。最初はすべてにつまずきました」
そう話すのは、左官職人の髙橋さん。
水口さんのインタビュー動画がきっかけで、ティープラスターに興味を持った。
「DIYの経験とか一切なくて。でも初めてここに来たとき、現場から帰ってきた職人の姿とか、会社にあるものすべてがかっこよくて。自分もここで働きたいと思いました」
未経験で入社して、まずは実際の現場仕事を経験することに。
「しっかり測ったはずなのに、材料を現場に持っていったらサイズが合わないこともあって。空間をつくる仕事ってこんなにもむずかしいのかと思いました」
しばらくして髙橋さんが主に担うことになったのは、左官。
はじめの1〜2年はなかなか作業が終わらずに、夜遅くまで一人で現場に残ることも多かった。
「左官は水ものなんで時間との戦いだし、季節によっては過酷な現場もあります。でも仕上がった壁とかを見ると、グッと心をくすぐられるものがあるんですよ」
入社4年目となった今、現場を任されることも増え、仕事の楽しさもより強く感じられるようになってきたのだとか。
「水口が左官仕上げをした現場で、お客さんが喜ぶ姿を何度も見てきました。自分もそういう仕事をしていきたい、という想いが今もずっとあります」
「今は主に左官をやっていますけど、ゆくゆくは現場の管理も含めて、空間づくり全体を深く知っていきたいな、と最近すごく感じますね」
それぞれの仕事が明確に分かれていない環境だからこそ、さまざまな分野への興味や知識が広がっていくのかもしれない。
次に話を聞いたのは、入社4年目となる家具職人の安藤さん。
大学卒業後、飲食店に就職。休日を楽しみに仕事時間を過ごす周りの雰囲気に、モヤモヤを抱えながら働いていた。
自分の好きなことを仕事にしたい。安藤さんは昔から憧れだった職人を目指そうと転職を考え、日本仕事百貨で見つけたのがティープラスターだった。
入社後、提携先の材木店に1年半の修行へ。その後、実際の現場仕事を経験して家具職人に。
「この間、友人が経営する会社でオフィスの家具を担当させてもらったんです」
と言いながら見せてくれたのは、木でできたテーブルの写真。木の色合いに、黒色も混ざっていてかっこいい。
「レジンテーブルといって、無垢材と樹脂を組み合わせてつくったものです。これは屋久杉の一枚板からつくったんですけど、友人が『絶対この木がいい』と選んだもので」
すでに完成しているレジンテーブルやほかの木材を一通り見たものの、友人はこの一枚板の前に何度も戻ってきたそう。
「僕らは、木に呼ばれているっていうんですけど、木目ってやっぱり人を惹きつけるものがあって」
「たとえばこの屋久杉は年輪の幅が1ミリもないほど、ゆっくりと時間をかけて成長してきた木なんですね。木目の流れは自然の造形物なので、あまり手を加えないように木と向き合いながらデザインを考えます」
スギやケヤキ、ヒノキといった和の建築によく用いられる木材も、レジンテーブルにすることで洋風の空間にもマッチするという。
現代の空間にあわせつつ、材料本来のよさを活かしたものづくりをしていく。
今ある資源を、最大限にどう活かしていくか。そんな命を大切にしたものづくりへの想いも感じる。
「まちを歩いているといい木材に気づいたり、カフェの内装を見てどうつくられたかを想像したり。仕事が日常につながって、人生が豊かになっている感覚がありますね」
仕事が日常につながる。
「仕事とプライベートが分かれていないんですよ。遊ぶ前に自然と体が動くように、これがつくりたいって想いがあるから手も頭も毎日動く。職人として生きる魅力を日々感じています」
「実際に働いてみてわかったのは、好きなことを毎日全力でやっている人は、生き生きしていることですね。ティープラスターで関わる人たちは、生き生きしている人が本当に多いです」
最後に話を聞いたのは、入社10年目となる施工管理担当の佐藤さん。
お客さんとやり取りをしたり、スタッフをまとめたりと、空間づくり全体の舵取りを担っている。
「王道パターンの空間はつくらないように意識しています。同じものをつくるだけでは、自分の引き出しがどんどん小さくなってしまう。できるだけいろんなチャレンジをするように心がけていますね。たまに失敗もしますけど(笑)」
お客さんが求める空間のイメージは、ある映画の1シーンや、葉巻とブランデーが似合う空間、など人それぞれ。
「イメージを形にするには、建築以外にもいろんなことを掘ったり、突き詰めたりしていないと、対応できないことが多いかもしれません」と佐藤さん。
雑誌の1ページでも、たくさんの情報をインプットできるよう、モデルの背景までよく見るそう。
「こんな空気感、というのを写真や言葉で擦り合わせながら、お客さんのイメージを形にします。それを工事に関わる人に通訳して伝える感じですね」
たとえば色を表現するときは、野菜や果物の色に例えたり。具体的でわかりやすい表現に言い換えることも多いとのこと。
一方、イメージの共通理解だけで、工事が順調に進むとは限らない。
途中で変更が発生したり、予想外のことが起こることも。
そんなとき、工期という物理的なマネジメントに加えて、関わる人たちへの気遣いも施工管理には欠かせない。
「みんなが100%の力で働けるようにスケジュールを調整したり、忙しくても気持ちよく働けるように声をかけたりすることも大事ですね」
きっと、入社後に現場仕事を一通り経験したことが、空間づくりに関わる全員の気持ちを理解することにもつながっているんだと思う。
「うちがつくる空間を見て、おしゃれとかかっこいいと思うだけでは、スキルも身につかないし厳しいと思います。でも、ものづくりにのめり込みたいという素直でまっすぐな想いがあれば、すごく楽しめる環境だと思いますよ」
取材終わり、水口さんが話していた言葉が印象的でした。
「人生って一回しかないから、いかに濃密な時間を過ごすかが大事だと思っていて。寝ているだけでも過ぎていく時間は一緒だけど、何かに打ち込んだり、目の前の人を喜ばせたり。喜怒哀楽を味わうことで、人生が濃密になっていくと思うんです」
ものづくりを通して、ここで自分はこう生きたい。
そんな気持ちが湧いてきたら、ぜひ一歩踏み出してみてください。
(2023/3/14 取材 小河彩菜)